仮面ライダー電王LYRICAL OTHER STORY   作:(MINA)

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Short01 「初デート」


として掲載されたものを投稿します。


OTHER-03  初デート

 

 

野上良太郎とフェイト・T・ハラオウンは現在、機動六課隊舎を離れていた。

本日の夕食を取るためである。

「もう手遅れだけど一応訊くけど、何でデンバードⅡなの?」

「いいじゃない。私免許取ってから誰かに乗せてもらうって機会がすごく少なくなっちゃったんだから」

移動手段を訊ねてみると、フェイトはそのような返答が返ってきた。

彼女の返答は免許持ちで車持ちなら誰もが体験することだ。

ペーパードライバーや車を持っていない免許持ちでは中々体験できないし、縁のない事だと言ってもいいだろう。

「まぁ僕は別にいいけど」

良太郎は前を向いたまま、運転手になる事に異議はないと答えた。

現在、二人はデンバードⅡで目的地まで向かっていた。

良太郎が運転、フェイトが後部のシートに乗っていた。

落下しないように彼女は良太郎の腰にしっかりと掴まっていた。

「次の角を左に」

「わかった」

フェイトの指示に従い、デンバードⅡを操作して進路を変える。

タイヤがギャッと地面に食いついている。

「外食ってどこに行くの?全然聞いてないんだけど」

「着けばわかるって。だからもう少しだけ我慢して」

良太郎は訊ねても、フェイトは答えをはぐらかすだけだった。

信号が赤になったので、停車する。

デンバードⅡのエンジン音が耳に入ってくる。

 

 

フェイトは良太郎の腰につかまりながら、眼前のものを見ていた。

良太郎の背中だ。

十年前に負ぶってもらったり、デンバードⅡで乗って帰宅した時には大きい背中だと思えた。

十年経って成長しても、彼の背中は大きく見えた。

それは幾多の死線と出会いと別れを繰り返し、様々な人物の想いを知った事を物語っている背中だった。

(この背中に、私は今まで守ってもらってたんだよね)

これからは、この背中を守れるようになりたいと常々思っていた。

いつまでも守られっぱなしというのは彼女からしては非常に納得いかないものだった。

自分は良太郎と対等でいたい。

それが十年間抱き続けた事だ。

異性として意識し、告白してもこれだけは譲れないものだった。

良太郎がどう思っているかはわからない。

だがいずれは彼とは戦わなければならないという事を彼女は覚悟していた。

(勝敗よりも過程重視の戦い、になるかな)

自分を納得させるものだ。

勝ち負けよりもどれだけ戦えるか、つまり内容がすべてだと考えている。

完敗か。

惨敗か。

惜敗か。

引き分けか。

辛勝か。

勝利か。

圧勝か。

それらの結果は全て戦った内容で決まる。

(良太郎が応じてくれるかどうか、だけど……)

自分が追いかけている青年は厭戦的な人間だ。

『喧嘩を売る』とか『売られた喧嘩は買う』というような気質はあまりない。

避けれる戦いなら迷いなく避けるし、避けれそうにない戦いには迷いなく応じるだろう。

自分との戦いはどうなるのかわからない。

避けれるのか。

避けれないのか。

「良太郎」

「ん?なに」

「もしも、だけどね。私と戦うことになったら良太郎はどうする?」

「え?」

いきなりの質問で呆れたりはしないか、と考えてしまうが一度発した言葉を撤回することはできない。

それに良太郎の素直な意見を聞きたいというのも本音だ。

「出来れば戦いたくないね。女の子と戦うのは気が引けるよ。でも……」

否定的な意見が最初に出たが、それはフェイトにとっては予想通りだった。

 

「避けて通れないなら……その時は戦うよ。もちろん本気でね」

 

良太郎が静かに答えた。

それが彼の嘘偽りのないものだという事はフェイトにはすぐにわかった。

「そうなんだ……」

フェイトは良太郎の腰に掴んでいる手の力を強くする。

「ありがとう」

そう言って、頭を良太郎の背に傾けた。

信号は青になった。

 

 

デンバードⅡのアクセルを、拭かして発進させた。

背中が急に重たくなった。

後ろを向くわけにはいかないので、フェイトが体をこちらに預けてきたのだと推測した。

「今からどうするの?」

「そのまま直進」

直進となると、しばらくはフェイトがナビゲート役をする必要がなくなる。

(どうして、あんなことを言ってきたんだろ……)

良太郎は何故フェイトがそのような事を言ってきたのかはわからない。

だが、顔は見えずとも声色はオチャラケではなく真剣なものだという事はわかるので、自分なりに真剣に答えた。

自分がフェイトと戦う。

想像がつかないといえばつかない。

初めて出会った時には、ジュエルシードを狙っての事で襲われた。

それをソード電王に変身して反撃した。

ソード電王はモモタロスが主人格であるため、肉体は自分だが自分で戦ったことにはならない。

(どんな時に戦うんだろ……)

自分とフェイトが戦うとして、避けては通れない戦いとはどういう時なんだろうと考える。

つまらない諍いで始まる事なのか。

フェイトが戦う事を所望する時なのか。

それとも自分かフェイトが何者かに操られて戦わなければ解決できない状況に追い詰められた時か。

現在考え付くのはそのくらいだ。

(覚悟だけはしておく必要があるか……)

デンバードⅡは、ひたすら直進している。

「あ、次の信号を右に進んで私がストップって言ったらそのお店だからね」

今まで静かだったフェイトがナビゲートしながら終着点までの事を前もって話した。

「わかった」

デンバードⅡを右に傾けて、角を曲がりそのまま直進すること一キロメートルでフェイトが「ストップ」と告げたのでブレーキレバーを引いて停車した。

 

 

 

 

フェイトの案内で良太郎が連れてこられたのは規模としては決して大きくないが、客で賑わっている焼き肉店だった。

屋号は『あじらく』といい、店の印象かそれとも店主の趣味なのかひらがな表示されていた。

ミッドチルダにいる以上、その地の文字で屋号は記されているものだ。

『あじらく』という屋号も本来ならばミッドチルダの文字で書かれているのが普通だ。

「驚いたでしょ?」

店内に入り、向かいの席に座っているフェイトは『してやったり』という悪戯っぽい笑みを浮かべていた。

「まさか別世界、しかもミッドチルダに来てひらがなを見れるとは思わなかったよ」

「次元世界の和食関連のお店は結構、ひらがなや漢字を屋号にしていたりするんだよ」

「へえぇ」

フェイトの解説に良太郎は感心の声を上げる。

同時にメニューを開くと、中はミッドチルダ文字だった。

「商品までは、日本語じゃないんだ……」

良太郎としては久しく慣れ親しんだ文字を見れて嬉しかったため、中がまた少々頭を捻りながら読まなければならないとなると落胆の表情を浮かべてしまう。

「それはさすがにね……。何だったら読もうか?」

「いや、実践で使った方が覚えも早くなるからいいよ」

フェイトはミッドチルダ文字を急速で覚えたとはいえ、活かしきれていないと判断したのか読み上げると言ってくれたが今後のためと考えた良太郎はやんわりと拒否した。

「じゃあ、私が指差すものを良太郎が読み上げてみて」

「語学力テスト?」

「そこまでのものじゃないけど、全部正解だったら今日の夕飯奢るよ」

フェイトの言葉に、良太郎の耳がピクリと反応した。

「本当に!?」

フェイトと目が合うが、身を乗り出した良太郎は先程の言葉に嘘がないかの方が頭を占めていた。

「う、うん。本当だよ……」

フェイトは至近距離で良太郎と目が合ったので心臓が高鳴り、頬を赤く染めていた。

「あ、ごめん」

良太郎は身を乗り出した事を謝罪してから、席に戻った。

「う、うん」

フェイトも心臓の激しい鼓動を抑えるように胸元に手を当てていた。

「じゃあどうぞ。試験官さん」

「もう!からかってばかりだと難しいの注文するからね!」

フェイトが顔を赤くして怒った表情をとるが、それが照れ隠しだという事は誰の目から見ても丸わかりだった。

 

 

「これは?」

フェイトが右人差し指でメニューの品目を指す。

「アバラ」

良太郎は苦も無く答える。

「じゃあこれは?」

違うものを指さす。

良太郎の目はメニューのジャンルを見る。

「ハラミ」

これも難なく答える。

「じゃあこれ」

「ロース」

即答した。

「これとこれとこれ」

「レバーにホルモンに、ハート」

全て考える仕草をとることなく、答えた。

「今のところは全問正解だね。一か月も経ってないのによくそこまで覚えたね」

出題者のフェイトも感嘆の声を漏らす。

「八神さんに与えられた仕事の時に、こっちの言葉で紹介しなきゃいけないでしょ?だから余計に覚えるのが早かったんだと思うんだよ」

「確かにね。私も日本語をそんな感じで追い込まれたときに覚えたなぁ」

フェイトは十年前に聖祥学園での事を思い出す。

「へえぇ。で、まだやる?」

良太郎はまだ続けるのかと訊ねる。

「ううん。もういいよ。ここでのメニューがそこまでスラスラ読めるんだったら、ほとんどの言葉は大丈夫だと思うよ」

フェイトは軽く両手を挙げて『降参』を体現した。

「そう?」

「でもね、どうしてもわからない言葉があったら何でも聞いてね?」

余計なお節介かもしれないが、フェイトは申し出た。

「わかった。頼りにするよ」

「うん!」

良太郎が気を悪くすることなく、「頼るときには頼る」と言ってくれたのでフェイトは嬉しく首を縦に振った。

「さぁて、何食べようかなぁ。みんないないから遠慮なく食べれるしね」

「?」

フェイトの一言が微妙に気になったが、笑みを浮かべながらメニューを見ている彼女を見ると。

(ま、いいか)

と思ってしまうのだった。

 

 

オーダーしたものを店員が持ってきて、二人の席は皿でいっぱいになっていた。

「まずはタンからいくよ」

良太郎が皿を左手に、箸を右手に持ってタンを網の上に乗せていく。

じゅうっーと肉の焼ける音が聞こえてくる。

「タレ、塩のどっち?」

「塩!」

「了解」

フェイトに好みを訊ねて、リクエストに応えて焼いているタンに塩をかける。

そのような仕事を良太郎は涼しい顔でしていた。

「あ、ごめん。私やろうか?」

こういう事をするのは女性の役割だと考えたフェイトは申し出る。

「気付いた人がやればいいよ」

そう言いながら、焼けていくタンをひっくり返す。

「はい。お皿」

「ありがとう」

フェイトは重なっていた一枚の皿を良太郎の分として渡した。

「フェイトちゃん、できたからお皿出して」

「あ、うん」

良太郎に促されるようにして、皿を出すとできたての塩タンを乗せた。

もう一枚焼いていたのは自分の分として皿に乗せる。

同じタイミングで二人は塩タンを口の中に入れる。

「「!!」」

二人の反応はというと。

首を縦に振っていた。

口の中に入っているので、言葉は出ないが十分に満足していた。

フェイトが今度は皿を左手に、箸を右手にしてハラミを網の上に置いていく。

「このお店のハラミはね、結構おいしいんだよ」

「何回か来た事あるの?」

フェイトが置いたハラミを良太郎は他の肉が置けるように、整理していく。

「そうだね。月に一回は、ね」

最初に入れたハラミをフェイトは裏返す。

「月一回って事は年十二回か……」

多いようで少なく、少ないようで多いと思える数字だ。

自分でも行きつけの店を月に一回行くかどうかといわれると微妙だからそのように思えるのだろう。

「みんなで?」

「どちらかというと、アルフやエリオ、キャロ達と一緒かな。といってもまだエリオとキャロを一緒には連れてきたことはないんだけどね」

アバラを入れながら、フェイトは良太郎の問いに答える。

「二人ってその、一緒の施設にいたわけじゃないの?」

いい具合に焼けたハラミを自分の皿に乗せて、タレを染み込ませながら良太郎は口の中に入れる。

「うん。ワケありで別々の場所だったんだよ」

フェイトの口調は重くなり始めていた。

それがどういう意味を示すのかはわからないほど良太郎は鈍くはない。

「おいそれと食べながら話す内容じゃないようだね」

良太郎は箸を皿の上において、真面目な表情になる。

網の上に乗っているアバラが焼けていく。

じゅーっと音が鳴る。

「うん……」

フェイトも箸を止めて、首を縦に振る。

「わかった。それだけわかれば十分だよ」

良太郎は安心させるように笑みを浮かべてから、皿の上に置いていた箸をもう一度手にした。

焼きたてのアバラをフェイトの皿に乗っける。

「え?でも……良太郎はその……知りたいんじゃ……」

あっさりと引いた良太郎の態度にフェイトは戸惑う。

「知りたい知りたくないで言えば、知りたいね。でもフェイトちゃんが言いたくないなら言わなくていいよ。僕も無理して聞く気はないしね」

「ありがとう」

フェイトは良太郎の皿に焼きたてのアバラを入れた。

「いえいえ」

良太郎は笑顔で返した。

その時、入り口のドアを開く音が聞こえた。

 

 

「スバルがいねぇってのは正直寂しいもんだぜ」

「仕方ないでしょ。スバルは今フェイトさんやあの子の憧れでもあるなのはさんの下で頑張ってるんだから」

一組の男女が来店してきた。

男性は壮年という部類の年齢まで達しており、女性は十代後半くらいであって長い薄い青色の髪がなびいている。

「あいつ、ここのロース好きだったからなぁ。欠乏症になったりしねぇか?」

「……それを否定できないのが辛いわね」

壮年---ゲンヤ・ナカジマと十代後半女性---ギンガ・ナカジマが店員に空いている席を案内されていた。

二人とも仕事帰りのため、局員の制服のままだった。

「ん?おいギンガ」

「どうしたの?お父さんって……え!?」

ゲンヤはあるものを見つけたので、ギンガにも見せようとする。

ナカジマ親子が見たものはというと。

 

二十歳前後の男性と楽しそうに焼き肉を食べているフェイトだった。

 

「T・ハラオウンも中々隅におけねぇじゃねぇかよ」

「お父さん。悪い顔してるわよ」

ギンガの言うように、ゲンヤの顔は『どうやってからかおうか』というような顔をしていた。

「こんな珍しいもんを見て見ぬ振りする方がおかしいだろうがよ」

「気を利かせるものでしょ」

どうやって弄ろうかと企む父親を窘める娘の図になっている。

「確かに興味があるといえばあるけど……」

ギンガも本音をこぼす。

妹のスバルが高町なのはに憧れているように、自分もフェイトに憧れを抱いていた。

だからその対象が異性と二人きりで食事をしているという光景は大変興味深いものだった。

「あれ?お父さん?」

ギンガが思案にふけっている最中に隣にいるはずの父親の姿がなかった。

「まさか……」

嫌な予感がするので、ある方向に視点を変えてみると。

「やっぱり……」

ある方向---男性と食事をしているフェイトのいるところへと向かっていた。

申し訳なさと好奇心を抱えながらギンガも向かった。

 

 

「奇遇だな。こんなところで会うなんてよ」

外見に似合わず、若々しい口調をしている壮年がいきなり声をかけてきたので良太郎は首を傾げた。

「?」

「ナカジマ三佐、それに……」

壮年の同伴者と思しき女性が来た。

「ギンガ」

「お久しぶりです。フェイトさん」

ギンガと呼ばれた女性は頭を下げる。

この二人がフェイトの知り合いという事は服装からして時空管理局のものだという事もわかる。

という事は時空管理局の者という事だ。

「そっちの兄さんも六課の人間かい?その割には服装が違うみてぇだけど」

「あ、彼は……」

フェイトが紹介しようとする前に、良太郎は席を立つ。

 

「野上良太郎です」

 

壮年とギンガは戸惑うことなく受け止める。

「ゲンヤ・ナカジマだ」

「ギンガ・ナカジマです」

二人は礼儀としてきちんと紹介する。

「ナカジマ、という事は……スバルちゃんのご家族ですか?」

良太郎が質問するが、誰も即答しなかった。

質問内容は決して難しくないはずだが。

「「「スバルちゃん!?」」」

フェイト、ゲンヤ、ギンガは目を丸くした。

「良太郎、その呼び方でスバルを呼ぶつもり?」

フェイトが訊ねてくる。

「ナカジマさん以外だとコレぐらいしかないでしょ」

良太郎はサラリと答えた。

「まぁ確かに良太郎らしいといえば良太郎らしいけどね」

フェイトは納得したらしく、苦笑いを浮かべる。

「アイツをそんな風に呼ぼうとしている奴を見るのは初めてだな……」

「今までいないといえばいなかったしね。スバルをそういう風に呼ぼうとする人……」

「そうなんですか?」

「ああ。ま、何にせよ会う機会があったらまた話そうぜ。野上さん」

「それでは失礼します」

これ以上の立ち話は双方、疲弊するだけと判断したのか二人はその場から離れていった。

 

 

 

 

『あじらく』を出た良太郎とフェイトはデンバードⅡには乗ってはいなかった。

良太郎がデンバードⅡを押して、フェイトは横に並んで歩いているからだ。

店を出た後そのまま帰ってもよかったのだが、二人とも結構な量を食べてしまったので運動がてらに歩くことにしたのだ。

「結構食べたね」

「うん。堪能したよ」

良太郎がデンバードⅡを押しながらも隣を歩いているフェイトの横顔を見る。

満足しきっている表情だった。

「今更だけどさ、奢りでよかったの?」

「いいって。私がそうしたかったんだし」

フェイトの回答に聞くだけ野暮だと良太郎は思った。

「じゃあ、僕が給料入ったらその時は僕が奢るよ」

その一言に、フェイトの瞳が輝いていた。

それは自分の考えが間違いではなかったら、『食事を奢ってもらう』というもので生じる輝きではないだろう。

「本当に!?」

「う、うん。約束するよ」

フェイトがいきなり詰め寄ってきたので、良太郎はのけ反ってしまう。

「じゃあ、はい」

フェイトは右小指を良太郎に向ける。

「指切り?」

「うん」

デンバードⅡを止めて、良太郎も小指を出して先に出しているフェイトの小指と絡める。

 

「「指切りげんまーん♪嘘ついたら針千本のーます♪指切った♪」」

 

互いに絡めた小指を離した。

そしてまた二人は歩き出す。

しばらく時間が経過した頃だ。

「ねぇ良太郎」

「ん、なに?」

フェイトの足が止まり、良太郎はそこから二、三歩進んだ場所で止まる。

 

「何か隠し事してない?」

 

フェイトの一言に、良太郎は心臓が飛び跳ねる気分だった。

自分の顔に出ていたのを彼女が見抜いたのかもしれない。

「……どうしてそう思うの?」

「良太郎が私を見る時なんだけど、何かこう上手く言えないんだけど『決意』とか『覚悟』みたいなものを感じる時があるんだ」

「もう子供じゃないんだね……」

フェイトがそこまで見抜いた事に素直に感心し、同時にどこかで『子供のまま』だと思っていた事を謝罪した。

 

「正直に言うよ。ここで誤魔化したらフェイトちゃんに失礼だからね。僕は君に隠し事をしている」

 

良太郎は覚悟を決めて真剣に告げた。

隠し事---プレシア・テスタロッサの生存の事だ。

彼女が起こした『P・T事件』の隠れた真実は既に告げている。

だが、自分が関わった事による偶然か奇跡によるものなのかはわからないがプレシアは存命する状態になった。

プレシア個人からは、この事は告げないでほしいと言われている。

十年前ならば高い可能性で告げた場合、フェイトは会おうとしていただろう。

そうなると、彼女の未来は完全に閉ざされてしまう事を考えての事だ。

では今はどうなのだろうと良太郎は考える。

今、告げたとしても彼女はそれを受け入れるし未来が閉ざされるとは思えない。

それに告白をしてきた彼女と本当に向き合うためにも、この事は告げなければならないと決めている。

「やっぱり……」

フェイトの表情はあらかじめ予測していた事なのか、さしてショックを受けているようには見えなかった。

 

 

フェイトは良太郎が隠し事をしている事を白状した時、ショックよりもむしろ『嬉しさ』のようなものがあった。

大抵は体裁を取り繕うために誤魔化すものだと思っていたからだ。

だが、彼は素直にその事を認めた。

だからなのかもしれない。

嬉しく思ったのは。

自分ときちんと向き合ってくれている表れだと考えられるから。

そこから告げようとしないところから察するに、今は告げる気はないのだろう。

「今は言えないの?」

「機動六課の事とか今は何かと忙しいでしょ?それが一段落したらその時は聞いてくれる?」

 

「うん!その時はきちんと聞くよ。だから良太郎の隠している事、全て教えてね」

 

フェイトは良太郎がこの手の事を誤魔化す人間ではない事は知っているので彼の申し出を快諾した。

彼女はまた、良太郎の隣に立って歩き出した。

「行こう。良太郎」

「うん」

 

夜道を二人はまた歩き出した。

夜空は雲一つ星々が輝いていた。

 

 

 

 




今回のはショートストーリーからのモノなので、
あとがきのようなものはありません。
投稿している話の展開からしたらそろそろ構わないと判断したので、
投稿しました。
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