日輪の進撃   作:狼ルプス

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刃と適性

「まずは貴様らの適性を見る! 両側の腰にロープを繋いでぶら下がるだけだ! 全身のベルトでバランスを取れ! これができない奴は囮にも使えん! 開拓地に移ってもらう!」

 

 

 

 

 

 

「……」

 

現在リンにその説明の一部は聞こえてはいなかった。昨夜に見た謎の夢が頭から離れなかったからだ。

 

『ーーさん。後に繋ぎます。貴方に守られた命で…俺たちが。貴方は価値のない人なんかじゃない!!何も為せなかったなんて思わないで下さい。そんなこと絶対誰にも言わせない。この耳飾りも日の呼吸も後世に伝える。約束します!!』

 

 

『ありがとう。』

 

赤ん坊を背にかけた男性の言葉に穏やかに微笑む男の姿。その男はリンと同じ額に痣があり両耳には耳飾りをつけており、見たことのない服装で、腰には剣らしきものをさしていた。

 

 

 

「(結局あれは何だったんだ?それに、あの剣術は俺の使ってる剣術と同じだった……何か関係があるのか?)」

 

 

そして現在、今日から早速本格的な訓練が始まる事となり、練兵場に集められた第104期訓練生に向けて訓練教官の怒声が飛んでいる。確かこれから立体機動を使用した際の姿勢制御の訓練だったな。初歩中の初歩の訓練ではあるが、しかし、決して侮ってはならない。初歩だからこそこの時点で立体機動の素質が見抜かれ、兵士にふさわしいかそうでないかが決められてしまう。素質の無い者は教官が言ったように、囮にすら使えない。いざ巨人と戦うことになっても、なす術なく喰われるだけだ。

 

「リン!」

 

 現在脱落者もなく、自分の順番を待っていたところで、リンは自分を呼ぶ声に振り向いた。そこにはクリスタと二人の女性がいた。二人の内、一人は件の芋女であった。

 

「…クリスタか、一人は知っているがもう一人は誰だ?」

 

「えっと、こっちはユミル。昨日の夜からの付き合い。サシャとは朝食の時にー」

 

「サシャ・ブラウスです、どうぞよろしくお願いします!」

 

 ガバッという音が聞こえるほど勢いよく頭を下げたサシャに、リンは思わず肩をビクッと動かす。

 

「そこまで大袈裟な自己紹介をされるとはな。俺はリン・カグツチ、クリスタとは開拓地にいた時の友達だ。」

 

「へぇ…クリスタから話にゃ聞いてはいたが、あんたがリンか」

 

ユミルから睨まれるようにジロジロ見つめられる。俺、彼女に何かしたかな?

しばらく沈黙が続く中、クリスタが口を開く。

 

「と、ところで、リンは姿勢制御できたの?」

 

「俺か? まだやってないから何も言えない。三人は終わったのか?」

 

「うん、私は何とかでたよ。少しだけブレちゃったけど……」

 

「私はまあまあだ」

 

「私は狩猟民の出なので、バランス感覚には自信があります」

 

「そうか……これは、俺ができないと赤っ恥だな。」

 

「大丈夫! リンなら絶対にできるよ!」

 

 冗談で言ったつもりだったが、クリスタの励ましの言葉は素直に嬉しかった。

 

「次! リン・カグツチ!」

 

 教官の呼び声が聞こえた。話し込んでいる間に順番が回ってきたようだ。

 

「それじゃあ行ってくる」

 

 三人の元から離れて、リンは位置に着く。ロープを両腰のベルトに装着して全ての準備を終え、隣に控えた補助係がロープを上げる。徐々に体が浮き上がっていき、やがて地面から足が離れた。

 

 

 すると周囲からどよめきと歓声が上がった。浮き上がったリンの体はブレることなくとどまり、1分ほどして地面に足が付くまで、動くことはなかった。

 

「なかなかのものだ。これからもその調子で励め」

 

「ありがとうございます」

 

 キース教官は相変わらずの仏頂面だったが、リンにそう言葉をかけた。教官がリンの元から離れると、クリスタ達がリンの元に駆け寄ってきた。

 

「凄いよリン! あんなに上手くできるなんて!」

 

「ホントですよ! ブレもまったくありませんでした!流石に私もあそこまではできません!」

 

 目を輝かせているクリスタとサシャに対し、ユミルは「なかなかやるじゃないか」と、褒めてくれた。

 

「リン、何かコツとかあるの?」

 

「コツ? コツか……そうだな……」

 

 クリスタの問いに、リンは答えることができなかった。この姿勢制御の訓練は兵士の適性の有無が判別される。

 

「何をしているエレン・イェーガー!! さっさと上体を起こせ!!」

 

答えを言い淀んでいるリンの後方から教官の怒声が聞こえてきた。リン達も他の訓練生も、怒声の聞こえた方に目を向ける。そこには、ただ一人姿勢制御ができず、真っ逆さまにぶら下がっている人物がいた。それは昨日巨人を駆逐すると言い張っていたエレン・イェーガーの姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 翌日──。

 エレンの特別適性訓練が始まった。昨日ライナーとベルトルトと雑談をしている途中、エレンにコツを聞かれたが答えることが出来なかった、しかし今日の結果次第で、エレンが兵士になれるかどうかが決まる。エレンの顔には当然ながら不安の表情が浮かび、そんな彼を見守るリンの表情も不安気だった。いや、リンだけでなく、彼の幼馴染であるアルミンやミカサ、ライナーにベルトルトも同じだ。

 

「リン……エレン、大丈夫かな?」

 

 もう一人いた。リンの傍らに立つクリスタが心配そうにエレンを見つめている。

 

「……わからない。こればかりは、俺達は見守ることしかできない」

 

「ダメなら才能がなかったってことなんだ、大人しく開拓地で畑でも耕しておくんだな。」

 

 相変わらずユミルの言葉は棘が鋭い。

 

「もう! そんなこと言っちゃダメだよユミル! 」

 

 やはりクリスタになろうとも、彼女は凄く優しい娘だと安心できた。これでヒストリアとして話し合うことができれば、もっとよかったのだが……

 そうこうしている内に試験が始まり、エレンの体が徐々に浮き上がり始めた。クリスタもユミルも、それまで小声で雑談をしていた他の訓練生達も一斉にエレンに目を向ける。足が地面から完全に離れ、20センチほど上がったところで動きが止まった。昨日までならこの瞬間から既に真っ逆さまにひっくり返っていたが、今日のエレンは制止したままだ。

 

「おおっ!!」

 

 周囲からどよめきが上がった──が、次の瞬間、エレンは真っ逆さまにひっくり返った。

 

「ま、まだ……!」

 

 ジタバタと足を必死に動かして何とか起き上がろうとするエレン。しかし、忙しなく動く足は哀れにも虚しく空を切り、体が起き上がらない。

 

「降ろせ」

 

 そんな中で告げられた教官のその一言は、エレンにとっては死刑宣告のようにも聞こえたことだろう。ロープが降ろされ、エレンは地面に跪いた。

 

「オ、オレは……」

 

 風の音に掻き消されるほどの小さなエレンの声。彼を笑ったり、バカにしたりする者は誰もいない。ただ哀れむような視線をエレンに向けているだけである。

 

「ワグナー」

 

 そんな沈黙の中、教官が呼んだのはエレンではなく、補助をしていた訓練兵のトーマス・ワグナーだった。

 

「ハッ!」

 

「イェーガーとベルトの装備を交換しろ」

 

 彼の言葉に、エレンもトーマスも要領を得ないと疑問が隠し切れなかったが、睨み一つで急かされた。二人のベルトが交換され、トーマスのベルトを装備したエレンは再び特別訓練を行うと、そのまま何十秒も空中で制止し続けることができた。

 

「こ、これは一体……?」

 

「装備の欠陥だ」

 

 いきなりできるようになって困惑するエレンに、教官は彼のベルトを見ながら答えた。

 

「貴様が使用していたベルトの金具が破損していた。ここが破損するなど聞いたことがないが、新たに整備項目に加える必要があるな」

 

「で、では、適性判断は……」

 

「問題ない、修練に励め」

 

 教官の言葉を聞いて、エレンは空中にぶら下がったまま大きく腕を上げた。その姿を見て、リンは一安心と大きく息を吐き出す。

 

「(どうなるかと思ったが、まさか欠陥品で成功させるとはな、将来化けるかもしれないな)」

 

「ふふ、リン…すごく安心した顔してる。」

 

「ん?…そんな顔してたか?」

 

 クリスタにそう言われリンは顔に手を当てる。リンはエレンの将来に期待していたのだ。彼は精神的な強さだけではなく、壊れたベルトで一時空中に留まるという根性ーーーーリンは彼の成長が楽しみになった。

 

 第104期訓練兵団300名が、この日、正式に兵士となった。

リヴァイに全集中の呼吸(常中を含め)を習得させるかさせないか

  • 習得させる
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