日輪の進撃   作:狼ルプス

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第104期訓練兵

847年——その年、ウォール・ローゼ南方面駐屯の訓練兵団で、104回目となる入団式が行われていた。

 

「貴様は何者だ!!?」

 

「はっ!シガンシナ区出身!アルミン・アルレルトです!」

 

「そうか!!馬鹿みてぇな名前だな!!親が付けたのか!!?」

 

「祖父が付けてくれました!」

 

「アルレルト!貴様は何しにここへ来た!!」

 

「人類の勝利の役に立つ為です!!」

 

「それは素晴らしいな!貴様は巨人のエサにでもなってもらおう!3列目!後ろを向け!」

 

 

「貴様は何者だ!」

 

「トロスト区出身!ジャン・キルシュタインです!」

 

「何のためにここに来た!?」

 

「………憲兵団に入って、内地で暮らすためです」

 

「そうか!貴様は内地に行きたいのか?」

 

「はい!」

 

ゴッ!

 

骨同士がぶつかり合う鈍い音と共に、ツーブロックの少年が蹌踉めきその場に腰を落とす。

 

「オイ!誰が座って良いと言った!!こんな所でへこたれる者が憲兵団になどなれるものか!!」

 

入団式の通過儀礼——今までの自分を否定して、真っさらな状態から兵士に適した人材を育てる為には、必要な過程だ。しかし、俺を含めて何人かは行われなかった。

おそらく話に聞いた2年前のウォール・マリアが突破された日に居合わせていて、既に覚悟が出来ている者は、教官の判断により、行われない。俺も、それに値する覚悟はあると認められたのだろう。同じくクリスタもこの通過儀礼は行われなかった。

 

………ヒストリア…。

 

時は二年前に遡る

 

———————–––––

 

————————

 

—————

 

あの後、開拓地に着いてから、本音でいる時のルールを決めた。それは、「完全に俺と2人きりの時」のみだけクリスタは、ヒストリア・レイスとして本音で接する事を約束した。それ以外は基本的にクリスタ・レンズとして接している。ここでの2人の間柄についても一緒に考えた。

簡単に言うと、一週間前に開拓地へ向かう同じ馬車に乗っていて、話したら少し仲良くなったと言うことにしておこう……と言う訳で、前よりも少し他人行儀に接してもいいはずだったのだが——

 

「リン、どこか行くの?私も着いていくよ!」

 

何故にこうなった……どういう訳か前よりベッタリしてくる。いや、決して嫌と言うわけではないがあまりにも距離が近すぎる。

あの設定はどこに消えた?何故、以前よりもくっつきだした?最近じゃ、俺の腕にくっ付くのが当たり前になった。

ヒストリアが無理をしない程度で、今までより少しだけ距離を取るくらいで良かったのだが……少し仕掛けてみるか。

 

「なあ…クリスタ…、流石に周りからの視線も気になるし、恥ずかしいから少し離れてくれないか…」

 

「………ぇ…っ?」

 

さっきまでのクリスタ・レンズはどこに行った?

 

「そんな…私はただ……リンの側に居たい……っ…だけ……なのに……っ!」

 

クリスタは目に涙を溜め出し、流石の俺も慌てた。

 

「クリスタ、こっちで話そう!」

 

周りからの目線が凄く痛い。まるで身体に針が刺さるように痛すぎる。

彼女は“クリスタ”になったとはいえすぐに変わるわけでもない。ヒストリアの時から可愛いままだ。そんな彼女を泣かせてると来たら周りからも白い目で見られるのは必然だ。俺は反省した。

 

 

 

「ヒストリア、流石にあれは距離が近すぎる…。あれじゃあ出会って1週間とは絶対思われない…」

 

「だって…リンが……離れてくれって………!」

 

「確かに提案したのは俺だし、言葉も足りなかったかもしれない。でもさ、クリスタ・レンズに成り切ろうよ。他人と接してる時みたいに」

 

「……嫌だ…!」

 

即答!?

 

「他人みたいに接してたら、リンが…離れて何処かに行っちゃうと、思ってたから…。距離を取ろうって言われた時……っき、嫌われたのかなぁ……って、お、思って…!」

 

ついに泣き出してしまった……これは完全に俺が悪いな。

 

「ヒストリア…」

 

俺はあの時の様に強くヒストリアを抱きしめる、そして安心させる様に、彼女の耳元で呟いていく。

 

「大丈夫、ヒストリアの側からは決して離れないよ。約束しただろ、君を一人にしないって。それに、もし俺が君の事を嫌いだったら、こんな事する?」

 

「………っ…や、やっぱり嫌だよぉ…。リンと…っ……他人みたいに接するなんて…嫌だぁ……っ!」

 

こればかりは仕方がないかもしれない。ヒストリアはまだ10歳だ。

1週間前に母親を目の前で殺されて、初めて会った男が自分はお前の父親だの、違うだの言われ、見知らぬ人しか居ない見知らぬ土地で生活する事になったんだから、不安で仕方ないのだろう。

唯一、今まで一緒に暮らしてきた友達の俺が何よりの心の支えであることも察しが付く。それすら形だけとはいえ、無くなるのはかなりキツイものがあったのだろう。だったら、もう少し考えなければいけないな。

 

「…分かった。この設定はやめよう。普通に、俺とヒストリアの関係で行こう。俺とクリスタは友達だ。幼い頃から、一緒に遊んできた友達で親友。」

 

「うん…」

 

「だから、これから普段一緒に行動はするし、寂しくなったら甘える。夜眠る事ができなかったら側で寝る。今までと同じだろ?」

 

「…うん…!うん…!」

 

「ありがとう。良い子だ…」

 

そう言って、俺はヒストリアの頭を撫でる。

何というか、友達と言うよりはお兄さんみたいになってきたな。

 

その後、先程とは打って変わり、仲良くしている俺とクリスタを見て、「一体何があったのか」と気になる人が続出してしまったことを付け加えておく。

 

 

 

 

 

 

◇ そして現在

 

入隊式が終わり数時間後。リンが寄宿舎の大食堂で食事を摂っていると、彼の元に二人の男が近づいてきた。

 

「なあ、二人いるんだけどよ、相席して大丈夫か?」

 

体格の良い男がそう言ってきた。もう一人はかなりの長身だ。

 

「ああ、構わない……二人は確か入団式の通過儀礼をされなかったよな……?」

 

 そこにいたのは、入隊式の時に通過儀礼を行われなかった内の二人だった、通過儀礼をされなかった者は少ないのですぐに分かった。

 

「これから訓練を共にする仲だ。自己紹介でもしようぜ、俺はライナー・ブラウン!んでこっちが…」

 

「僕はベルトルト・フーバー、よろしく。」

 

「俺はリン・カグツチ。呼び方は好きな方で構わない、これからよろしくな、ブラウン、フーバー」

 

 「ライナーでいい、お互い頑張ろうなリン」

手と手を取り合い固く握手を交わす二人

 

「僕も名前の方でいいよ、リン」

 

ベルトルトにも握手を交わす

 

「なぁ、お前のその痣はどうした?怪我かなんかか?」

 

「この痣か?これは生まれつきだと思う。」

 

「そうか、しかしそんな綺麗な形をした痣は初めて見たな」

 

「ありがとう、そんな風に言われたのはクリスタ以外ではじめてだ」

 

しばらく雑談を交わしながら三人で食事を摂っていると、あるテーブルの一角で大きな人だかりができ始めているのに気が付いた。

 

 

「超大型巨人!あの時シガンシナ区に居たってことは、見たことあるんだよな!?」

 

「だから見た事あるって…」

 

話題は2年前のシガンシナ区の襲撃時の話だった。

……念のため、聞き耳は立てて置こう。もしかしたら話の中にレイス卿があの日訪れたヒントが隠されているかも知れない。

だが、その話の中のあるワードで、場の空気が一変する。

 

「じゃあ、『普通の巨人』はどうだったんだ!?」

 

「っ!!」

 

質問責めを受けていた少年は、『普通の巨人』と言うワードで、口元を押さえ、顔を青くする。その反応で周囲も少し青ざめる。

 

「…みんな、もう質問はよそう、彼も思い出したくない事もあるだろう」

 

「すまねぇ!色々思い出させちまって!」

 

「ハッ!違うぞ!巨人なんてな、あんなもん大したことない。俺たちが立体起動装置を駆使して戦えばあんなの敵じゃない!」

 

「巨人……俺はウォール・シーナ出身だから見た事はないな。どんな奴らなのかも想像はしづらい。二人はどこ出身なんだ?」

 

「僕とライナーは、ウォール・マリア南東の山奥の村出身なんだ」

 

「そこは確か……」

 

リンはある程度場所と名称がわかるのでベルトルトの言っていた意味をすぐ理解できた。

 

「ああ……川沿いの栄えた街とは違ってすぐには連絡が来なかった。なにせ、連絡より先に巨人が来たからね……」

 

 そうして始まったベルトルトの話もまた、壮絶なものであった。生き残れたのはまさに運が良かったとしか言えないだろう。

 

「おい、なんだって突然そんな話すんだよ」

 

「ご、ごめん、ライナー……えっと、つまり、僕が言いたかったことは……君は巨人の恐怖は知らないだろうけど、別の意味で恐怖を知っている。“彼ら”とは違うんじゃないかってことなんだけど……」

 

「“彼ら”?」

 

「……巨人の恐怖を知らずにここにいる人達」

 

そう言われて、リンは辺りを見渡した。彼らの目に映ったのは、楽しく談笑し食事をする同期生達の姿。ごくごく普通の、当たり前に映る光景だ。

 彼らがここにいる大半の理由が『世間的な体裁を守るため』である。ウォール・マリア陥落以降、『12歳になっても生産者に回る者は腰抜け』と反転した世論に流されて訓練兵になり、かと言って、調査兵団を目指すわけでもなく内地勤めで安全な憲兵団を目指し、駄目だったら駐屯兵団で憲兵団に入る機を窺う。そんな者達の集まりなのだ。

 

「そういえば…お前はさっきウォール・シーナ出身って言ってたよな?なのに何でお前も教官の通過儀礼をされなかったんだろうな?」

 

「……」

 

黙り込んでしまうリン。

 

「スマン…聞いたらまずかったか?」

 

申し訳なさそうに謝罪してくるライナー

 

「いや大丈夫だ、俺も色々とあってな。」

 

「そうか…よし!この話は終わりだ!しっかり飯食って明日に備えないとな」

 

「そうだね、明日も早いし、訓練に備えないとね。」

 

「だな…」

 

 

このとき知らなかったが、入団式の時に芋を食っていた女の子——通称芋女にクリスタが手助けをしたのを翌日、本人から聞いた。

 

 

 

リヴァイに全集中の呼吸(常中を含め)を習得させるかさせないか

  • 習得させる
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