とある山の中、今この場には一人の少年しかいなかった。
彼はリン・カグツチ、104期訓練兵の一人だ。今、彼は木刀を振り続けている。
「フゥー…」
リンは静かに息を吐き、自分の拳を開閉し、確認するように動かす。
「(改めて確認すると信じられないな、六時間くらい振り続けても疲れない。これは下手すると常識を覆すかもしれない)」
前方にある穴の空いた岩や木々など、瓦礫と化した周辺を見つめるリン。そこの岩山の穴は人が入れるほどの穴があり、辺りには粉々になった岩が沢山転がっていた。
「(時系列はバラバラだったがこの技法について少しわかっただけでも御の字だな)」
リンはあの夢を見て以来、似た夢を見るようになった。しかし時系列はちぐはぐで見ることが多かったので、内容を整理するのは大変だった。
「(この独特な剣技と呼吸は“全集中の呼吸”と言っていたな)」
リンは、この技法の名前が分かって以来、これを“全集中の呼吸”と呼ぶようになった。
「(それに、鬼か…、形は違えど相手にしているのは少し似てはいるな)」
夢で見た人の形をした何か……それは異形の化け物だった。人を喰らい自分の力にする、巨人と似ても似つかぬ存在。
「(あの人に一体、何があったって言うんだ)」
リンは夢で見た痣のある耳飾りの剣士が頭から離れなかった。名前もすら未だ知らない。
「とりあえず休憩するか」
深く息を吐き、近くの木に背を預ける。周りは明るく、雲の少ない青空が広がるほどの爽快な天気だ。今日は訓練が休みの為、リンは一日使って山で特訓をしていた。この場所は彼が独自で呼吸を編み出す為の訓練スペースだった。
「休んだ後は風を使って訓練をしよう。」
夢の中で見て、日の呼吸から派生させた技が水の呼吸だ。その次が雷、それから編み出したのが風の呼吸。
「(水が拾壱、雷が漆、風が捌、風は後もう一つは欲しいな)」グゥゥ〜
突然リンのお腹から音がなる。
「腹減った…今の日の位置からしてもう昼過ぎくらいか。弁当持ってくればよかったな……近くに川もあるみたいだし魚でも獲るか」
「オーイ!リーーン!」
川に向かおうとした途端、クリスタが俺の名前を大声で呼びながら現れたのだ。バスケットを手に持ってるのが確認できる。
「クリスタ、なんでここに…よくこの場所がわかったな」
「リン、二人っきりの時の約束…忘れた?」
彼女は上目遣いでそう言ってきた。そういえば、しばらく二人っきりになることがなかったからすっかり忘れていたな。木の下に行き、辺りを見渡し二人しかいないことを確認すると、
「そうだったな。しかし、久しぶりに呼ぶと気恥ずかしいな…ヒストリア、なんでここに?」
少し恥ずかしそうに彼女の本名を呼ぶリン。二人っきりでいる時は本名で呼ぶことを約束しているのだ。
「リンが朝早くから山の方に出かけたのが見えたから気になったの。少ししてから私もこのあたりに来たんだけど、ちょうど雷のような凄い音が聞こえて……そこにリンがいると思ったの!」
「そういうことか。それとヒストリア、手に持ってるカゴは何なんだ?」
「コレ?最初に聞くけど…リンはお昼ご飯食べた?」
「いや、川が近いから魚でも、と思ってたところだ」
「じゃあこれ、よかったら…食べる?」
ヒストリアが手に持っていたカゴを開けると、そこには二つのパンが入っていた。
「パンか。しかし見た感じ普通のパンじゃないな?」
「うん、具は入ってるよ。味は保証できないけど」
「ありがとうヒストリア。それじゃあ…いただきます。」
リンとヒストリアは木に背中を預けるように座る。そして、リンはパンを食べ始めた。
「どう…かな?」
少し不安そうに見つめてくるヒストリア。味はなかなかのものだった。
「うん、美味しい…」
「ホント!よかったぁ、上手く出来なかったらどうしよかとおもっ(ぐぅぅぅぅ)…ッ⁉︎」
ヒストリアは頬を赤くしながらお腹を押さえる。何やら音が聞こえたが、もしかしてヒストリアも……
「ヒストリア、もしかして君もお昼食べてなかったのか?」
「えっと、その……………うん」
間を空けて言ったな。よし、それなら……
「ヒストリア。もう一個のパン、君が食べな。こういうのは一緒に食べたら美味しいって言うからな」
もう一個のパンをヒストリアに渡す。
「うん…ありがとう。いただきます」
しばらく沈黙が続いた後、リンが先に口を開く。
「なんか久しぶりだな…こうやって二人で過ごすのも」
訓練兵になってから団体行動が多かった為、二人で話す機会も減り、二人っきりで過ごすのも二年ぶりだ。
「うん…そうだね、そういえば、リンはなんでここに?もしかして、また新しい剣術身に付けてたの?」
「ああ、今は風を試してるんだ。手数は多い方がいいしな」
「リンの剣技は綺麗だもんね。本物じゃないのに炎が見えたりしてたし。リンなら立体機動なしに巨人に勝てそう」
「そうだろうか?巨人相手に使ったことがないから何も言えんな」
人ではありえない速さで走ったり飛び上がったり…といったリンの常識離れした身体能力を見てきたヒストリアだからこそ出た発言であろう。
「ねぇ…リン、ちょっと私のお願い、聞いてくれる?」
「ん?なんだ」
隣に座っているヒストリアが頭を俺の方にくっつける。屋敷にいた頃、こう見えて寂しがり屋だった彼女が寂しくなったとき俺にやって来たことだ。
成長したが故の恥ずかしさ、懐かしさ、初めて出会って会話した時や遊んでいた時に感じた胸が温かくなる気持ち……幸せを感じていた。
「懐かしいな、昔は寂しい時、よくやってたっけ。開拓地にいた時は基本人の目があったから、やろうとしなかったもんな」
「今の歳じゃこんなの人前で出来ないよ!」
それを言われて、恥ずかしさが押し寄せ、顔が赤くなる。
しかし安心感と心地よさは離したくないので、俺はヒストリアを受け入れた。
「リン、また昔みたいに寂しくなったら、こうやって側にいてくれる?」
顔を赤くして恥ずかしそうに聞いてくるヒストリア
「……ああ、君が望むのなら、いつでも。」
リンがヒストリアのお願いを承諾すると、彼女は体を全て彼に預け、より一層強くくっついた。そしてしばらくは、そのまま2人で昔みたいに、寂しさを紛らわす様に甘えあっていたのだった。
リヴァイに全集中の呼吸(常中を含め)を習得させるかさせないか
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習得させる
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必要ない
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作者に任せる