エヴァ体験系   作:栄光

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ふたりの六日間

 本部帰還後すぐに会議室に集められた俺たちは、作戦の推移と結果についてのデブリーフィングを行っていた。

 通称:デブリは作戦部が報告をもとに作成したスライドを見ながら、パイロットたちがあれやこれやと説明していくのだ。

 参加者は不在のゲンドウに代わり冬月副司令、技術部代表がマヤちゃん、そして作戦部長代理の加持さん、副官の日向さんと青葉さん、そしてパイロット二名だ。

 葛城一尉も赤木博士も責任者という事で各地を走り回り、関係省庁の抗議や被害報告書、国連軍からの請求などに取り掛かっているため不在だ。

 

「本日午前10時58分52秒、二体に分離した使徒乙の攻撃を受けた弐号機が沈黙」

 

 マヤちゃんの読み上げと共にスライドが切り替わった。

 弐号機の側頭部に攻撃が入り、失神するシーンが映ってアスカは悔しそうに画面を見る。

 

「初号機が弐号機救出のため、使徒甲に対し銃剣攻撃を敢行します」

 

 重戦闘機のうちの一機が撮影していた画像で、駆けだした俺が黄色い使徒甲のコアに銃剣を突き立て、足で蹴ってる姿が映った。

 

「その後、使徒乙に対して剣付きパレットライフルを投擲して、コア付近にダメージを与えます」

 

 グレーの使徒乙に大穴を開けてやった時の写真が映る。

 

「11時2分13秒、初号機が弐号機を抱えて後退します」

 

 肩に担ごうとしたけど拘束具が邪魔だったので、両腕で抱えるお姫様抱っこという状態で浜を目指していた。

 それを見たアスカは、エースパイロットである自分の醜態に拳を握り込む。

 

「その際、初号機パイロットより、使徒の特性が“優れた再生能力”にあるという報告がなされます」

「分裂体のコアを同時に攻撃しない限り、回復するというわけかね。初号機パイロット」

「はい、その可能性がきわめて高いと感じました、以上です」

 

 冬月副司令から指名されたため、起立して報告する。

 

「赤木博士の見解として、使徒はそれぞれのコアをバックアップとし、どちらか一方が破壊された場合、残存する方のデータで復元している可能性があるとのことです」

 

 技術部の画像解析などから、刺突2秒後にはもう回復が始まっているようだという発見もあった。

 

「11時5分、分裂体に対し同時攻撃が不可能と判断。ネルフは作戦の中止を決心しました」

 

 そこから、国連軍の“N参号作戦”が行われることになる。

 空中待機していた戦略爆撃機部隊が使徒に対しN2爆雷を投下するために空域に進入する。

 

「11時7分、初号機パイロットは近隣住民への余波被害軽減のため、陽動を志願します」

 

 両手にパレットライフルを抱え、使徒に向かって乱射している初号機の写真が国連軍提供で映っていた。

 おそらくN2爆雷の爆撃損害評価(BDA)のために発進していたRF-4E偵察機が撮ったものだろうか。

 あのときは必死で、偵察機はおろか空なんて見ている余裕もなかった。

 

「11時10分24秒、初号機海中にて活動停止、同56秒N2爆雷初弾投下」

 

 しゃがんだ状態で海中に潜っている画像が映った。

 わざわざ機首の斜め偵察カメラで撮影してくれたのかやたら画像がよく、初号機の頭上のさざ波までクッキリだ。

 

「シンジ残念、ヒーローみたいだったけど最後、ドザエモンじゃない!」

「恥を掻かせおって」

 

 アスカが言うように紫のボディが溺死体みたいに見える……わかるけど、今言う事か。

 副司令は初号機が海中に浸かっている写真か、あるいは国連軍による攻撃が有効だったことに唯一の対使徒戦機関であるネルフのメンツをつぶされたと思ったのか吐き捨てる。

 

「11時12分、N2爆雷最終弾が炸裂、これにより構成物質の28パーセントを焼却に成功」

「また地図を書き換えなくてはいかんな」

 

 偵察機の低高度パノラミックカメラで撮影したパノラマ航空写真がスライドに映った。 

 水没地区と護岸の一部にクレーターが出来ているだけで、人が住んでいる臨海地区の方の被害は微々たるものだ。

 俺が稼いだ距離で爆撃編隊が上手いこと海の上に精密爆撃をしてくれたのだろう。

 パノラマ画像の端には“501TRS提供”とあって、百里基地より発進した“第501偵察飛行隊”所属機の撮影だ。

 使徒戦が始まってから毎回ずっと出ずっぱりで、老朽機ファントムⅡの飛行時間は大丈夫だろうか?

 

「やったの?」

 

 爆心地で黒焦げとなった使徒の映像、国連軍提供の写真にアスカが聞く。

 

「足止めにすぎん、再度侵攻は時間の問題だ」

「立て直しの時間が稼げただけでも儲けモンっすよ」

 

 すると、副司令が苛立ちを感じさせる声で言い、加持さんは何とも言えないコメントを残す。

 

「いいか君達、君たちの仕事は何だかわかるか」

「エヴァの操縦」

「使徒の殲滅と“国民の保護”です」

「使徒に勝つことで、ネルフはこんな醜態をさらすためにいるのではない。国民の保護は国連軍の仕事だからそこを間違えるな」

 

 冬月副司令はそういうと会議室から去って行った。

 俺は「アンタらは補完計画(碇ユイ)がメインで、使徒戦はオマケだろ」と思ったけれど口には出さない。

 そして何人かが退室して張り詰めた雰囲気が緩んだ瞬間、アスカはむくれる。

 

「どうしてみんなすぐに怒るの!」

「大人は恥を掻きたくないのさ、ところでシンジ君」

「なんですか?」

「君の考えは正しいと思う、だけどすべてを救える()()()()()()()()()んだから程々にな」

 

 加持さんはアスカを宥めると、俺の方を見てそう言った。

 それが責任をしょい込もうとする少年らしさに向けたものか、それともネルフの裏側を知っているが故の助言なのか。

 スパイやってる加持さんらしい、どちらともとれるセリフだ。

 

「手の届く所だけでも頑張りますよ」

「シンジ、カッコつけてるところ悪いけど、これから加持さんとランチなの」

「そうだったかな、シンジ君もどうだい。あれから昼飯食ってないだろう」

「僕は帰りの車内で携行食を食べたので、大丈夫ですよ」

「そうか、じゃあ気をつけてな」

「加持さん、早く~」

 

 俺の“活躍シーン”や冬月副司令からの叱責にアスカは劣等感やら不満を感じているようで、そのストレスから加持さんに甘えているようだ。

 加持さんは俺を誘ってくれるが、空気を読んで一人飯とする。

 要らぬところでアスカを刺激したくない、というのとやっておきたいことを実行に移すためだ。

 

 俺はコンビニでエナジードリンクを数十本買い、仕事中にも食べられるような個包装のお菓子類をバックパック一杯に詰めて作戦部と技術部に向かう。

 こうした差し入れは職場の人間関係構築において意外と効果を発揮するのだ。

 

「お疲れ様です、僕たちのためにすみません。またよろしくお願いします」

 

 こういった内容のあいさつ回りだが、どちらの部署からもおおむね好意的にとられたようだ。

 また、エヴァを壊さずに人命救助や財産保護のための行動をとったのが高評価だったらしい。

 

 しかし関係各省、特に農水省からはN2爆撃に伴う水産資源への損害、乳牛が乳を出さなくなったなどと被害報告書とともに抗議を受けて辟易しているそうだ。

 使徒襲来時に何を言ってるんだと思うかもしれないが、こういった苦情を軽視するとあとでエライことになってしまう。

 例えば恵庭(えにわ)事件のように怒った酪農家に有線通信の電話線を切られたあげく、合憲かどうかを争点に裁判が始まってしまうかもしれない。

 そうした反発を強権で押さえたところで、民間のネルフに対する心情は確実に良くないものになる。

 すると補完計画メインのゲンドウや冬月副司令と違って、俺たち一般職員は肩身が狭くなるし作戦遂行の障害になる。

 国民に愛される自衛隊……じゃなくて、“国民に愛されるネルフ”になれとは言わないけれど、せめて好意的になってもらおうと努力しよう。

 

 

 書類がうず高く積まれた葛城一尉の執務室に行くと、ミサトさんとリツコさんが何かの動画を見ているようだった。

 

「シンジ君、次の作戦なんだけど、これやるから」

「えっと、ツイスターゲーム?」

 

 ミサトさんに見せられた動画では二人の男女がツイスターゲームのパット上で踊っていた。

 アニメで見たことがあったが、実際やるとけっこう大変そうだな。

 

「ええ、その後に音楽を付け、旋律に合わせて攻撃タイミングを合わせるの」

「これはリツコさんが?」

「いいえ、加持君よ」

「楽しんで覚える、ユニゾン訓練……ねえ」

 

 差し込み式メモリには加持さんの文字で「マイハニーへ」なんて書き込まれていた。

 ミサトさんは動画を見終わるとどこか嬉しそうな顔から、命令下達の時のような真剣な顔になった。

 思わず、こっちも姿勢を正してしまう。

 

「碇、惣流の二名には、この音楽に合わせて同時荷重攻撃をしてもらいます」

「了解!」

「よって、あすヒトサンマルマルより碇、惣流はウチに来ること、良いわね」

「了か……リツコさん」

 

 共同生活になるのは分かってたけど、ミサトマンションかよ! 

 漫画版みたいな本部施設の個室じゃないのか。俺は思わずリツコさんに助けを求める。

 

「大丈夫なの?」

「大丈夫よ、ちょっち汚いけど!」

「えっと、ゴミ出しや片付けから共同作業に入ります?」

「そうねえ」

「ミサト、パイロットは家政婦じゃないのよ」

「でも監督しないといけないし、地下で缶詰にされるよりは気楽かなって」

「僕は何処でも良いんですけど、アスカにはきついんじゃ」

「別に、ミサトのマンションじゃなくても訓練は出来ます」

「なによリツコ」

「とりあえず、人を同居させるならそれ相応の環境づくりが必要なの。おわかり?」

 

 こうしてリツコさん、俺、ミサトさんの間で議論が交わされた結果、折衷案としてコンフォート17マンションの一室において共同生活をすることになった。

 

 翌日の朝、コンフォート17の11階にあるミサトさんの()()の“122号室”に俺は居た。

 ホームセンターで掃除用品を買っていたため、先行して室内の雑巾掛けをやる。

 ミサトさんの121号室と同じ間取りなのだが、物がないぶんめちゃくちゃ広い。

 家具付ではなかったようで、急遽決まったからベッドも机もなにもかも無いな。

 

 ピンポンとインターフォンが鳴り、役務(えきむ)の民間引っ越し業者さんがアスカの荷物を搬入する。

 アスカの段ボール箱で一気に狭苦しくなり、俺は洋室に段ボール箱を詰めていく。

 ベッドも机も無いので部屋の端から端まで段ボールを置くとちょうど収まった。

 

 俺の荷物は私物ビニロン衣のうと、RVケースと呼ばれるプラスチックのケースひとつ分しかない。

 自衛官の荷物はそんなもので制服やジャージ、身の回り品を“衣のう”という大きなバッグに詰め、その他生活用品や私物類はRVケースに詰めて輸送科の連絡便(Tネット)か役務の民間運送業者を使って赴任先に送るわけだ。

 昨晩のうちにミサトさんの車でジオフロントの自室からRVケースと衣のう、折り畳みテーブルを運んでもらっていた。

 そして頼んでいたレンタル寝具“夏布団三点セット”も到着したので、和室にしまい込む。

 集合時刻よりも少し早い昼前になってアスカが現れた。

 

「アンタ、なんでここに居んのよ。アタシの部屋って聞いてたんだけど」

「あれ、昨日ミサトさんが伝えとくって言ってたのに」

「わざわざ掃除してくれたの?」

「まあね」

「じゃあ、荷物開けるから出てってよ」

 

 雑巾とバケツを持たされて玄関方向に押し出されそうになった時、葛城一尉が入って来た。

 

「あら、アスカ早かったじゃない」

「ミサト!」

「ミサトさん」

 

 ミサトさんはこのタイミングで共同生活を伝える気だったらしく、昨夜までただの引っ越しとしか聞いていないアスカは荒れた。

 

「ちょっと! 分離中のコア同時攻撃はわかるけど、男女七歳にして同衾せずってね!」

「使徒の活動再開は六日後、時間がないの」

「ちょっとシンジ、アンタ知ってたの、それとも狙ってたの!」

「何をだよ」

「アタシと共同生活してあんなことやこんなことよ!」

「どんなことだよ」

「それ言わせる気、変態!」

「アスカ、妄想劇場は後にして」

 

 アスカが「このまま夜這いされて犯されちゃうんだわ」などと妄言を吐いた辺りでミサトさんによるストップが掛かる。

 わりとガチ目のトーンだ。

 まあ同僚を性犯罪者扱いすりゃそれはな、いや、昨日の晩からずっと訓練計画と抗議の対応に追われて疲れ切ってるからか。

 

「二人のユニゾンを完璧にマスターするためにこの曲に合わせた攻撃パターンを覚え込むのよ」

 

 その後、ミサトさんより生活の規則とユニゾン訓練日程が告げられる。

 深夜の外出は禁止、飲酒や喫煙といった国内法を犯すようなのもだめ、そして一日二回の練度判定(テスト)がある。

 とまあ、そんなこんなで始めたわけだが、結構難しい。

 まるで基本教練、あるいは入隊式や各種式典の予行演習を思い出す。

 自衛隊は予行演習が好きで、式典の一週間前くらいから直前までずっと予行演習をやるのだ。

 そこで大変なのが、数十人から数百人の動作をぴったりと合わせる作業である。

 

 40人の執銃動作を合わせ、立て(つつ)の接地音が“チン”と一つになるまでやり直しに次ぐやり直し。

 “かしら、(なか)”の号令に合わせて一斉に鼻先を受礼点に向け、頭を微動だにさせないというのもあった。

 誰かの頭が動くと部隊運用幹部から「その列の九人目、頭動かすな! 見えてるぞ」と怒られたりな。

 

 そういう自衛官経験した俺ですら嫌になりそうなんだから、中学生のアスカはもっとつらいだろう。

 本日何度目かの挑戦、光るポイントに合わせて手を着くのだが、手を着き損ねて転ぶ。

 隣のダンスパットのアスカがキレた。

 

「ああ、アンタってどうしてそんなにトロイのよ!」

「ダンスは苦手で、どうも手がもつれちゃうんだよね」

「さっきから全然進まないじゃない!」

「俺もアスカも疲れてきてるんだよ。ちょっと休もう」

「そうね!」

 

 初日はアスカが動きについて来れない俺を叱りまくって、時に蹴りつつも終わった。

 晩飯は原作シンジ君なら料理をするのだろうが、俺が出来る料理なんてカレーか焼肉、パック飯だ。

 出前を頼み、ふたりでピザのLサイズ四枚を食べる。

 若い体で、一日中動きっぱなしなんだからこれぐらい食べても大丈夫だろう。

 

「ところでシンジ」

「なに?」

「アタシたち、どこで寝るの? ベッドも無いんだけど」

 

 アスカは段ボールの積まれた洋室を指さした。

 どうやら、布団とかはすでに用意されているものだと思っていたらしい。

 ミサトさんとの同居を回避したがゆえに、そういった物が一切なかったのだ。

 ネルフ借り上げという事もあってガスと水道、電気が申請後すぐに使えただけでも御の字か。

 

「敷布団レンタルしてるから、アスカはそっちの和室使うといいよ」

「あんたが手配したの?」

「うん、ミサトさんちで暮らすのが嫌だったからね」

「なんでよ」

「まず、ゴミの分別と部屋の片づけから始まるからね、あそこ」

「そんなにひどいの?」

「酒の空きビンとかゴミがまあまあ積んであって、冷蔵庫にはつまみとビールしかない」

「じゃあミサト、何食べてんの」

「コンビニの弁当だよ」

 

 葛城ミサト作戦部長の家が思ったよりヤバいところだと思ったのか、アスカはひきつった顔を見せた。

 そして、ピザの空箱を見て、どうやら自分たちも食事の調達能力が大差ないことに気づいたようだ。

 

「アスカは、料理とかしないの?」

「あんたバカぁ、アタシが料理なんてするわけないじゃない!」

「ま、そうだよな」

「もしかして、女の子ならだれでも料理できると思ってたのぉ、シンジくんは」

「そんなことはないよ、やったことない人だっているんだ」

「アンタこそ料理は出来るの?」

「まあ、料理本見ながらならできるかもな、レシピ通りにやればいい」

「じゃあアンタが料理当番ね!」

「マジか、鍋ひとつないぞ」

「冗談、あたしたちは……それどころじゃないのよ」

 

 すべては第七使徒を倒すためで、料理初心者が時間を掛けて練習してる暇なんてない。

 残り時間はあと五日、それまでにユニゾンを成功させないとな。

 

 __同居生活二日目

 

 朝5時に目が覚めた俺は布団を畳んで部屋の隅に置くと、和室で寝ているアスカを起こさないように着替えて外に出る。

 ジョギングついでに近くのコンビニで食料品と飲料品を買い込み、部屋に戻った。

 アスカはホットパンツにキャミソールという何ともラフな格好で歯を磨いていた。

 

「おはよう」

「アンタ、どこ行ってたの」

「コンビニだけど、朝飯買いに」

「起きたんならアタシにも声掛けなさいよ!」

「まだ5時過ぎだったし、悪いかなって」

「で、何買って来たの」

「カップ麺とパン、あと、飲み物だね」

 

 アスカはコンビニのレジ袋をかっさらうと中身を確かめる。

 

「アタシ、これにするわ」

 

 アスカは豚骨ラーメンとミルクティを取り出すと俺の折り畳みテーブルの上に広げた。

 RVボックスの中に入れてあった、一人用電気ケトルの電源を入れる。

 コンパクトなボディ、0.8リットルの水を3分半で沸騰させる優れもので、マイアイロンと並んで営内陸士の友である。

 こっちの世界にもあってよかったよ、ティファール的なやつが。

 俺も赤いきつねうどんを取り出して机代わりのRVボックスの上に置き、お湯が沸くのを待った。

 カップ麺をすすりながら今日の予定について話す。

 とはいっても訓練しかないので何が届くとか、何が欲しいとかそういった話ばかりだ。

 

「あと、リツコさんが使わなくなった冷蔵庫、今日送ってきてくれるって」

「アタシはちゃんとしたテーブルが欲しいわ、折り畳みテーブルで食事ってなんか貧乏くさい」

「そうだね、あくまでキャンプ用だから」

「なんでアンタこんなもの持ってんのよ」

「ケンスケからの貰い物で、段ボールとアイロンシート敷いて()()()()()()()()にしてたんだよ」

「変わったことするのね」

 

 迷彩作業服から制服まで常にアイロンがけ、つまり、プレスが必要な自衛官あるあるだ。

 生活隊舎備え付けのアイロン台は居住人数が増えるにしたがって、望んだ時間に使えない率が上がる。

 そのため急造アイロン台で制服にプレスを当てるのだ。

 遮熱性のあるアイロンシートと机側の凹凸を均す段ボールの組み合わせの場合、注意しないと燃えたりスチームでヨレヨレになるので、あくまで短時間の使用に限る。

 シンジ君の制服もプレスを当てており、ズボンは剃刀のように薄く鋭く、開襟シャツも肩の線をしっかり出している。

 

「そりゃ、制服の乱れは心の乱れってね」

「なにそれ、古くっさい」

「“品位を保つ義務”ってやつだよ、だから着崩したりなんかしてると……」

 

 制服のプレスについて話していたところに、ミサトさんが入って来た。

 いつものジャケットを着崩した作戦部長スタイルでの登場だ。

 アスカは昨日の晩話したミサトさんの実態と、今の姿から何かを納得したようだ。

 そんな事もつゆ知らず、ミサトさんはどういじろうかとニヤニヤしている。

 

「おはよう、二人とも。よく眠れた? 特にシンジ君」

「何を期待してるんですか」

「ちぇーつまんないの、アスカはどうなの?」

「何もなかったわよ、ところで何しに来たのよミサト」

「これから、ゴハンうちで食べていかない? ここ、モノ無いでしょ」

 

 メシ時だけテーブルのある121号室に行き、それ以外はこっちでユニゾン訓練か。

 朝ご飯はすでにカップ麺を食べたから不要だと断り、黒いネルフジャージに着替えると午前の訓練をする。

 相変わらず失敗だけれども、初日よりはアスカに追いつけるようになってきた。

 

 そして、昼メシ時に121号室に入ったら、アスカが悲鳴を上げた。

 

「なによこれぇ!」

「ちょっち散らかってるけど気にしないで」

「テーブルの上の空き缶が全部床に移動している……このスペースで食えと」

「ミサトッ、こんなのでアタシを呼ぼうとしたわけぇ!」

 

 歓迎会の時とあまり変わってない、むしろ悪化したか? 

 無意識のうちにゴミ袋片手に片付けていた。

 燃やすごみ、缶・ビン・ペットボトルに分けて透明の袋に放り込む。

 リビングのゴミも片付けたところでアスカからストップが掛かった。

 

「ちょっとシンジなに片付けてんのよ、そんなのミサトにやらせなさいよ!」

「アスカ、これで分かっただろ、どうして物のない部屋にしたか」

「ここまでやってもらっちゃって悪いわね、二人ともうちに引っ越さない?」

「お断りよ。シンジも断りなさいよ!」

 

 アスカは朝の時点ではテレビや机、ベッドがある部屋に憧れていたらしい。

 しかしさすがにこの部屋を見て同居しようとは思わなかったらしく、物がなくとも122号室の方がマシだと感じたようだ。

 

 アスカ衝撃の昼休憩も終わり、122号室に戻ると宅配便ではなく一組の男女が居た。

 

「あら、ミサトの部屋に居たの」

「よう、シンジ君、アスカ」

 

 青いブラウスとタイトスカート姿のリツコさんと、冷蔵庫を台車に乗せている加持さんだ。

 グレーの冷蔵庫は加持さんのアゴぐらいまであって結構大きそうだ。

 

「加持さん!」

「リツコさん、わざわざ持ってきてくれたんですか?」

「そうよ、暇そうにしていた加持君もね」

 

 すると後ろからミサトさんが出てきて、のけぞった。

 

「げっ、加持、なんでアンタここに居んのよ! リツコも」

「廊下を歩いていたらリッちゃんに呼び止められてお届け物さ」

「加持君、研究室まで入ってくる人は廊下を歩いていたとは言わないのよ」

 

 女性陣が先に122号室に入り、俺と加持さんは二人で台車から室内に搬入して、冷蔵庫の据え付け作業をした。

 容量もまあまああり、冷蔵室には2リットルボトルや牛乳パックがらくらく数本入る。

 

「ホテルにあるようなもっと小さいものかと思いました」

「今は使わなくなった研究室に置いていたものだから、大きいの」

「私んちの冷蔵庫より大きいじゃない、交換しない?」

「ミサトん家に置いてもビールかつまみしか入らないじゃない!」

 

 そして、リツコさんと加持さん、ミサトさんの前でユニゾン訓練をすることになった。

 エラー、エラー、またしてもエラー。

 

「加持さぁん、シンジがどうしても遅いんです。私は一生懸命にやってるのに」

「これじゃ、ダメね。ここでの誤差はエヴァに乗ればもっと大きくなるもの」

「はい、すみません」

 

 リツコさんはどうやら問題点の一つに気づいたらしい。

 

「シンジ君、アスカ、今のあなた達は他の事に気を取られ過ぎているわ」

「他の事って、アスカに合わせようという事ですか?」

「アタシだってシンジに合わせようとしてるわよ」

「人間の脳が認知してから運動に移るまでにはラグがあるの、エヴァに乗っているあなた達ならわかるでしょう」

 

 つまり、「アスカの動きを見る→認知・判断→発光位置を見る→認知・判断→手足を伸ばす」という動作の流れであるから、お互いに他人の事を気にしながらやったところで合わないという事だ。

 仮に俺がアスカを見て0.5秒で動作をしたなら、その動きを見たアスカが0.5秒さらにズレた動作で対応する。

 最初は誤差範囲内だが積み重なったり、肉体の疲労などで動作が遅れると一挙に破綻するのである。

 求められるのは思考ラグによって速度が変化する他人の動作ではなく、音楽という共通の判断材料から即座に判断して動作に反映することだ。

 つまり先読みでコマンドを入力する格闘ゲーム名人の「小足(こあし)見てから昇竜余裕でした」に近い()()()を身に付けろという事だろう。

 アスカと俺は顔を見合わせる、てっきりミサトさんみたいに「お互いのことを察して協調性をもって合わせていけ」と言われるものだと思っていたからだ。

 

「確かに、基準点が動いてたらいつまでたっても合いませんよね」

「シンジ君、アスカ、他人の事を考えずに()()()()に集中しなさい」

 

 リツコさんの言う通り、音楽に合わせて手足を伸ばす。

 曲が跳ねるようなところでは足側の2か所が発光する! 

 伸びあがるようなイメージの所では右、右脚、左とテンポよく発光! 

 パターンを読み、このマットが曲の何処で光り出すかを掴むんだ。

 二回目にして、ついにクリアしてしまった。

 

「初めての、クリアだ」

「えっ、クリアしたの私たち」

「アスカ、シンジ君、第一段階はクリアよ。あとはその感覚を忘れないようにしなさいよ!」

「ミサト、ここからが本番よ」

「そうだぞ、音楽に合うようになったらイレギュラーを入れるんだ。そこで全く同じ対処ができたら成功だ」

 

 そして始まった第二段階。

 アスカと俺は音楽に合わせて手足を動かせるようにはなったけれど、予想外の事態には全く対応できていない。

 突然腹近くが発光した時に俺が左足で対応し、アスカが左手で対応するといった判断の差が浮き彫りになって来たのだ。

 リツコさんと加持さん、そしてミサトさんが帰った後もひたすらユニゾン訓練をする俺達。

 

「シンジ、タッチが遅い!」

「アスカだって序盤に比べてだいぶタッチミスってるよ」

「いい加減パットの位置覚えなさいよ!」

「アスカはもうちょっと正確さを身に付けてくれよ」

「アンタ、自分のトロ臭さをアタシのミスのせいにするわけ!」

「いいや……腹減ったな」

「そうね、今晩も出前?」

 

 お互いのミスについて批判し合う俺たち二人だったが疲れすぎて不毛な言い合いを長々と続ける気力も起こらず、話題は晩御飯どうするかへとシフトしていった。

 

「これチラシだけど、なに系がいい? こってりとかあっさりとか」

「あっさりしたやつ」

「じゃあ出前寿司とかどう?」

「スシって日本のあのスシよね」

「そう、握りにちらし、巻きに押し寿司、どれがいい?」

 

 アスカは俺が渡した寿司屋のお品書きを興味深そうに見て、指した。

 

「特上握り桶・松……二人前8700円、なかなかするな」

 

 寿司桶の中に色とりどりの握りが詰まっている。

 マグロ赤身、トロ、サーモン、イカ、タコ、生エビ、玉子と、これぞ日本の寿司という王道がそこにはあった。

 正直な話、出前寿司、ましてや特上なんて憑依前にも頼んだことが無い。

 こんなの、一人じゃ絶対に頼むことが無いだろうし、いい機会だから頼んでみるか。

 

「よっしゃ、アスカの来日祝いって事で俺が出すよ」

「えっ、ホントぉ!」

「嘘なんてつかないよ、俺もいっぺん食べてみたかったんだ」

 

 俺は早速携帯電話で寿司屋に電話する。

 寿司屋の大将は中学生ぐらいの子供が特上寿司を頼むことに悪戯を疑っていたようだが、特務機関ネルフの借り上げているコンフォート17マンションと告げた瞬間、急に愛想がよくなった。

 それから数十分後、インターフォンが鳴ってドアを開けると若い板前さんが立っていた。

 

「元祖箱根寿司です、寿司お持ちしました!」

「ありがとうございます! アスカ、寿司が来たよ!」

 

 板前さんとお金をやり取りした後、つい最近の世間話をした。

 セカンドインパクトの影響も薄れ、値段が下がっていた魚が最近どうも高騰しているらしい。

 反対に何故か大量に獲れるようになって価格が暴落した魚もある。

 こうしたネタの仕入れ価格乱高下は飲食業界に大きな打撃を与えているそうだ。

 寿司屋の大将が苦労しているのも“使徒が来たから”なんだが、情報の秘匿された世間では“異常気象”とだけしか言われていないそうで、戦いの影響を感じる。

 作戦部に届く農水省や広報部からの苦情というのはこういう事なんだな。

 

 板前さんが帰り、部屋に入るとリビングの折り畳みテーブルの前でアスカが待っていた。

 

「シンジ、遅い」

「ごめん、じゃあ食べようか」

 

 アスカは「どれにしようかな」と悩みマグロ系から攻めることにしたようだ。

 

「どうして日本人はナマの魚を食べんのって思ってたけど、なかなかイケるじゃない!」

 

 俺も寿司を食べる。

 さすが本物の寿司屋の寿司、うまい。

 

 ふたりで特上寿司を食べたあと俺は寿司桶を洗い、布団を和室から引っ張り出した。

 ユニゾン訓練を再開する気にもならない、腹も膨れて幸せな気分のまま布団に入りたい。

 それはアスカも同じだったようで、なんかもう、お休みムードが漂ってきていた。

 袋に詰めた着替えを持ってアスカはアコーディオンカーテンの向こうに消えて……行かなかった。

 

「シンジ、覗かないでよね」

「はいはい覗かないから、はやく入ってよ」

「絶対だからね!」

 

 風呂に行ったアスカを見送ると俺はSDATの音楽を聴きながら、うとうとする。

 今日も疲れたなあ。

 いつの間にか布団の中で眠っていたようで、気づけば翌日の午前5時になっていた。

 

 残り四日、あと二日で第二段階をクリアしてエヴァでの実働に落とし込めないとマズイ。

 焦りはあるけれど昨日ほどじゃなくて、なんとなくいける気がする。

 布団とタオルケットを畳んでいると、昨日と違ってアスカも起きてきた。

 

「おはよう、朝飯買いに行こうよ」

「そうね、ならコンビニまで案内しなさいよ」

 

 今日の彼女は昨日の朝に比べて元気そうだ。

 心なしか輝いて見える。

 

「今日、なんか元気そうだね」

「昨日はよく寝れたのよね、スシのおかげかしら」

「あれは美味しかったなあ、また食べよう!」

「使徒に勝ったらね!」

 

 

 おそらく、運動して飯食って早く寝る。

 これがよかったんじゃないだろうか。

 最近、俺もアスカもずっとストレスばっかりだったしな。

 リフレッシュした俺たちは今日もユニゾン訓練に励み、昼過ぎに第二段階をクリアした。

 使徒活動再開まで残り三日。

 

__同居生活四日目。

 

 射出ジャンプからの姿勢制御機能、着地、射撃、バク転、射撃、近接格闘、ツープラトンキック。

 アニメで62秒にまとめられていたそれを実際にやることになった。

 

 最後のツープラトンキックは作戦立案者の趣味なのだろうか。

 直訳すると“二個小隊蹴り”、元はプロレス技らしいが自衛隊における“二人以上は部隊”を思い出してしまう。

 例を挙げると、隊舎から移動する際には二人でも「()()前へ、進め」の号令をかける。

 もっと人がいると、“分隊”が“縦隊”に変わるわけだが……話が逸れた。

 とかく、二人一組のバディで攻撃しないといけないわけだ。

 

 葛城一尉の監督の下、模擬体シミュレータにて飛んだり跳ねたり射撃をする。

 緻密なプランでは敵が予想外の攻撃をしてきた際に瓦解するので予備プランもあるわけだが予備プラン移行訓練がまたややこしい。

 敵の動きを見て、どの時点でどう切り替えるのかを合わせないといけない。

 使徒が突進してきてアスカが右に飛んだら俺は左へ飛ばないとダメで、逆だと三者の衝突事故だ。

 優秀なアスカも、俺もメインであるユニゾン攻撃の“幹”の部分はなんとかできるようになった。

 しかし、分岐する“枝葉”の方になると切り替えが上手くいかない。

 アニメではユニゾン訓練から一本道のように描写されていたが、実戦になるとこんなところに落とし穴があったんだなあ。

 

「プランB移行のタイミングって難しいな」

「アンタ馬鹿ぁ、そんなの使徒が撃ってきたら一瞬でダメになるっちゅーの」

「近接格闘コンボができないときは無条件で射撃戦のD?」

「そうね、あいつらが撃ってきたらアタシはDね」

 

 アスカと本部休憩所で語り合う。

 プランAが基本、Bが格闘戦、Cが挟撃、Dが射撃戦だ。

 Cはクロスボンバー、つまりサンドイッチ式ラリアットでシメるヤツで、前後からコアを挟み圧壊させる。

 Cに移行するのは回避動作中に分断されたときらしい。

 俺とアスカで使徒を挟み込み、加速の付いた初号機の腕と弐号機の腕で破壊力も数倍! という頭の悪そうな技だがリツコさん曰く「破壊力は十分よ」とのこと。

 Dは陽電子砲の集中射を浴びせてコアが再生しなくなるまで撃ち続けるのだ。

 しかし、街中だと陽電子通過時にめちゃくちゃガンマ線を生じるのでシェルターに入っていない人がいた場合、多量の放射線被曝で死亡かもしれない。

 まあ、物理学者でもない俺が真剣に考えても仕方ない、アニメ世界物理学だしな! 

 使徒の存在する世界の科学はリツコさんか『空想科学読本』にお任せしよう。

 シミュレータでは主に3つのパターンが考えられており、どれかの状況が発生する。

 

 1.使徒がお行儀よく歩いてきて、エヴァに夢中になるパターン(アニメ的状況)

 2.分裂した使徒がそのまま各個前進、ゼロエリアに二方向より接近。

 3.融合使徒、進化し新能力獲得に伴う特殊攻撃(怪光線、自爆等)

 

 1の状況ではプランAであり、2や3の場合BかDになる。

 しかし、複合パターンがややこしい。

 原作知識で俺は1と3の状況が複合してやって来ることを知っている。

 復活した使徒は進化したのか、はたまた本気を出してきたのか怪光線を撃って来た。

 アニメでは“A”を続行して使徒殲滅にこぎつけたが、こっちの場合どういう判断をするべきなのか……。

 ウチのアスカさんは撃つ気満々だから“D”かなあ。

 

 あっという間に作戦前日になってしまった。

 最後のユニゾン訓練はアニメと同じ“状況1”と“状況3”の複合パターンだった。

 

「シンジ! A3」

「A3」

 

 使徒の怪光線攻撃をバク転(A3)で回避して防護パネル起動、射撃! 

 両翼から挟み込もうと左右へ散開した使徒に相対し、格闘に入る。

 

「B1!」

 

 号令を聞いたら“無条件で二拍おいて”パンチを繰り出す。

 俺の号令にアスカもパンチを繰り出して使徒甲を殴る。

 使徒乙が殴りかかって来たので回避したところで、アスカの「B3」が聞こえた。

 ヒザ蹴りを放って使徒乙をぶっ飛ばす。

 二拍の時間は連日のユニゾンパット訓練で規整済みなのでズレることはない。

 

「B4!」

 

 トドメのコアアタック指示だ。3秒後にコアへ何らかの攻撃を絶対命中させるのだ。

 俺は正拳突きを放っていた。

 

「模擬使徒、殲滅!」

「ユニゾン誤差、0.05ね、上出来だわ二人とも!」

 

 アスカは蹴りで使徒甲のコアをぶち抜いたらしい。

 ミサトさんより合格点が出て、あとは実戦を待つだけとなった。

 

 20時過ぎにコンフォート17マンションに帰った俺たちは、ユニゾン訓練パットを片付ける。

 明後日にはダンボールに詰め、ネルフの厚生センターに返却だ。

 俺が手配したレンタル寝具を使うのも今夜が最後となる。

 いつも通りアスカは和室で、俺はリビングで寝る。

 風呂を済ませて歯も磨き、布団を敷き終った。

 あとは襖を閉めるだけだ。

 

「いよいよ、明日だね」

「そうね、これでアンタとの生活もおしまいね」

「五日間、お疲れ様」

「何言ってんの、勝負はこれからじゃない!」

「俺はアスカを信頼してるんだよ」

「バ、バカじゃないの! なんでッ」

「この数日間失敗も多かったけど、二人でやって来たんだ。そうだろ」

「そうだけど……」

 

 思ったことを伝えたら顔を赤らめて照れるアスカ、最後の自信を持ってもらうためにこれだけは言おう。

 

「俺はね、アスカは凄いと思うよ」

「アンタ、煽てときゃ良いって思ってない?」

「いいや、俺一人じゃこんなやり直しばっかりのクソ訓練やめてるよ。アスカが努力してるから俺もついて行こうと思ったんだよ」

「アタシが、努力?」

「そう、俺が下手過ぎても逃げ出さず、見捨てず。……おまけに同居することになった部屋にはモノが無いときた」

「私には、エヴァに乗るしかないの。だから」

「それでもいいよ、でも俺はアスカから同じ目的を“一緒にやろうという姿勢”を感じたんだ」

「もういいわッ、シンジも夜更かししないで早く寝なさい!」

 

 ぴしゃりと閉まる襖。

 アスカは褒められ慣れていると思ったけど、そうでもなかったのか。

 最初はバラバラだったユニゾンも、ずっとやるうちに徐々に合って行き、最後は誤差の範囲に収まるようになった。

 これは俺一人の力では無理だ、アスカが協力してくれたからこそ上手くいったわけだ。

 

 アスカ、五日間ありがとうな。

 

 




衣のう=衣嚢、ビニロン性の大きなボストンバッグ。OD色
パノラミックカメラ=数枚から数十枚連続して撮影できるカメラ。つなぎ合わせると連続した航空写真ができる。
品位を保つ義務=自衛官の六大義務の1つ。自衛官が靴を磨き、被服にプレスを当てたり、傘をささない理由。

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