ハーメルン自体久しぶりに開きました。
マジで驚いた(((゜Д゜;)))。え、何ヶ月このサイト来てなかったんやろ。
「あーもーっ!メンドくさっ!」
既に何度目か──もはや数えるのもメンドクサくになりつつある"転移"を終え、廃屋の屋根で地団駄を踏む。あの一件から三日経つが、どうにも私は真選組に目をつけられてしまったらしいのだ。というのも《せっかく転生したのだから聖地巡礼してみようの旅》に出ていた私。その行く先々で真選組と出くわし、その度に追いかけ回されるのだ。今回も、銀さんが爆弾を空にぶん投げて処理した『HOTEL IKEDAYA』を見ようと歩いていたら、お決まりのごとく真選組に見つかってしまったのである。慌てて路地裏に入り込み、転移して現在。
いや〜タイムイズマネーとはよく言ったものだ。この三日で色々な所を見れたのだ。恒道館道場や戌威星大使館、銀さんたちが散歩に行く公園に真選組屯所も。さすがに屯所はキツかった。逃げるの結構苦労した。でも、アニメや漫画で見るのとは違う、何らかの感動を得られたのだから、安いものだと思える。
が、いちいち路地裏に飛び込んで"転移"するのは、大変とてもかなりそれはもうメンドクサイのだ。目の前で転移することは不可能ではないが、見られるとさらに面倒事になるのは明白。かと言って、足だけで逃げる技術などありはしない。身体能力を底上げすれば、それはそれでメンドクサイ。
さて、どうしたものかと首を捻っていると──
─バサッ─
頭の上を鳥が通過して行った。大きな鳥だ。力強い翼に、生きる意志に満ちた眼光。自分の体よりも何十何百何千倍も大きな空を二つの羽で飛んでいる。自由に。
そのとき、ふと思いついた。
私は片腕を胸の辺りまで上げて、一羽の鳥を作り出した。白くて綺麗な一羽の鳥を。それを私の上を飛ぶように飛ばす。
いわゆる見張りだ。私の目と耳を持たせたので、それらの共有はいつでも出来る。
さて、これで安心して観光できる。でも、どこへ行こうか。唯一行っていないのは、万事屋くらいだろうか。幸い一度も万事屋一行とは会っていない。この世界の中心で主人公である彼らには、接触しない方がいいのだ。眺めているのが一番幸せな筈だ。
行くあてもなくなり、廃屋の屋根に座り込んで、足を放り出してブラブラさせる。空を見上げると私の鳥が白い翼で風をきって飛んでいるのが見える。雲がいくつか浮かんだ、青。綺麗なグラデーションがかった空。唐突に、歌が頭をよぎる。何とは言わない。
「♪青ぞーらに憧れて──」
風がふきぬける中で、思いつく銀魂の曲を歌った。ボーカロイドもアニソンも、私が好きだった曲を歌った。割と大きな声で。
「喉、乾いた・・・」
歌いすぎた。喉がとてつもなく乾いてしまった。
飲み物を飲みたい衝動にかられ、ジーパンの後ろのポケットから財布を取り出す。え、何で財布と金を持ってんのかって?そりゃアンタ、金なきゃ暮らせないでしょう。だ・か・ら、土方and沖田遭遇の翌日に、適当に物を創って質屋で売ってきたのだ。あまり高価すぎると怪しまれるから、買い取ってもらえそうな物を創って。財布を開けて中を覗けば、福沢諭吉が二名と野口英世が三名、小銭が十円三枚と一円四枚。あれ、自販機行けなくね?小銭無さすぎじゃね?
小銭の圧倒的少なさに驚き、落胆する。仕方ないコンビニ行くか、と廃屋の屋根からトンッと軽やかに飛び降りた。
そう、この時私はあまりに喉が乾いていたがために忘れていたのだ。自販機でも札が使えるということを。
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ピンポンピンポーンと客来店の知らせが鳴り響く。目だけを回して中を見渡せば、客たちの服装以外は何ら変わりない普通のコンビニである。ジャンプを立ち読みしている和服の少年らの後ろを通り過ぎ、レジとは反対側に並ぶドリンクコーナーへ向かう。冷やすために閉められているガラス戸を引くと、ヒヤリとした冷気が流れ出てきた。適当に一本お茶をとって、ついでに小腹がすいていたのでおにぎりも手に取ってレジに向かった。
「合計275円になります」
悲しきかな、一円玉は消費できなかった。また次の機会にしよう。千円札を出して、袋に詰めてもらった。こっちでは袋は有料ではないらしい。
自動ドアをくぐって、歩き始める。ガサゴソと袋をあさって、買ったばかりで水滴まみれのお茶を取り出す。歩きのみは行儀が悪いと分かっているが、誰に見られる訳でもない。皆、前を向いて気にとめずに通り過ぎていく。ペットボトルの蓋を開けて傾け、ようやっと水分を口に含む。我ながらここまでよく耐えた。
ペットボトルの蓋を閉めて、周りをそれとなく見回してみる。なんてことは無い。普通の街だ。子供が母と手を繋ぎ、会社員が電話で話しながら急いで歩いていく。私の現代とほとんど変わらない。変わっているのは、コンビニの客同じで服装くらいなもの。そんな中で洋服を着ている私は、少し目立ってしまっているのかもしれない。
まあ、私には関係ない。
行くあてもないので、目についた公園のベンチに座っておにぎりのラッピングを外した。中身は鮭だ。梅と迷ったけど、まあなんとなくこっちにした。理由はない。
空の雲を眺めながら食べていると、不意に膝に重さを感じた。
「にゃあ」
白い毛並みが綺麗な猫が私の膝に乗っていた。首に鈴がついた首輪をしているところを見るに飼い猫だろう。行儀よく座る猫の金色の目は、真っ直ぐ私のおにぎりに向いていた。
「なぁに、お腹すいてんの?」
「なぁう・・・」
「そっかぁ。じゃあ、ほらやるよ」
おにぎりの鮭を取り出して、差し出してみた。予想通り腹が空いていたらしく、白猫はすぐに食べ始めた。
「お前どこの子なの?ご主人心配してんじゃない?」
米の方も何回かに分けて差し出せば、ガツガツと食べる。私の分はなくなるが、まあ、後で買い直そう。
食べ終わると、眠くなったのかそのまんま私の膝の上で丸くなって寝始めた。私はお前の座布団でもベットでもないんだが?
にしても、どうしたものだろうか。このままここにずっと座ったままだと真選組に見つかってしまうかもしれない。かと言って猫を起こすのも気が引ける。白い毛並みを撫でながら頭をひねらせて考えていると、耳にある声が入ってきた。
「絶対こっちアル!定春の鼻に間違いはないネ!」
「神楽、お前それ今日何回目だよ。もう銀さんクタクタなんだけど?」
「まあまあ銀さん、定春の鼻がいいのは事実でしょ。それに猫の行動って読めないから、案外近くにいるかもしれませんよ」
「そうネ!猫の気分と乙女の心は変わりやすいアル」
「おまっ、猫と乙女を比べんじゃねぇよ!猫の気分の移りの方がまだ可愛げあんだろォが!」
世界で一番聞きたくなくて、宇宙で一番聞きたかった声。明るい女の子と真面目な少年と気だるげな男性の声。そこに少し大きめな犬の鳴き声も加わっているので、もはやオールスター。
そんな世界の中心核四名様のお声が、公園の入口の方から聞こえた。目だけをそちらに向けるとあら不思議、テレビを介した二次元でしか見ることができなかったマダオと戦闘民族と犬神とメガネがいるではないですか。
見れたことに関しては嬉しいことこの上ないのだが、意図的に避けていた身としては少しモヤモヤする所存。
(というか、え、ちょっと待って・・・今猫って言った?)
私としては心当たりがありまくり、というか心当たりを現在進行形で撫でております。スヤスヤとこちらの気も知らずに寝てやがります。
(お、お前・・・!脱走したのか!?)
起こして去るべきだった、と後悔するには遅すぎる。私の頭は素早く思考を切りかえた。
作戦①:逃げる
一番取りたい選択肢。だが、怪しまれてしまう上に、下手に騒ぎを起こして真選組に見つかったりすれば面倒だ。
作戦②:猫を起こして逃げさせる
猫が私の元から去れば、彼らは私に用はないはずだ。よって、接触は避けられる。が、情報収集として話しかけられる可能性はなくもない。
作戦③:モブになりきりやり過ごす
あくまでも猫がよってきただけのモブとなる。猫さえ渡せばお役御免。が、彼らと必ず接触しなければならない。何より避けたい選択肢。
作戦④:猫に自分で帰ってもらう
言わずもがな、自分でハウス。二番目に取りたい選択肢。が、これを選ぶと万事屋メンバーが報酬を貰える可能性が限りなく低い。彼らの生活状況を知っている私からすれば、良心が袋叩きにされるレベルで痛めつけられる。
おかわりいただけただろうか?
そう、詰みである。
私、内心ムンクで発狂。
神は力だけを与えて私を見放した。私に平和を寄越せやマイゴッド。
そうしている間にも一歩ずつ四名様は近づいてこられている。もはやこちらに目を向ければ気づかれる。
冷や汗をダラダラかきながら、猫の背を撫で続ける私。なんて健気。
そしてついに時が来る。
「あ、アレじゃないですか!?」
男の子の声がやけに大きく聞こえた。怪しまれたくないので、私はそのまま猫を撫で続ける。それに、まだこの猫と決まったわけじゃない。もしかしたら別の猫の可能性もあ───
「すみません。その猫なんですけど・・・」
なるほど、微塵も救いはないわけか。期待するだけ無駄ってわけね。理解理解。
ハイライトをハンマー投げのごとくぶん投げようとするのを必死にこらえ、男の子の方を向いた。頼む、まだ仕事をしてくれハイライト。お前がいなくなったらコイツらに目をつけられるっ!
「ん・・・ああ、この子ですか?」
はい完璧な演技ですね私。いかにも今貴方の存在に気づきましたよ的な感じで顔を上げた。
(・・・・・・・)
瞬間、目に映ったのは顔面国宝。
皆様、よく考えてご覧なさいな。銀魂のキャラは顔がよろしいことはご存知ですね?もちろん、銀さんも神楽ちゃんも国宝級なわけですけれども。もう一度言う、よく考えてご覧なさいな。彼らのベースになっているのは?そう銀魂において欠かすことの出来ないツッコミを担当している新八である。要するに彼は、美男美女のベースというわけだ。漫画とアニメにおいて周りがはっちゃけ過ぎて気づいてないかもしれないが、彼もまた美形であることに間違いはないのだ。まして、礼儀正しく黒髪、メガネ、弟属性などなど、一定数の女の性癖に触れそうな部分も持ち合わせている。
何が言いたいかって?
(顔がいいヤツしかいねぇ・・・)
人の良さそうな笑顔を浮かべる新八くん、可愛らしい顔をギラつかせながら猫を見る神楽ちゃん、心底面倒くさそうに鼻をほじる銀さん、行儀よくおすわりをして銀さんを噛む定春くん。
背後に広がりかけた宇宙を押さえ込み、口と鼻から吹き出しそうだった血を何とか飲み込んだ。
尚、顔を上げてからここまで掛かった時間は約0.8秒である。オタクの底力を舐めるなよ。
「座ってたら膝に乗って寝てしまって・・・飼い主の方ですか?」
「あ、いや、僕らその子を捕まえるように頼まれてるんですよ」
「新八、まどろっこしい説明はいらないアル。さっさと連れて焼肉ネ」
神楽ちゃんがもう待てないというように、話し出した。
「焼肉?」
万事屋は基本、万年金欠である。それなのに、万事屋が焼肉だと?天変地異か、明日は雪か、いや槍か爆弾の可能性もある。
思わず首を傾げてしまった。しかし、新八くんは上手く勘違いをしてくれたらしい。
「その、僕ら万事屋っていう何でも屋をやってまして。その猫を捕まえるのが今回の依頼なんです」
「なるほど、そういうことですか」
「だから、早くその猫寄越せヨ」
「そーそー。早く渡してくんない?もう銀さん疲れちったよ」
「何言ってんすか二人して!失礼でしょ!まったく・・・すみません」
ぺこりと頭を下げる新八くん。本当にできた子だ。私は心が癒されました。欲に忠実な二人のストッパーであるこの子の疲労は計り知れない。知りたくもない。絶対胃に穴があく。
「構いませんよ。全部聞かなかったことにしますから」
「本っ当にすみません」
「もちろん、依頼の話もね」
「え・・・」
だから、という訳でもないが、出会えた記念だ。
ニコリと笑って言えば、悪い方向に想像したのか新八くんの顔が引き攣って青ざめる。そんな顔しなくても、私はそこまで性格は悪くない。
「依頼です、万事屋さん。私、この後用事があるんです」
もちろん嘘である。が、今日は特別だ。
「猫に膝に乗られてしまって困ってるんですよ。首輪をつけているので飼い猫だと思うのですが・・・飼い主の所へ連れて行ってあげてくれませんか?もちろん、お代は払います」
「・・・え」
ポカンと口を開けて、私を見る三人。私はもう一度ニコリと笑い、わざとらしく口に手を当てて唸った。
「うーん・・もしかしたら飼い主さんは遠方に住んでいる方かもしれないですねぇ・・・移動費や昼食代も兼ねて、これくらいでいいですか?」
猫を撫でている反対の手の指で、額を示した。私が曲げた指は人差し指と中指以外。
「二・・・?」
ポツリと神楽ちゃんが呟いた。どうやら頭の処理が追いついてないらしい。カクンと首を傾げるのも大変可愛らしくてグッド。
「そうです。引き受けていただけますか?」
「え、でも「もちろんアル!この神楽様に任せるネ!」ちょっと神楽ちゃん!」
神楽ちゃんは元気よく返事をして、胸を叩いて引き受けてくれた。自信満々な笑顔もとても可愛いベリーグッド。だが、新八くんは抵抗があるようだ。宥めるように神楽ちゃんの名前を呼ぶ。
「イイじゃねェか新八。本人は依頼するって言ってんだから」
「でも・・・」
金にがめつい銀さんと、言葉に押される新八くん。後者は申し訳なさそうに私を見た。金は欲しいが負い目を感じているのだろう。
「受けていただけますか?」
「う・・・・」
さらに私の笑顔で押し込む。あくまでも依頼主として押し付ければ彼は断る言葉できまい、という汚い作戦である。ここまで来たらどんな手を使ってでも金をねじ込みたい。ファンの精神は限界まで行くとこうなるのかと実感した瞬間だ。
結果、折れたのは新八くんだった。
「わ、わかりました」
「「っしゃあ!!」」
承諾の返事とともに、横に並ぶ二人は拳を突き上げた。猫を運ぶだけで二重で報酬が貰えるのだから、相当嬉しいのだろう。
「それじゃあ・・・はい、お願いします」
撫でていた手を止め、猫をそっと抱き上げる。そのまま立ち上がって、新八くんの腕へ乗せる。この間、猫は動かず黙っていた。逃げ回るのも疲れたのかもしれない。
「では、お金は貴方にお渡ししますね」
後ろのポケットから財布を取り出し、銀さんの前に。本来、彼の性格を知っていれば渡すはずない。が、私は今何も知らないモブ設定である。つまり、銀さんがダメ人間だということも知らないフリをする必要があるのだ。故に、見た目は大人である銀さんが(私にとって)適任。
それプラス、新八くんだと受け取って貰えない可能性も、まだ少なからずあるにはある。なので、受け取ってくれる可能性の高い人物が理想的。
「どうぞ」
「「「・・・・は?」」」
財布から福沢諭吉を二名召喚し、マスターを銀さんに変更した。
万札が二枚乗った手を見つめて、三人は再びポカンとフリーズ。よく見たら定春も口を開けて硬直している。逃げるなら今だ。
「それでは、私はこれで」
「「「「・・・・・・」」」」
呆然としている四名の横を通り過ぎ、公園の出口へ向かった。いくつかある出入口のうち、最も路地裏に近い所へである。
無事に公園から出て、そこからは路地裏にダッシュ。お茶入りのビニール袋がガサガサ揺れて、せっかく潤った喉もカラカラに乾く。薄暗い場所へ駆け込んですぐに、私は廃墟へ飛んだ。
「やっぱり眩しいなぁ」
そんな呟きは、どこかへ吹く風に掻き消されて路地裏に吸い込まれた。