仮面ライダー電王LYRICAL OTHER STORY   作:(MINA)

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「K’sレポート」


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OTHER-05 K’sレポート

この日、一人の青年は自室にあるパソコンで一つのファイルを開いて名前を付けるまではよかったのだがどのようにして始めればいいか悩んでいた。

「学校でもそうだけど、この手の事って俺苦手だなぁ……」

椅子に背中をもたれさせて天井を眺めていた。

 

 

野上幸太郎。

仮面ライダー電王である野上良太郎の孫であり、彼同様に特異点であって仮面ライダーNEW電王(以後:NEW電王)に変身することもできる青年であって祖父から否応

なく『不幸体質』を正当に継承していたりもする。

 

 

「そういや爺ちゃんには電王になってから会うようになったけど、婆ちゃんってほとんど会わないんだよなぁ……」

幸太郎は今日に至るまでの出来事を思い出す。

「俺が生まれるためには親父がいるのは当たり前だし、その親父がいるためには当然のことだけど爺ちゃんが誰かと結婚してないといけないわけだし……」

祖父である良太郎には過去、現在問わずに会う機会が増えたのは間違いないが祖母に会ったのはいつ以来かと訊ねられるとわからないとしか答えられない。

そのため彼の記憶の中では祖母の記憶というのは非常に曖昧だったりする。

チームデンライナー、ゼロライナーが別世界に行っている事はオーナーから聞かされている。

今回の戦いは今までと違ってかなりの長期になる事は確定であり、当分の間はこちら側の事は自分達が担当することになっている。

現在、自分と相棒であるイマジン---テディと共に十分に捌ききれている。

祖父が現在いる別世界がどのような場所で、どのような活躍をしたかはオーナー経由で聞かされている。

「デタラメにもほどがあるっての……」

そのように嘘偽りない事を呟かないと、数日前に見てきたことを現実として受け止めるのは難しい。

そのくらい、自分の想像を上回っていたのだから。

ここで彼がパソコンを起ち上げて何をしようとしているのかを説明しておこう。

現在彼が行っている事は学校の課題ではなく、オーナーからのものだ。

「別の視点から爺ちゃん達を見ろって事だから、気づかれないように観察してたけど……」

真っ白の画面を字体で埋めるためにその時の事を思い出すことにした。

 

 

 

 

 

 

「爺ちゃん達に俺達が来ているって事は気づかれないように言われてるけど、近すぎない?」

「しかし、良太郎達を観察するには離れ過ぎというのは正しい情報を得れるとは思えない」

そんな事をひそひそと話しながらも、幸太郎とテディはいそいそとモップで床を磨いていた。

彼等は現在、清掃員に扮しているが幸太郎はともかく、テディは可哀そうなくらいに似合っていない。

それでも周囲が気にも留めていないのはこの世界ならではの価値観かもしれないし、単にこの青鬼イマジンの存在感がないだけなのかもしれない。

「幸太郎」

「テディ?」

モップがけをしている幸太郎の肩をテディが軽く叩く。

「どうした?」

「あそこ」

モップがけを中断して幸太郎はテディが指差す方向に顔を向ける。

そこには目当ての祖父がいた。

この建物を歩き回っている人間が制服らしき服装なのに対して、祖父は相も変わらずの私服だった。

物凄く目立っている。

(悪目立ちしすぎだって……)

孫は心中でそう漏らさずにはいられなかった。

そんな悪目立ちしまくっている人物に声をかける人物がいた。

「いいっ!?」

「どうした?幸太郎」

「え、だってアレ……」

「え……」

その光景を見て幸太郎は思わず声を荒げてしまい、テディは手にしていたモップをカタンと床に落としてしまった。

祖父に声をかけているのは紛れもなく女性だからだ。

若い頃の祖父はどう見ても女っ毛のある人物とは思えないというのが幸太郎の推測だ。しかし、それが裏切られたのだ。声を荒げずにはいられないといえばいられない。

しかもただの女性ではない。

誰もが目で追ってしまいたくなるほどの『美人』だ。

外見年齢から察するに自分より上で祖父と同じ、もしくは一、二歳上といったところだろう。

少なくとも自分が住んでいる時間の中であのような人物は見た事がないと断言できる。

「伯母さんに似ているような……」

幸太郎の父方の姉の事を思い出す。

その女性は祖父と親しげに話していた。

「でも伯母さんより大人しい感じがする……」

女性に似ている伯母はもっと活発だった。子供の頃に散々振り回された記憶があるので間違いない。

「そういえば幸太郎」

「何だよ。テディ」

「いつ剣術を習ったんだ?幸太郎の時間の中で『剣道』はあっても『剣術』は稀だと思うが……」

テディはかねてより疑問に思っていた事を口にした。

幸太郎が住んでいる時間は、現在彼等が踏み入れている時間よりも数十年以上も先のものだ。

諸行無常、栄枯盛衰という言葉の意味の様に文化にも当然該当している。

幸太郎の時間では既に『剣術』を教える道場は存在していない事をテディは知っている。

だからこそ、その時間の住人である彼が『存在していない技術』をどのようにして習得したのか気にはなっていたのだ。

銃剣マチェーテディになって振るわれているからこそハッキリとわかる。

『剣道』ではなく『剣術』であり、しかもより実戦的なものであるという事を。

「伯母さんとその先生から教わったんだよ。まるで俺が電王になって戦う事を知ってたかのようにね」

「その二人が剣術を嗜んでいたという事か?」

「嗜んでいたってレベルじゃないって。アレは間違いなく実戦でも使って磨き上げたモンだよ。とてもじゃねーけど今その二人と戦っても勝てる気はしないな」

テディの質問に幸太郎は答えながらも、現在に至るまでの事を思い出していた。

「幸太郎のいる時間はとても平和なはずなのに妙なものだ……」

テディの言うように、自分の住んでいる時間は平和と言えば平和だ。

凶悪な犯罪が蔓延していた国として他国から嘲笑を浴び、舐められていたのはすでに過去のものになりつつある。

だからといって犯罪率がゼロというわけではないが。

「さっきの女性が良太郎から離れたぞ」

テディと談話をしながらも、幸太郎は祖父を観察することを怠ってはいない。

モップがけをしながら一人と一体は対象を追いかけた。

 

 

 

その翌日。

観察対象である祖父は別の女性と話していた。

この女性もまた美人である。ハッキリ言えば昨日の人といい勝負をしている。

特徴とすればポニーテールにしていることだろう。

「ここって美人ばかりの気がする……」

漫画の世界でもなければあり得ないだろうというくらいにその比率が偏っているようにも思えた。

会話の内容は仕事関連なので、深く関与していない自分にはわからないことだらけだ。

(でもあの人、伯母さんの先生に似ている気がするんだけど……あり得ないあり得ない)

幸太郎は『まさか』ともいえる可能性を思い浮かべたが即座に削除した。

自分が知っている『先生』はどう見ても、伯母と同い年くらいだ。

祖父より一、二歳上の女性がいつまでも同じ姿なんてまずありえない。

ありえたらオカルトとしか言いようがないだろう。

「幸太郎。良太郎が動く」

「わかってるって」

傍から見たら清掃員の一人と一体はモップがけをしながら対象を追う。

その後も対象を観察する。

明らかに年下といえる少年少女と話をしたり。

年齢差三、四歳の活発な少女と話していたり。

年齢差二、三歳のしっかりしている感じの少女と話したり。

会話内容は断片的ではあるが、雑談だったり仕事内容だったり人生相談だったりと色々だ。

(俺、絶対に対応できない……)

自分は祖父程コミュニケーション能力に長けているとはいえないという事は断言できる。

知らない間に祖父はどんどん成長しているという事を認めざるを得ない。

現在関係が軟化しているといっても、どこかで張り合ってしまうものだ。

特に『十九歳』の祖父とは、だ。

「爺ちゃん。何だかんだで幸せそうじゃん」

少なくとも持ち前の『不運体質』で変に仲間外れに遭ったり、邪険に扱われているわけではないのだから。

「どうする?もう少し観察するか?」

「もう少しだけ、な」

テディが続行するか否かを訊ねてきたので、『続行』と返した。

その後も観察は続く。

目に映っているものは『頼りない祖父』ではなかった。。

自分が知らない数か月の間に一皮も二皮も剥けたのだろう。

それでいて強者ゆえの『傲慢』や『驕りたかぶる』というようなものはなく、以前同様に穏やかさと優しさを保ったままだ。

かつてキンタロスが言っていた『強さ』の意味を改めて知った。

(どんなに強くなっても変わらないんだよな。爺ちゃんは……)

だからこそ人が集まってくるのだろう。

単に『強い』だけの人間に人が惹きつけられるという事は『絶対』とは言い切れないが、長続きすることはない。

その人物に魅了する『カリスマ性』もしくは『魅力』がないと長続きしないだろう。

自分が知る限り、単純な『力自慢』の人間に人が惹きつけられるというのは中々ない。

仮にそうなったとしても、たった一つのつまずきで一気に瓦解するだろう。

それは『力による支配』と大して差はないのかもしれない。

力ある者はそれ以上の者に蹂躙されるというのは世の常であり、自然の摂理だからだ。

『戦い』の中に身をおいている以上、その事実を綺麗ごとで包むつもりはない。

だからこそ、『力』ではなく『人』としての魅力で惹きつけている者に集まるのだろう。

それは決して逆らえない上に逃れられない一種の『魔法』なのかもしれない。

そしてそれは今の自分にはないものである事は素直に認めなければならない。

「テディ。今日は終わるか」

「わかった」

その一言で本日の観察は終了した。

 

 

 

 

それからも幸太郎とテディはひたすら祖父を観察していた。

品行方正とまでは言わないが、厄介者というレッテルを押されるまでの問題は起こしてはいない。

スタッフ達からも変に恐れられたりせずに対等に付き合っている。

「俺達の地球にいるよりずっと幸せに暮らせるかも。俺も爺ちゃんも」

幸太郎は持ち前の気の強さから、『不幸体質』をからかってくる輩は返り討ちにしている。

だが、ここでは清掃員に扮しているとはいえそれが発動しないなんてことはない。

発動すれば地球なら間違いなく、良くて『笑いもの』悪ければ『腫れ物』扱いになる。

このミッドチルダではそのどちらにもならなかった。

職務の延長としての真面目さか、天性のお人よしかはわからないが『普通』に心配してくれたのだ。

それが自分にとってどれほど嬉しく感じたことか。

「地球人って随分と当たり前のことを忘れちまってるんだな……」

「そうかもしれないな……」

未来の地球人だからとて、その手の事が簡単に変わるわけではない。むしろ悪しき伝統関連は脈々と受け継がれているものだ。

堕落する事は簡単にできるが、そこから抜ける事は物凄く難しい。

「明日で最終日か」

一人と一体の観察にも当然期限がある。

ましてや良太郎と違って幸太郎は学生の身分だ。

欠席理由を「電王になってイマジンと戦って『時の運行』を守ってました」なんて言ったら病院に直行となるだろう。

オーナーもこの手の事は当然理解している。

いくら『時の運行』を守るためとはいえ、本来の生活を壊していい理由にはならないのだから。

NEWデンライナーを用いて、『ミッドチルダに出発する前の時間』に戻らないと無断欠席になってしまう。

そのため、幸太郎はここに赴く際には極力『足跡』となるようなものを持ってきてはいない。

『観察』といっても、目て見てきた事ではいざ文章にしようとしても中々上手くいかないものなので手帳を持参して記しているだけだ。

もちろん、この手帳も役目を終えたら焼却処分する。

これから書き込むレポートはパソコンの中に入っているので、完成すれば某かの記憶媒体に全て移してしまいパソコンの中のデータは消去する。

これで『野上幸太郎が過去のミッドチルダに赴いた』という足跡が一応は消える事になっている。

他にも色々と厄介な事があるらしいのだが、オーナー曰く「時間というのは時に残酷に、時に慈悲深いモノなのですよ」で片が付くようだ。

「明日、帰るからこんなものでいいか」

彼は今日も気づいた事を手帳に記してパタンと閉じた。

 

 

 

NEWデンライナーは現在、モニュメントバレーを髣髴させる『時の空間』を走っていた。

現在乗っているのは幸太郎とテディだけだ。

「良太郎達はいい仲間に出会えたのだな」

「ああ」

テディの言葉に幸太郎は首を縦に振る。

電王というのは立場が立場だけに人から称賛や喝采を受ける事はほとんどない。

テレビドラマなどである『悪い奴はいつの間にかいなくなっていた』という状態となり、真相を探る者はいないというよりは関心さえ持たれなくなっている。

それは自分が住んでいる時間でも同じことだった。

「俺達の住んでいる世界や文化じゃ電王は絶対にヒーローにはなれないってことか……」

それを寂しいと感じる事はあっても固執することはない。

「だがあの世界でならばヒーローになれる」

テディの言う通り、世界が変われば扱いも大きく変わっていく。

存在そのものさえ都市伝説か怪談のように取り扱われているモノがヒーローだったり恐怖の象徴だったりとするわけだ。

「それがわかっただけでも十分だ」

幸太郎は自身の指定した時間に到着するまでしばし仮眠をとる事にした。

 

 

 

 

 

 

幸太郎は手帳を開いて両目を動かす。

そして、真剣な表情でパソコンのキーボードを叩く。

ディスプレイに映し出されている白一色の画面はどんどん黒く埋まっていく。

(俺達はここでは絶対にヒーローにはなれない。だけど、別の世界でヒーロー扱いされてこれまで通りなんてことは絶対にない……)

カタカタという音のみが部屋に鳴り響く。

(爺ちゃん達は敵以外にもソレと戦っている。『時の運行』を守る以外にも守るモノが出来ちまった以上はね……)

両手が止まって一息吐いてから、更に動き出す。

(だけど爺ちゃん達はソレからは絶対に逃げない)

そう絶対に。

「よし!終わった」

保存して記憶媒体にコピーしてからパソコン本体にあるデータを消去する。

「風呂入って寝よう」

課題を終えて満足した幸太郎は部屋を出ながら、今後の方針を口にした。

 

 

 

 

 

 

幸太郎がレポートを書き終えてから数日が経ち、オーナーに提出した。

現在オーナーはそのレポートをプリントアウトして目を通している。

その表情は相も変わらずの無表情とも無愛想ともいえるモノだ。

「どうやら幸太郎君もわかっているようですねぇ」

レポートの内容は観察対象である良太郎をよく見ていなければここまでの事は書けない。

「幸太郎君も自身のルーツを知るいい機会になってきたのかもしれないですねぇ」

オーナーは幸太郎自身が知らない事も当然知っている。

彼をミッドチルダ---『魔法が存在している世界』に行かせたのはその理由も含まれていた。

「二つの世界の時間は繋がっていた……。良太郎君がフェイトさんと出会う前から……ね」

オーナーはデンライナーの小さな窓から余程の事がない限り変わる事がない『時の空間』を眺めていた。

 

 

 

 

時間は時に厳しく、時に慈悲深い。されどその流れを止める事は決してない。




あとがき
キリ番100000になります。
サイトを起ち上げてからここまで達するとは思ってもいませんでした。
ひとえに皆様のおかげとしか言いようがありません。
本当にありがとうございます。
今回のキリ番小説を書くに至って、やっぱり野上幸太郎の存在はつい考える部分がありましたね。
実を言いますと、幸太郎は第二部辺りで一回くらい出そうかなと考えていたのですが結果としては出さずに完結してしまいました。
それ以降も出すか出さないか悩む中で「幸太郎って出るんですか?」という質問は結構あったのを思い出します(にじファン時代)
第三部、第四部と出さずにつつがなく進んでいるので問題ないかと思ってたくらいです。
今回書く事に至っては「電リリ設定の野上幸太郎」という風になっています。
いずれ明るみになると思いますので、今はネタばらしをしません。


なお、このあとがきは過去にサイトに掲載したものを掲載しています。
キリ番リクエストの名前は伏せてあります。
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