ゲームキャスターさくら   作:てんつゆ

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人形列車 出発進行 了

 

 

「そういえば何でトランクケースの中に…………って、それも理解らないですか?」

「えっと……………うん。やっぱり思い出せないかも」

 

 …………これは私の中の厄介な事に巻き込まれそうセンサーがビンビンに反応しています。

 今すぐ乗務員さんに連絡してこの子を引き渡せば、気ままな列車旅行に戻る事が………………けどっ。

 

「そういえば、名前を聞いていませんでした。――――あの、あなたの名前は何て言うんですか?」

「…………名前?」

 

 もしかして名前も覚えてない!?

 

「桜、トランクケースに何か書いてあるみたいだけど」

「ケースに?」

 

 シャンティが何か気づいたようなので、私は人形が入っていたトランクケースを見てみてると、フクロウの紋章の下に名前が書いてあるのを見つけました。

 1文字だけかすれていて読めない文字がありましたが、読める文字だけ読んでみると――――。

 

「リニス? 1文字消えてしまってますが、これがあなたの名前でしょうか?」

「えっと…………たぶん、そう……かも?」

「では呼び方がわからないと不便なので、これからはリニスと呼びますね」

「うん。別にそれでいいわよ。かわいい名前だし気に入った」

「それと、私の事は桜って呼んでください」

「わかったわ、桜」

 

 とりあえず呼び方も決まったので、私は改めてリニスに問う事にしました。

 

「――――それで、リニスはこれからどうしたいんですか?」

「どうって?」

「乗務員さんに頼んで持ち主を一緒に探してもらう事にしてもいいですし、何なら私は何も見なかった事にして、次の駅で降りて好きな場所に行ってもいいですよ?」

「いきなりそんな事言われても困るんだけど…………けど、そうね。今やりたい事なら1こだけあるわ」

「なんですか?」

 

 その時、私のお腹がぐうとなりました。

 

「ずっと眠っててお腹が空いてるんだけど、なにか食べる物ない?」

「…………あの。人形でもお腹が空くんですか?」

「ちょっと! 私をその辺の人形と一緒にしないでくれる? 動くのだってエネルギーが必要なんだから!」

「そもそも何で動けるんですか…………。まあ私もお腹が空いたので、とりあえずご飯にしましょうか。こんな事もあろうかと、ちょうどお弁当も2人分用意してあるので」

「…………ちょうどって。間違えて2回押しただけでしょ?」

「け、結果オーライだからいいんですっ!」

 

 それから私達は少し冷えてしまったお弁当を温めなおし、ちょっぴり遅めのご飯を食べる事にしました。

 そして少し高めの紅茶を飲みながら小休止。

 

「ふぅ。やっぱり高い紅茶は違います」

 

 正直ペットボトルの紅茶と味の違いはわかりませんが、なんとなくそれっぽい事をいってみたり。

 

「それで? ご飯も食べ終わったけど、これからどうするの?」

「一応トランクケースを拾った事は連絡してあるので、私達は何か違う所からアプローチ出来たらいいのですが、ケースに書いてある名前も1文字消えてしまっているので名前から探すことも難しそうです…………他には」

 

 リニスの入っていたトランクケースを軽く調べてみましたが、他に手がかりになりそうなのは名前の近くにあるフクロウの紋章くらい。

 

「この紋章に見覚えとか無いですか?」

「さあ? けど、この紋章は優雅な私が入ってたのに相応しい可愛さね」

「確かに優雅な箱詰めでした」

「…………桜。それ使い方間違ってない?」

 

 まあ、これも一応調べてみますか。

 

「シャンティ、この紋章を画像検索して貰えますか?」

「オッケー。ちょっと待っててね~」

 

 ただトランクケースの出どころが理解っても、持ち主がその辺にあった適当なケースを使った可能性も大いにあるので、あんまり期待は出来ませんが。

 

 ―――――それから少しして検索が終わったシャンティが検索結果を伝えてきました。

 

「あったよ~。ほぼ100%一致したから間違い無いと思う」

「それで、どこのメーカーのだったんですか?」

「う~ん。メーカーって言うか、――――まあ詳細を渡すから見てみてよ」

「はぁ?」

 

 私はシャンティから出力されたホロデータを受け取ると、そこには少し古びた建物の画像が映っていました。

 

「――――えっと。これは教会ですか?」

「うん。聖梟教会って言うんだって。ほら入り口の所にこれと同じ紋章があるでしょ?」

「…………入り口? あっ!? 確かにおんなじのがあります!?」

 

 メーカー品だったら誰にでも手に入れる事が出来ますが、流石に教会のシンボルマークが付いている物を一般の人が手に入れるのは難しいはず。

 

 それに直接的には関係してなくても、何らかの関わりがある可能性は非常に高そうです。

 

「ここって何処にあるんですか?」

「結構いろんな所にあるみたいだね~。いちばん行きやすい所だと……………ここから4駅先の所かな」

「…………あの。次の駅の辺りには無いんですか?」

「一応あるけど、駅の近くにはないかな~。それに4駅先にある場所は結構大きめな所だから、どうせ行くならそこがいいかなって」

「確かに大きい場所の方が情報は多そうですからね。了解です。だったらまずはそこに行ってみましょう」

 

 ふぅ。なんとか現状の目的地が決まりました。

 

「リニスもそれでいいですか?」

「……………」

 

 おや? 返事がありませんね。

 

「――――あの。私達の話を聞いてましたか?」

「ふぇ? なんか面白くなさそうな話してたから、優雅なおやつタイムを楽しんでたんだけど邪魔しないでくれる?」

 

 私がリニスの方に振り向くと、満面の笑顔でプリンを食べている姿が見えました。

 手に持った容器の中身はすでに半分以上無くなっていて、横には空になったプリンの容器が置いてありま…………。

 

「って、それ私のプリンじゃないですかーーーーーーー!?」

「え? 残ってたから代わりに食べてあげたんだけど?」

 

 リニスは私の制止を聞かず、そのまま残りのプリンを全てスプーンですくってから口を大きくあけ、ひとくちで全部食べちゃいました。

 

「ああ、せっかく最後に取っておいたのに…………」

 

 絶望のどん底にいる私と正反対にリニスは幸せの絶頂にいるかのような、うっとりとした笑顔を浮かべています。

 

「あと1個くらい欲しいんだけど、追加のは無いかしら?」

「無いです! てかあったら私が食べてますっ!」

 

 まあ、食べてしまった物を今更どうこう言っても戻ってこないですし…………。

 

「よしっ。決めました!」

 

 私はカバンからおもむろに次の目的地のガイドブックを取り出して。

 

「こうなったら、次の場所で美味しいお菓子をいっぱい食べる事にします!!」

「なになに? 美味しいお店に行くの?」

「はいっ。任せてください!」

「あ。これまた体重計の上で悲鳴あげるパターンだ」

「シャンティ。何か言いましたか?」

「何も言ってませ~ん」

「では、早速ガイドブックで良さそうなお店を探しましょう!」

「お~!」

 

 私達は雑談をしながらガイドブックを読み進めます。

 そして、しばらくしてから列車が停まり車掌さんのアナウンスが流れ始めました。

 

 どうやら列車が無事に目的地に到着したみたいです。

 

 そんなこんなで私達は最初の目的地、札幌に到着しました。

 

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