「忍さん。やっぱり人が少ない所から始めて様子を見た方がよかったのでは?」
「え~、でも強い武器があった方が楽しいし、炎系の武器は炎のエフェクトが出てかっこいいじゃん」
「それはそうなのですが、同じ事を考えているチームがかなり多いみたいです」
「大丈夫だって、それなら全部倒しちゃえばいいし」
「そんな無責任な」
私達の視界に火の神殿が次第に近付いて来ます。
このまま地面に激突したら大ダメージを受けてしまい落下ダメージだけでそのまま即退場となってしまうので、それぞれが用意したパラシュートなどの落下の衝撃をなくす道具を最初に使う必要があります。
けれど、あまり早くパラシュートを使ってしまったら落下速度がゆっくりになり目的地に辿り着くのが遅くなってしまうので、なるべく地上ギリギリまで引きつけてから滑空アイテムを使うのが最初のセオリーとなっています。
「ふっふ~、おっ先ぃ~」
私より先に落下していた忍さんが一足先に滑空アイテムを使用しました。
忍さんの滑空アイテムはホウキです。
ゲームのシステム的に空を飛ぶことは出来なくてあくまで落下速度を遅くするだけのアイテムなのですが、忍さんの着ている魔女の様な服装と相まってまるでホウキに乗って空を飛んでいるかの様に見えて可愛いです。
――――そして私は。
「フライングブーツ、トランスフォーム!」
私が声高らかに叫んで靴のカカトをトントンと合わせると、私の履いている靴から翼が現れて空飛ぶ靴へとなりました。
これも忍さんのホウキと同じく飛空艇から落下した時と高い場所からジャンプする時にしか使えないアイテムなのですが、羽の生えた靴ってなんだか魔法少女になったみたいな気分になれるので私がこのゲームで大好きなアイテムの1つだったりします。
ちなみにアイテムを使う時にわざわざ叫ぶ必要は無いのですが、雰囲気は重要なので私は使う度に毎回これをやっています!
滑空アイテムを使用した事によって私の落下速度もゆっくりとなりました。
一緒に降りてきた人たちも皆アイテムを使い、ゆっくりと火の神殿に目標をしぼって向かっているみたいです。
皆さんパラシュートやグライダーなど自分の好きな滑空アイテムを使っているので、落下シーンではそれぞれの個性が出てくるシーンです。
たまにレアアイテムの派手でピカピカなアイテムを使っている人もいるのですが――――。
私は周辺を念入りに見回して確認しました。
「あの人はノーマル、あの人も――」
――――どうやら今回はレアアイテムを持っている人はいないみたいですね。
どうしてレアアイテムを持っている人を探していたのかと言うと、レアアイテムを手に入れるにはゲームプレイで手に入るゲームコインを沢山貯める必要があるのです。
まあ例外的に有料ガチャで低確率で手に入れる事も出来るのですが、それは置いといて。
つまり何がいいたいかと言うと、レアアイテムを持っている人はゲームをやり込んでいる人が多いのです。
やりこみ勢にいきなり出会ってしまってすぐにやられてしまう……なんて事もあるのですが今回その心配はなさそうですね。
――――と言っても。
今回は激戦区に降りるので、突然後ろを取られていきなりやられるなんて事にならないように注意しておかないと。
「桜~。この辺でいいかな~?」
「はい。着地する場所は忍さんに任せます」
ここまで来てしまったら私がどうこう言うより先行している忍さんに着地する地点も決めてもらった方がいいですね。
私は忍さんが選んだ場所の近くに降りればいいですし。
――――忍さんがゲームをスタートする地点に選んだのは火の神殿の南西の辺りでした。
火の神殿と言う名前なのですが、面積はかなり大きくて実質お城みたいな感じの建物です。
火のお城という名前だとなんだか変な感じがするので神殿にしたのでしょうか?
「よしっ、到着っと。それじゃあ先にこの辺りを探しておくね~」
「気を付けてください」
「大丈夫、大丈夫。私にまっかせなさ~い」
忍さんはそのまま近くにある屋上にある小屋へと入って行きました。
外より部屋の中の方が良いアイテムがある確率が高いので、まずはそこから調べるのが序盤のセオリーになっています。
「私も急がないと」
シュタッ。
少しだけ遅れて私も火の神殿に降り立ちます。
地上に着地したら靴の羽がふわっと宙に舞うように広がりながら消えていき、普通の靴へと戻りました。
空飛ぶ靴の効果が無くなった今の私は丸腰。
武器はおろか使えるアイテムも何一つ持っていないのですぐにでも武器を探しに行かなくてはいけません。
眼の前にある小屋には忍さんが物資を探しに行っているので私は屋上を探す事にしました。