スーパーロボット大戦//サイコドライバーズ:Re   作:かぜのこ

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αll-1「紅の隼」

 

 

 マオ・インダストリー社。

 白き宇宙戦艦――《ナデシコB》がマオ社専用のドッキングベイに接続した。

 対岸へと延びたタラップを通り、数名の男女が歩いてくる。

 

「なんか久し振りな気がするなぁ、マオ社に来るの」

 

 特徴的なクロークを着る蒼いメッシュの入った銀髪の少年が先頭を行く。

 イング・ウィンチェスター。知る人ぞ知る旧SDF艦隊が誇るエースパイロット。そして、裏社会にその名を轟かす国際警察機構のA級エキスパート、汎超能力者“ワンゼロワン”とは彼のことだ。

 

「そうだな。時間にすれば半年足らずだが、その間にいろいろあったものな」

 

 傍らで感慨深げに応じるのは桃色の髪の少女。身体の線が大胆に露わになった黒いスーツを着用している。

 アーマラ・バートン。ワンゼロワンのパートナーにして国際警察機構のエキスパートであり、潜入・工作任務をこなす優秀な兵士。大型拳銃を好んで扱うことから、一部では“レディ・マグナム”なる異名で呼ばれていたりもする。

 

 タラップを降りた二人を見送るために、連邦宇宙軍の制服を着た少女と青年が見表れた。

 アーマラは振り返り、礼を言う。

 

「道中ありがとうございました、ホシノ艦長」

「どういたしまして。ところでお二人とも、当艦《ナデシコB》の乗り心地はいかがでしたか?」

「ええ、軍艦とは思えないくらいによかったです」

「さすが新型艦です。旧ナデシコも快適でしたが、さらに向上されているのでは?」

「ふふふ、そうでしょう。居住性の高さは、ナデシコ級のウリですから」

 

 連邦宇宙軍の白い制服を着た少女、ホシノ・ルリ。かつては《ナデシコ》のメインオペレーターを務め、連邦軍上層部の意向で少佐という階級に就いているが、政治的な理由だけではない確かな実力を持ち合わせている。人呼んで“電子の妖精”。

 なお、バルマー戦役当時の彼女を知るアーマラの「成長しすぎでは?」という素朴な疑問には、「成長期ですから」の一言でうやむやにされている。

 

「ああ、少佐、道中気をつけて。例の基地、どうにもきな臭い」

「それは、汎超能力者(サイコドライバー)としてのインスピレーションですか?」

「ええ」

「……わかりました、警戒を厳にして向かうことにしましょう」

 

 イングの忠告を受けて、ルリはわずかに表情を改めた。

 現在《ナデシコB》に与えられた任務は、月のとある連邦軍基地で開発されたという人型機動兵器“メタルアーマー”の調査である。

 “赤い彗星”シャア・アズナブルの反乱が顕在化した今、地球連邦政府は内外の動乱にかなり過敏になっていると言わざるを得ない。

 

「それにしても、以前のようにルリって呼んでくれてもいいんですよ、アーマラさん」

「いや、それは……」

「ホシノ少佐。オレたちは一応、任務中ですので。公私のケジメはつけませんと」

「そうですか、残念です」

「君、意外にマジメだよねぇ。元ロンド・ベル隊だっていうから、もっと砕けてんのかと思ったけどな」

「イングの場合は、任務中だけだがな」

 

 副官にして護衛のタカスギ・サブロウタが、ルリの後ろで感心したように述べている。

 

「それでは、私たちは任務に戻ります」

「後武運を」

「はい。それとアーマラさん、ラトゥーニたちにちゃーんと連絡してくださいね?」

「あ、ああ、わかってるとも。うん」

 

 ()()()()()()のルリに念を押されたアーマラはかつてのように返し、苦笑を浮かべたのだった。

 

 

 《ナデシコB》の面々と別れた二人は、雑然とした格納庫内を進む。

 ビアン・ゾルダーク及びシュウ・シラカワ不在によりDCが解体された現在、地球圏で稼働しているパーソナルトルーパーの部品製造、メンテナンス等を一手に引き受けることとなったマオ・インダストリー社はそれなりに繁盛していた。

 

「アッシュはそのまま、第13番格納庫に移送してください!」

 

 油汚れの目立つ作業員を着た青年が、メカニックたちに指示を飛ばしている。その傍らには、中華風の蒼い平服を着た女性が手元の端末をしきりに操作していた。

 イングとアーマラがその二人に近付いていく。

 それに気づき、青年が振り向いた。

 

「リョウト! リオ!」

「イング! 久しぶりだね」

「ふふ、アーマラも、イングと仲良くできてるみたいね」

「そうでもないぞ、リオ」

「照れるなよ」

「照れてない!」

 

 面差し穏やかな作業着姿の青年、リョウト・ヒカワ。青い中華風の平服を着た凛々しい女性、リオ・メイロン。

 二人はイングにとって命の恩人であり、バルマー戦役をともに戦い抜いた戦友だ。

 

「マオ社での仕事、上手くやれてるみたいだな、リョウト」

「まあね」

「聞いてよイング、リョウト君ったらカークさんに新作PTのデザインを任されたのよ! すごいでしょ?」

「マジで!? うん、スゴいじゃん」

「い、いや、デザインって言ってもカークさんにだいぶ手直しされたから……」

「それでも十分だろ」

 

 旧交を深める三人、アーマラはクールに佇んでいる。

 雰囲気こそどこかつまらなさげだが、親しいものがその表情を見れば彼女の気分が弾んでいることに気づくだろう。

 とはいえ、今回の目的も忘れてはいない。

 

「それでリョウト、私の新しい機体は?」

「うん、そうだね。案内するよ」

 

 リョウトの案内で格納庫内を進む。

 イングとアーマラの前に、塗装も真新しいパートナートルーパーが現れた。

 赤と白に塗り分けられた丸みを帯びた細身のデザイン。シルエットから、《ヒュッケバイン》系のHフレームを用いていることがわかる。背中に取り付けられた二対の可動翼(フライトユニット)は、テスラ・ドライブであろう。

 機体の前でスタッフに指示出ししていたカーク・ハミルが、イングらに気がつく。彼は挨拶もそこそこに、いつもの事務的な口調で機体の解説を始めた。

 

「PTX-016L“ビルトファルケン・タイプL”。ゲシュペンストMkーII改“ヴァイスリッター”のコンセプトを引き継いだ、試作型パーソナルトルーパーだ」

「ビルトファルケン……エクセレン少尉のヴァイスの後継機とはな」

「アーマラはATXチームに居たことがあるんだっけ」

「ああ、バルマー戦役のときにな。彼女にはまあ…… 世話になった。色々な意味でな」

「兄弟機とのコンビネーションを想定した機体だが、そちらはまだ未完成だ。代わりにアッシュと釣り合うように、単体での戦闘力を引き延ばす方向でセッティングしてある」

「ん、あの火器は……?」

 

 新しい愛機をしげしげと眺めていたアーマラが何かに注目する。《ビルトファルケン》の左手に保持された特徴的な銃器に、彼女は見覚えがあった。

 その既視感をカークが肯定する。

 

「そうだ。バスタックス・ガン、解体されたガリルナガンの携帯武装をダウンサイジングしたレプリカだ。ファルケン本来の主武装とは違うが、お前ならば使いこなせるだろう」

「念動力者であるアーマラが搭乗することを想定して、最新式のTーLINKシステムと念動フィールド、それからゲシュペンストMkーIIのスラッシュ・リッパーを念動兵器化したTーLINK・リッパーを新たに搭載してあるよ」

「確かに、私にはお誂え向きの機体だ。ありがとうございます」

 

 カークの挑戦的な物言いに、リョウトが補足する。アーマラは珍しく興奮しているのだろう、やや紅潮したした面もちで二人に礼を言った。

「ほーぅ……」まさしく専用機と言っていい仕上がりに、イングは感嘆をもらした。

 

「まさにいたせりつくせりじゃねーの。よかったな、アーマラ」

「私の実力を鑑みれば、当然の処置だな」

 

 大袈裟におどけて見せ、自信満々に胸を張る相方にイングが小さく笑みをこぼした。

 アーマラはその小さな表情の変化を目ざとく見咎める。

 

「……何だ、何がおかしい」

「いや。お前も変われば変わるもんだなって思ってさ」

「……変わって悪いか」

「いや、悪かないさ。むしろ、今のお前の方が断然魅力的でオレは好きだぜ?」

「ばっ、馬鹿なことを言うな!」

 

 アーマラが先ほどとは違った意味で顔を赤らめた。

 人生経験が偏っているウブな彼女は、イングの恥ずかしい発言に取り乱すことが多い。

 

「はいはい。イチャイチャしないの」

「イチャイチャなどしていない!」

「オレは別にしたってかまわないぞ」

「私がかまうっ!」

「まあまあ」

 

 リオとイングに混ぜっ返されて、があああっとまくし立てるアーマラをリョウトがなだめる。

 未だ混乱している様子の相方を放置して、イングは内心気になっていた懸念をカークにぶつけることにした。

 

「それでカークさん、オレのアッシュはどうなるんです?」

「ああ。TーLINKシステム周りを最新式に換装して、例の()()()をコクピットに組み込む予定だ。リョウト」

「はい。TーLINKフレーム、アナハイムと共同で開発した新しいTーLINKシステムですね」

「確か、リョウトの発案なんだよな。やっぱお前、才能あるよ」

「そ、そんな。サイコフレームの理論を応用しただけだし……、僕なんてまだまだだよ」

 

 褒められ慣れていないらしいリョウトは、恥ずかしげに謙遜する。

 ニヤニヤと生暖かい視線に気づき、仕切り直すようにリョウトは苦笑した。

 

「じゃあアーマラ、さっそくだけどファルケンの調整を――」

 

 リョウトの言葉を遮るように、けたたましい警告音が響き渡る。

 庫内がにわかに騒然とした。

 

「警報……敵襲か!?」

「リョウト君、みんな、これを見て!」

 

 リオの声に、手近なモニターに取り付く一同。

 外部カメラが捉えた月面の映像が映し出される。

 

「どうやらナデシコBと、それにあの戦闘機……コスモクラッシャー隊が迎撃に出ているようだな」

「相手はボアザン星人のスカールークと円盤兵器か。だけど、見たことのない機動兵器もいるね」

「あの頭でっかちな大型機はともかく、PTやMSよりも小さい機体……機動が単純だし、無人機かしら?」

「デザインや設計思想からみて、同一の文明によるものとは考えづらい。最低でもボアザン星を含めて三つの文明が関わっているとみて間違いないだろう」

 

 アーマラ、リョウト、リオ、カークがそれぞれ意見を述べる。

 

「さしずめ異星文明同士による連合軍ってとこか……やっぱバルマーか?」

「わからないが、奴らが敵であることに違いないだろう」

 

 難しそうに眉間にしわを寄せるイングの疑問に、アーマラがごくシンプルに答えた。

 そりゃそうだ、と苦笑するイングは気を取り直し、カークに問う。

 

「カークさん、アッシュは?」

「無理だ。改装作業のために解体を始めてしまっている。今から組み直しても、戦闘には耐えられないだろうな」

「っち、よりにもよって!」

 

 舌打ちするイング。この月面都市に配備されているであろう、乗り慣れた《量産型ヒュッケバインMkーII》を借り受けようかと考える。

 そんなパートナーの思案を読み切って、アーマラが言う。

 

「イング、迎撃には私が出る。ファルケン(コイツ)の慣らしにはちょうどいい相手だろう」

「! ぶっつけで行けるのか、アーマラ」

「無論だ。私を誰だと思っている」

 

 心配するパートナーを余所に、アーマラは自信たっぷりに笑みを浮かべて見せた。

 彼女の意志が固いことを見て、イングが折れた。

 

「カークさん、お願いします」

「いいだろう。アーマラはファルケンのコクピットに。TーLINKシステムのセットアップを始めよう。すでにパーソナルデータは入力済みだから直ぐに終わる」

「了解っ」

「リョウト、TーLINKシステムのオペレートを頼む」

「はい!」

 

 言われるや否や、アーマラは軽やかな身のこなしでタラップを駆け上り、瞬く間に《ビルトファルケン》のコクピットに収まった。

 見慣れた配置のコクピット。操縦席はPT共通だ。

 事態は緊急を要する、パイロットスーツに着替える余裕はない。もともと、今身につけているバトルスーツ自体にもそれなりの対G機能は備わっているから問題はないだろう。ベルトでシートに体を固定する。

 TーLINKシステムとのリンクに伴う軽い頭痛に懐かしさを感じつつ、アーマラはシート脇のキーボードを引き出しOSの調節を始める。PTパイロットとして、こればかりは他人に任せるわけにはいかない。

 

『よしっ! TーLINKシステム、コンディションオールクリア!』

「TCーOS設定終了、いつでも行けます」

『わかった。カタパルトに機体を回すぞ』

「はい」

『死ぬなよ、アーマラ』

「ああ。イング、お前とアッシュは私とこのファルケンが守ってやる。だから心配などせず、私たちの戦いを観戦していろ。大船に乗ったつもりでな」

『ははっ、わかったよ』

『アーマラ、気をつけてね』

「大丈夫だ。お前たちの造ったパーソナルトルーパーを信じろ」

 

 イングらの言葉に受け答えをし、アーマラは通信を切る。メンテナンスベッドから、《ビルトファルケン》が発進用カタパルトに移動する。

 正体不明の敵が相手だが、アーマラの胸中には恐怖も不安もなかった。自身のパートナーであり、かつては八つ当たりの対象にもしたイングの見ているところで無様な姿をさらすつもりはない。

 

「ファルケン……お前の性能、確かめさせてもらうぞ。――アーマラ・バートン、ビルトファルケン、発進する!」

 

 カタパルトから打ち出された(くれない)の隼が、宇宙の闇に羽撃(はばた)いた。

 

 

 

    †  †  †

 

 

 

 新西暦188年 □月○日

 地球圏、月 マオ・インダストリー社

 

 新型機《ビルトファルケン》の受領、とんだことになったな。

 ボアザン星の《スカールーク》に率いられたアンノウンの一団が、マオ社のある月面都市に突如襲来した。無論、すべて返り討ちしてやったが。

 月まで同乗した《ナデシコB》は異星人勢力の再来を受けて一時任務を中断し、ロンド・ベル隊の本拠地、コロニー「ロンデニオン」に向かうこととなった。

 私は、共闘した「コスモクラッシャー隊」の長官にして国際警察機構の九大天王、大塚長官の依頼で《コスモクラッシャー》隊と一緒に《ナデシコB》に同行する。

 なお、イングは《アッシュ》の改装作業を待つため、マオ社に留まるという。鉄砲玉みたいな奴だが、実力は折り紙付きだ。心配はいらないだろう。

 

 しかし、《コスモクラッシャー》隊の明神タケル、あの男の念はなんだ? イングに匹敵するか、あるいはそれ以上だろう。イング自身もかなり気にしていたし。

 念動力者ではないとの話だが、警戒する必要があるな。

 

 追記

 《ナデシコB》の艦長、ホシノルリ少佐に「ラトゥーニとちゃんと連絡を取るように」と注意を受けてしまった。どうやら、心配されていたようだ。前から仲がよかったが、あの二人今はペンフレンドらしいしな。

 シンディ退役少尉が双子を無事出産したらしいし、後で近況報告と贈り物をしておこうと思う。

 

 

 

    †  †  †

 

 

 

 コロニー、ロンデニオン。

 《ナデシコB》に同乗して入港したアーマラは今、ロンド・ベル隊の隊舎ビル内にある小会議室にいた。

 アーマラの前に立つアムロ・レイは、二人の少年少女を連れている。銀髪をショートヘアにした勝ち気そうな少女と、紫色の髪のどこか能天気そうな少年だ。

 

「大尉、その二人が先日転属してきたという?」

「うん。ゼオラとアラドだ。二人とも、自己紹介を」

「ぜ、ゼオラ・シュバイツァー曹長でありますっ!」

「同じくアラド・バランガであります! あ、階級は曹長ッス」

「ばかっ! 真面目に自己紹介しなさいよっ」

「ちゃ、ちゃんとやったじゃんかよ」

「どこがちゃんとよ! 昨日あれだけ練習したのに!」

「いててっ」

 

 反射的に反論するアラドに、ゼオラが我を忘れて襲いかかっている。わちゃわちゃとじゃれ合う新人二人をアムロが微笑ましそうに見ていた。

 どうやらロンドベルにはすぐにでも馴染めそうだな、とアーマラは小さく苦笑した。

 

「アーマラ・バートンだ。所属は国際警察機構だが、連邦軍では少尉相当官となる。よろしく頼む」

「よろしくお願いしますっ!」

「よろしくッス!」

「彼らは君と、それから合流したらイングに任せたいと考えているんだ。新兵と思って差し支えはないから、よくしてやってほしい」

「了解しました」

 

 アムロの要請に、アーマラは頷く。なお、学習しないアラドが、学習したゼオラに睨まれて冷や汗をかいている。

 同じパーソナルトルーパーのパイロットということで、アーマラとイングに白羽の矢が立った。とはいえ、肝心のイングは未だ月面で足止めを食らっているのだが。

 

「しかし、お忙しそうですね大尉」

「ははは、そうだね。部隊の再編や新人教育などに大わらわさ」

「他の新人というと……あのS(スペリオルガンダム)という新型の?」

「ああ、リョウ・ルーツ少尉。スペリオルのテストパイロットから、こちらに転属してきたんだ。……カミーユやジュドー、ウラキ少尉に比べると少しヤンチャだが――まあ、若い頃の竜馬たちに比べればかわいいものだよ」

 

 若き日の戦友を話題にし、アムロは軽やかに言う。アラドとゼオラの目が、心なしか目キラキラとさせている。“巨神戦争”の英雄が同じ英雄を語る姿に感動でもしているのだろう、とアーマラは察した。その気持ちはよくわかるので。

 

「スペリオルは強力なマシンだが、その分操縦難度もずば抜けて高い。ルーツ少尉もよくやっているとは思うが、まだまだ性能を引き出し切れているとは言いがたいからね。訓練は必要さ」

「なんでも、Z計画のモビルスーツだとか?」

「うん。ダブルゼータとは兄弟機みたいなものだよ」

 

 MSA-0011 (MSZ-011)《スペリオルガンダム》――《ゼータガンダム》の流れを組む、アナハイム・エレクトロニクス社の試作型モビルスーツだ。

 Ζ計画における“究極のガンダム”を目指して開発した第4世代MSに分類される機体で、開発当初のコードネームは「ι(イオタ)ガンダム」。《ΖΖガンダム》と同時期に開発が始まった機体であるがその開発は難航し、バルマー戦役には間に合わず、今年に入ってようやく実機によるテストに漕ぎ着けた。しかしネオ・ジオンの決起に合わせて急遽、試作機の運用経験が豊富なロンド・ベルに配備されたという経緯がある。

 

 その専任パイロットであるリョウ・ルーツ。

 年齢は22歳。地球連邦所属の新兵で一年戦争で父は戦死、母は研究に没頭するあまり家庭を放棄したあげく事故死(その境遇に、アーマラは少しシンパシーを感じた)。

 髪を逆立て、その三白眼で人を睨みつけ、罵詈雑言を交えないと人と会話が出来ないのかというくらい言語に品がない粗暴な人物で、「軍服を着たヤクザ」という士官学校の評価も残るほど。優秀であるため、軍も致し方なく彼を置いているがそうでなければ放逐されても仕方のない男だ。 

 アーマラは直接の面識はないが――イングのように誰彼構わず接触したりしない――、伝え聞く所によるとかなりの「問題児」らしく。実際、ロンド・ベルに転属してきた際も、教官役のバニングに早速噛み付いて模擬戦で散々にやられたという。広く名の知れた英雄であるアムロならともかく、歴戦とはいえ無名(不死身の第四小隊はマイナーだ)と言ってもいい相手、それも《ジム・カスタム》に惨敗したのがよほど堪えたらしく、今はそれなりに従っているようだ。

 アーマラに言わせれば、ロンド・ベル隊にやってくる者で優等生など――自分も含めて――は少数派だ。リョウ・ルーツは現在バニング大尉の隊に配属され、先達たちにしごかれているとのことである。

 

「さてと、じゃあ、アーマラ、あとは任せるよ」

「はい、お疲れさまでしま」

 

「「お疲れさまでした!」」

 

 三人に見送られ、軽く手を上げて応じたアムロは足早に去っていった。彼はロンド・ベル隊のモビルスーツ隊大隊長として忙しい身だ。

 自動ドアが閉まるのを確認したアーマラは振り返り、程度の違いはあれど緊張した面持ちの両名を見やりながら切り出した。

 

「まずは二人とも座れってくれ。ここは一日借りているから、今日は軽くレクリエーションといこう」

 

 いそいそと席に座る二人に飲料水のボトルを渡しながらアーマラは、内心で嘆息した。慣れぬことだが、自身の上官だったカイ・キタムラやキョウスケ・ナンブらの振る舞いを思い出し、何とかやるしかない。もっとも、エクセレン・ブロウニングのような――一見、能天気とも言える――インファイトスタイルは相棒(イング)の領分だが。

 二人の対面の席についたアーマラは、タブレット式の情報端末を起動させた後、口を開く。

 

「先にも述べたが、私は少尉()()()なのでな。階級で呼ぶのはいささか不適切だから、名前か、さもなければ「副隊長」と呼ぶように。いいな?」

「はい! よろしくお願いします、アーマラ副隊長!」

「了解ッス、アーマラさん。……あ、副、ってことは」

「ああ、まあ……、私のパートナーというやつでな。そのうちヤツも合流するだろう」

 

 前置きをしたところで、面談を始まることにした。

 

「さて……先に経歴を読ませてもらったが、お前たちは()()“スクール”出身らしいな?」

「は、はい」

「いや、責めているわけではない。私もかつては特脳研という研究機関に居たことがあるしな」

 

 顔色を悪くしたゼオラを、アーマラは苦笑を浮かべて宥める。

 

(――カウンセラーの診断によると、両者ともに中度の精神誘導の痕跡有り。特にゼオラは、ティターンズを崩壊させたプリベンター及びロンド・ベルに対しての拒絶感と恐怖心がみられる。アラドはそうでもないらしいが、これは単純に性格の違いだろうな)

 

 恐縮しっぱなしのゼオラといい意味で力の抜けた様子のアラドを見比べ、アーマラはそう推測した。

 「スクール」――今は無きティターンズの兵士養成校のようなもので、孤児など少年少女を集めて教育()()を行っていた。しかし、未来世界で戦ったアンセスターの黒幕とも言える科学者、イーグレット・フィフがかつてスクールに在籍していた事実だけでも、どのようなことが行われていたかわかるというものだ。

 自分が引き取られた先の特脳研が()()()()()()な研究機関でよかったと、アーマラは常々思っている。ムラサメ研を代表とする“ニタ研”や、スクールなどろくでもないところだったらどうなっていたことか。

 

「それで、ティターンズ崩壊後はゴップ議長に拾われたと」

「はいっ、閣下にはよくしていただきました!」

「ヤザン大尉とイングリッド姐さんに、ビシバシ鍛えられたッス!」

「イングリッド……ああ、議長が養女にしたという」

 

 ゴップ退役元帥は、かつては地球連邦軍統合参謀本部議長として“巨神戦争”の終結に尽力し、現在は地球連邦議会の議長を勤める人物だ。またアーマラとイングの、国際警察機構の職務上の“お得意様”でもある。

 自身のことを「人類の寄生虫」などと自虐し、実際のところ清廉潔白な人物では決してないが、ジオンのモビルスーツをいち早く脅威と見抜き「V作戦」を後押しする、スーパーロボットを集めてホワイトベース隊を結成させる、ティターンズ・エゥーゴなどの軍閥とは距離を置く、SDF艦隊の活動を政治の分野から後援するなど、現実的な実利を優先し主義的な差別意識を表さない。ただ、元ジオンの強化人間の少女を養子にするのは、正直どうなんだとアーマラはこっそり思っている。

 

「それで、「ナイト・シーカー隊」の一員として活動中、ネオ・ジオンと遭遇。交戦するも隊は壊滅的……そこにシャアが居たんだな?」

「はい……」

「生き残ったのは、おれたちとヤザン大尉、それからイングリッド姐さんだけでした」

「そうか。……ヤツは、シャア・アズナブルと相対してどうだった?」

「強かったです、とても」

「おれたち、手も足もでなくって……」

 

 少し青ざめた様子のゼオラ、アラドは悔しそうに俯いていた。

 報告書によると、赤いカスタムタイプの《ディジェ》と思わしき機体に乗ったシャア・アズナブルらと交戦したという。新兵に毛が生えた程度の二人がこうして生き残れたのは、先任たちの犠牲の上のものだ。

 アーマラは言葉を選びながら二人を宥めることにした。

 

「相手はあの“赤い彗星”だ、私とて一対一ではどうなるかわからん。ヤツと対等に渡り合えるのは、アムロ大尉や兜甲児博士ら“巨神大戦の英雄”くらいのものだろう」

 

 落ち込む二人を励ますため、アーマラは私見を述べた。

 イージス事件の際には、僅かな期間だが直接の上官だった相手だ。知らぬ相手ではないし、シャアが決起の理由とした地球連邦政府の腐敗ぶりには、アーマラとて思うところがないわけがない。アラドとゼオラの境遇を考えればなおさらだ。

 しかし、未だ様々な外敵という脅威が存在する中、連邦政府やコロニーなどの統治を揺るがしてどうしようというのか。政府内部での改革に見切りをつけ、武力による革命を選んだのはなぜか。アーマラには、何か別の目的があるように思えてならなかった。

 

 ともかく、公人として聴きたいことは聞けた。沈んだ空気を切り替えるように、アーマラは次に個人的に聴いておきたい話題を話すことにした。

 

「ところでお前たち、ラトゥーニという名前に心当たりは?」

「えっ、ラトゥーニだって!?」

「あの、少尉はラト、ラトゥーニをご存じなんですかっ?」

「ああ、やはり知り合いか。彼女と、それからホシノ少佐もだが、前大戦では同じ艦に乗っていた。極東支部に所属しているそうでな、今の上官は私の新任の時の教官だった方でそう無体な扱いもされていないと思う」

 

 ラトゥーニ・スゥボータ、アラドたちと同じ「スクール」の子どもたちの内の一人。機動兵器の操縦に天才的な才能を持つ14歳(バルマー戦役当時)。肉体強化処置と訓練を受けて大の大人顔負けの働きも出来る少女だが、「スクール」での経験で極度の対人恐怖症を患ってたこともある。

 バルマー戦役の中、紆余曲折あって《ナデシコ》隊の一員として戦乱を生き抜いた。保護者とも言えるジャーダ・ベネルディとガーネット・サンディが結婚を機に軍を退役したあとも、連邦軍に残っているという。

 幼いといっていい年齢のラトゥーニだが、アーマラの恩師とも言えるカイ・キタムラの下にいるなら、心配は要らないだろう。

 とはいえ、今の極東地区の長官はあまりいい噂を聞かない人物だが――

 

「ロンド・ベルに所属していれば、極東地区に行くこともあるだろう。とりあえずホシノ少佐から連絡先を預かっているから、あとでメールの一つでも送ってやるといい」

「はいっ、ありがとうございます!」

「ありがとうっス! ……これでオウカ姉さんたちの居場所もわかればなぁ」

「オウカ……、「スクール」の同窓か?」

「はい、オウカ姉様――オウカ・ナギサは私たちの中で一番年上で、一番成績のよかった人でした」

「落ちこぼれだったおれにもよくしてくれたッス」

「でも、「スクール」がなくなってから、みんな散り散りになってしまって……」

「おれたち、みんなの行方を探してるんです。どうなるかわかんねーけど、生きてんのかもわかんなきゃ何も始まんないし」

「そうか、お前たちは家族のために戦っているんだな……」

 

 仲間、いや家族の行方を掴み、二人が顔を見合わせ笑みを見せ合う。そんな様子に、アーマラは複雑な思いを抱いた。

「あの、アーマラ副隊長?」ゼオラが気遣わしげな目を向ける。

「いや、なんでもない」アーマラは(かぶり)を振って表情を引き締めた。

 成り行きで兵士をしていると言っていいアーマラは、二人のことを少し羨ましく感じていた。彼女の両親は、ジオンのコロニー落としとその後の戦争の余波で亡くなっている。

 

「……よし。前置きが長くなってしまったが、卓上でフォーメーションの確認。そのあと、シミュレーターを使っての訓練だ」

「はい!」「了解ッス!」

 

 

 

    †  †  †

 

 

 

 新西暦188年 ×月■日

 地球圏、衛星軌道上 ロンデニオン

 

 コロニー・ロンデニオンに到着した。

 ロンデニオンには任務を終えたペガサス級の新造艦《アルビオン》が帰港しており、私は再会したロンド・ベル隊のメンバーに《ナデシコB》のメンバーを引き合わせた。

 ブライト艦長は、ホシノ少佐のあまりの若さにやや微妙な面もちをしていたのが印象的だったな。

 

 それから、部下としてアラド・バランガ、ゼオラ・シュバイツァーの両名を紹介された。

 二人はあの悪名高い「スクール」出身の元ティターンズ兵で、ティターンズが崩壊してからはゴップ議長に拾われて私兵的な立場で任務に当たっていたとのこと。シャア・アズナブルの追跡任務をあのヤザン・ゲープルらと行っていたらしいが、部隊は壊滅。生き残った二人は大将の口添えでロンド・ベルに転属してきた。

 ブライトキャプテンとアムロ大尉は、私の経歴から彼らの指導役に選んだのだろうな。

 二人の乗機は《量産型ヒュッケバインMk-II》、グレーの落ち着いた配色に《ジム》を思わせるゴーグルタイプの頭部を持つ正式量産型だ。

 イージス事件当時の先行生産機とは違い、テスラ・ドライブを標準装備している最新モデルだが、それ以外はいたって普通の機体だ。フレームはH系ではなくゲシュペンストのG系だし、グラビコン・システムやチャクラム・シューターも付いてない。まあ、腐っても最新鋭のPTだし、性能については及第点、新兵にはむしろ少し過剰かとも思える。ともかく、私がフォローに回れば生き残らせることは可能なはずだ。

 イングと合流したのち、武装なりをカスタマイズしてやろうと思う。

 

 

 

 新西暦188年 ×月●日

 地球圏、衛星軌道上 ロンデニオン

 

 クロスボーン・バンガードの残党がロンデニオンを強襲した。

 殺戮兵器《バグ》を用い、ロンデニオンの住人を虐殺しようとする奴らに対し、もう一つのクロスボーン・バンガード、宇宙海賊の《マザーバンガード》が現れて連中の撃退に成功した。もちろん、ロンデニオンに被害は出ていない。完勝だ。

 面倒をみることになったアラドとゼオラだが、個々人としては及第点の腕前でコンビとしては目を見張るものがあった。完全な新兵というわけでもないらしいし、問題点がないでもないがそれはおいおい修正していけばいいだろう。

 

 宇宙海賊の中に国際警察機構の掴んでいた情報にはない機体、白いアーマードモジュールの姿があった。

 ずいぶんと危なっかしい操縦だったが、パイロットは素人か?

 

 宇宙海賊についてだが、自ら正体を明かすまでこちらから説明する必要はないだろう。一応、味方であることはそれとなくブライト艦長らに話しておいたが、私には知ったことではないしな。そこまで面倒は見きれん。

 

 

 

 新西暦188年 ×月♯日

 地球圏、衛星軌道上 ロンデニオン

 

 地球から《大空魔竜》が火星に到着した新たな異星人、バーム星人との会談のために寄港した。

 お馴染み兜甲児博士、流竜馬氏、一文字號らゲッターチームを筆頭とした日本地区の特機乗りの他に、何名か新顔が同行していた。

 《鋼鉄ジーグ》こと司馬宙。《大空魔竜》専属の特機《ガイキング》のパイロット、ツワブキサンシロー。元リクレイマーの伊佐未勇ら「ブレンパワード」を要するノヴィス・ノアのメンバー。火星で代表役を任された竜崎博士の息子、《ダイモス》の竜崎一矢らだ。

 ドクーガにつけ狙われている《ゴーショーグン》の「グッドサンダーチーム」と真田ケン太なんてのもいるな。「ビムラー」という超エネルギーを狙ってのことだそうだ。ありがちだな。

 

 ああ、そういえば、恐竜帝国復活の兆候がある関係で極東地区に残っている神大佐に代わり、南風(みなみかぜ)渓少尉がゲッターチームのお目付け役として同行している。本人も支援機《レディ・コマンド》(巨神戦争時にも使われていた機種だが、さすがに新造したものらしい)で戦闘に参加するようだが、新任だし少尉は少し抜けた印象があるから少し心配だな。

 それから、兜博士のアシスタントとして同行しているリサという少女。彼女は、世界最大級の光子力エネルギープラントのあるマウント富士の地下より発掘された巨大人形ロボット、通称「《INFINITY》」の中で眠っていた少女型アンドロイドで、全身の91%が生体パーツで構成されている。その名前は、「LARGE INTELLIGENCE SYSTEM AGENTS」の頭文字を取って名付けられたという。

 今回、兜博士が連れてきたのは「社会勉強」ということらしく、リサの振る舞いはまさにおのぼりさんだ。

 しかし、見た目完全な少女に「ご主人様」と呼ばせているのは、正直どうかと思う。

 

 

 さておき、《大空魔竜》には私的に見逃せない人物が二人乗っていた。

 クスハ・ミズハとゼンガー・ゾンボルトである。

 

 クスハ・ミズハ、SDF艦隊ロンド・ベルの一員としてバルマー戦役を戦い抜いた強念者。日本地区で静かに暮らしていたが、傷だらけの《龍王機》と黒く染まった《虎王機》が現れ、再び戦場に舞い戻った。

 搭乗機は所用(新型パーソナルトルーパー建造などのため?らしい)で秘密防衛組織「GGG」に滞在していたロブの手で蘇った《龍人機》。損傷を《グルンガスト》系のパーツで補ったらしいな。

 ゼンガー・ゾンボルト、未来世界でアンセスターとしてプリベンターと激闘を繰り広げた男。その過去の姿。

 アースクレイドルが地底勢力「邪魔大王国」により破壊されたことで目覚め、敵討ちを胸に黒い《グルンガスト参式》を駆って《大空魔竜》に合流した。

 未来世界でのことを知るメンバーは、彼にそのことを伝えないように口裏を合わせている。変わった未来を、知らなくてもいい情報をわざわざ教える必要はない。

 

 なお、《ナデシコB》は連邦軍からの出頭命令を受け、地上に降りることになっている。

 私も引き続き同行するから、彼らとはここでお別れだ。まあ、また合流するような予感がしているがな。

 

 

 

 新西暦188年 ×月■日

 地球、極東地区日本 ビッグファルコン

 

 連邦軍極東基地、ビッグファルコンに到着した。

 そこで、凍結の一部解除により再開されたSRX計画による特機第四弾となる《ダンクーガ》の後継機、《ダンクーガノヴァ》とチームDが《ナデシコB》に配備された。葉月博士による開発であることは言うまでもないのだが、やや違和感があるな。上手く説明はできないが。

 

 しかし、なんだってあんな民間人たちをパイロットにしているんだか。軍人等、何名かを経てとのことだそうだが、いくら何でも連中は冷めすぎドライすぎだ。私の言えたことではないが。

 特にあの、飛鷹葵とかいう女とは馬が合わん。こういう言い方はしたくないが、生理的に無理だ。感覚的なものだが、同族嫌悪というやつかもしれない。

 そう言えば、イングがあの女の名前を調べていたな。《ノヴァ》のことを掴んでいたのか?

 

 三輪?そんな時代錯誤の原始人は知らんな。

 

 

 

 新西暦188年 △月☆日

 地球、極東地区日本 

 

 突如日本地区に現れ、破壊活動を開始した謎の集団。迎撃に出た《ナデシコB》がその現場、星見町にたどり着いたときにはすでに戦闘が開始していた。

 戦闘を繰り広げていたのは、四肢にタービンを装着した青い特機《電童》と、特機としては標準的な60メートル級のロボット《トライダーG7》。

 《電童》は「GEAR(Guard Earth and Advanced Reconnaissance、地球防衛および高度偵察の略称)」が有する異星文明の機動兵器である。

 同じく地球防衛組織「GGG」とは密接な関係にあり、実質的には同一の組織と言っていいだろう。同じ、異星文明由来の機体を管理しているわけだし。

 「ガルファ帝国」というらしい新たな侵略者を撃退した《電童》だが、パイロットになってしまった二名は日本地区の小学生とのことで、さすがに親元から離すわけもいかず《ナデシコB》には配備されていない。

 しかし、GEARの副指令、ベガとか言ったか? 武装バイクに乗っていたとはいえ、生身で機動兵器と立ち向かうとは。十傑集や九大天王、ガンダムファイターレベルの人間がこうも溢れているなんて、世も末だな。

 

 もう一方の《トライダーG7》だが、こちらも個人、というか企業所有のため、《ナデシコB》には参加しない。今回の出撃も極東支部との契約を履行したにすぎないわけだしな。

 どこぞの無能な長官がなんだかんだと騒いでいたが、前長官との契約を盾にされて黙っていた。ざまぁないな。

 

 

 

 新西暦188年 △月×日

 地球、極東地区日本

 

 異星人襲来、長き沈黙から復活した恐竜帝国など地底勢力の本格的な再侵攻により、地球圏はバルマー戦役に匹敵するほどの大混乱に陥っている。

 我々《ナデシコB》は混乱を鎮める東奔西走、地球を駆けずり回った。

 

 まず、マオ・インダストリー社を襲撃した敵の実体が判明した。

 「ギシン星間連合帝国」、それが奴らの名だ。かつてバルマーに組み込まれていたボアザン星人、キャンベル星人、さらには「暗黒ホラー軍団」ことダリウス星人など、未だ私たちの預かり知らぬ複数の文明を吸収した()()とは名ばかりの銀河帝国であるという。

 どうやら、外宇宙ではバルマー帝国および巨人族たちと戦争をしているらしい。

 

 《コスモクラッシャー》隊の明神タケルを襲った敵の超能力者――ガッチとか言ったか? ともかく、それにより危機に陥った明神を守るように出現した赤いロボット、《ガイヤー》。そしてどこからともなく現れた五体のロボットと合体した姿、《ゴッドマーズ》、強力極まりない念動兵器だ。

 そして同時に、明神タケルがギシン星間連合から送り込まれた破壊工作員、マーズであることも同時に判明した。さらには《ガイヤー》には「反陽子爆弾」が内蔵されており、明神の死により地球諸共爆発するのだという。

 この事実に、《ナデシコB》のメンバーは動揺を隠せない様子だ。有り体に言えば一部のメンバーは拒絶反応を示していた。中立の立場をとっていたホシノ艦長も、やむなく明神を営巣にぶち込んでいたくらいだからな。

 元ティターンズの私にしてみれば、本人の意志が地球を護ることにあるなら受け入れるべきだと思うが。

 生まれが異星だなどと、些末でつまらないことを気にする連中だ。敵ならば討つ、味方ならば助ける。シンプルでいいだろうに。

 とりあえず、このことは三輪には内密にしておくべきだろうな。

 

 まだまだあるぞ。

 物資補給のために立ち寄った極東、佐世保基地。そこに突如来襲した奇妙な形状の巨大戦艦が市街地に無差別攻撃を始めると、正体不明の三機の機動兵器が現れた。声から察するに、幼い子供たちがパイロットだろう。

 その三機が合体した特機《ザンボット3》は敵巨大戦艦を撃退した後、白い戦艦とともにふらりと姿を消してしまった。

 巨大戦艦及び特機、どちらの詳細は不明だ。まあ、パターンから言って直にこちらに合流するだろう。

 

 さらに、富士樹海。

 GEARを通して、「ラスト・ガーディアン」と呼ばれる秘密組織から《ナデシコB》に救援要請が入った。

 急行した我々は邪魔大王国の軍団を撃退する。ククルとかいういけ好かない女を取り逃したのは悔しいが、それはともかく。ついで襲来したのは鉄甲龍の八卦集、《風のランスター》。その名の通り、特機サイズにも関わらず暴風のように速く激しい。

 こちらが迎撃しようとしたそのとき、まるでそれに呼応するかのように白亜の特機が現れ、不可解なほどの圧倒的な力で《風のランスター》を一蹴した。

 この白い特機はラスト・ガーディアンの関係する機体のようだが、詳細は不明である。

 

 また、相も変わらず各地で暴れる擬態獣を駆除する流れで、ダンナーベースの猿渡ゴウと《ゴーダンナー》、藤村静流の《コアガンナー》が隊に合流した。三輪からの圧力を避ける狙いがあるようだな。

 しかし、“巨神戦争”でMIAになっていたミラ・アッカーマンが《ネオ・オクサー》に乗っていたことには驚いた。どうも、バルマー戦役の時に駆除した擬態獣の体内から発見されたらしい。どういうことだ。

 ともかく、二人はあの地獄のように混乱を極めていたバルマー戦役を戦い抜いた仲間である、懐かしさもひとしおというものだ。まあ、当時の私は自分で言うのもなんだが荒れていたので、猿渡や静流にもそれなりに迷惑をかけたとは思うが。

 しかし、杏奈と別居中(所在は掴んでいるようだ)とは。あれか、昔の女が現れて関係がこじれたのか。私としてはなんとも言い難いが、単なるコミュニケーション不足が原因のように思えるな。

 

 と、このように、この僅かな期間にこれだけのことが起きている。

 バルマー戦役やイージス事件での混乱もそうだが、いったい地球はどうなっているんだ。

 

 追記

 北米地区で地下勢力に対する掃討作戦において、剣大佐と《グレートマジンガー》が消息不明となっている。未来世界で戦ったミケーネ帝国の残党や恐竜帝国のこともある、嫌な予感を感じざるをえないな。

 

 

 

 新西暦188年 △月#日

 地球、極東地区日本

 

 ここにきて、最悪と言っていいニュースが飛び込んできた。

 復興中の火星で行われたバーム星人との会談が、失敗に終わったとの情報が届いた。バーム星の指導者リオン大元帥が毒殺、こちら側の代表竜崎博士が殺害された、らしい。

 バーム星人たちは地球に対して宣戦布告、ギシン星間連合と手を組んだらしい。

 さらに、それを受けた形で連邦軍の月基地を母体とするギガノス帝国が独立を宣言、連邦政府に宣戦布告し、噂のメタルアーマーを用いて他の月基地を電撃的に制圧した。

 幸い、マオ社やアナハイム社は制圧を逃れて抵抗を続けているようだ。おそらく、イングの奴もその渦中にいるのだろう。

 

 ところであの火星再開発計画、実のところ木連残党「火星の後継者」と木星帝国の息がかかっている疑いがある。連中に鼻薬を嗅がされた無能な政治家どもの仕業とはいえ、あくまで連邦政府主導の計画であるから迂闊に妨害できないのが口惜しい。

 過去に「闇王子」ことテンカワが「リリアル」ミスマル艦長を伴って何度か襲撃を仕掛けてはいるが、木連残党をいぶり出すには至っていない。

 今回の会談失敗、あるいは木星帝国が裏で糸を引いているやもしれんな。ジュピトリアンは異星人と結託していた前科があるのだし。

 

 《大空魔竜》と《アルビオン》が地球圏に戻るには、それなりに時間がかかる。彼らが帰還するまで、私たちが地球を守らねば。

 

 

 

 新西暦188年 △月□日

 地球圏、衛星軌道上

 

 ギガノス帝国のメタルアーマーを迎え撃つため急遽宇宙に上がった《ナデシコB》は、奴らに追われていた《サラミス改級》を救援した。そこに乗り合わせたメタルアーマーの開発者、ラング・プラート博士と連邦軍の諜報員、ダイアン・ランス少尉を保護した。

 ギガノスを裏切った博士だが、亡命というよりはギガノス指導部との意見の相違が原因だろう。彼自身は、メタルアーマーは地球の脅威に対する剣の一つだと考えていたらしい。

 かつてはDCにも所属し、ビアン博士の友人であったそうだからその思想に共鳴しているのだろうな。

 自身の開発した新型メタルアーマー「D兵器」とともに地球連邦軍に身を投じ、ギガノスの暴走を止めるつもりだという。戦火の種を徒に作ったのだと思っていたのだが、なかなか好人物のようだな。

 だが博士、スリーサイズがどうのとか、セクハラだぞ。ゼオラのヤツが珍しくぶちギレていた。

 

 「D兵器」の最終調整のため、彼とはスペースコロニー「アルカード」の連邦軍に引き渡すことで分かれた。

 彼の造るメタルアーマーが地球圏の混乱を治める力になればいいが。

 

 

 

 新西暦188年 △月◎日

 地球圏、衛星軌道上

 

 ギガノスの機動部隊と交戦した。

 “ギガノスの蒼き鷹”マイヨ・プラート、強敵だ。この私と引き分けるとは、大袈裟な二つ名は伊達ではないらしい。

 私も同じファルケン()を駆る者として、負けていられないな。

 

 さておき、ギガノスの機動部隊を退けた《ナデシコB》に北辰集――、旧ジュピトリアン木連派の暗殺者、北辰率いる汚れ役共が木連系の機動兵器を連れて強襲してきたのだ。

 言いたくはないが、イングとコンビでなければ戦いたくない嫌な相手である

 《夜天光》というらしい北辰の機体の運動性に、打って変わって苦戦する私たち。そのとき、テンカワの《ブラックサレナ》とミスマル艦長の《ユーチャリス》がボソンジャンプで現れた。

 そこでのたまったのがこれ。

 

「国際警察機構のエキスパートです、ぶいっ!」

「……いろいろ台無しだぞ、ユリカ」

 

 まったくだ。

 北辰集を退けた後、再びボソンジャンプで消えた彼らだったがその後が大変だった。

 私が国際警察機構の人間であることを知るホシノ艦長に、問いつめられたのだ。とりあえず、二人の気持ちを考えてやれなどと意味深に言って煙に巻いた。なんだかイングがやりそうなことだと気づいて、少しヘコんだのは秘密だ。

 

 

 

 新西暦188年 △月♪日

 地球圏、衛星軌道上 ロンデニオン

 

 《大空魔竜》、《アルビオン》が地球圏に帰還した。

 さらに、火星からの帰路で宇宙海賊と合流したらしく、《マザーバンガード》を伴っていた。

 

 またぞろ新顔が増えた。

 プラート博士の開発したD兵器、《ドラグナー》シリーズに偶然乗ってしまった民間人、ケーン・ワカバら「アストロノーツ・アカデミー」の三人だ。

 あと、アルカードからの避難民の女子二人が同行している。

 というか、リンダ・プラートってプラート博士の娘だろう? ダイアン少尉が一緒にいたことから、博士に対する人質の意味もあるのかもな。

 

 固定された《ドラグナー》の生体認証を解除するにはそれ相応の規模の施設が必要とのことで、ケーンたちはそれまでパイロットをするしかないわけだ。

 悪ガキ共はさっそくバニング大尉にシゴかれていた。

 とりあえず、早々にナンパしてきたライト・ニューマンは伸しておいたが。イングとは気が合いそうだ。

 

 アルバトロ・ナル・エイジ・アスカ、火星で合流した異星人だ。

 かつてはバルマーの影響圏にあり、現在はギシン星間連合に支配されたグラドス星出身の地球人、バルマー人のハーフである。

 ギシン星間連合が地球を狙っていることを伝えるため、最新型SPT《レイズナー》を奪い、やって来たらしいが一足遅かったと言う他ないな。

 他にも、折り悪く火星クリュス基地を訪れていた「コズミック・カルチャー・クラブ」とかいう民間人の子供たちとその引率の女性を保護している。いや、彼らは私と大差ない年齢ではあるのだが。

 

 宇宙海賊クロスボーン・バンガード。

 ベラ・ロナとキンケドゥ・ナウ(あえてこう記しておく)が率いるレジスタンスである。主力兵器はサナリィ系列のMS、“クロスボーン・ガンダム”シリーズ。

 また、木星に赴く際に出会ったというトビア・アロナクスという火星入植者の少年を仲間に引き入れている。トビアの乗機は《クロスボーン・ガンダムX2》。

 あの危なっかしい白いAM、名を《アルテリオン》と言い、かつてDCで開発された外宇宙探査用の航宙機だそうだ。

 パイロットはアイビス・ダグラス。民間の運び屋で、陰気な女である。パートナーのツグミ・タカクラに尻を叩かれていやいや戦っているように見えるな。覚悟がない奴は戦場に出ないでほしいものだが。

 

 そして、私とホシノ少佐には懐かしい顔もいた。《エステバリス・カスタム》のパイロット、ヤマダ・ジロウとスバル・リョーコだ。

 《ナデシコ》隊が解散した後、二人は連邦軍に組み込まれ、クリュス基地で勤務しており、同基地がバーム星人及びギシン星間連合により壊滅したのを受けて《大空魔竜》とともに脱出してきたのだという。悪運の強い奴らだ。

 どうやらテンカワとは何度か交戦していたらしく、ホシノ艦長から例の二人のことを聞いてまたぞろ詰められた。

 まったく、なんで私が。こういうのはイングの役目だろうに。

 

 かつてのSDF艦隊以上に混沌とする部隊。構成する組織、チームも数えるのも億劫なほどだ。

 戦艦だけでも《ラー・カイラム》、《アルビオン》、《ナデシコB》、《大空魔竜》、《マザーバンガード》の五隻。艦隊と呼んでいい規模だ。

 そこで、新たに部隊の統一名称を策定することになった。

 喧々囂々の末、決まった名称は「αナンバーズ」。キンケドゥの発案だ。

 まあ、悪くないんじゃないか?

 

 

    †  †  †

 

 

 シャア・アズナブル率いるネオ・ジオン艦隊のコロニー「スウィート・ウォーター」入りを阻止するため、現宙域に急行した「αナンバーズ」。

 ネオ・ジオンに加え、協力関係にある木星帝国、ギガノス帝国の大軍が迎え撃つ。

 

 真紅の隼《ビルトファルケン・タイプL》が《ギラ・ドーガ》や《ゼク・アイン》、《ゲバイ・マッフ》、《積尸気》、《バタラ》、《ビルゴlll》などを蹴散らして戦場を切り裂く。

 《ダイテツジン》、旧ジオン軍から流れたらしい《量産型グレート》や《量産型ドラゴン》などの大型機を《マジンガーZ》、《ネオ・ゲッター》ら特機に任せ、狙いは敵の総大将、“赤い彗星”シャア・アズナブルと《サザビー》の首だ。

 

「クワトロ・バジーナ! あなたには世話になったが、手加減する理由にはならんな!」

『アーマラ・バートンか。“彼”ならまだしも、君では私の相手にはいささか不足だよ』

「言ってくれるな……! 不足かどうか、試してみるか!」

 

 《サザビー》に《ビルトファルケン》が立ち向かう。

 《バスタックス・ガン》と《ビーム・トマホーク》が激突した。

 《ビルトファルケン》のテスラ・ドライブによる慣性を無視した機動を、シャアは難なく捉え、決定打を許さない。

 逆にアーマラは、重モビルスーツ《サザビー》の見た目に似合わぬ高機動と強力な火器、そしてサイコミュ誘導兵器《ファンネル》のコンビネーションに手を焼いていた。

 アーマラに一足遅れ、敵陣を抜けたクスハがシャアに呼び掛ける。

 

『クワトロ大尉、どうして戦争なんて始めたんですか!』

『クスハ、すでに地球は愚かな人類によって限界に来ている。だから私が粛清すると宣言した!』

『そんな……そんなこと、させません!』

『ならば君を倒して実現させるとしよう。行け、ファンネル!』

 

 シャアの思念を受けた《ファンネル》が放射状に射出された。

 殺意が宇宙を走る。

 

『きゃあ!』

 

 クスハの悲鳴。特機サイズの《龍人機》には、小さく素早い《ファンネル》は極めて捉えづらかった。ましてや、それを操るのが地球圏でも最強クラスのニュータイプであれば尚更だ。

 《ファンネル》の一撃が念動フィールドを貫いて、《龍人機》に少なくないダメージを与える。

 

「クスハ! ――くっ、マイヨ・プラート!」

『シャア総帥の邪魔はさせん!』

 

 プルシアンブルーのMA《ファルゲン・マッフ》とプラクティーズが追い付き、《ビルトファルケン》の進路を阻む。

 アーマラはマイヨらを引き剥がすことが出来ず、救援に向かえない。他の仲間たちは後方で立ち往生している。

 そしてついに、《ビーム・ショットライフル》のメガ粒子が《龍人機》を撃つその瞬間――

 翠緑の輝きが宇宙に瞬いた。

 

「ッ――この念は!」

『よお、クスハ。久しぶりだな、元気してたか?』

『イングくんっ!』

 

 銀髪の少年、イングの緊張感のない挨拶。心強い援軍の登場に、クスハが破顔する。

 メガ粒子を弾くコーティング・クロークを翻した手負いの騎士、凶鳥の眷属――マオ・インダストリーによって強化が施された《アッシュ改》、その姿は歴戦の勇士の風格を伴っていた。

 

「遅いぞ、イング」

『悪い、ちと月の掃除に手間取ってな。頑張ってたみたいだな、アーマラ』

「……ふん」

 

 非難めいた言葉に殊勝に返し、奮闘を称えるイング。ことさらに鼻を鳴らすアーマラだったが、その表情はパートナーの登場に喜びを隠せていない。

 会話を交わしながら、イングは《フォトン・ライフルS》による射撃でギガノスのメタルアーマーを散らしていた。

 

『さて、と。またぞろ仮面を被ったアンタに敬語は要らないな、シャア・アズナブル!』

『イング……! お前は、月面でギガノスの部隊を相手にしていたはずだ!』

『オレが神出鬼没なことは、アンタもご存知だろう?』

 

 かつては敬意と尊敬を示していた戦友へと不敵に言い放ち、最強の汎超能力者がその強念を解き放つ。

 

『言いたいことは山ほどあるが……まずは、クスハを散々いたぶってくれた礼からだ! TーLINKコンタクト!』

『! ちぃっ、以前よりプレッシャーが増しているだと!? おのれ、ファンネルッ!』

『無駄無駄ァ! 邪念が見え見えなんだよ!』

 

 シャアがけしかけた数機の《ファンネル》に伴う思念を読み取ったイング。回避運動をする《アッシュ改》のサイドアーマーに、左右三本づつ取り付けられた《ロシュ・ダガー》を引き抜いて軌道上に投げつけ、《ファンネル》を次々に撃墜した。

 シャアが驚愕に呻く。

 

『何だと!? 私の思念を読んだとでも言うのか!?』

「……無茶苦茶だな、イング」

『覚悟しろ、シャア・アズナブル! シーケンス、TLS! コード入力、光刃閃ッ!!』

 

 強念を帯びたイングの叫びが宇宙に木霊する。音声入力とT-LINKシステムにより、《アッシュ改》のFCS(火器管制システム)がモーションを制御する。

 新たに「TーLINKフレーム」が組み込まれたコクピット周辺から、翠緑の燐光が溢れ出す。広がる燐光が強力な念動フィールドとなって機体を包み込み、超常的なパワーを与える。

 

『セイバー、アクティブ!』

 

 お馴染みのセリフとともに、《ストライク・シールド》から《TーLINKセイバー》を引き抜かれた。

 

『光を超えろ、アッシュ! 見切れるか、喰らえ! 奥義、光刃閃ッッ!!!』

 

 念動フィールドによって限界以上の機動を得た《アッシュ改》が、後退する《サザビー》に迫る。総帥を守ろうとする《ギラ・ドーガ》の部隊は、手も足も出ず両断されていく。

 

『せい! はぁっ! たあああっ! オオオオッッ!!』

 

 影をも踏ませぬ高速機動、文字通り光のような斬撃の乱舞。《サザビー》の重装甲を《TーLINKセイバー》が幾たびも斬り裂く。

 赤い装甲の破片が飛び散り、スパークする。

 一気に《サザビー》の背後へと切り抜けた《アッシュ改》は、《TーLINKセイバー》を両手で握り直した。

 その刀身を念動フィールドが覆い尽くしていく。

 

『これで、終わりだッ!!!』

 

 激しい閃光を伴うドドメの一振りが《サザビー》を捉え、致命傷を与えた。

 

『……貴様に見切れる筋もない』

『馬鹿なっ、パワーダウンだと!? ええい、だが目的は果たした。撤退する!』

 

 小爆発を繰り返しながら信号弾を上げる《サザビー》を、《ファルゲン・マッフ》とその僚機が回収する。

 それに従い、ネオ・ジオン艦隊が撤収していく。

 

「逃げるぞ、いいのか」

『こっちにも追撃する余力はねーだろ。ま、痛み分けってとこだな』

 

 《アッシュ改》の傍らに《ビルトファルケン》を寄せたアーマラが問う。

 イングはどこか気の抜けた様子で嘆息する。そして一転、笑顔を浮かべてこう言った。

 

『とりあえず、ただいま』

「……おかえり」 

 

 

   †  †  †

 

 

 新西暦188年 △月※日

 地球圏、衛星軌道上 ロンデニオン

 

 ロンデニオンに運び込まれていた《ビルトファルケン・タイプR》と《ガンダム試作二号機》を、ネオ・ジオンに奪取された。不覚だ。

 ことの発端は、ゼオラ、アラド、リョウ、トビア、それからケーンらドラグナーチームの訓練。私も新兵どもの相手をしていたのだが、集結する連邦軍艦隊にスパイが紛れ込んでいたのだ。「ニューディサイズ」、戦技教導隊の一部が結成した反乱軍である。ティターンズよりの主義者どもが何を思ってネオ・ジオンに協力してるかは知らないが、元ティターンズの私に言わせれば恥の上塗りだな。

 それからオウカ・ナギサといったか、アラドとゼオラはスクール時代の仲間に再会して利用されたらしい。

 アラドはともかく、ゼオラの奴が一時使い物にならなくなったのは少々意外だった。《ビルトファルケン》に関しては中破させて奪還したが、あいにくオウカ・ナギサは取り逃した。機体のデータも持っていかれたのなら、なかなか厄介なことになりそうだ。

 

 さらにこの出来事を陽動に、シャア・アズナブル率いるネオ・ジオンが、コロニー「スウィート・ウォーター」に入ろうと艦隊を進撃させていた。

 それを阻止するために向かった私たちαナンバーズの前に、マイヨ・プラートらギガノス帝国のメタルアーマー部隊、「死の旋風隊」と木星帝国の機動兵器部隊が立ちはだかる。

 こちらの戦力が圧倒的に揃っているとはいえ、相手の物量は絶大だった。

 

 シャアを討つことで戦闘の終息を狙う私とクスハだったが、逆に窮地に追い込まれた。

 とそのとき、翠緑の念動光とともにイングが――《エクスバイン・アッシュ改》が現れた。

 まるでクスハの危機に狙い澄ましたかのようなタイミングだった。気に食わん。

 

 お得意のテレポーテーションで戦場に現れたイングの《アッシュ改》は、シャアの《サザビー》が操る《ファンネル》を新装備《ロシュ・ダガー》の投擲で次々と撃墜し、しまいには致命傷まで与えて追い返してしまった。相変わらず、理不尽なまでの戦闘能力だ。

 「ファンネルはサイコミュ兵器、操作する思念を察知してしてしまえば対処は簡単」と戦闘後に本人の口から解説されたのだが、そんなマネができるのはお前だけだ。

 

 ともかく、ようやくイングがαナンバーズに合流した。これ以上、この地球を侵略者どもの好き勝手にはさせん。

 






 New! ガンダム・センチネル

 翌日更新はやっぱり無理だったよ……(´ω`)
 加筆してるだけなので、エタりはしないはずです。まあ、更新速度はもろもろの伸び次第だけど。

 【悲報】タンゲル、ラムサス生き残れなかった。
 なお、本文には載ってませんがアポリーとロベルトもここで殺られているので一矢は報いた模様。現在ヤザンはジョニ帰の方の二人組を率いています。
 また、ヤザンの進退が変わった影響でアラゼオの境遇や乗機も変わります。代わりにオウカとラトゥーニのINが早まりました。
 センチに関しては第二次αで参戦予定だったとか言う話を聞いたので追加。ただし、味方はリョウのみ。
 たぶん、ディープストライカーがそのうち出てくるかも。

 リサかわいいよリサ(*´ー`*)
 南風の方の渓ちゃんはミチルさんの代打です。號のヒロイン役ということでひとつ。
 本作の真ゲッターが勝手に火星に飛んでいかないので安心安心(^ω^)


 アンケートについて。
 EX-SとZZllが勝利した場合、カスタムされてアンテナにハイメガキャノンが付くことになります。NT専用機に普通のインコムとかいらんでしょ。
 というか、正直ZZllがこんなに票を集めるとは思わなかったのですが。ミスターMS人気かな?

ジュドーの最終乗機は?

  • フルアーマーZZ(そのまま)でおk
  • 赤ジム様も出るのでメガゼータ
  • EX-S(サイコミュ仕様カスタム機)
  • 大穴?ZZll(同じくサイコミュ仕様)
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