異世界転生流行ってるので便乗。

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はい、また出ました。天女です。
中の人が出したくなったら出現するよ。さながらゲームキャラの如く。



或る勇者の自省録

 

 これは、魔王を討伐して世間から勇者と呼ばれるに至った私が、今までを思い返しながら書いた物である。こういう物にまったく手を出したことが無かったので、雑多な、読み難い文章になるのは間違いない。それでもきっと読んでくれる人がいると信じ、こうして綴ることにする。

 それでは、まず初めに知っておいて欲しいのは、私はかつて他の世界に過ごしていたことである。いわゆる転生というものを経験したのち、この世界に来たのだ。

 だが、それは世間一般の想像とは違っていた。私は死んだ後(死因は覚えていない)、真っ白な世界に立っていた。息を呑むかのような美しさの女神も、長い髭を蓄え杖を携えた男神も居なかった。傍らに在るのはただ白だけだった。

 私は最初、自分が真っ白な箱かなにかに閉じ込められているのだと思った。よって壁を探したのだが、どれだけ手を伸ばしても掌には何も当たらなかった。無心で歩き続け、かなりの時間が経っても壁は無い。いや、自分が本当に歩いていたかすら判らなかった。そうして、私は出口の無い白い空間に閉じ込められていることに気づいた。

 そうして孤独に包まれたと悟った時、私はあられもなく泣き叫んだ―と思う。なにしろ、音など何も無かったから。辛うじて自らの手が目に映っていたから良かったものの、それすら無かったとしたら、私は発狂してしまっていたことだろう。

 泣けども泣けども、涙が頬を濡らすばかりであった。自分の慟哭すら聞こえぬ静寂と、絶対に誰にも会えずなおかつ出ることは不可能な空間。体の芯から襲い掛かる妙な寒さに体が震え出し、これから私の気が狂うのだ、と思った時に、気づいたら真っ黒な扉が眼前に在った。

 幻覚すら見えるようになったか、と半ば廃考ぎみに考えながらも、私は金色のドアノブに手をかけた。そして、ドアノブがどれほど冷たいのかを思い知った。

 だが、その冷たさは私を正気に引き戻すには十分だった。矢も楯もたまらず、私はドアを開き、中へと駆けた。

 

 

 そんな事があって、私は此処へと来た。最初に緑色が拡がる景色を目に入れたとき、あまりに鮮やかすぎて思わず目を覆ったのを今でもよく覚えている。

 今度こそ何かが見つかる事を祈りながら、私は歩き出した。そうして、私が今こうして執筆している町(リャヅプ)へとたどり着いた。

 まず驚いたのは、そこは元いた世界とそうは変わらない、それでいて牧歌的で平和的な村(後から発展して町になった)だった事だ。異世界転生というからには、てっきり魑魅魍魎が跋扈している地獄のような場所であると思っていたからである。まぁ知っての通り、実際にはそうであったのだが。

 何にせよ私は生き永らえる道を模索しなければいけなかった。そして村人の一人にコンタクトを取った(この文章もそうだが、大概は日本語で構成されている事は感激した)ところ、なんと作ってあった料理を私にくれたのだ。

 私はこの少女に感謝しつつ、畜生さながらにそれを貪った。そして料理が人肉であったと知った時、それは既に消化されきって身体の一部になっていた。

 魔王軍が村から食料を強奪していった時、村には大勢の子供が居たという。見ていない故に記さないが、それは実に凄惨な光景が広がったらしい。そして目の前の少女は、村長の娘であるから助かったのだと。

 私は藁の蒲団から出て、出せるだけ胃液を排出した。無駄な事だとは知っていたが、それでも私が人間であるためにやらなければいけない事だった。

 吐いて吐いて、ついに胃液が底をついたとき、私は腰を地面に下ろし、頭を抱えた。

 「人を食った」

 そんな重い事実に私は潰れそうになった。すると、少女がコップ一杯の水を持ってきた。

 私は無性に腹が立ち、彼女を責め立てた。お前が人肉など食わせなければ、と。しかし彼女は冷静にこう言い放った。

 では貴方は死んでも良かったのですか、と。

 私の中の怒りは急速に萎んでいき、後に残ったのは訳が分からない羞恥と哲学的な問いだった。なんにせよ、この時に私は魔王を倒すことを決意したのだ。

 

 

 村には武装が残っていたが、私は元来持ち合わせていた俊敏さを殺さぬために武具は着けなかった。その代わりに、体にぴったりフィットする黒い服(いたる所にベルトがあり、体に完全に固定できる)を着た。腰の左には刀身が大きく肉厚な片手剣(ハチェットと言ってもいい)を、もう一方には軽さと硬さを具えた盾を持った。

 私が村を出発する際に、少女は謝罪し、許しを請うた。私は答えた。

 「勇者の命を救ったのだから、誇っていい」

 ばかげている。何の戦闘経験も無く、一人の味方も率き連れていないくせに、何が勇者か。だが、私の言葉に少女は少女なりに救われたようだった。彼女も決して食わせたくて食わせたわけでは無かったのだから。

 

 

 そして魔王城がある場所まで歩いていくことにした。リャヅプからサミまでの道程を歩いて行くなど、今にして思えば随分無茶な行為であった。まぁ、魔王城が何処に在るのかを知らなかったのだから、これは反省する所では無いだろう。

 そして村から離れて少しすると、上半身は人間の男ながらも、布地を巻いた腰より下の半身に蜥蜴の足のある魔物と出会った。これが私と魔物の初めての邂逅であった。

「武器と肉と魂おいてけ」

 下卑たセリフとは裏腹に、声は正に青少年のそれであった。私は左腰の剣を目の前の地面に捨て、両手を上げた。

「へっへっへ...」

 にやにやと笑みを浮かべて剣を拾おうとする魔物が、手を剣に向けて伸ばしたその時に、私は顔面に蹴りを入れた。大きく仰け反ったが、それはダメージからというよりは驚きからであるらしかった。

 だが一瞬の隙を突いて私は剣を拾いなおし、間髪入れずに剣を首めがけて振り下ろした。

 敵もさるもので、仰け反った体勢から剣の一撃を避け、たてなおした。だがその目が私を捉えた時、水筒から湧き出た水(私はナマコ式の水筒を愛用していた)がその眼球を襲った。

 我ながら実にいい不意打ちで、あっけなく首を両断出来たのである。

  

 

 このように、基本私は不意打ちなどを利用して魔物を狩っていた。それ以外にも、苦痛を伴うが効果は大きい物も使用した。どれだけ辛かろうと、あの白い空間を思い出せば耐えられたからである。

 こうして日々を過ごしていると、いつしか私の名は知られ、そして魔王討伐を共にする者も増えた。俗にいうパーティである。

 けして強くはなかったが、着実に魔物を狩る事が可能なパーティとして名を馳せた。

 魔王と相まみえた時、この頼れる仲間は一人も居なかった。魔王城での乱戦場で、みなが息絶えたからである。

「一人になったな、勇者」

 私を見て、魔王はそう言った。

「お前が彼らを奮起しなければ、死ななかったものを」

 こうも言った。

「配下の魔物もそうだ。人間からしたら悪に見えたろうがな」

 その言葉に、私は少し感じるものがあった。私は戦闘を最低限に抑え、それこそ火急の依頼くらいしか受けていなかった。

 私が戦闘に自信を持っていなかったから、というのも勿論ある。しかしそれ以上に、必要以上に殺すことはない、と思っていたからである。

 しかし仲間は違った。彼らは目につく魔物は駆逐していった。私が時々抑えに入ることもあったくらいである。

 そうして考え、私の双肩には魔物達の命が重く宿っていることにようやく気付けたのである。

 

 

 だが、魔王は倒した。他ならぬ私自身の手で。

 私はあらゆる場所で歓待を受けた。しかし、心の内にある蟠りが消えることは一瞬たりとも無かった。

 この世界に転生して、私は気づいた事がある。

 勇者は、自らの正義を通すことは許されないのだと。あくまでも大多数の正義を実行するだけだと。

 そしてまた、理由無き悪が存在しない事も知った。

 魔物達は、魔王が私の手によって倒された時、激昂することも無く、ただ泣いた。魔王があれほど魔物に慕われているのを知ると、私はいたたまれない気持ちになった。

 私は彼らの正義を奪ったのだ。

 

 

 こうして長々と綴ったが、私が言いたいことは簡潔明瞭に言える事なのである。もっとも、勇者であるという前提も必要かもしれないが。

 絶対の正義は無い。絶対の悪など無い。

 私が言いたいのはこれだけだ。知ったことか、と掃き捨てられてもいい。

 だが、心に留めておいてほしい。

 

 

 ところで、これは自省録であると同時に遺稿でもある。いや、遺書と言ったほうが適切か。

 私はもう、肩にのしかかる重さに耐えきれないのだ。

 まったくもって、勇者というのは業に耐えきれる器でないと成れないものだ。

 皮肉にも、魔物を斬る度に私の剣術は上達していき、自分の首すら斬り落とせるようになってしまった。

 まぁ、そんな事はどうでもいいのだろう。

 勇者にとって重要なのは、魔王を討伐した功績のみ。

 誰も勇者の最期には興味を示さないのだから。

 それでは、勇者に成りきれなかった転生者が今から逝く。

 

 

 

p,s どうか次代の魔王が出現しませんように、そして勇者が登場しませんように。

 

 




はい、異世界転生です。
実は細かい設定があったりするんですが、まぁいいです。
それでは、またいつか。

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