仮面ライダー電王LYRICAL OTHER STORY   作:(MINA)

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キリ番 65000番リクエスト


キリ番03  「ゼロノス対シグナム」


からのモノになります。


OTHER-04 ゼロノス 対 シグナム

 

桜井侑斗は機動六課では『八神部隊長の秘書』という認識を受けているが、時空管理局という組織では『野上良太郎と同等の危険人物』として捉われている。

良太郎とは対照的に無愛想で、いつも仏頂面に近い表情をしているため余計に怖がられていたりもした。

それは機動六課の中でも例外ではなかった。

「侑斗さん」

部隊長室で、お茶を飲んでいる八神はやてがソファで座って機動六課スタッフの履歴に目を通している侑斗に声をかけた。

「何だ」

侑斗は、視線を履歴に向けたまま反応した。

「お茶せえへん?」

履歴はタッチパネルで映し出されており、その手が止まった。

「そうだな」

「今、淹れるからな」

と言いながらも、すでに準備を終えていたのか急須と湯飲み茶碗をお盆に乗せて、対面のソファに座った。

「はい。どうぞ」

「すまない」

ずずっと音を立てて、淹れたてのお茶を飲む。

「お菓子食べる?」

「もらおう」

はやては袋入りの煎餅をあけて、一枚を侑斗に渡す。

二人は特に示し合わせたわけでもなく、同じタイミングで煎餅をバリッと噛んだ。

口の中に入っている煎餅を完全に噛み砕いてから、茶を飲む。

そして、ふうっと一息ついた。

「なあ、侑斗さん」

「ん?」

「ちょっとした好奇心なんやけどな。侑斗さんってシグナムと戦った事あるん?」

「ないな。一度そういう空気になった事はあるが」

十年前の時間で出会って間もなかった時にそのようになりかけた事がある。

その時に良太郎の名を出したのだ。

「野上は三回シグナムと戦って勝ち越したんだったな」

「シグナムは約束として、野上さんと戦う事はやめてるんやったね」

だからといって、シグナムが良太郎との再戦を諦めきっているわけではない。

来るかどうかもわからない『いつか』に備えて彼女が一人で修行に打ち込んでいる事を、はやては知っている。

「テスタロッサとはどうなんだよ?あいつ等、似た者同士だろ?」

「最近はフェイトちゃん、誘っても乗ってこぉへんみたいな事をこぼしとったで」

「つまり、今のところはアイツの相手をしてくれる奴はいないって事なんだな?」

「うん。そやね」

シグナムの相手となると、相当の手練れでないといけない。

フォワード四人では論外となる。

わざわざ練習相手によその部署の手練れを引っ張ってくるような真似もできない。

「あ……」

「どうしたん?」

侑斗が何かを思いついたかのような声を出した。

「モモタロスはどうだよ?」

「それも考えてシグナムに言うたことがあるんやけど、却下されてん」

「何で?」

モモタロスならばシグナムが望む条件を全て満たしているはずなのに、却下とはわからない。

「モモタロさんと戦う権利はヴィータが一番優先されてるからダメやって」

「あいつ等ってどういう関係なんだ?」

侑斗は前々から気になっていた事を訊ねる。

「モモタロさんとヴィータなぁ。私は宿命もしくは終生のライバルやと思てるで」

「ま、色っぽい関係でないのは見ててわかるけどなぁ……」

『ライバル』という響きは侑斗の中では現実のものとして認識するには少し遠いものだった。

自分がゼロノスになる前からも、そのように意識した人物はいなかったからだ。

「私的には『ライバル』関係って、ええと思ってるで。しのぎを削って成長するって恰好ええやん」

「いるのか?お前にも……」

「おるよ。たった一人だけ絶対に負けたくない相手」

はやての瞳の色には明らかに『闘志』が炎となって燃えていた。

「デネブちゃんには、負けたくないで」

「あ、なるほど」

はやてがデネブをライバル視するジャンルは一つしかない事を、侑斗は思い出した。

 

 

 

 

 

 

機動六課の訓練場でシグナムは抜き身にしているレヴァンティンを正眼に構えていた。

目を閉じ、イメージする。

(これまで私が見てきた、そして戦ってきた相手を……)

はやてが主になる前の戦いの記憶。

はやてが主になってからの戦いの記憶。

時空管理局に身を置くようになってからの戦いの記憶。

全ての記憶を引っ張り出す。

その中で今現在、最も望んでいる戦いをしてくれる相手をイメージする。

訓練場の景色は夜にしてもらっている。

正眼から上段へとゆっくりと切り替える。

その動きに無駄は一切ない。

イメージが具現化していく。

最初の内は人としての原型を象ってはいなかったが、次第にまとまっていく。

相手の姿がはっきりと現れる。

現れたのはライナー電王だった。

だが、そこにいるのは殺気を放っているライナー電王だった。

シグナムが引っ張り出したのは十年前に仮面の男を一方的に叩きのめしたライナー電王の記憶だった。

あれから十年経っている。

それでも自分のイメージで現れたライナー電王から放つ殺気にレヴァンティンをカタカタと震わせていた。

手だけではない。

全身が震えていた。

(やはり、相手に野上を選ぶとそれだけで変わるな……)

今までイメージで色々な相手と戦ってきた。

殺気を放たない者なんていない。

相手が変わるだけで心の底から震えがくる。

振り上げているレヴァンティンをゆっくりと下す。

その動きに『攻撃の意思』は全くなかった。

「自分が想像した相手に降伏をするとはな……」

何故、自分があっさりと負けを認めたのかは放たれた殺気の『質』によるものだ。

ハッキリ言えば『実戦』の経験でいえば、自分達ヴォルケンリッターは他者への追随を許さないくらいにある。

だが、それはあくまで『実戦』というものを経験してきただけであって、その『質』を訊ねられると良質とは言えないのかもしれない。

レヴァンティンを鞘に納めて、その場に座る。

(血が湧き、肉が躍るというような戦いはここ数年なのかもしれんな……)

あれは何とも言えない充実感だった。

『勝ち負け』の先にある何かを得られる実感があった。

(野上やテスタロッサ程の手練れとなると、中々いないしな)

機動六課転属前には、何度か腕自慢とこちらへの関心を惹くために愚か者が挑んできたこともあった。

殺生に至る事はないし、断る理由もないので全てに応じた。

(満たされることはなかったな……)

自虐的な笑みを浮かべてしまう。

(ヴィータの揶揄を否定できんな)

耳に音が入ってきた。

顔を向ける。

そこには、はやて、侑斗、デネブがいた。

 

 

 

「シグナム。何か悩み事か?」

はやてが口を開き、姿勢を正すシグナムを見て「別にかしこまらんでええよ」と言った。

「申し訳ありません。主はやて」

「別にええって。どないしたん?」

シグナムが次に何を言おうとするのかは、はやてには瞬時に理解できた。

「何でもあらへんは、なしやで」

先手を打つことにしておいた。

シグナムは目を開いてから、一息吐く。

そして打ち明けてくれた。

「リミッターが解除されない限りは全力は出せないんだったよな?」

「ああ」

「それはもちろん日常でも?」

「無論だ」

(やっぱりかあ……)

隊長、副隊長に設けられているリミッターの設置。

この事で一番弊害を生じているのはシグナムになるだろうと予測はしていた。

(ヴィータもモモタロさんに煽られて、決着つけたるー!!って言うとったしなぁ)

今のままの状態で戦っても、結果はわかりきっている。

切れ味抜群の日本刀に、竹光で挑むようなものだ。

余程のこと、奇跡に近い出来事でも起きない限り勝ちはないだろう。

「八神。何とかならない?」

デネブが趣旨を抜きにして、頼んでくる。

「うーん。正直に言えば私個人としては、解除してあげたいんやけどなぁ~」

腕を組んで、はやては本音を漏らす。

機動六課の隊長、副隊長のリミッターの権限は自分が握っている。

「お心遣い感謝いたします。主はやて、しかしそのような事をしますと……」

シグナムが感謝の言葉を漏らすが、その事を実現させてしまうとどのような結果が起こるかも予測しているような口ぶりだった。

「間違いなく、お小言確定やね」

言っておきながら、正座で直属の上司であるカリム・グラシアと監査役であるクロノ・ハラオウンに詰問されている自分が鮮明に想像できた。

「八神」

「どうしたん?侑斗さん」

今まで沈黙をしていた侑斗はポケットから一枚のカードを取り出して、見せてきた。

 

 

「このカード、デチューンって出来ないか?」

 

 

侑斗の言葉に、デネブ、シグナムも目を丸くする。

「シグナムのリミッター解除にはお前の上司やお目付け役が納得する大義名分が必要になるんだろ?」

「そうやね。少なくとも仮面ライダーと模擬戦したいって理由じゃ通らへんやろね」

「なら、俺等側で今の状況のお前等に合わせればいいって事だろ?」

侑斗の言う事も尤もな事だった。

自分達側が八方ふさがりならば、相手側が合せればいい。

「野上達では無理だが、このカードを持っている俺ならそれができるはずだ」

侑斗はそう言って、ダミーカードを渡してくる。

「ええのん?デチューンって事は明らかにダウンするで?」

侑斗のダミーカードのデチューンをすると、それで変身したゼロノスのスペックは従来のものより確実に下がる。

「この際、いい機会だと思ってる。俺は野上達ほど魔導師との戦闘経験は豊富じゃないからな」

それはシグナムと戦う事を意味しているものと同じだった

「桜井……」

「これなら、対等だろ?」

侑斗が挑発的な笑みを浮かべると、シグナムもまた笑みで返す。

「言ったな」

シグナムの笑みの中に『感謝』が含まれている事を、はやては知っていた。

 

 

 

 

 

 

ダミーカードのデチューンにはさほどの時間はかからず、ある日の夜。

 

 

 

 

 

訓練場にはごく少数の面子しかいなかった。

八神家だけなのだ。

スターズやライトニング、そしてチームデンライナーのメンバーには内密でのことだ。

明るみになれば必ず『訓練の一環』という形になってしまうからだ。

これはいわばシグナムのための憂さ晴らしのようなものだ。

そのため訓練のように得るものなんてないと、はやては考えてしまう。

(なのはちゃん、フェイトちゃん。堪忍な)

心の中で友人二人に謝罪しながら、はやては八神家の家長として家族が抱えているものを発散させたかったのだ。

はやての他には、デネブ、ザフィーラ(獣)、ヴィータ、シャマル、リインがいた。

侑斗は既にデチューンしたダミーカードでゼロノス・アルタイルフォームに変身していた。

手を拳にしたり開いたりしている仕草からして、デチューンされている感覚を知ろうとしているのだろう。

「二人とも。準備はええか?」

「ああ。いつでもいいぞ」

「問題ありません」

こちらの言葉に、ゼロノスとシグナムが返す。

はやてはリインに視線を向ける。

リインは首を縦に振り、ふわふわと浮遊しながら二人の間で停まる。

 

 

「それではユウトさん対シグナムのエキシビジョンマッチ!!開始です!!」

 

 

リインが振り上げた右手を勢いよくおろすと同時に、双方は武器を構えた。

 

 

 

 

レヴァンティンを構えたシグナムが先手を打つようにして、間合いを詰めてきた。

至近距離になると、レヴァンティンを上段に構えて振り下ろす。

ゼロガッシャー・サーベルモード(以後:Zサーベル)で受け止める。

(!?)

ゼロノスはその時に、今までに味わった事のない感覚が全身に襲い掛かってきた。

「くっ!!」

受け止めているZサーベルがガクンと下がったが持ち直す。

(これがデチューンの効果かよ……)

普段なら力を入れられるのに、入れようとすると逆らうようにして抜けてしまう。

そんな感覚が身体に襲い掛かってきた。

このままの状態だと明らかに劣勢と感じ、バックステップで後方へと下がる。

その間にも妙な感覚が襲い掛かり、動きにキレがなくなっていく。

「妙な感覚だろう?」

制限付き状態の先輩であるシグナムがからかうようにして言う。

「何とも言えないな。自分の身体の一部が逆らってくる感じだな」

「日常では問題なく過ごすことができるが、有事になるともどかしくなる」

シグナムのレヴァンティンを強く握る。

「こんな風になあ!!」

間合いを詰めながら、片手上段に振り上げてから降ろす。

「ちっ!!」

ギリギリのところで見切って、ゼロノスは右へと避けながら背後へと回ろうとする。

「避けざるを得まい、か」

「お前こそ、普段ならそんな大振りしないだろうに」

ゼロノスもシグナムの動きにキレがない事を確信する。

彼女はその中でもベストな戦い方を模索していたのだろう。

それが最初の奇襲にも近い攻めだった。

ハンデがある以上は、本来の攻撃方法では決定打は望めないしこちらが疲れるだけだ。

短期決戦が望ましいと考える。

実際、高町なのはが模擬戦を行っていた場面を見たことがあるが長期戦になった場面を見たことがない。

これは力量差があっても、四体一という劣勢な状況である以上長引けば不利になる事がわかっているための手段なのだという事はすぐにわかった。

(アルタイルフォームじゃ五分以下だな……)

空が飛べないだけでも不利なのに、自身の力を使い切る事が出来ないとなると基本形態では正直に言うと苦しい。

「デネブ、来い!!」

「了解!!」

ゼロノスの声に、反射的に反応したデネブが両手を挙げる。

チェンジレバーをスライドさせてダミーカードを抜き取って、裏返す。

ゼロノスベルトをアプセットすると、チェンジレバーがスライドした。

『ベガフォーム』

デネブがゼロノスに入り込み、デネブローブが出現して電仮面が消滅してベガフォーム用へと変わる。

胸部にはデネブの顔をしているアーマーが装着されている。

「!?」

ゼロノス・ベガフォーム(以後:Vゼロノス)になった途端に、先程と同じ感覚が襲い掛かってきた。

「ゆ、侑斗、これは……?」

(これがデチューンの効果だ。正直に言うと、やり辛いぞ)

深層意識の侑斗が自身の感想を述べた。

「了解!」

Vゼロノスはデネブが主人格となっているため、戦闘スタイルもゼロノスとは異なる。

出方を伺うために、両肩に装備されているゼロノスノヴァを発射する。

煙が立ち込めるが、Vゼロノスは動かない。

「来る!!」

頭上からレヴァンティンを振り下ろすシグナムがVゼロノスの視界に入った。

(デネブ、避けれるか?)

「難しいと思う」

侑斗の言葉にVゼロノスが難色の声を上げる。

「だが、受け止めれると思う!!」

Zサーベルを振り上げて、レヴァンティンを受け止める。

その瞬間に、レヴァンティンの一部分がスライドしてカートリッジを排莢させて、蒸気を噴出させた。

レヴァンティンの刃に紅蓮の炎が纏われる。

「こっちも!!」

空いている左手で、ゼロノスベルトのバックル左上部にあるフルチャージスイッチを押す。

『フルチャージ』と、音声が発する。

チェンジレバーを右へとスライドさせてダミーカードを抜き取る。

フリーエネルギーが充填されたカードをZサーベルのガッシャースロットに挿し込む。

Zサーベルの刃にフリーエネルギーがバチバチと纏われる。

魔力とフリーエネルギーが互いに干渉し合う。

やがて、双方が同時に大きく輝きだした。

 

 

 

 

 

 

後に八神はやては語る。

 

 

「あの時の侑斗さん、デネブちゃんとシグナムとの戦いを勝ち負けで決めるとなると『引き分け』って事になるでしょうね」

 

 

それは何故かと訊ねると。

「シグナムも侑斗さん等も言ってしまえば錘をつけた状態で戦っているようなものなんですよ」

はやては、お茶を啜って一息ついてから口を開く。

「『勝つ』っていうのは、自分はもちろんの事ですけど相手からも認められてこそ言えることやと思うんですよ」

右手を顎に当てて、足を組む。

「あの時の状態やとどちらともその『勝者』として自分を納得することはできんかったでしょうね」

その理由は何故かと訊ねると。

「それは決まりきってる事ですやん」

はやては真面目な表情で、語る。

 

 

「言い訳抜きの全力全開で戦ってへんからですよ」

 

 

それはリミッターやデチューンで施されたコンディションでの全力での勝負に何の価値もないと言っているものだった。

 

 

 

 

なお、この戦いは機動六課の記録には残されていないという事を追記しておくことにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あとがき
今回はキリ番65000ということで、意外になかったゼロノスとシグナムの対決というものでした。
悩みとしてはどうやって、戦いに持ち込むかという部分でしたね。
今回の執筆の大半はその部分が占めていると書き終えて思いましたね。
結局、今の設定のままで書いていくと戦ったとしても『勝負』というものにはならなかったと思います。
リミッター制限状態のシグナムがハンデなしのゼロノスと戦って勝てるわけないですからね。
リミッターはシグナム自身が修行のためにしているものではないので、外すことができない以上は『ゼロノスを弱くさせる』しか『いい勝負』はできないと思って
ダミーカードの『デチューン』というものを考えました。
それでも勝敗を着ける事は出来なかったですね。
どちらかが勝者で敗者という姿が互いに浮かび上がりませんでした。

今回もキリ番リクエストした方の名前は伏せてあります。

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