仮面ライダー電王LYRICAL OTHER STORY 作:(MINA)
キリ番06 「彼が家事をできるようになったワケ」
のものです。
OTHERは色々キリ番とSSを混ぜたものですので、何が出てくるかはお楽しみということです。
これを読んで、電リリのどこの部分をネタにしているのかを探すのも楽しいと思います。
イマジンの中でトップクラスの家事能力を有しているのは誰なのかと訊ねられたら皆が答えるだろう。
デネブだと。
桜井侑斗に契約を交わしているイマジンであり、カラスに似た容姿と武蔵坊弁慶を髣髴するような身形。
そう聞くと、『おっかない』というイメージが最初にわいてくるが実際に接してみると余程の疑心暗鬼にかられない限りは考えを百八十度変えてしまう事になる。
そのくらいに身形と中味が一致しない怪人だ。
彼は現在、機動六課食堂でスタッフ達から非常に頼りにされていたりする。
*
「そういやよぉ」
現在、食堂にいるのはモモタロス、ウラタロス、キンタロス、リュウタロスのイマジン四体が三時のおやつタイムをしていた。
「クロイノっていつ飯とか作れるようになったんだ?あいつ、俺達以下だったよな?」
モモタロスがプリンをスプーンで掬いながら、クロイノ---クロノ・ハラオウンの事を思い出した。
その中でも思い出した内容は『彼が家事が出来ている』という事だ。
「片づけを始めれば破壊活動になるくらいだしね。料理や洗濯なんてやらせたら大惨事だよ」
ウラタロスも件の人物の残念ぶりを思い出す。
「それでも良太郎とシグナムが戦った日の時、あいつ普通に焼きそば作りよったで」
キンタロスは団子が刺さっていた串を銜えながら、クロノが料理をしていた時の事を思い出す。
「きっとあのクロイノはニセモノなんだよ」
リュウタロスが持参のスケッチブックにクレヨンで絵をかきながら、本人が聞いたら確実にキレる事を口にした。
「あいつに化けて何か得でもあんのかよ?」
モモタロスはリュウタロスの意見を即座に否定せずに、そこから議論を始めた。
「僕等に散々弄られてるクロイノだけどさ、時空管理局じゃエリートコースまっしぐらなんでしょ。そりゃあ、あいつに成りすまして甘い汁吸おうと考えてる奴だっているかもしれないね」
ウラタロスはクロノの偽物になる上でのメリットを口にする。
「胃袋に穴開けられる覚悟でニセモノするんか?」
「うえぇぇ、痛そ~!!」
キンタロスは反対にニセクロノのデメリットを口にし、リュウタロスは想像してお腹を押さえていた。
デネブを始めとする厨房スタッフは次なるメニューにするための料理を出し合っての品評会が催される話となっていた。
そして当然だがテーマというものがあり、今回は『麺類』という事だ。
「麺類か……」
デネブはどのような麺料理を出せば皆が喜ぶかを考える。
(そういえば……)
ふと麺でとある出来事がデネブの脳裏をよぎった。
「もう十年になるんだ……」
厨房にいても、新メニューが浮かぶとは思えないので食堂へと移動する。
食堂にいたのはイマジン達四体だけであり、ピーク時を超えているためがらんとしていた。
「よぉ、おデブ!」
「モモタロス。それにみんな、どうしたんだ?」
モモタロスの声に引っ張られるように、デネブは足を運ぶ。
「クロイノがニセモノか本物かって話してたんだよ」
「?」
デネブは首を傾げる。
「センパイ、それじゃワケわかんないよ。実はねクロイノって家事とかって全然ダメだったでしょ?なのに十年前、良太郎とシグナムさんが戦った時って焼きそば作ってたからさ。あの
クロイノってニセモノなんじゃないかって話をしてたんだよ」
モモタロスのあまりに端折りすぎた説明に呆れながら、ウラタロスは経緯を説明した。
「あのハラオウンは本物だ」
「「「「へ?」」」」
デネブの即答に四体は声を合わせてしまう。
「俺が教えたんだ」
さらなる事実をデネブはサラリと告げた。
*
十年前の時間に遡る。
*
いつものように変わり映えのないモニュメントバレーを髣髴させる『時の空間』を二両編成の『時の列車』であるゼロライナーは現在停車していた。
エンジントラブルでもなければ当然ガス欠というわけでもない。
珍しく客が来ているためだ。
「「は?」」
ゼロライナーの搭乗者である桜井侑斗とデネブは声を合わせて、間の抜けた声を出した。
「やはりそのような声を出てしまいますねぇ」
客---デンライナーのオーナーも一人と一体のリアクションは想定内だったらしく表情を変えてはいなかった。
といっても、この人の場合は余程の事がない限りはいつもこのような表情を浮かべているわけだが。
「イマジンを倒すとかではなく?」
「はい」
侑斗の問いに、オーナーは即座に返す。
「本当にそれだけ?」
「ええ。そうですよぉ」
デネブの問いにも、即座に返してきた。
「それって本当に必要な事なのか?」
「傍からだと確かに必要か否かの判別は難しいでしょうねぇ。しかし、これは必要な事なのですよ」
侑斗はオーナーが嘘をついているとは思っていないが、どうしても疑ってしまう。それ程に今回のオーナーの依頼は今までの経験からは大きく外れているのだからだ。
オーナーはそう告げると、ゼロライナーから去っていった。
「ハラオウンに家事を教える事が必要な事ね……」
停車していたゼロライナーは走り出す。
侑斗はクロノとはそんなに親しいわけではない。
立場で言えば敵対していたといいため、どこか微妙な関係なのだ。
「野上が言っていたが、あいつの家事能力は壊滅的にひどいらしい」
「?」
侑斗の言葉をデネブは理解できていなかった。
「侑斗、家事は訓練を続けていけば誰でも上手になる!」
「お前、その台詞をシャマルに言えるか?」
「……ごめん。俺には言えない。シャマルの料理だけは俺にはわからなくなる事がある」
シャマルは八神家の財政管理などをしてはいるが、家事もしていた。
洗濯や掃除は完璧なのに料理に関してはあり得ない奇跡を起こすことができたりする。
「無理もないさ、八神と同じ食材を使って同じ手順でこしらえてるのに何でギャンブルになるんだろうな……」
侑斗は一度だけシャマル料理を食べた事があるが、とにかく「不味い」としか言いようがないものだ。
「しかも、食べれない不味さじゃないというのが余計に怖い」
デネブもシャマル料理の味を思い出しながら、率直な感想を述べた。
外見がひどくて味も気を失ったり、状態異常を起こすほど悪ければ『ひどい料理』として抗議できるのだが、外見が良くて味も食べようと思えば食べる不味さなので始末が悪い。
「シャマルの場合は料理だけが壊滅的なものだが、ハラオウンは掃除も洗濯もある。ハッキリ言えばイマジン倒す方がよっぽど楽かもしれない」
侑斗はデネブキャンディーを口の中に放り込んだ。
「味を変えてみたんだ」
「いいんじゃないか」
デネブは侑斗の返答が『合格』だと判断した。
*
オーナーが指定した別世界の時間は十年前であるが、『闇の書及びネガタロスの逆襲』事件と『良太郎対シグナム』が起きた時間の中間だ。
「いらっしゃーい」
ゼロライナーを待ち受けていたのは一人の女性だった。
名はエイミィ・リミエッタ。
有能であることは間違いないが、何だかんだで謎の多い女性だったりする。
「オーナーさんが言ってたように、本当に来てくれたんだね」
「いや、まあ……」
「こんにちは」
エイミィの言葉に侑斗はどこか歯切れが悪いものになり、デネブは社交辞令として頭を下げた。
「侑斗君?」
「今まで『時の運行』関連で色々と関わってきたが、今回ほど戸惑いを感じるものはないと思えて……」
「まあ、荒事じゃないからね。とりあえずここでは何だから、落ち着ける場所に行こ」
自然とエイミィがその場を仕切る事になり、二人と一体はその場から移動することにした。
ゼロライナーは自動運転で『時の空間』へと戻っていった。
三人が移動した場所は海鳴市ではそれなりに流行っているファミレスだった。
いつもならばここは勝手知ったるという事で『翠屋』なのだが、遊びに来ているわけでもないし十年前の時間であるため何が原因で現代時間に影響しかねない事も考慮して、この場所を
選択したというわけだ。
ファミレスの中は主婦やらサラリーマンやら大学生やらが談笑をしながら、それぞれの空間を作っていた。
それは、こちらが多少声を荒げても変に怪しまれる事はないという事だ。
「口で説明するのも難しいからとりあえずコレを見て」
エイミィはテーブル中央にポータブルDVDプレーヤーを置く。
そして再生ボタンを押す。
映し出されたのは誰もいない部屋だ。
それなりに散らかってはいるが大してひどいというものではない。
美的感覚は個人差があるが、大抵の人間は『少し片付けたらすぐに綺麗になる』というくらいのものだ。
「これは?」
「クロノ君の部屋だよ」
主のいない部屋がただただ映し出されているだけだった。
三分くらい経過しても、某かの反応はなかった。
映像がぶちっと切れて、エイミィが一時停止ボタンを押す。
「今の見た?」
「ああ」
「散らかってはいるけど、少し頑張れば綺麗になる」
エイミィの確認に一人と一体はそれぞれ返した。
「それじゃ次の映像行くね」
再生ボタンを押す。
映像が再び主のない部屋なのだが。
「「………」」
侑斗とデネブは声が出ない。
というよりも出せなかった。
「物取り?」
エイミィが横に振る。
「わかった!誰かが襲撃してきたんだ!!」
デネブが自信を持って告げるが、エイミィはまたも首を横に振る。
「……これ、クロノ君が掃除した後なんだよ」
一人と一体が目が点になった。
「俺、自分がそんなに家事が出来る方ではないと思ってるがこれよりはマシだという事は確信できる」
「余計にひどくなっている……」
クロノが掃除した自室は明らかに惨状と形容してもいいほどにひどいものだった。
本棚に収納されている本は散乱しており、散乱していた本はページが破れていたりしていた。
カーテンはずり落ちており、窓ガラスに至っては亀裂が走っていた。
これで「掃除しました」といっても、誰も首を縦には振らないだろう。
「次の映像も見てくれる?」
エイミィは一時停止した映像を再生する。
「洗濯ものだな」
物干し竿にはタオルが干されていた。
「普通だ」
侑斗とデネブは今から斜め上の出来事が待ち受けているのだろうと息をのむ。
一度映像が切れてから、また映像が映し出される。
そこには物干し竿だけが映っていた。
「これからハラオウンが干すのか……」
「そうだと思う」
侑斗の推測にデネブは頷く。
しかし、いつまで経ってもその映像にはクロノがタオルを持って干してくるという姿は出てこなかった。
「いくらなんでも長すぎるぞ」
映像に変化がないので侑斗はエイミィに詰める。
「……もう干してるんだよ」
一人と一体の耳に入った一言はあまりに衝撃的だった。
よく見てみる。
物干し竿には何かナメクジみたいな白い何かがちょこんと乗っていた。
「まさかコレ?」
「うん」
「どうやってこんな風になったんだろう……」
デネブは経験を駆使しても、タオルをナメクジにする事はできない。
「侑斗」
「ん?」
「ゼロライナーで言ってたことが初めて理解できた。今回の依頼はイマジンを倒すより難しい」
「だろ」
労うようにして侑斗はデネブの肩を叩いた。
*
「というのが始まりなんだ」
デネブはモモタロスに勧められた椅子に座って、説明を続けていた。
「「「「………」」」」
四体は一言も発しなかった。
「あれ、みんなどうした?」
それでもその出来事は終わっていないのでデネブは続けた。
*
「何とかさ、私も頑張って洗濯と掃除は人並みにこなせるようにしたんだよ」
エイミィの一言は、彼女の涙と苦労が染み込んでいるのだと一人と一体は理解していた。
「でも料理だけはね……」
「いや、先の二つをあの状態から人並みにした時点で『時の運行』を守った事に匹敵するよ」
「リミエッタは胸を張れる事をしているんだ。もっと誇ってもいい」
異世界人の過大ともいえる評価にエイミィは目を丸くしてから照れる。
「あ、ありがとう……。何かそんなふうに言われるとは思わなかったな……」
「裏方に生きる人間達にしてみれば、貴女は鑑だ。ここで断るようなら二度とサポート役なんてできないさ」
「今回の一件、俺達も全力で頑張る!」
「ありがとう。侑斗君、デネブ君」
エイミィにとって、心強い味方を得た時だった。
それから一時間後。
クロノには溜まりまくっていた有給休暇を強引に取らせ、家事の練習場としてターミナルの一室を借りる事になった。
これはオーナーの計らいである。
現在いるのは侑斗、デネブ、エイミィそしてクロノだ。
全員が全員、エプロンを着用している。
「エプロン着けて料理なんて学生時期以来だな」
侑斗は感慨深く呟いた事をクロノは聞き逃さなかった。
「桜井侑斗、貴方は料理経験は?」
「八神やリミエッタ程じゃないし、野上ほどレパートリーも多くはないがレシピさえ見れば人並みにはできる」
「そ、そうか……」
クロノにしてみればもしかしたら仲間なのではないかという淡い期待があったのかもしれない。
だが侑斗の放った言葉は、彼の期待をあっさりと打ち砕くものだった。
「それじゃ、今日は卵料理の定番ともいえる目玉焼きを作ろうと思います」
この場を取り仕切っているのはエイミィだ。
その一言に拍手を送っているのは侑斗とデネブだった。
クロノは二人と一体のノリに若干引いていた。
「卵料理ひいては料理の中では一番簡単な料理だな」
侑斗は卵を一つ掴む。
「だけどそれゆえに奥も深いのも確かだ」
「そういうものなのか……」
デネブの解説にクロノは気を引き締めていた。
「まあ、今日はフライパンを用いての調理するからね」
エイミィが見本とばかりに慣れた手つきで卵を調理して、目玉焼きを作っていった。
「とまぁこんな風にね」
エイミィ作の目玉焼きは、店のショーケースの見本として出してもいいほどの出来栄えだった。
湯気がたち匂いが食欲を刺激する。
「それじゃあ、みんなもやってみよう!」
その一声で二人と一体も調理に取り掛かる。
それから少し時間が経過する。
侑斗とデネブはそれなりに料理経験があるため、失敗することなく作る事が出来た。
件のクロノはというと。
「で、できたぞ」
自信なさげに完成した料理を皆に見せた。
「……目玉焼きだね」
「目玉焼きだな」
「目玉焼きだ」
二人と一体の一言はクロノにしてみれば『合格』を意味していると解釈しようとした。
「「「目玉(黄身)だけが思いっきり焼けているけどね」」」
クロノの目玉焼きは白身は黒焦げにはなっていなかったが、どういうわけか黄身だけが真っ黒になっていた。
ハッキリ言ってしまえば人間の目を拡大したようなものが皿に乗っているのだ。
もちろん、そんな異形な目玉焼きを見ても食欲なんてそそるはずもない。
「これは根気よくやらないといけないな」
「うん!」
侑斗とデネブは精々が黄身がつぶれて白身の領域に侵略して焼きあがって白身の端々が真っ黒になっているものを想像していたが、斜め上をいっている事に気を引き締めた。
その後もクロノは目玉焼きを作り続けた。
黄身はそのままだが、白身が真っ黒になっている目玉焼き。
白身が消えており、黄身だけが焼けている目玉焼き。
逆に白身だけのものなどと、予想の斜め上の事をしているクロノなのだが本人は真剣にやっている上での結果なのだというのだから正直言って恐ろしいの一言である。
どうにかこうにかまともな目玉焼きが完成したのは開始してから十二時間後だった。
その後も『失敗』という言葉が生ぬるいと感じるくらいの事をクロノは披露し、侑斗、デネブ、エイミィを仰天させることになる。
「やった……」
目に隈が出来ているクロノが短く自らの最高傑作を二人と一体の前に出した。
同じように目に隈が出来ている侑斗とエイミィは一口ずつ食べてはその場に伏した。
二人とも寝息を立てていた。
「デネブ」
残った一体にクロノは最高傑作『焼きそば』を試食を頼む。
食べた直後、サムズアップして二人と同じようにその場に伏した。
そして寝息を立てている。
「……ありがとう」
クロノはデネブのサムズアップが『合格』と解釈して、その場に伏して寝息を立てた。
*
この一件は『時の空間』内の出来事であるためか、後世の歴史にも一切残っていない。
*
「というわけなんだ。ハラオウンが家事をできるようになったのもひとえにハラオウン夫人の力があればこそなんだ」
デネブが説明を締めくくると同時に、モモタロスが空のグラスを前に出した。
そして、コーラをどぷどぷと注ぎ込む。
「ま、飲めや」
「あ、どうも」
モモタロスなりの敬意の表し方にデネブは素直に受け入れた。
ウラタロス、キンタロス、リュウタロスが拍手を送った。
本来なら気味悪がるのだが、ズレているデネブはそんな事を気にすることなく素直に受け入れることにした。
あとがき
80000リクエストです。
とうとう80000まで突破しました。
今回のリク内容はコメディといえるでしょうね。
ちなみにネタの運び方としては結構ありきたりのような気がします。
楽しんでくれたら、感無量です。
今回もキリ番を踏んだ方の名前は伏せさせてもらいます。
なお、このあとがきはサイトで掲載していたものをちょこっといじっています。