ミカサとアルミン、コニーが引き連れた例の奇行種が暴れている音が響く。派手に暴れている内はここは無事だろう。かといって呑気にしている場合ではないことには変わりはない。
「お前ら、あの巨人についてどこまで知っているんだ?」
「?……助かってからいいだろ、そんなこと」
「…そうだな…まずは助かってからだ…」
「あったぞ!憲兵団管轄の品だ!埃をかぶっていやがるが……!」
ジャンが持ってきたのは鉄砲だった。
「そもそもこの鉄砲は……巨人相手に役立つのか…?」
「無いよりはずっとマシだと思う……補給室を占拠している3~4m級が8体のままなら、この程度の火力でも8体同時に視覚を奪う事は不可能じゃない」
あの8体が通常種であれば、大勢の人間に反応する。そのため、リフトを使って、中央の天井から兵士を大量投下すれば、巨人達は中央に引きつけられる。次にリフト上の人間が8体の巨人それぞれの顔に向け同時に発砲して視界を奪う。
最後に天井に隠れていた8人が発砲のタイミングに合わせ、巨人の急所に切りかかる。
それがアルミンの考えた作戦だった。
つまりこの作戦では1回のみの攻撃に、全てを、全員の命を懸けることになる。8人が8体の巨人を一撃かつ同時に仕留める作戦だった
「運動能力的に最も成功率が高そうな8人にやってもらうけど……全員の命を背負わせてしまって……その……ごめん」
「問題ないね」
「ライナーに同じく」
「誰がやっても、失敗すれば全員死ぬ。リスクは同じだ」
「でも…僕なんかの案が本当に……これが最善策なんだろうか……?」
「これでいくしかない!時間もないし、これ以上の案は出ないよ……あとは全力を尽くすだけです!」
「大丈夫、自信を持って。アルミンには正解を導く力がある。私もエレンも、その力に命を救われた」
「え…そんなことが、いつ?」
「リフトの用意ができたぞ!鉄砲もだ!すべて装填した!」
そして8人は階段を降る前に、リンはクリスタから袖を掴まれた。
「リン…気を付けてね」
「大丈夫、絶対にうまく行くさ。クリスタも、頼んだぞ」
リンはそう言うと奇襲組と共に階段を下る
「巨人の弱点は大きさに拘わらず頭より下、うなじにかけての縦1m、幅10cm!」
「もしくはこいつを奴らのケツにブチ込む!弱点はこの2つのみ!」
「知らなかった!そんな手があったのか!?」
「はは、こんな時によくそんなことが言えるなライナー、けど…おかげで緊張が少し溶けたよ」
「ライナー……それがお前の最後の言葉になるかもしれんぞ……」
補給場にいる巨人を仕留める8人は、ミカサ,ライナー,ベルトルト,アニ,ジャン,コニー,サシャ,リンだ。
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◇
.
「(不利な戦闘は避けるんだ)」
「(一人も死なせたくないのなら…)」
「(この一撃で決めんるだ)」
数は増減していない。8人は天井で、息をひそめる。やがて巨人はリフトに乗っている人に反応し、全員がその方向へと向かう。
そして
「撃てええぇぇ!!」
合図と共に銃声が響く。作戦通り巨人の視覚を奪う事に成功した。
8人が、8体の急所へと一斉に斬りかかった。
「(捉えた……!他の奴らは)」
リンは他のメンバーを見渡す。巨人のうち6体は倒れ、残りの2体は直立したままだった。
「(っ!まずい!)」
「サシャとコニーだ……!」
「急げ援護!」
「あ…あの……う、後ろから突然……た、大変失礼……しました……」
仕留めきれず残った巨人はサシャとコニーの方へと向かう。
「すいませんでしたあああぁぁああああ!!」
サシャは飛びかかってきた巨人の攻撃を回避する。そして倒れ込んだ巨人に炎の一閃が浴びせられた。
「炎の呼吸 壱ノ型・不知火」
サシャに襲いかかった巨人を仕留め、すぐさまコニーのいる方へ飛び上がり、
「参ノ型・気炎万象!」
炎を纏い、上から下へと弧を描くように刀を振るい、巨人のうなじを斬り取ったので、巨人は全員消滅した。まさに危機一髪である。
「あああああ!!リィィン!助かりましたあああぁあ!」
「怪我はないかサシャ?コニーも?」
「おかげさまで!」
「す、すまねぇな……助かったぜ、リン」
クリスタを除くと、ミカサを含めこの場にいた全員が呆然とする。リンの剣が炎を纏い、瞬きする刹那の間に二体の巨人が仕留められていたからだ
「っ!全員仕留めたぞ!補給作業に移行してくれ!」
リンの剣技に思惑する104期生達は我にかえり、すぐさま全員が補給作業へと移る。
「いいぞ!一気に運べ!」
「巨人が入って来ない!あの巨人が暴れてるおかげだ!」
次々と訓練兵達はガスを補給し、壁の上へと向かって行った。
ガスを補充できた104期生達が壁へと向かうその最中のことだ。
「何とか無事に壁まで戻れそうだ。一時はどうなるかと思ったぜ」
「あの奇行種のおかげでなんとかなったのはいいけど、あの奇行種…結局何だったんだろう?」
「今は、奇行種としか言えんな……」
「けど、そいつのおかげで…俺達はこうやって壁まで向かってんだ。まさか巨人に感謝する日が来るとは思わなかったけどな…」
「(あの奇行種、超大型と同じで、うなじ辺りに人のような形があったような…それ以外の巨人にはそれはなかった……まさかとは思うが)」
「リン!危ない!!」
リンはある考えがよぎるが、クリスタの声で我に帰り前を見ると巨人がリンに向けて手を振りかぶろうとしていた。しかしリンは冷静に呼吸を行う。
「(日の呼吸 拾壱ノ型・幻日虹)」
リンは幻影と化した為、巨人の攻撃は不発に終わる。そして、リンは巨人のうなじに回り込み、
「日の呼吸 弍ノ型・碧羅の天」
着地と同時に、火の円を作り巨人のうなじを削ぎ落とすと、巨人は倒れ込み消滅し始める。
「(今回の戦いで分かったことがある。全集中の呼吸…間違いなく巨人にも通用する技法だ。クリスタの言う通り、今の俺なら…武器さえ揃えば立体起動なしに巨人が倒せる)」
「リン!大丈夫⁉︎」
安全を確認したクリスタがリンに駆け寄る。
「ああ、大丈夫だ。すまない…気を抜いていた」
「……そう言うことにしておいてあげる」
クリスタは何やら察したようであえて何も言わなかった。クリスタはリンが何か重要な事を考えていることに気づいていたからだ
「なぁ、ユミル、リンのあれは何なんだ?」
「私が分かるわけないだろ…」
「俺さ…夢でも見てるのかな?建物を立体起動なしに飛び越えたり、リンの剣に炎が纏ったり、幻に、雷みてえな音を出した剣……はは、俺、本当に馬鹿になっちゃったのかな?」
今でもリンの剣技や身体能力が信じられずにいるコニーの頬をユミルは突然つねった。
「イッテー!何すんだブス!」
「現実に連れ戻しただけだ…正直言って…私も意味がわからねぇんだよ。お前がアルミンの方に行ってる間、私は水も見た」
「水⁉︎……もしかしてリンって、想像よりもヤバいやつなのか?」
「かもしれないな……はっきり言ってありぁ、本物の、バケモンだ…」
リンの底知れない何かに恐怖を覚えたユミルはさておき、四人は無事に壁まで到達できた。
しかしこの後、事態は大きく動き出すことになる。
リヴァイに全集中の呼吸(常中を含め)を習得させるかさせないか
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習得させる
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必要ない
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作者に任せる