「良かった、無事だったんだね!」
こちらを見つけて寄ってきたハンナ。
「ハンナも無事で良かった。フランツとコニーは?」
「うん、いるよ………あなた達は見た?本部に群がる巨人を。あれのせいで私達はガスを補給できない」
「なるほど、それで壁の方へ撤退できないってわけだ」
警鐘が鳴っても撤退しようとする者が少ないことは気になっていた。ここからでも本部に十数体の巨人が群がっているのが確認できる。補給室には既に小さめの巨人が侵入しているだろう。
「…道理でここに集まるわけだ」
壁を登るほどのガス残量はない。しかし、補給拠点である本部には多数の巨人。突っ込めと言えるほどの無能はいない。突っ込めと言われて従うような馬鹿もいない。死の恐怖について十二分に理解している。故に、怖気づいた兵士達を責めることは出来なかった
「……ハンナ、アルミンはどこに?」
「…あ、アルミンならーー」
顔を俯かせてしまうハンナ。返答はハンナ、ましてやユミルではなく、ミカサの側で座り込んでいるアルミンから言い渡された。尤も、アルミンの表情を見るに答えは聞くまでもないのだが。
「トーマス・ワグナー、ナック・ティアス、ミリウス・ゼルムスキー、ミーナ・カロライナ、エレン・イェーガー……以上5名は自分の使命を全うし…壮絶な戦死を遂げました…」
最も巨人に対して好戦的だったエレンの所属する班が殆ど全滅したという話を聞き、辺りが騒然となる。
「これで指揮を取れる奴が一人もいなくなっちまったな」
アルミンが、エレンは自分の身代わりになって死んだと語った。強い正義感を持っていた奴だ。親友のために迷わずその命を懸けたのだろう。しかし、死んでしまっては本人の問題だけじゃなくなる。交友関係を持っていれば、その相手にも死を強く実感させることとなる。喧嘩ばかりしていたジャンですらその例外ではない。つい昨日まで一緒に過ごしていたよく見知った奴が、次の日になればに一生目の前に現れなくなるのだ。その絶望感は計り知れない。
「落ち着いて。今は感傷的になってる場合じゃない」
エレンを喪ったことでクリスタに次いで絶望するだろうと思われていたミカサが、皆の予想を裏切りつつアルミンを立ち上がらせた。泣くことすら忘れて驚くアルミンを置いて、今度はマルコに問いを投げかけた。
「マルコ…本部に群がる巨人を排除すればガスの補給ができてみんなは壁を登れる。違わない?」
「あ、あぁそうだ………し、しかしいくら君がいても…あれだけの数は…」
「できる」
ミカサは宣言する。誰よりも勇敢に、誰よりも蛮勇に。自分は戦意を失ったお前達とは違うと、右手を空に突き出しながら堂々と宣言する。
「私は…強い…あなた達より強い…すごく強い!…ので私は…あそこの巨人共を蹴散らせることができる…例えば…一人でも」
誰一人として声をあげない兵士達に向けて刃を伸ばし、さらに勇ましく。
「あなた達は…腕が立たないばかりか…臆病で腰抜けだ………とても残念だ。ここで…指をくわえたりしてればいい…くわえて見てろ」
「ちょっとミカサ!いきなり何を言い出すの!」
「あんな数の巨人を相手に、一人でやるって言うのか!」
「そんなこと、できるわけが…「できなければ死ぬだけ」ッ」
「けど…勝てば生きる、戦わなければ勝てない」
地獄の戦場へ一人飛び立つ兵士を、我こそはと追う者はいない。それでも駄目だというのなら、そいつらはその程度の人間だったということ。絶望と共に巨人の腹に収まっていればいい。しかし、
「残念なのは、お前の言語力だ…あれで発破かけたつもりでいやがる…お前のせいだぞエレン…オイ!俺達は、仲間に一人で戦わせろと学んだか!!本当にお前ら腰抜けになっちまうぞ!」
ジャンはミカサを追う、近くにいたコニーも動き出す、しかしそれは二人だけではなかった。
「そいつは心外だな…」
腰抜け呼ばわりは勘弁願いたかったのか、ライナー、ベルトルト、アニも行動を開始する、アルミンも涙を拭い後に続く。マルコに至っては、手で顔を押さえため息を吐く。
「腰抜けか、言ってくれるな……ミカサ」
「私達もいくぞ…クリスタ」
「う、うん」
「サシャ、お前も早く来い」
「えっ、あっ、はい!」
近くにいたサシャを呼んだユミルは彼女にに耳打ちする。すると、サシャは納得したように、まだ立ち止まった同期達に言い放つ。
「ヤーイ!腰抜け!弱虫!アホー!」
と言い捨て、ユミル達と行動を開始する。
「あっ、あいつら…ちくしょう、やってやるよ!」
「「「「ウォォォォォォォォォぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ‼︎‼︎」」」」
雄叫びを上げ、訓練兵達は続々と決意し突入を開始する…命を賭けてでも
ミカサの後を追う104期達、彼女は立体機動において、皆と合流するまでの間、遠心力を活用せず殆どガス圧による加速のみで移動していた。
「ミカサ、すごいね」
「いや、ありぁまずいだろ」
「ユミルの言う通りだ。ガスを使い過ぎだ。あれではすぐになくなる」
焦っていた故にあのような雑な動きになっていたのだろうが、今はそれに加えてエレンの死という現実が突きつけられている。今のミカサは本部に着くより先にガス欠を起こす可能性が高い。
右斜め前方で巨人のうなじを削ぐミカサの姿を確認できた104期達。案の定、ガスを過剰に消費している。突入を決意したあとを付いてくる兵士達は、ミカサの圧倒的速さに対してコニーは、褒め言葉を口にする。どうやら彼らのうちの殆どは、ミカサの冷静さに欠けた行動に気がついていないようだ。先程のミカサの言動を見ればそう捉えられても仕方の無いことだが、アルミンには虚勢を張っているようにしか見えなかった。口実を作って、死に向かっているような。すると遂にガスを切らして落下していくミカサ。アルミンはすかさずミカサの方へ向かっていく。
「ジャン!お前が皆を先導しろ!俺がアルミンに付く!」
「いや俺も!「何言ってんだ!巨人はまだいるんだぞ!」…ッ!」
「お前の力が必要だろうが…!」
「コニー!気をつけてね!」
「おう!生きてたらまた会おうぜ!」
クリスタは無事を祈るよう言葉を交わし、コニーはアルミンとミカサのいる方へと向かった。残った104期達は本部へ向かう。
◇
104期は本部に向かうが、本部に向かうだけでも命懸けだ。理由は巨人が本部以外でも徘徊しているため、足止めをされるからだ。
「(だめだ、これじゃ本部に近づくことさえできない。犠牲を覚悟しない限り…)』
「うあああぁぁぁぁぁ!!」
本部へ向かう最中、叫び声が一つ。今更珍しいものでもないが近いこともあり確認してみると、1人の兵士が地面で伸びきったワイヤーを回収出来ずにいた。要は、ガス切れを起こして建物の上に登れないのだ。
「(不味い、あいつガス切れだ!)」
反射的に救助に向かおうとしたジャン、しかし彼はもう4体以上の巨人に囲まれている。普通の人間なら、相手にしながら個人を守るのはほぼ不可能。可能性がない以上、本部突入に集中するべきだ。見たもの全てに突っ込んでいっては何も為すことができない。
「トム!!今助けるぞ!!」
「よせ!!もう無理だ!!」
仲間を救わんと突撃する同期たちに、ジャンの声は届かない。案の定彼らは助けるどころか巨人に捕まった。このまま頭を砕かれ、四肢を引き千切られ、下半身を歯で切断されるだろう。知り合いの命が無惨に絶たれる光景が目の前で展開されるされようとした時、
「あっ、リン、あなた何を⁉︎」
「な、まてリン⁉︎テメェまで!」
サシャとジャンが突然駆け出したリンに驚きジャンは止めるが既に
飛び上がって数体いる小型巨人の元まで降下する。
そして、この場にいる全員が目を見開く、リンの持つ剣に水を纏ってる様に見えたからだ
「水の呼吸 捌ノ型」
リンは呼吸を行い幻視する程の水を剣に惑わせそのまま巨人へ接近し、上から真下に刃を振りおろす。
「滝壷!」
捕まえた人間に夢中になっている巨人に斬撃を与える。 滝壺は威力、攻撃範囲ともトップクラス。
全ての巨人のうなじを削ぎ落とし巨人は倒れる。そして血のついた剣を払う。
「おい、動けるならそいつを抱えながら飛べ、急げ…」
「お、おい、後ろ!!」
一人トムを助けに入ろうとした同期が顔を真っ青にしながら後ろに指を指す。
もう一体の小型の巨人がリン目掛けて手を伸ばしながら接近してきたのだ。
ーー水の呼吸 肆ノ型・打ち潮
リンは飛び上がり巨人の四肢を切り裂き、うなじを削ぎ落とす。
その光景を見た104期達は唖然としていた。
そしてその中、今が好機だと判断したジャンが叫んだ。
「っ!今だッ!全員本部に突っ込め!!」
我に返った兵士達が再び動き出す。ただ生き残ろうと足掻く。
「(クリスタ以外に技を見せてしまったな。まぁ、どの道いつかバレることだったが…)」
「リン!!早く!」
リンはクリスタの声に、屋根まで飛び上がりクリスタと近くにいたサシャとユミルと共に、立体起動で本部まで向かう。
「______ッ!!」
リンより先に飛んでいた104期達は巨人の群衆を避けていく。
「(リンのさっきの剣はなんだったんだ?何で剣に水か纏わりついてんだよ。いや、今はそんなこと考えてる場合じゃねぇ!本部に辿りつくことだけを考えろ!)」
ジャンは先ほどのリンの人間離れした身体能力に驚くも、本部に向かうため懸命に立体起動をフル稼働させる。
「うわああああああああああ!」
巨人を避けていく中、後ろで悲鳴が聞こえた。
「………っ!クソォ!…」
犠牲を無駄にさせない。死んでいった人達の命を。絶対に____!!
「ウオォォォォォォォォォォォっ!!」
ジャンは補給所の窓に突撃し、窓ガラスを割った。
「ハア………ハア………やった、のか?」
何とか着いた。道中、何人もの犠牲を糧にして、ジャンは辿り着いた。
「ハァ……ハァ…皆は……!」
すると次々とガラスが割れ、リンを始めとした訓練兵がやってきた。
「(……仲間の死を利用して……オレの合図で……何人…死んだ……?)」
明らかに数が減っていた。少なくても数十人は巨人に殺されたのだろう。
「……!!お、お前ら……補給の班……だよな!?」
「!!」
机の下に、補給兵が数人いた。バチン、ジャンが補給兵を殴り飛ばした
「ジャン!?何を!?」
「こいつらだ!!オレ達を見捨てやがったのは!!てめぇらのせいで余計に人が死んでんだぞ!」
「補給所に巨人が入って来たの!どうしようもなかったの!」
「それを何とかするのがお前らの仕事だろうが!」
「落ち着けジャン!今は言い争ってる場合じゃない!早く補給しないと巨人が」
「っ!伏せろ!!」
「「「!!」」」
ライナーの合図により、すぐさま伏せる。
するとすぐそこで破壊音が聞こえた。
「ッ!!しまった……人が、集中しすぎた………」
「ミカサはどこ行ったんだ!」
「ミカサもとっくにガス切れして食われてるだろ!急げ!」
ジャンは足が、体が動かなかった。
「(普通に考えたらそうだ。こんな脅威に、勝てるわけない。俺はは知っていたハズだ)」
刹那、目の前に居た巨人が消えた。
「……なにっ!?」
《ウオアアアアアアアアアアアアアアア!!》
「……は……!?ありゃあ………何だ…!?」
するとガシャンとガラスの音が割れた。
「ミカサ!コニーにアルミンも!無事だったんだね!」
「お、お前ら……生きてるじゃねぇか……」
「やったぞアルミン、お前の作戦は成功だ!!みんな!あの巨人は、巨人を殺しまくる奇行種だ!しかも、俺たちに興味を示さない!」
「巨人が巨人を……!?そんな夢みてぇな話が……」
「夢じゃない……ここであの巨人により長く暴れてもらう……現実的に私達が生き残るための最善策」
巨人を利用して、ここから出る……まさか巨人に助けられてもらう日が来るだなんて、この場にいる全員が思っていなかった。
リヴァイに全集中の呼吸(常中を含め)を習得させるかさせないか
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習得させる
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必要ない
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作者に任せる