仮面ライダー電王LYRICAL OTHER STORY   作:(MINA)

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OTHER STORYもご無沙汰だったので、投稿いたします。

10月は好奇心をくすぐるアニメとドラマが多くて久しく悩んでいますね。

そんなわけで投稿いたします。


OTHER-06「グレアムのアドバイス」

機動六課のメンバーが海鳴市でロストロギア探索を行っている頃。

二両編成の『時の列車』---ゼロライナーが線路を敷設、撤去を繰り返しながら雲を突き抜けていた。

向かうはイギリス。

住所はゼロライナーにインプットしているので、後は到着するのを待つだけだ。

「あの男にしてみれば十年なんだな」

桜井侑斗は八神はやてから貰った資料に目を通していた。

この資料は野上良太郎が手にしているものと同じで、はやてと月村すずかが独自で調査していたゴルゴムとクライシス帝国に

関するものだ。

侑斗はいそいそとお茶を淹れているデネブを見る。

もう一度、資料に記載されている怪人を見る。

「どうした?侑斗」

こちらの視線を感じたのか、デネブが振り向く。

「いやな、お前とこの資料に載っている奴等を同じ怪人とくくっていいものかと思えてな……」

「どういう意味?」

「見てみろよ」

デネブは茶の入った湯呑を侑斗に渡してから、資料を受け取る。

「!!」

デネブは即座に顔をそむけた。

(やっぱり同じ怪人とは思えねぇな)

自分はゴルゴムやクライシス帝国の怪人と対面したわけではないが、少なくとも怪人の容姿を見て恐怖のあまりに目をそむける

という人間臭い行動は取ったりしないのでは、と考えてしまう。

「この怪人達は<ruby>イマジン<rp>(</rp><rt>俺</rt><rp>)</rp></ruby>のように人間のイメージで生まれたわけじゃないんだよね?」

「ゴルゴムは元は人間らしい。クライシス帝国の方は色々だとよ」

侑斗は記憶した事を口に出す。

「ゴルゴムはハッキリしているのに、クライシスは曖昧なんだ」

デネブは直視と背けを繰り返しながらも、資料を見ていた。

「ゴルゴムは各斯界(この分野、この社会)の権力者と繋がっていたんだよ」

「そんな……」

侑斗の言葉にデネブは目を丸くする。

「侑斗。そんな人達はどうしてゴルゴムと手を組んだんだろ?」

デネブの疑問は尤もな事だ。各斯界の権力者という事は権力、財力を手にしているのだからわざわざゴルゴムのような得体の知れない組織

と手を組む必要性はないように思える。

「欲しいものがあったんだろ」

侑斗にはそれが何なのかは、すぐに理解できた。

ゴルゴムと手を組んでいる相手が人間である以上、答えはすぐに出ていた。

「お金もあって権力もあるのに?一体何が欲しかったんだろ?」

デネブは真剣に考えている。

うんうんと唸っているが、それでも答えは出しそうになかった。

「わからない……」

結果、両手を挙げて匙を投げた。

 

 

「命だよ」

 

 

侑斗は短く答えを口に出した。

「命?それは欲しくても簡単に手に入るものではないのでは……」

デネブもそれが財力や権力ではどうにもならない事は知っている。

「だからさ。金や権力ではどうにもならないから得体の知れない奴等の言葉に乗せられたんだよ」

「乗せられた人達はどうなった?」

侑斗はデネブから資料を取ってページを捲ってから、また渡した。

「こういう結果になっている」

 

 

<ruby>秋月総一郎<rp>(</rp><rt>あきづきそういちろう</rt><rp>)</rp></ruby>。転落死。

<ruby>月影<rp>(</rp><rt>つきかげ</rt><rp>)</rp></ruby>ゆかり。斬殺。

<ruby>黒松英臣<rp>(</rp><rt>くろまつひでおみ</rt><rp>)</rp></ruby>。腐乱死体として発見。

<ruby>大宮幸一<rp>(</rp><rt>おおみやこういち</rt><rp>)</rp></ruby>、<ruby>坂田龍三郎<rp>(</rp><rt>さかたりゅうざぶろう</rt><rp>)</rp></ruby>。ゴルゴムとの癒着が発覚となり各斯界を追われ行方不明。

  

 

「ひどい……。彼等は自分達が命を手に入れる事が怪人になるって知ってたんだろうか……」

「知ってるだろうな」

デネブが憐れんでいるのに対して、侑斗は至って淡々としていた。

「悪魔に魂売り渡した奴等の末路、だな……」

人間の業の深さには果てがない。それ故に誰もが彼等と同じ末路をたどる可能性があるのだ。

笑う事もできるが、侑斗は笑わなかった。

イマジンと戦う事でその手のモノは散々見てきたから笑う気になれなかったのだ。

 

 

 

 

イギリスの人込みというものから縁のない場所にぽつんと一軒のコテージが建っていた。

緑生い茂る陸地にロッキングチェアとテーブルが置かれており、初老の男が一人心地よく吹く風を満喫していた。

「父様。お茶を淹れるよ」

猫耳の少女---リーゼアリア(以後:アリア)がポットを手にして、空になっているカップに紅茶を淹れる。

「ありがとう。アリア」

初老の男---ギル・グレアムが微笑む。

「仮面ライダーは本当に来るの?」

もう一人の猫耳の少女---リーゼロッテ(以後:ロッテ)は確認するように訊ねる。

「それは間違いないよ」

グレアムが紅茶の味を堪能しながら答えた。

時空管理局から離れてから十年になる。

最後の大仕事の際に出会ったイレギュラーともいえる存在が仮面ライダーだ。

「十年か……」

隠棲生活を始めてもう十年になる。

長いようで短く、短いようで長い。

どちらともいえる長さだった。

長期にわたるミッドチルダ生活のため、地球での生活に慣れるには時間がかかったのは言うまでもない。

「あっという間だったよね~」

「私達も地球ではほとんど生活してないためか、知らなければならない事が多かった」

ロッテとアリアも天を仰ぎながら、現在に至るまでの事を思い出していた。

「今、ミッドはどうなってるんだろうね~」

地球生活十年となれば、ミッドチルダ事情に若干疎くなってしまうのは自然の摂理だ。

「さあ、平和で静かな世界というわけにはいかないだろうね」

グレアムは外れていない予想を口にする。

三人の耳に、この場では聞くはずのない音が聞こえてきた。

「来た」

アリアが短く告げた。

コテージ近くでゼロライナーが線路を敷設して停車した。

ロッテとアリアは固唾を飲んで、ゼロライナーのドアが開くところを凝視する。

「よく来たね」

グレアムは緊張する様子もなく、ドアから出てくる人物を見る。

 

 

「桜井侑斗君。いや仮面ライダーゼロノス、だったね」

 

 

侑斗とデネブはその声に反応するように黙って頭を下げた。

 

 

「どうぞ」

アリアが客用のカップに紅茶を淹れてから差し出した。

「どうも」

侑斗は軽く頭を下げて感謝の言葉を述べる。

斜め後ろにデネブがボディガードのように直立していた。

同じように、グレアムの斜め後ろに同じような役割でロッテがいた。

「はやて君から連絡をもらっているよ。私の力が必要だとか」

「正確には、あんたが知っている管理局の事情についてだ」

はやてがグレアムに連絡をしてくれている事は知っていた。

「管理局の事情か……。穏やかではないね」

グレアムの目が細くなる。

「単刀直入に聞く。八神達の敵となるような奴はいるか?」

侑斗も気圧されることなく、グレアムを見た。

顎に手を当て、グレアムは思案している。

「十年経過している以上、人事などで様々に変わっているからね。ただ……」

「ただ……」

「一人だけ警戒しておいた方がいい人物がいる」

グレアムの発言に、アリアとロッテの表情も強張っていた。

それほど警戒しなければならないのだろうか。

「そいつの名は?」

グレアムは紅茶を一口飲んでから、息を吐く。

 

 

「レジアス・ゲイズ」

 

 

グレアムが告げた名前に侑斗は全く覚えがなかった。

「はやて君からは聞いていないのかね?」

首を傾げているこちらを見て、グレアムが確認してきた。

「ああ。初めて聞く名前だ。そいつは偉い奴なのか?」

「そうだね。事実上は<ruby>陸<rp>(</rp><rt>おか</rt><rp>)</rp></ruby>のトップだからね」

「そんなお偉いさんが何で八神の敵になるんだよ?そいつにしてみれば八神は部下みたいなもんだろ?体よく利用すればいいじゃないか」

自分がそのレジアスと同じ立場ならそのようにするだろうという事を侑斗は語る。

「はやて君の部隊の編成表はあるかね?」

「ここに」

グレアムが欲している物を侑斗はジャケットの内ポケットから取り出した。

これがミッドチルダで生活している者ならモニターを展開するのだろうが、侑斗はその手の物を所持していないため紙だ。

折りたたまれている紙を広げてグレアムは凝視する。

「なるほど。快く思われないのも無理はないかもしれないね」

編成表の感想をグレアムが述べた。

紙を置いて、肘をテーブルについて腕を組んで眼前に構える。

「この組織図を見るからに、余程強い後ろ盾が後押しをしない限りは実現は不可能だったろうね」

グレアムは構えていた手を解いて、編成表を指差す。

「隊長、副隊長はAAA以上の魔導師ランクだけなんて本来ならあり得ないからね。それに後衛に回る面々も恐らくは隊長、副隊長に縁深い者達ばかりだろう」

グレアムは名前を見ただけだ。

機動六課の編成表で彼が知っている名前はほとんどいないはずだ。

時空管理局で培った経験がモノを言っているのだろう。

「身内だけで編成されている部隊と揶揄されても仕方ないだろうね」

「組織という中ではありえない人事だよな」

選り好みがまかり通るような組織編成ならば誰もが自分にとって都合のいい人材を選出するだろう。

しかし、それがまかり通るのはある程度の実績とコネとカリスマ性が必要になってくる。

「レジアスはどういう奴なんだ?」

「正義感を持ち、カリスマ性があるところから心酔する者も少なくないと聞いている。ハッキリ言えば<ruby>優秀な政治家<rp>(</rp><rt>・・・・・・</rt><rp>)</rp></ruby>ではあるね」

「手より口の方が達者って事か」

現場で戦う事しかできない自分としては、最も相性の悪い相手だ。

「侑斗。相手が政治家では今までのようにいかないんじゃ……」

今まで黙って聞いていたデネブが意見をした。

「何も喧嘩することが前提じゃないんだ。向こうが余計なちょっかいをかけない限りは大丈夫だろ」

わざわざ危険だとわかっている道に飛び込むような事は余程の事がない限りしない。

「うん……」

デネブは何かを懸念しながらも首を縦に振った。

「さっき優秀な政治家って言ったよな?という事は……」

「君の想像通りだよ」

「やっぱりか……」

侑斗は自らの想像が間違いでなかったことに嘆息する。

政治家がその斯界で長生きできる第一条件は『清廉潔白』である事だ。

スキャンダルなどがなく、後ろ暗い事がない事だ。

だが、これは政治という世界においては矛盾している部分でもある。

本当に清廉潔白の場合、政界では生きていく事が出来ないのが事実だ。

何せ周りにいるのはキツネとタヌキしかいないのだから。

互いの牽制から始まり、弱み捜し、スキャンダルのでっち上げ、手柄の奪い合いという事が蔓延している世界で正々堂々と生きていく事は限りなく難しいのだから。

そのため、政治家と民衆の間には暗黙の了解の様なものがあったりする。

民衆にしてみれば政治家同士の潰しあいは自分達に害が被らなければいくらでもやってくれてもいいし、政治家にしてみればどんな卑劣な手段をう講じる事になろうとも

結果として民衆の生活にプラスになる事をすればいいという事だ。

「侑斗。やっぱりってどういう……」

「優秀な政治家ってのは皮肉だよ。表も裏も使い分けているって意味も含まれている」

「表?裏?」

侑斗の言い回しをデネブは今ひとつ理解できていないようだ。

「自分の目的を掲げて達成して評価される事が表だ。逆にそのためにはどんな汚い手を使っても達成させる過程を作る事が裏になる」

デネブが説明を聞くが、やはり首を傾げていた。

「こういうのを『清濁併呑』って言うんだけどな」

「もしかしたら思い込んでいるかもしれないから言わせてもらうが、レジアスは私やリンディ提督とは違うよ」

「一般人でも管理局で偉くなれるのか?」

侑斗がこれまで知り合ってきた管理局員はほとんどが魔法を使用できる者達だ。『優れた魔導師は出世しやすい』と思っていたのだから。

「並大抵の事ではないがね」

グレアムが付け加えた。

魔導師が優遇されるという裏付けにもなっている事になった。

「ゼロノス、レジアスの事で知っておいてほしい事もあるんだ」

今まで黙って傍聴していたアリアが口を開く。

「レジアスは、あの子のようなタイプを毛嫌いするよ」

続くようにロッテが言った。

あの子というのが誰なのかは、すぐにわかった。

だがタイプというのがどういう意味を指しているのかはわからないが。

「魔導師でキャリア街道驀進中って事がか?」

「それもあるけど、あの子レアスキル持ちだろ?レジアスのような魔導師でない偉い人にしてみれば親の仇以上に嫌うさ。仮にレジアスとあの子が同じ意見を通すとしたら

本局は間違いなく、あの子を贔屓にするからね」

「キャリアとノンキャリアの格差みたいだ……」

侑斗は自分が理解できる解釈を口にした。

「八神はこの事をもちろん……」

「知っていると思うよ。でなければ管理局に十年も勤続できないだろうからね」

グレアムは即答した。

はやても現在に至るまで、それなりに陰口や嫌がらせを受けてきたのだろうと安易に想像できた。地球ではごく普通の一般人でも次元世界においては彼女は『前科者』なのだから

誹謗中傷の材料には事欠かない。

「桜井君」

「ん?」

「最後に聞きたい事があるのだがいいかね」

これまでのやり取りで、自分が訊ねる側でグレアムは答える側だった。

ここになって立場が逆転した。

 

 

「君は私達の事をどう思ってるのかね?」

 

 

グレアムの質問は侑斗に一瞬だが『間』を置かせるものだった。

「どうってどう?」

なんて変な返し方をしてしまうくらいに。

「憎んでたりしないのかって聞きたいのさ。父様は」

アリアがグレアムの質問の意図を告げた。

「アンタは十年前にあの子側にいたんだ。あたし等のしたことも知っている。だからそのことをどう思ってるのかって思ってさ」

ロッテがさらに付け加える。

三人の言葉を聞きながら、侑斗は考える。

グレアム達が十年前にした事は未遂で終わっている。

それにその後、彼等は現在に至るまで八神家に生活援助を行っている。

『落とし前』のつけ方に点数評価があるなら満点だろう。

それに、ここに来る前にはやてから話の話題としてはちらちらと聞かされている。

彼女の口調からして、『憎しみ』や『恨み』というようなものは含まれてはいなかった。

 

 

「八神はあんた達を許してるんだろ。だったら俺がどうこう言うことじゃねぇよ」

 

 

それが侑斗が今言える一言だった。

言った後で気持ちを整理してみても、負の感情は沸いてはこなかった。

この事から、特に何も感じてはいないのだろうと自身を納得させた。

「いい話を聞かせてもらった。ありがとう」

侑斗はこれ以上は聞けることもないと判断して、席から立つ。

「戻るのかね?」

「ああ」

侑斗は背を向け、デネブは三人に会釈をしてから後を追う。

「あの家を、いや、はやて君を頼めるかい?」

背中越しにグレアムが頼んできた。

 

 

「最善は尽くす」

 

 

と短く告げた。

 

 

それから五分後にゼロライナーは線路を青空へと敷設しながら海鳴へと戻っていった。




この話は 仮面ライダー電王LYRICAL SHORT STORY-07が

元になっています。
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