スーパーロボット大戦//サイコドライバーズ:Re   作:かぜのこ

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αll-4「サイコドライバーズ」

 

 

 新西暦188年 ◇月♯日

 地球圏、月面 マオ・インダストリー社

 

 星間連合との決戦から一夜が明け、現在αナンバーズはマオ社に留まり傷を癒している。

 ズール皇帝はかつてない強敵だった。正直、イングの力がなければ私たちは宇宙の藻屑となっていただろう。 

 そのズール皇帝だが、散り際すら余裕な態度を崩さなかった。イングは「あれは本体じゃない」と表していたが、もしもそれが本当なら厄介なことになりそうだ。

 

 ともかく、ガルファとガイゾック、星間連合の撃破により、月面での大勢は決したと言っていい。

 未だギガノスが残ってはいるが、こちらも連邦宇宙軍正規部隊の猛攻で著しく勢力を失っている上に、どうやら政変が起きて内部分裂しているらしい。敗退した星間連合も一部の戦力がバーム星人と合流したようだが、指揮官を失った時点でもはや烏合の衆でしかない。

 どちらも語るに落ちた、と言ったところか。

 

 明神の兄マーグは、ズール皇帝により指令艦を潰されて生死不明だ。明神は彼の生存を信じているようだが、あれでは絶望的だろう。

 それから彼の副官で、私も何度か交戦したロゼが投降を申し出てきた。マーグの遺志だとのことだ。

 さっそくコスモクラッシャー隊のメンバーといざこざを起こしていたが、私とて似たような立場だったからな。強くは拒絶できん。

 それに、「邪念は感じられない」とイングやカミーユからのお墨付きも出たから、まあ心配ないだろう。

 

 さておき《アッシュ》もとい《エグゼクスバイン》は、完成早々にオーバーホールと相成った。イングの念で無理矢理に安定させていたのだから無理もない。

 戦場では物理的に換装できなかった部分を「MkーX」用の部品に取り替えて、応急処置を施すそうだ。

 特に間接部およびエネルギー周りの損傷が酷かったそうで、「トロニウム・レヴなんてよくわからないシロモノを組み込むからだ」とはロブのコメントだ。

 あれはもともと私の《ガリルナガン》のものだったのだから、そんな言い方はしないでほしいが。

 

 《エグゼクスバイン》といえば、いささか困ったことが発覚した。

 中枢部、具体的に言えばGストーンにイレギュラーな人格、いわゆる超AIが発生しているようなのだ。イングの特異な念を大量に浴びたことが原因らしいが、馬鹿の一念という奴か?

 無難に「エクス」と名付けられた超AIのジェンダーは女性で、年の頃を人間に換算すると13、4歳程。真面目で大人しくどこか引っ込み思案な印象の話し方をする割に、ときおり妙に古くさい言い回しをする。イング曰く「無限の楽園の白雪姫と同じ声」。

 今のところAIとしては未成熟だが、コクピットのコンソール周りに簡単な改装を施して、《レイズナー》や《ドラグナー》のような対話型戦闘支援AIとして正式に整備された。

 性格もろもろ含めて正直、戦闘支援としては役に立たないと言わざるを得ないのだが、イングは満足しているらしい。

 よくわからんが、何故か胸がムカムカとしてきたので、今夜はここで筆を置くことにする。

 

 

   †  †  †

 

 

 月面決戦から数日後。

 とある日の午後。《ラー・カイラム》の通路をアーマラが一人歩いていた。

 

 《ラー・カイラム》本格参加に際し、母艦を《ナデシコB》から移動したアーマラとイング。士官待遇の二人には、士官用の個室を与えられている。イルイはアーマラと同室だ。

 αナンバーズの艦隊旗艦は名目上《大空魔竜》だが、あちらは特機を運用するための戦艦であり、《キング・ビアル》と折半する形で特機とそのパイロットたちが詰め込まれている。仮にもPT乗りの二人には《ラー・カイラム》が合っていた。

 最新技術で改装を重ねられている《ラー・カイラム》は《ナデシコ》級のようにオートメーション化が進んでおり、生活スペースには多少の余裕がある。

 とはいえ、生活環境は都市をまるまる艦に納めた《マクロス》こと《メガロード》級や、《ヱクセリヲン》級とは比べようもないが。

 

 自室の隣にあるイングの部屋の前。

 アーマラはノックもせず、不躾にドアを開く。勝手知ったる何とやらだ。

 

「イング、ちょっといいか」

「んあ?」

「……何をしてるんだ?」

 

 気の抜けた返事をするイングの様子に、アーマラは用事も忘れて疑問を挟んだ。

 彼の周りにはドライバーなどの工具類、導線、機械基盤や用途不明の部品が散乱していたのだ。丸い金色の物体を使って弄っているようである。

 その背中にもたれるようにして一人遊び中のイルイ。《マジンガーZ》、《ゲッター1》、《ガンダム》等を模したイングの私物のおもちゃ――主に完成品の稼働フィギュア。彼は、遊ぶ用・飾る用・保管用に同じものを三つ所持している――を使って、「αナンバーズごっこ」をしている。

 

「何って、工作?」

「何故に疑問系だ。……プラモデルを作っているわけではなさそうだが」

 

 気の抜けた脈絡のない返答にアーマラは顔をしかめる。彼女の推察通り、明らかに工作というレベルの作業ではない。有り体に言うと、かなり専門的だ。

 するとイングはきちんとした説明をし始めた。

 

「いや、「エクスが一人でいるのはかわいそう」ってイルイが言い出してさ。自由に動けるマスコットロボみたいなのを作ってやろうかと思って」

「なるほど」

「アストナージさんからジャンクパーツを融通してもらってさ。設計は、アムロ大尉とかカミーユとかリョウトに手伝ってもらったんだ」

 

 イングが事情を端的に説明する。どうやら、錚々たるメンバーが協力しているようだった。

 

 エクスとは、《エグゼクスバイン》完成に伴いGストーン内に発生したイレギュラーな人格だ。

 イングの莫大な強念を一身に浴び続けた結果生まれた存在であり、《エグゼクスバイン》そのものとも言える。

 それ故、《ヒュッケバインEX》時代からの記憶も持っているらしく、「ずっと、ずーっとイングさんとお話ししたかったんです」などと無防備な好意を露わにして、イングを大いに照れさせていた。

 シュウ曰く「ラ・ギアスにおける精霊に極めて近く、限りなく遠い存在」。イングは「九十九神みたいなもんかな」と自分なりに納得している。

 

「確かに、アムロ大尉といえばハロだしな。私も、特脳研時代に持っていたぞ」

「おっと、意外な過去だな。アムロ大尉ってば、ハロのパテントで何気に結構な資産家だって話だし……羨ましいぜ。そしたらプラモとかフィギュアとか超合金とかゲームを買い放題だもんなぁ!」

「お前は……、それ以外に使い道が思いつかんのか」

「おう!」

 

 二人のやりとりを、後ろでイルイが面白がって笑っている。

 イングがそんな無茶なお金の使い方を出来るのも、αナンバーズが仮にも軍事組織で彼が高給取りであるからこそなのだが。

 

「で、完成図がこんな感じ」

 

 設計図を写していたタブレット端末に、モデリングされた3D画像が表示される。

 丸みを帯びたフォルムに、突起のような足が四本。くちばし状の口に、透明な青いカメラ・アイ。ボディのカラーリングは、柔らかな印象の桜色(チェリー・ブロッサム)で、口や目の回りが純白(ピュア・ホワイト)だった。

 

「超小型テスラ・ドライブに永久電池、TーLINKフレームの端材……これはかなり本格的だな。この色は?」

「今は素材の色で金ぴかだけど、後で塗装する予定だよ」

「チョイスがお前らしくないな? 《エグゼクス》と同じ色にはしないのか」

「それはまあほら、日曜朝八時半枠だから」

「はあ?」

「クロスオーバー劇場版枠でも可」

「ますます意味が分からん」

 

 イングの意味不明な供述に、アーマラは首を傾げるのだった。

 なお、イングは完成品に「サイコロン」と名付ける(あわよくば商品化も)つもりだったのだが、エクス本人の強い反対により頓挫している。

 曰く「おならはいやですっ!」とのことだ。

 

 

   †  †  †

 

 

 新西暦188年 ◇月¥日

 地球圏、衛星軌道上 《ラー・カイラム》

 

 コンビを組んで一年程度経つが、未だにイングの考えることは理解できん。

 まあ、イルイが喜んでいるようならいいか。

 

 

 

 新西暦188年 ◇月▲日

 地球圏、衛星軌道上 《ラー・カイラム》

 

 星間連合の残党を掃討中、 αナンバーズ艦隊を狙い打つように現れたネオ・ジオン艦隊と交戦、これを撃破した。

 首領を討たれたニュー・ディサイズの生き残りらしき輩が、大型MA(《ゾディ・アック》というらしい)を持ち出してきた。図体のわりにすばしっこく、なかなか手強かったが、まあそれだけだ。私たちの敵ではない。

 そしてどうやって宇宙(ソラ)に上がってきたのか、ククルが単身、ゼンガー少佐と決着をつけるために現れた。

 少佐の意を汲んで、私たちは撤収した。イルイが心配していたのが印象的だったな。

 

 後に帰還した少佐によると、クストースが現れ、ククルにトドメを刺して行ったらしい。

 奴ら、何がしたいんだ?

 

 

 

 新西暦188年 ◇月^日

 地球圏、衛星軌道上 《ラー・カイラム》

 

 緊急事態だ。

 連邦宇宙軍がムーンレイカー作戦の大詰めとして、ギガノス本拠地とギガノスが保有するマスドライバーに対して攻撃を仕掛けようとしたその時、αナンバーズ分艦隊によって破壊され、連邦軍により調査されていた螺旋城が突如として浮上、無数の《デスアーミー》を吐き出しながら連邦宇宙軍およびギガノス軍に対して無差別攻撃を始めたのだ。

 そう、DG細胞だ。

 推測になるが、螺旋城内に残っていたDG細胞が分艦隊により司令AIが破壊されたことで制御されなくなったのだろう。あるいは、ゾンダーの仕組んだ策略の可能性もあるか。

 ともかく仮称「デビル螺旋城」(イングによる命名)は、今も月面を侵食しながら、フォン・ブラウンに向けて移動しているとのこと。月面最大の都市で生体部品を補充することが狙いか。

 早急に排除しなければ、大惨事は免れない。

 ここは一つ、気合いをいれなければな。

 

 

 

 新西暦188年 ◇月^日

 地球圏、月 フォン・ブラウン

 

 無事、「デビル螺旋城」の破壊に成功した。フォン・ブラウン市や他の月面都市も事なきを得て完全勝利と言えるだろう。

 助っ人として、キラルの《マンダラガンダム》を始めとした各コロニーのガンダムファイターが再び集結(個人的には、ネオ・ギリシャのゼウスガンダムがまた観れて嬉しかった)。また、《高機動(スーパー)ノーベルガンダム》のファイター、アレンビー・ビアズリーが輸送してきた《ライジングガンダム》にレインが搭乗、作戦に参加した。

 螺旋城というEOTを掌握したDG細胞は爆発的に増殖、《デスアーミー》各種が月面を埋め尽くさんばかりに溢れる。

 それらを蹴散らすドモンらシャッフル同盟の五人に続き、「デビル螺旋城」に突入する私たちが目にしたのはさらに倍するように見えた《デスアーミー》の大軍と《マスターガンダム》を始めとした「再生デビルガンダム四天王」。

 そして、「デビル螺旋城」のコアと思わしき銀色の《デビルガンダム》だった。イング命名《デビルガンダムJr.》、螺旋城内部の天井から逆さまに生えた姿はまるで花弁のようだ。

 無限に湧き出るDG細胞の尖兵の中には、《グランドマスターガンダム》や《デビルガンダム》各種形態までもがまるで雑兵のように混じっていた。恐るべきはEOTを得たDG細胞、だな。

 

 最終的には、《ゴッドガンダム》、《ガンダムマックスリボルバー》、《ガンダムヴェルサイユ》、《ダブルドラゴンカンダム》、《ボルトガンダムクラッシュ》の五機による《シャッフル同盟拳》が炸裂し、《デビルガンダムJr.》は爆散。さらに、護がゾンダーコアのように「浄解」を試みる。

 Gストーンの発するものとよく似たエメラルドグリーンの光に包まれ、「デビル螺旋城」はきらめく粒子となって消滅した。

 これで今度こそDG細胞が根絶されたのならいいが、さてどうなることやら。

 

 

 

 新西暦188年 ◇月◎日

 地球圏、衛星軌道上 《ラー・カイラム》

 

 シャアめ!やってくれたな!

 と、思わず日記に殴り書きしてしまうような出来事に直面した。

 連邦軍とαナンバーズの注目が月面に向いている隙を突いて、ネオ・ジオンが小惑星「5thルナ」を奪取したのだ。

 「デビル螺旋城」はともかく、同盟者であるはずのギガノスを囮に使うとは、いい面の皮をしている。

 

 現在5thルナは核パルスエンジンを推力に、地球に向けて接近している。かつてのジオン公国の「コロニー落とし」ように質量爆弾とするのだろう。

 あれを、あんなものを地球に落とさせるわけにはいかない。

 エクスは「わたし、堪忍袋の尾が切れました!」だそうだ。

 

 

 

 新西暦188年 ◇月×日

 地球、北米地区テスラ・ライヒ研究所

 

 負けた。私たちは負けた。ネオ・ジオンの隕石落としを防げなかった。

 αナンバーズの攻撃により砕けた5thルナの破片は、連邦議会のあるラサに落ちて甚大な被害をもたらしたと聞く。

 ネオ・ジオンとの戦闘の余波と大気圏突入で仲間と散り散りとなりながらも、私とイングは何とかテスラ研にたどり着くことができた。他のメンバーも無事にいいのだが。

 特に、コクピット付近に深刻なダメージを負った《クロスボーン・ガンダムX1》が心配だ。

 

 しかし、いくら《エグゼクスバイン》の念動フィールドが特別強力だからって、大気圏に突入しながら《ブラックホール・バスター・キャノン》による破砕活動を敢行するとは、相変わらず無茶苦茶な奴だ。

 ま、そんな無茶苦茶につき合った私も大概だがな。

 

 

 

 新西暦188年 ◇月●日

 地球、極東地区日本 ダンナーベース

 

 極東支部基地ビッグファルコンは、現在地上の混乱を収めるために手一杯であり、代わりの集合地になったダンナーベースにはαナンバーズのメンバーの大半が集結した。だが、やはりキンケドゥの姿はない。

 彼の恋人であるベラ艦長や、弟子のトビアは酷く心配していた。

 また、現在《ナデシコB》と《エステバリス》隊は別行動を取っている。

 大方、かつての《ナデシコ》の乗員たちを迎えに行ったのだろう。ホシノ艦長は彼らを揃えることに拘っていたようだからな。

 

 それと、合流した伊佐未勇の《ユウ・ブレン》の姿が変わって?いた。新たな名を《ネリー・ブレン》というらしい。同時に保護されたアイビスに事情を聞いてみたのだが、微妙なリアクションで答えを濁されてしまった。

 微かに、悲しみのような念を二人や《ネリー・ブレン》から感じたが、私のような半端な念動力者ではそれを汲み取ることが出来ない。

 昔は些末なことだと切り捨てていただろうに、私も変わったものだ。イングの影響かな。

 

 

 

 新西暦188年 ◇月※日

 地球、極東地区日本 Gアイランド・シティ

 

 ようやくしつこいグンジェム隊とのケリが着いたな。

 配下を討たれて追いつめられ、本国からの支援もなくなったのだろうグンジェムが悪趣味な色をした大型のメタルアーマー、《ギルガザムネ》とか言ったか、を持ち出し、Gアイランド・シティに強襲を仕掛けてきたのだ。

 重厚な見た目の割に動きは軽快、さらには大量のミサイルによる火力を持つというかなり厄介な敵だったが、どうもタチの悪いシステムを積んでいたらしく突然暴走し出して味方を攻撃し、破壊した。

 錯乱した《ギルガザムネ》はその性能を発揮することなく、《ドラグナー》チームによる連係攻撃で撃破された。

 まったく、「ギガノスの汚物」らしからぬ呆気ない最期だったな。

 

 追記

 世界各地で擬態獣が活性化、それらが一直線に極東地区へ向かってきているらしい。これはいったいどういうことだ?

 

 

 

 新西暦188年 ◇月※日

 地球、極東地区日本 ダンナーベース

 

 擬態獣の群れが刻一刻と近づいている。明日にも極東地区へと雪崩れ込んでくるだろう。

 葵博士の分析によれば、擬態獣どもは先日の5thルナ落下事件を人類側からの攻撃と見なし、人類の最大戦力であろう我々αナンバーズとダンナーベースを標的としめ目指しているのでは、とのこと。

 まったくいい迷惑である。

 集結した擬態獣は大群だ。その中でも複数の擬態獣が融合したらしい巨大な個体を連邦軍は「超擬態獣」と呼称、これらに対して攻撃を仕掛けている。とはいえ、小惑星が落ちた被害は甚大で政府のマンパワーはそちらに割かざるをえない。

 やはり、我々が迎え撃たなければならないだろうな。

 

 

 

 新西暦188年 ◇月∥日

 地球、極東地区日本 ダンナーベース

 

 

 擬態獣の掃討は完了した。数相応に手強かったが所詮はケダモノ、超擬態獣も最後は《ゴーダンナー・ツインドライブ》と。うちの、両刃の剣に変形したルゥの新たなマシン《セレブレイダー》による攻撃で息の根を止められた。さしずめ「トリプルドライブ」と言ったところか。

 前述の通りルゥが《コスモダイバー》ではなく、《セレブレイダー》という名のプラズマドライブ機に乗り換えていたわけだが、これはメナージュ・ゼロこと剣の《ブレイドガンナー》のパートナー機なのだそうだ。なお、葵博士によるとこれらの開発者は別居中の彼女の旦那(ようは杏奈の父親)ではないかとのこと。

 さておき、超擬態獣戦で姿を表し、共闘する結果となった剣とルゥの処遇(戦闘後、二人は投降した)だが、αナンバーズ預かりとなった。政府に属さず無軌道に擬態獣を狩っていた彼らだが、幸いなことに一般市民の被害は出していなかったらしい。それ故の情状酌量なわけだが、実際厄介払いに近い。とはいえホシノ少佐やラトゥーニは喜んでいるようだし、私も批判できるような立場ではないか。

 また、擬態獣被害が一段落したことで、極東地区防衛のためダンナーベースに残っていた光司鉄也と《Gゼロガンナー》がαナンバーズに合流した。

 前大戦では《ナデシコ》に乗っていたこともありヤマダとは知らぬ仲でも無し、最近ヤツとよく連るんでいる吉良国とも気が合いそうだな。

 

 

 

 新西暦188年 ◇月♬日

 地球、極東地区日本

 

 5thルナの落着と擬態獣の大移動という地上の混乱を突き、ついに恐竜帝国が大侵攻を開始した。

 世界各地に姿を表すマシーンランド。そして、まさしく“UFO”としか呼べない円盤形の空中要塞が南極大陸の奥深く氷床を砕き、無数のメカザウルスとともに現れたのだ。兜博士の推察によれば「先史文明の遺産」であるというそれは、我々の想像を遥かに越える科学力の産物だ。“巨神戦争”でゲッターチームとホワイトベース隊に散々にやられながら、これほど早く復活できたのもあの遺跡の力によるものかもしれないな。

 邪魔大王国やかつての百鬼帝国、ミケーネ帝国、Dr.ヘル軍団の残存戦力を吸収して肥大化した恐竜帝国の前に情けないことだが連邦軍は為す術もなく敗退し、瞬く間に主要都市を制圧されてしまった。

 

 特記戦力を多数有する私たちαナンバーズは、例の如く敵の本隊を討つことで事態の収拾を図る。

 だが、まずは日本地区の各地で暴れ回るメカザウルスなどの排除からだ。

 また、恐竜帝国と因縁深い新旧ゲッターチームは、イージス事件以来、SR計画凍結の煽りを受けて封印処置されていた《真・ゲッターロボ》の確保と、恐竜帝国に念入り狙われている新早乙女研究所へ向かっている。こちらはおそらく陽動だろうが、またぞろ《真ゲッター》を奪われては厄介だ。

 

 さて、私たちが急行した現場では、どこに隠し持っていたのか、白鳥九十九が旧木連派の特機型機動兵器《ダイテツジン》で、トカゲどもを相手に大立ち回りを演じていた。

 確か奴は、旧姓ハルカ・ミナトと結婚してヒモ同然の生活をしていたはずだが。木連の軍人が堕ちたものだと呆れていたが、存外に意気地がある。

 また恐竜帝国により民間人が多数拘束されていたが、こちらは私とイング、ドモン、ベガ副指令など白兵戦メンバーで突入、救出した。ここでは《ボルフォッグ》が大活躍だった。

 

 意気地があると言えば、人質にされていた女子高生が恐竜帝国の兵士相手に啖呵を切っていたな。

 白鳥ミナトが教師をしていると聞く、陣代高校の生徒だったように見えたが。

 

 なお、オーバーホールが終わりようやく配備された《νガンダム》と《Hiーνガンダム》がヨーロッパ方面で大暴れしたらしい。ちなみにアムロ大尉が《Hiーν》を、フォウが《ν》を任されていた。

 

 

 

 新西暦188年 ◇月†日

 地球、極東地区日本 連邦軍極東支部ビッグファルコン

 

 しばらくぶりの日記だ。

 結論から記する。恐竜帝国と決着がついた。もちろん、私たちαナンバーズと人類の勝利である。

 

 恐竜帝国に襲撃された新乙女研究所へ急行した新旧ゲッターチームは、無事《真・ゲッターロボ》の確保と起動に成功した。

 意外だったのが、號たちネオゲッターチームが《真ゲッター》に乗っていたことだ。神大佐曰く「今回は、號たちがゲッターに選ばれたようだな」とのこと。意思を持つマシンはやはり厄介だな。エクスは素直に育ってほしいものだが。

 

 だが、その裏で侵略者どもの計画は着々と進んでいた。

 いよいよ日本列島に辿り着こうかとする恐竜帝国本隊を迎え撃とうとしていた私たちのもとに、旧光子力研究所で封印されていた《マジンカイザー》がブロッケン伯爵率いる鉄十字軍団に奪取されたとの一報が舞い込む。

 やはり、新早乙女研究所は陽動だったのだ。

 三度復活(いつぞやのは小手調べだったらしい)したDr.ヘル軍団が、奪われた《カイザー》を制御ユニットにした《INFINITE》を以て兜博士に決戦を挑んできたのである。

 

 恐竜帝国の円盤形空中要塞と大軍団、機械獣と超巨大魔神《INFINITE》、二つの脅威を同時に立ち向かう私たちαナンバーズ。

 北米地区を鎮圧して駆けつけた《ステルバー》軍団と《テキサスマック》の応援もあり、何とか空中要塞のバリアを破壊、恐竜帝国の幹部を撃破する。そこで、空中要塞からオーパーツを取り込み巨大な姿と化した帝王ゴールが姿を表した。

 奴は、連邦軍の特機はおろか、《ゲッタードラゴン》、《マジンガーZ》、《ゴーダンナー》や他のスーパーロボットにも意に返さず蹴散らした。

 號たちネオゲッターチームが抵抗するが、ゴールに散々に痛め付けられる。

 絶体絶命の《ゲッターロボ》が、號たちの意思に呼応してゲッター線特有のエメラルドグリーンの激しい輝く。明滅する人型のエネルギー体の表面には、號や翔、凱の顔が浮かび上がっていた。

 すわ暴走かと思われたその時、神大佐らゲッターチームの一喝によりネオゲッターチームはこれを制御し、蒼い姿に変貌した《真ゲッター1》の貫胴が帝王ゴールを貫いた。

 こうして、からくも恐竜帝国を倒すことには成功した。

 

 しかし、《INFINITE》とDr.ヘルは未だ健在だ。

 満身創痍のまま、巨大魔神との決戦に挑むαナンバーズ。

 そんなときに活躍したのが最新鋭のナデシコ級、《ナデシコC》だ。

 修理を終えた《ゼオライマー》に救出されたというキンケドゥとともに駆けつけた《ナデシコC》には、先日保護した白鳥ミナトを筆頭に、アオイ・ジュン、メグミ・レイナード、アマノ・ヒカリ、マキ・イズミ、イネス・フレサンジュ、ウリバタケ・セイヤらかつての《ナデシコ》メンバーが乗艦していた。

 皆、それぞれに生活があったのだろうが、この非常事態にはそうも言っていられないらしい。

 さらには空気を読んだのか、ボソンジャンプを駆使して世界各地で遊撃していた《ブラックサレナ》と《ユーチャリス》が登場し、まさしくナデシコ・オールスターズが勢揃いと相成った。

 

 電子戦に特化した《ナデシコC》と、前回の雪辱とばかりに張り切っていたリサにより、人工知能の制御系を強制ハックされた《INFINITE》はさすがと言うべきか、抵抗してみせる。奴らも《ミネルヴァX》の一件で、ジャミングやハッキングに警戒していたのだろう。

 とそこに出現した三機の動物ロボ、クストースらの発する不可思議な力、そして「平和を守る魔神として生まれたお前が、悪に操られたままでいいのか、カイザー!!」という兜博士の叫び声により、魔神皇帝が目を覚ました。

 激しい光と炎を巻き上げて自立起動した《マジンカイザー》は、自身を縛り上げる《INFINITE》に痛烈な一撃を与え、自力で脱出を成功させた。

 

 しかし、《カイザー》の無尽蔵の光子力エネルギーをたらふく喰らった《INFINITE》は、超兵器「ゴラーゴン」を発動させた。

 「ゴラーゴン」とは、ビックバン以来誕生した数多の可能性の宇宙から使用者が選んだ世界を、今ある世界と置き換えてしまうという。要は『世界をリセットして好きなように作り替えられる能力』、らしい。イングによれば、かつてユーゼス・ゴッツォが完成を目論んだクロスゲート・パラダイム・システムと原理は違えど結果は大差ないとのことだが、それが本当であれば恐るべきものだ。

 実際、私たちは認識できなかったが、かなり危ういところだったようだ。辛うじてイングは観測出来ていたとのことだが、始まりの魔神《マジンガーZ》に乗る兜博士と《INFINITE》に因縁あるリサ以外は介入できなかったらしい。

 可能性宇宙に囚われた二人が見たものはようとして知れない。私たちがわかるのは世界はリセットされなかったことと、そして仲間の一人を失ったことだけだ。

 

 文字通り、命懸けてリサが導く光子力ネットワークにより集まった(可能性宇宙も含めた)世界中の光子力を受け取った《マジンガーZ》は、光に包まれたまま《INFINITE》と比肩するサイズまで巨大化、肉弾戦を開始した。

 マウント富士をバックに激突する二大魔神。巨大すぎる魔神同士の取っ組み合いに、通常の機動兵器が割って入るのは不可能だ。私たちは兜博士、いや「兜甲児」と《マジンガーZ》に地球の未来を託すしかなかった。

 しかし、あの光景は、イングではないがなぜだが感動を覚えるものだったな。

 

 超巨大魔神の戦いは、全身全霊を振り絞った《マジンガーZ》の拳によって勝負がついた。《INFINITE》は宇宙の彼方へと消え、完膚なきまでに爆砕された。

 「ゴラーゴン」発動を阻止され、虎の子の《INFINITE》を失って進退窮まったDr.ヘルと戦闘獣《地獄大元帥》はなおも自身の野望を果たそうとする。しかし、アムロ大尉の《Hi-νガンダム》の支援を受け、満身創痍の《マジンガーZ》、《グレートマジンガー》、《ゲッタードラゴン》による合体攻撃《ファイナルダイナミックスペシャル》が引導を渡したのだった。

 ヤマダの「スーパーロボット軍団、怒りの大反撃だな!」という感想はなかなか的を射た表現だったな。吉良国や光司と三人で戦闘が終わっても興奮して騒いでいた。

 

 死力を尽くして戦った《マジンガーZ》は、スクラップ一歩手前の状態だ。兜博士は自身の手で直すつもりだそうだが、今大戦はまだ終わっていない。奪還した《マジンカイザー》で戦い抜くようだ。

 それから、リサ。彼女は可能性宇宙で「ゴラーゴン」を阻止するため、そして《マジンガー》に光子力を託すために力尽きたという。《INFINITE》と運命をともにしたということだ。彼女と仲のよかったイルイや護、北斗、銀紙ら年少組はもちろん、データウェポンたちもどことなく元気がないように見える。

 リサは、自身の使命と心に殉じたのだと思う。彼女のことを忘れることはできないが、立ち止まることもその意思に反するように感じる。

 どちらにせよ、戦いはまだ終わっていない。前に進まねばな。

 

 

 なお、《ブラックサレナ》《ユーチャリス》は一連の戦闘終了後にボソンジャンプで姿を消した。

 やはり、復讐を遂げるまではホシノ艦長らに会う気はないようだ。テンカワめ、強情だな。

 

 

 

 新西暦188年 ☆月〒日

 地球、ユーラシア大陸沿岸

 

 リクレイマーと接触し、話し合うために浮上したオルファンに向かう。

 だが、やはりと言うべきか、リクレイマーもエゴイストの集まりであることは変わりないらしい。この地球の危機に際してなお、「オルファンが飛翔すれば関係ない」などと自分たちの都合ばかりを優先するのだからな。

 

 会合の機会すら得ることも出来ず物別れに終わり戦闘が開始される中、ドクーガ三将軍、ケルナグールにより核ミサイルが発射されたが、ブレンパワードとグランチャーが協力して宇宙空間へと弾き返して事なきを得た。八卦ロボ戦でのそれとは比べものにならないパワーだった。

 そう言えば、久しぶりにドクーガを見たな。

 

 オルファンの声を聞いたというイングは「あれはひとりぼっちで寂しがり屋の単なる子供」と評していた。

 寂しいから、ひとりぼっちだから他人との距離が上手く取れず、傷つけてしまう、と。

 なんというか、身につまされる思いだな。

 

 

 

 新西暦188年 ☆月◎日

 地球、欧州地区 アイスランド

 

 《ゴーショーグン》の母艦《グッドサンダー》から連絡が入り、北欧はアイスランドで接触することに。

 が、それをドクーガに嗅ぎつけられたらしく、包囲されてしまった。

 

 相手はドクーガだけではなく、ビムラーを狙うメガノイドやゾンダーロボ、さらにはガイゾックの置き土産であろうメカブーストの大群だ。

 とはいえ、所詮有象無象。数だけの雑魚に手こずるαナンバーズではない。

 その戦いの中、ビムラーの成長により強化された《ゴーショーグン》の《ゴーフラッシャー・スペシャル》がいろいろな意味で危険なドクーガの戦闘メカ、《ドスハード》に炸裂する。

 《ゴーフラッシャー・スペシャル》を受けたドスハードは大破するのではなく、自ら自爆するという不可解な形で消滅した。ケン太とイング、そしてエクスが「戦うくらいなら死んだ方がマシ」との声を聞いたという。

 なお、イングは《ドスハート》を見て、「あれがいいならヒュッケバインだって問題ないだろう」と何故か憤慨していた。よくわからんが、ガンダムオタクのニナ・パープルトンと五十歩百歩だな。

 

 それにしても、ビムラー、機械に命を与える意志を持つ超エネルギーか。地球に生命を与えた力と聞くが、まるでゲッター線のようだな。

 シュウ曰く「この宇宙を支配する大いなる意志の一つ」。マサト曰く「次元力の一種」。αナンバーズのメンバー中でも超技術関連に特に造詣の深い二人は、これなる不可解な力すらも把握していたらしい。

 さらにシュウは、ビムラーの成長は「地球のソウル」として選ばれた真田ケン太とともにあり、本来ならばもっと後であったとも推察し、ビムラー自身(!)が何らかの要因で覚醒を急いでいるのではないかとも話していた。

 まったく、ケン太もよく解らないものに見込まれて災難だな。本人は気にも止めていないようだが。

 

 よく解らないものと言えば、《真ゲッター》の運用がネオゲッターチームから元祖ゲッターチームに移ったようだ。

 翔から聞いたのだが、號曰く「トカゲ野郎の親玉は俺らがぶっ倒したからな、竜馬のおっさんたちにはジオンの方をやるよ」だとかなんとか。「前々から、ゲッタードラゴンには乗ってみたかったんだ」とも嘯いていたらしいが、まあ照れ隠しだろう。

 本音は、ネオ・ジオンとの決戦に向けて神大佐らに《真ゲッター》を託したかったのだと思う。実際、チームメンバーの翔もそう推察していたしな。

 その気持ちはわからんでもない。私たちの世代にとって、「ホワイトベース隊」とは一種のヒーローのようなものだ。

 かつてのホワイトベース隊のメンバーは、「シャア・アズナブル」とは因縁浅からぬ間柄だ。その因縁の決着に相応しいマシンをと言う気持ちはよくわかる。

 ともかく、こちらの準備は整ったと言える。もう、負けられないな。

 

 

   †  †  †

 

 

「んんーっ……、こんなものか」

 

 日課の日記を書き終え、アーマラは大きく伸びをした。

 デスクには、しっかりとした作りの真っ赤な日記帳が置かれている。この新西暦にあって手書きというアナログな手法を取っているのは、偏にイングの影響である。

 共に行動するようになってそれなりの時間を経て、アーマラのイングに対する八つ当たりじみたわだかまりこそなくなった。だが、未だに妙な対抗心を燃したりしているのは、相手が見た目が年下(大した差はないが)の男の子だからだ。

 要するに、お姉さんぶりたいお年頃なのである。

 

「……イルイ?」

 

 ふと振り返る。同居人の妹分、イルイがベッドの隅でうずくまり、陰鬱な雰囲気を漂わせていた。

 普段ならアーマラが日課を済ませている間は、勉強したり絵を描いたり本を読んだりと子供らしく一人遊びしているにもかかわらず、今夜はどこか様子がおかしい。

 

「イルイ、どうした?」

 

 アーマラが声をかける。

 イルイが顔を上げた

 

「あ……うん、なんでもないよ」

「……そうか?」

 

 お茶を濁したような態度を訝しむアーマラ。しばらくの間、じっ、と見つめられてイルイはとうとう観念したのか、ぽつりぽつりと胸の内をこぼし始めた

 

「……どうして」

「うん?」

「どうしてあの人たちは、あんなひどいことができるの?」

「ネオ・ジオンのことか?」

 

 こくり、とイルイが頷く。

 そして、どこか危うい様子で心情を打ち明けた。

 

「悪いのは……、ネオ・ジオンや他の星から来た人達……。あの人達さえいなければ……」

「イルイ、それは短絡的な考えた方だな」

「でもっ」

「お前の言うことはある面では正しい。星間連合やゾンダーはともかく、この情勢下で今更地球人同士の内輪もめなどバカバカしい。ネオ・ジオンやギガノス、木星の奴らはどうかしてるのさ」

 

 アーマラの嘘偽りない感想だった。

 バルマー戦役を経てなお地球人類は愚かな行為を繰り返す。これではアンセスター、狂った機械(メイガス)の言うとおりではないかという思いもある。

 しかし――

 

「だがな、イルイ。異星人とスペースノイドが全て悪いと決めつけるのはよくないぞ。仮にもティターンズの兵士だった私が言うことではないがな」

「……」

「納得いかないか」

「……うん」

 

 アーマラに諭されたイルイは不服そうだ。

 

「まあ、そうだろうな。未だに大多数のスペースノイドは、“シャア・アズナブル”の虚像に期待を寄せているようだし。……あんな情けない男に、何が出来るものか」

 

 呆れた風に人々の妄信を斬り捨てるアーマラ。短い間とは言え上官だった男の行動に思うところは多々あった。

「……やっぱり……」イルイの表情がますます暗くなる。それをちらりと見て、アーマラは努めて冷静に言葉を続ける。

 

「しかしお前の言い方も、そんな身勝手な理屈を振りかざす奴らと一緒だと、私は思うぞ」

「……う」

「αナンバーズは、そんな理不尽と戦うためにあるんだ」

 

 普段クールで皮肉屋な態度を崩さないアーマラらしからぬ熱い発言に、イルイが目を丸くする。

 

「……と、イングなら諭しただろうな」

 

 冗談めかして末尾を切る。

 その言葉で少しは救われたのか、イルイは儚げに微笑む。

「さて」アーマラがデスクチェアから立ち上がった。

 

「シャワー、浴びにいくか」

「うんっ」

 

 

   †  †  †

 

 

 新西暦188年 ☆月@日

 地球、極東地区日本近海

 

 日本近海で再び捕捉された《グッドサンダー》を支援し、ドクーガと決戦した。

 

 ドクーガの首領、ネオネロスが現れ、そして倒された。

 イング曰く「ズール皇帝の同類」。悪の意識体であるネオネロスは、ビムラーのケン太だけでなくイングにとっても打倒すべき邪悪だったようだな。

 まあ、そのズール皇帝と比べると脅威度は大したことがなかったようにも思えたが。

 

 倒れたネオネロスは置き土産として大量の中性子ミサイルを残していった。

 もちろん、全て破壊処理した。旧世紀の遺産であるとはいえ、所詮ミサイルだ。何するものぞ、だな。

 

 

 

 新西暦188年 ☆月@日

 地球、極東地区日本 Gアイランド・シティ

 

 イルイが行方不明になった。ドクーガとケリを着けた矢先だ。

 本当に、煙のように忽然と姿を消したイルイを私とイング、αナンバーズの仲間たちは夜通しで探したのだが、足取りの一つも掴むこととが出来なかった。

 

 このベイタワー基地からは出ていないはずだということは、監視カメラの映像等からも明らかだった。

 あるいは何者かにさらわれた可能性も考えたが、イングやその他の感受性の高いものたちからの証言で否定されている。この情勢下だ、イルイの身が心配でならない。

 それでも、私たちは前に進むしかない。

 この地球の未来のためにも。

 

 

   †  †  †

 

 

 新西暦一八八年――

 “バルマー戦役”、“イージス事件”という大戦を辛くも潜り抜けた地球圏に、新たな争乱が噴出する。

 後に“封印戦争”と呼ばれることとなるこの戦乱は最終局面を迎えていた。

 

 突如、地球全土を揺るがす不気味な地鳴り。

 異変を察知したビルドベースの司馬博士の発した警告、「銅鐸」に記された“地獄の帝王”――ミケーネの支配者、闇の帝王が長き()()から目覚めたのだ。

 かつての大戦で討たれた暗黒大将軍と七大将軍が地獄の底から復活し、未だ混乱収まらぬ地球の主要都市を襲う。未来世界で対決したミケーネ帝国の支配者、邪気の権化たる闇の帝王の超能力は絶大だ。

 αナンバーズは、連邦軍の勇士たちとともに占領された都市を解放していく。

 クストースの協力を受け、《マジンカイザー》、《グレートマジンガー》――二大魔神を筆頭に、αナンバーズのスーパーロボット軍団が“巨神戦争”からの因縁を断つべく激闘する。

 七将軍相手に奮闘するシローの《イチナナ式》と、暗黒大将軍に再び冥府へ送り返した《グレートマジンガー》。そして覚醒する《マジンカイザー》の新たな力、《ファイナルカイザーブレード》が焔を纏って闇を断つ。

 ――ついに闇の帝王は倒れた。

 

 東京市23区。ゾンダープラントと化した東京は多数の民間人を抱えたまま、浮上を開始する。

 大気圏から突入を計るαナンバーズに、復活したドン・ザウラー率いるメガノイド軍団が立ちはだかる。

 辛くもメガノイドを退け、ゾンダリアン四天王をも撃破したαナンバーズの前に、ゾンダーの親玉、《EIー01》ことパスダーが姿を現す。

 地球全てを「機界昇華」せんと猛攻するが、「弾丸X」により強化された勇者ロボたちの勇気が限界を超え、ついには邪悪な機界神を討ち滅ぼした。

 

 星間連合の生き残り、ド・ベルガンとリオン大元帥暗殺から始まった争乱の元凶、オルバン大元帥を討ち、バーム星人との和解を成功させたαナンバーズ。

 そこに、小バーム周辺宙域に潜んでいたゼーラ星の支配者――ダリウス大帝が、ズール皇帝、オルバン大元帥が倒れたことを好機と見て襲い掛かる。

 《ガイキング》、《ダイモス》、《ボルテスV》が先陣を切り、彼らの野望を挫いた。

 

 地下勢力、星間連合が壊滅したことを契機に、再び人類勢力の活動が活発化すした。

 αナンバーズは部隊を分け、戦争の早期終結を計る。

 

 月面。ギガノス帝国の切り札、ギガノス機動要塞戦攻略戦。

 母を人質に取られたケーンが寝返るというアクシデントがあったものの、義により助太刀するマイヨ・プラートとその仲間たちを加えたαナンバーズ分艦隊は、図らずもギルトール元帥を廃し、ギガノスの実権を握ったドルチェノフを倒すことに成功する。

 こうしてギガノス帝国は崩壊した。

 

 一方、火星。極冠遺跡を舞台にした火星の後継者との決戦。

 極冠遺跡を掌握し、そのオーバーテクノロジーによって連邦政府へ攻撃を仕掛けようとする火星の後継者に対し、《ナデシコC》による電子戦攻撃を皮切りに、αナンバーズ分艦隊が猛攻する。

 そこに現れる《ブラックサレナ》と《ユーチャリス》。黒き復讐鬼はその鎧を脱ぎ捨て《夜天光》を討ち、因縁に終止符を打った。

 

 

 外敵が滅びたことを受け、ついに大気圏からの離脱を開始するオルファン。

 地球のオーガニック・エナジー枯渇の危機を防ぐため、オルファンとの対話のためにαナンバーズが急行する。

 自身のエゴを振りかざすリクレイマーたちとの戦いの中、勇と比瑪の必死の呼びかけをオルファンは受け入れ、地球の生命は救われた。

 

 そこに再び姿を現したドン・ザウサーらメガノイドが、倒したはずのパスダーを伴ってオルファンを乗っ取るべく強襲する。

 リクレイマーのクィンシーら、そしてゾンダリアン四天王、ピッツァがαナンバーズに協力する。

 そして死闘の末、《ダイターン3》、《ザンボット3》、《トライダーG7》の合体攻撃《無敵コンビネーション》が炸裂し、ドン・ザウサーはついに倒れたのだった。

 

 地球のソウルたるケン太の意志がビムラーに伝わり、オルファンに宇宙へと羽撃く力を与えた。

 オルファンが地球を離れる。

 

 

 

 

 そして――――

 

 

 

「アクシズ、行け! 忌まわしき記憶と共に!」

 

「アクシズが、地球に落ちる……!」

「ダメ、オルファンさん!」

「シャアめ! 私を追い出し、アクシズを掌握したのはこのためか!」

 

 ボソンジャンプにより突如として転移したアクシズが、地球の引力に引かれてオルファンと衝突の軌道をひた走る。

 シャア・アズナブル率いるネオ・ジオン艦隊と、クラックス・ドゥガチの木星帝国が最終作戦を発動したのだ。

 

 火星の後継者やギガノスの残党をも取り込んで、地球人類を粛清せんと地球に迫る。

 アクシズ、あるいはオルファンが地球に落ちれば致命的な事態になることは間違いないだろう。

 だがあまりにも地球に近く、またオルファンと接近しているこの状況ではαナンバーズのスーパーロボット軍団の力を持ってしても、アクシズを破砕することは容易ではない。

 それでも彼らは決死の覚悟を持ってアクシズ破壊に望む。

 

 だが、ネオ・ジオンも指をくわえて見ているわけではない。全戦力を持ってαナンバーズに対抗する。

 全身に核武装した白き破壊神、木星帝国の超巨大モビルアーマー、《ディビニダド》がドゥガチの歪んだ憎悪をはらんで行く手を阻む。

 《クロスボーン・ガンダムX3》が、《ムラマサ・ブラスター》を手に立ち向かう。

 

「真の人類の未来? 地球不要論!? そんなものは言葉の飾りだっ!  わしが真に願ってやまぬものは唯ひとつ!  紅蓮の炎に焼かれて消える 地球そのものだーっ!」

「安心したよ、ドゥガチ! あんた……まだ人間だっ!  ニュータイプでも新しい人類でも、異星からの侵略者で もない! 心の歪んだだけのただの人間だ!」

 

 《ドラグナー1・カスタム》と《ファルゲン》は恐るべき速さで駆け抜け、メタルアーマーを斬って捨てる。

 

「マイヨさん、いいのかよ? 奴ら、元お仲間だろ」

「ギルトール総帥のご意志を履き違えた輩だ、構わん」

「へっ、そうかい。頼りにしていいんだよな?」

「無論だ!」

 

 アクシズの周辺宙域では、《GP-03デンドロビウム》と《ディープストライカー》が、《ノイエ・ジール》の引き連れるMDによって制御された《量産型ゾディ・アック》の軍団と熾烈なドッグ・ファイトを繰り広げる。

 一方、《ナデシコC》と《ユーチャリス》が《グラビティブラスト》を連続して放ち、ネオ・ジオン艦隊を蹴散らす。

 《ブラックサレナ》と青い《エステバリス・カスタム》もまた、直衛機として獅子奮迅の闘いを見せていた。

 

「アキト!」

「ああ。復讐者の戦いはもう終わった。これからは、地球を護るための戦いだ」

「おうおう、いいこと言うじゃねーか、アキト! 地球を守るため、力を合わせるスーパーロボット軍団ッ! くぅーっ、最高に燃えるぜ! これだよこれこれ!」

「フッ……」

 

 

 αナンバーズとネオ・ジオン、木星帝国連合の最終決戦。

 道を踏み外した宿敵との決着を着けるため、アムロの《Hiーνガンダム》が宇宙(ソラ)を切り裂く。《Zガンダム》、《ZZガンダム》、《キュベレイ》がその後を続いた。

 迎え撃つのは赤きモビルアーマー、《ナイチンゲール》。直下の《ギラ・ドーガ》、緑の《ヤクト・ドーガ》、そして《量産型グレート》と《量産型ドラゴン》が指導者を守ろうと間に入るが瞬く間に撃墜された。

 

「シャア!」

「アムロ! もはやアクシズを止めることは出来ん! 重力に引かれた人類は粛正され、私は父の下に召されるだろう!」

「この期に及んで、世迷い言を!」

 

 サイコフレームの発する虹色(エメラルドグリーン)の輝きを纏いながら激突する《Hi-ν》と《ナイチンゲール》。《フィン・ファンネル》と《ファンネル》が蒼い宇宙(ソラ)を縦横無尽に飛び交った。

 そこに、特機タイプの護衛を粉砕した“魔神皇帝”が割って入る。

 

「ッ、マジンカイザー! 甲児か!」

「クワトロ大尉……いやシャア! ネオ・ジオンが火星の後継者と組んでいたのは、このためか!」

「そうだ、お前たちαナンバーズには感謝している。地球圏の混乱を収めてくれたのだからな!」

「地球を徒に混乱させておいて、どの口が言う! バルマー戦役で俺たちとともに戦い、平和を脅かす存在を知ったはずだ。それが何故!」

 

 激する甲児。《マジンカイザー》のカメラ・アイが光り、強烈な《光子力ビーム》が放たれる。

 《ナイチンゲール》の全身のスラスターが火を噴き、その巨大な機体に似合わぬ機動性を発揮してビームを回避する。反撃とばかりに《大型化メガ・ビーム・ライフル》がメガ粒子の散弾を吐き出す。応じる《マジンカイザー》は、両腕のブレードを回転させて《ターボスマッシャーパンチ》を発射させた。

 

「それ故にだ! 腐敗した連邦政府と重力にすがるアースノイドは新たな時代の重石にしかならない! だから私は、粛清すると宣言した!」

「自分勝手な理屈を!」

 

 飛来する鉄拳をシールドで受け流した《ナイチンゲール》。モビルスーツは元より、強力な特機タイプとの戦闘も考慮された《ナイチンゲール》は、地球最強クラスの特機を相手にしてもひけを取らない。

 更なる追撃を試みる《マジンカイザー》だが、AI制御の《ディビダニド》が背後から組み付き、妨害する。一瞬の隙――《ナイチンゲール》が器用にも《マジンカイザー》にキックを入れて距離を取った。

 吹き飛ばされていく《カイザー》、それと入れ替わるように割って入った紅い光――《真・ゲッター1》を《ナイチンゲール》が迎え撃つ。斧と斧をぶつけ合い、竜馬が吠える。

 

「甲児! いつまでも野郎とグダグダ喋ってんじゃねぇ!」

「く、これは!」

 

 飛び散る火花と粒子。《ゲッタートマホーク》と《ビーム・トマホーク》が何度もぶつかり合う。

 《ナイチンゲール》のバインダーから《ファンネル》が射出された。

「貴様は変わらず野蛮だな、竜馬!」胸部から放たれた《拡散メガ粒子砲》に合わせて、死角に位置どった《ファンネル》が偏差射撃でビームを放って光の檻を形成させるが、《ゲッターロボ》は瞬く間に三機の《ゲットマシン》に分離してそれらをかわした。

 結集した《ゲットマシン》が再び合体する。巨大な斧を頭上で振り回し、紅の鬼神が恐るべきスピードで“赤い彗星”に追い縋る。

 

「おうおう。言われてやがるぜ、竜馬!」

「へっ、プライドをへし折られて、女々しく喚く野郎になんと言われようが屁でもねぇな!」

「その通りだな。シャア・アズナブル、かつては同僚として轡を並べたよしみ、俺たちが引導を渡してやる」

「隼人! 出来るものならやってみせろ!」

 

 竜馬、隼人、弁慶の三人は好戦的な笑みを浮かべ、ゲッターチームが《ナイチンゲール》に対峙した。

 

 ――言葉が、想いが宇宙(ソラ)に迸り、ビームと《ファンネル》が交錯する。

 親衛隊を散らしたカミーユ、ハマーン、ジュドーが参戦する。――それぞれの思いを乗せ、鋼の巨人が砲火を放つ。

 大戦の英雄と地球圏最高峰のニュータイプたちによる白と赤の決戦は、激しさを増していく。

 そのときだ。

 

「オレたちを忘れてもらっちゃあ、困るな!」

「むっ!! これはイングか! ええい、厄介な!」

 

 強念が迸る。《グラビトン・ライフル》から放たれた重力波が直上より降り注ぎ、《エグゼクスバイン》が戦場に乱入する。

 《ビルトファルケン・タイプL》、《龍虎王》、《量産型ゲシュペンストMkーII改》がそれに続いた。

 

「クワトロ大尉!」

「もう止めましょう! こんなことをしたって、世の中は変えられませんよ!」

「クスハ、リョウト、すでに賽は振られた。私とお前たち、どちらかが倒れるまで戦うしかないのだ!」

 

 クスハとリョウトの懇願を一考だにせず、シャアは攻撃を続ける。

 両機を一蹴した《ナイチンゲール》に、《エグゼクスバイン》が《TーLINKセイバー》を振りかざして挑む。

 メガ粒子の雨をすり抜け、不幸を運ぶ凶鳥が羽ばたく。

 激突する剣と盾。激しいスパークが虚空に迸る。

 

「シャア・アズナブル、いやさ、キャスバル・レム・ダイクン! ニュータイプなんて曖昧なものに縋って、これ以上間違いを犯すな!」

「ニュータイプの否定、お前の持論だな。だが、実際にニュータイプには力があり、人類が革新しなければ地球が保たん時が来たのだ!」

「どうだか。アムロ大尉や、あんたが憧憬するララァ・スンはどこで生まれた?」

「っ! それは――」

「そう、地球だ。今、オレたちがニュータイプと呼ぶものが、あんたの親父さんの唱えた「ニュータイプ」と同じ存在だって保証はない。いや、ザビ家が歪めた選民思想を土台にしてるんなら、それはもはや別のものなんじゃないのか!?」

「……ッ!」

 

 イングの指摘に図星を突かれ、動揺するシャア。《ナイチンゲール》の巨体を押し出し、《エグゼクスバイン》は《TーLINKセイバー》を引き抜いた。

 念動力を全身にたぎらせて、イングが吼える。

 

「ニュータイプ……、戦争をしなくていい者を目指しながら争いしか出来ない――そんなあんたの歪んだ理想は、このオレが断ち斬るッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アクシズ表面。

 大小いくつもの爆発が起こる中、《ビーム・サーベル》を左手で引き抜いた《Hi-νガンダム》が《ナイチンゲール》に接近する。

「シャア!」

「アムロ!」

 

 迎え撃つ《大型メガ・ビーム・ライフル》から、黄色のメガ粒子が幾度となく放たれた。

「チィッ!」岩盤を砕く光の弾丸を不規則な機動でかわし、白き“ガンダム”が赤いモビルスーツに迫る。

 繰り出された《サーベル》の一振りを避け、《ナイチンゲール》が上昇した。

 内部からの大きな爆発。

 それとは異なった機動で爆発を逃れた《Hi-ガンダム》が、ライフルを構えた。

 

「よく持つよ、シャア!」連射される《ビーム・ライフル》のメガ粒子を、《ナイチンゲール》はその強力な推力でもって危なげなく回避する。シャアは、《ナイチンゲール》の巨大なバインダーから《ファンネル》を分離させた。

「アムロ! 何故わからん!」《ビーム・トマホーク》をまるで指揮棒のように振りかざし、《Hi-νガンダム》へとけしかける。「人類を粛清するには、誰かがその業を背負わなければならん!」

 シャアの意思に従って、《ファンネル》が宇宙を走る。

 

「それを貴様が背負うというなら……間違っている!」

 

 メガ粒子の雨を回避した《ガンダム》。その翼のような背部ファンネル・ラックから分離した《フィン・ファンネル》が、アムロの意思を感知して飛び立つ。

 《ファンネル》同士が熾烈なドッグ・ファイトを繰り広げながら、幾度となく交わる白と赤。サーベルの激突によりメガ粒子が飛び散った。

 鍔迫り合う二機のモビルスーツ。その片割れ、赤い機体の中でシャアはいっそ憎しみを込めて叫んだ。

 

「ララァを殺めた男が言うことか!」

「だから……どうだって言うんだ!」

「貴様の存在が私を怯えさせた!」

 

 アムロの動揺が伝播し、隙を晒した《Hi-νガンダム》を押し退けた《ナイチンゲール》が追撃のライフルを放つ。

 体制を崩した《ガンダム》を護るように、《フィン・ファンネル》のバリアが展開された。

 ピラミッド状に張り巡らされたi-フィールドに、ビームが何度も衝突する。

 その衝撃でアクシズ表面に叩きつけられ、滑るようにする《Hi-ガンダム》に《ナイチンゲール》が迫る。

 

「人は、戦いの中で導くしかない!」

 

「ニュータイプは……ッ、殺し合う道具じゃないッ!!」

 

 アムロの思念を吸って、《ガンダム》の全身からエメラルドグリーン(虹色)の輝きが迸った。

 

 

 

 

 

 

 

 αナンバーズの総攻撃によりアクシズは破砕され、オルファンも被害を免れた。

 そして死闘の末、《ナイチンゲール》は《Hiーνガンダム》と《エグゼクスバイン》により大破に追い込まれる。

 だが、砕けたアクシズの半分は地球に落着する軌道を取ったまま、大気圏に突入していく。

 

「たかが石ころ一つ、ガンダムで押し出してやる!」

「大尉! オレたちも!」

「わたしたちで、みんなの地球を守るんです!」

 

 アクシズの破片に取り付く《Hiーνガンダム》。イングとエクスが発憤し、アムロに続く。

 大気との摩擦で両機は瞬く間に真っ赤に染まった。

 

 《マジンカイザー》が。

 《真・ゲッターロボ》が。

 《グレートマジンガー》が。

 《ゴーダンナー》が

 《ネオゲッターロボ》が。

 《Zガンダム》が。

 《ZZガンダム》が。

 《サイバスター》が。

 《鋼鉄ジーグ》、《ガオガイガー》、《ネリー・ブレン》、《ガイキング》、》、《クロスボーン・ガンダムX3》、《ダイモス》。

 《ゴッドガンダム》、《ウィングガンダムゼロ》、《ガンダム・ステイメン》、《Ex-Sガンダム》、《ダイターン3》、《コンバトラーV》、《ボルテスV》。

 《電童》、《ゼオライマー》、《ドラグナー1・カスタム》、《ブラックサレナ》、《ザンボット3》、《ゴッドマーズ》、《トライダーG7》《レイズナー》、《ダンクーガノヴァ》――

 αナンバーズに所属するすべてのスーパーロボットがアムロとイングに倣い、次々にアクシズに取り付いていく。

 無駄な抵抗だろう。

 愚かな行為だろう。

 けれど確かに、アクシズの速度は僅かだが低下していた。

 その姿に感銘を受けたのか、争っていたはずのネオ・ジオンの機動兵器や、地球の危機に馳せ参じた連邦軍正規部隊が、アクシズを押し返すべく参加する。

 その中には、かつてホワイトベース隊としてアムロらと“巨神戦争”を駆け抜けた仲間たちの姿もあった。

 

『エイガー、フォルド、ユーグ! みんな、来てくれたのか!』

『久しぶりだな、アムロ』

『遅くなってすまない。我々も手伝わせもらう』

『それから、向こうにはユウのヤツもいるぜ!』

『……』

 

 

 推力が足らず重力に引かれて地球に落ちていく《ギラ・ドーガ》に《ジェガン》がマニュピレータを伸ばす。

 しかし、うまく掴むことが出来ず、重力の井戸に転落していく。そのまま爆散するかに見えた《ギラ・ドーガ》だったが、間一髪で《龍虎王》が助けに入って事なきを得た。

 そういった光景が、そこかしこで見られていた。

 

「Hiーνガンダムは――」「エグゼクスバインは――」

 

「「伊達じゃない!!」」

 

 アムロとイングの思惟がサイコフレームとTーLINKフレームによって増幅され、共鳴現象を引き起こす。

 《Hiーνガンダム》のコックピット周辺から迸った光が装甲表面を伝い、機体が淡いエメラルドグリーンに染まる。《エグゼクスバイン》から、強い意識の込められた念が宇宙(ソラ)に放たれた。

 

 二人の、αナンバーズの、そしてこの宙域にいる全ての人の思いが虹となって、宇宙に伝播する。

 それらに共鳴/共感したオルファンの発するオーガニック・エナジーが、アクシズを優しく包み込む。不可思議な虹はまるで一人一人違う心の在り様のようにきらきらと様々な色に輝き、漆黒の宇宙(ソラ)を彩った。

 

 人の心の光――

 宇宙に瞬く綺羅星のような命の輝きが、平和への普遍的な祈りが、地球の遍く生命を救ったのである。

 

 

 アクシズの消滅を持って、ネオ・ジオン、木星帝国連合軍との戦闘は終結した。

 生き残った兵士たちは全員投降、シャア・アズナブル以下、名だたる幹部は戦死、ないしは行方不明となった。

 

 ――だが、戦いは終わっていなかった。

 アラビア半島、ナフール砂漠の地下深くから、先史文明の遺跡「バラルの園」が浮上する。

 

 《ガンエデン》――

 先史文明により創り出された強大なる念動兵器、ファースト・サイコドライバーの玉座にして人智を越えた力を持つ人造神。創世神ズフィルードとしてバルマー星に文明を築き、結果的にビアル星人を地球へと導いた機械の女神である。

 《カナフ》、《ケレン》、《ザナフ》、三体のクストースとその量産機を引き連れ、地球を守護/封印せんと強力極まりない結界を張り巡らし、コロニーや月、小バーム、オルファンに対して攻撃を開始した。

 

 《ガンエデン》としての本性を現したイルイは、αナンバーズに語りかける。

 自分の許へと下り、地球を守護する剣となれ、と。

 地球に害を為す組織を全て壊滅させたαナンバーズを守護者と認め、惑星封印への理解を求めたのだ。

 だが、しかしαナンバーズは地球を封印し、月、コロニーに攻撃を行い排除しようとすることを良しとせず、敵対。機械の女神に戦いを挑む。

 ドクーガ三将軍、クィンシー・イッサー、そしてリヒテルとハイネルが助太刀に現れる。

 

「イング、あなたをこの世界に招いたのは、他ならぬ私です」

「な、に……! 何を、根拠に!」

「あなたの本当の名は浩一、山野浩一……思い出しましたか?」

「!!」

「あなたは私と“あの人”の力を以て、外なる宇宙より招かれた強き魂。この地球(ほし)を護る剣として……そして、大いなる災いから逃れるために」

「大いなる災いだと!?」

「そう、それは根源的な破滅。森羅万象、ありとあらゆるものの破綻です。それを回避することこそ、あなたがこの世に遣わされた意味なのです。さあ……、神の子イングよ、我が許に下るのです。私と共にあることが、あなたの使命なのですから」

「断る!」

「……それは何故です?」

「オレはオレだ! ガンエデン! 例えお前の言うことが全て真実であろうが、関係ない! あらゆる邪念を断ち斬る――それは他ならぬオレが、オレ自身に科した使命だからだ!」

「どうしてもと言うのですか」

「くどい! 大いなる災厄とやらを防ぐのは、お前を倒してからにさせてもらう!」

「愚かな……仕方ありません。まずはあなたのその強靱な精神を折り、屈伏させることにしましょう」

 

 激しい戦いの最中、イングはイルイに――《ガンエデン》に取り込まれたイルイ自身の意識に触れた。

 《ガンエデン》の呪縛からイルイを解き放つために、αナンバーズのメンバーは思いの丈を彼女に投げかける。

 閉じられた念、封じられた意志が徐々に目覚めていく。

 

「私は言ったはずだぞ、イルイ! 今のお前の在り方は、身勝手な理屈を振りかざす奴らと一緒だと!」

 

 紅い《ビルトファルケン》を駆り、アーマラが声を張り上げる。

 言い様こそ突き放したような物言いだが、そこにはイルイに向けた優しさと厳しさが込められていた。

 少なくない時間を仲のいい姉妹のように過ごした少女たちの絆は、いつしか本当の家族にも勝るほど強く結ばれていたのだった。

 

「そして、私たちαナンバーズは、あらゆる理不尽と戦うためにある!」

「そうだ、イルイ! お前の本心は、こんなこと望んじゃいないはずだ!」

「!」

「お前の心が泣いている! 誰も傷つけたくないと、友達を傷つけたくないと! 友達になれるかもしれない人たちを傷つけたくないと!!」

「イルイちゃん、ガンエデンに負けないで! それでいっしょに帰りましょう、みんなのところに!」

「わ、わた、し、私、は……――お兄ちゃん……!」

「イルイ! お前がオレを兄と呼ぶなら、オレは兄貴として、お前を救ってみせる!  そしてガンエデン! お前のその妄執、ここで断ち斬ってやる! このエグゼクスバインでな!」

 

 イングとアーマラとエクスと――αナンバーズの想いを乗せて、不滅の凶鳥が機械の女神と対峙する。

 

「エクス!」

「はい、イングさん! GSライド、フルドライブっ! ブラックホールエンジン、トロニウム・レヴ――、シンクロナイズ!」

「TーLINKダブルコンタクトッ! フィナーレだ、アーマラ!」

「ああ! これで決まりだ!」

 

 《エグゼクスバイン》と《ビルトファルケン》が念動剣の柄を握る。

 重ね合う手と手。重なり合う意志の力。イングとアーマラ、二人分の念動力によるダブルコンタクトの相乗効果、莫大な念の光が《TーLINKセイバー》の刀身を覆い尽くしていく。

 どこまでも延びる、極光の柱――

 まるで天を断ち割るが如き念動剣がここに完成した。

 

「「デッド・エンド・スラァァァァッシュ!」」

 

 振り下ろされる極大の斬撃――両機による《ストライク・デッド・エンド》が光の帯となって、《ガンエデン》を貫き、バラルの園をも両断した。

 

「おおおおッ!」

 

 《エグゼクスバイン》が念動フィールドを纏い、突進する。

 《ガンエデン》に宿ったファースト・サイコドライバーの莫大な強念が解放されれば、地球は被害を免れない。

 それを押さえ込み、《ガンエデン》と最期を共にしようとするイルイ。だが、間一髪、イングは外部から強制的に念を封じ込めることで彼女の救出に成功した。

 ここに至り、イングの念はファースト・サイコドライバーすらも超越していたのだった。

 

 

 中核たる《ガンエデン》を失い、崩落を開始するバラルの園。イルイを救出することに成功したイングとαナンバーズは脱出を計る。

 そのとき、全天を強大な思念が覆い、バラルの園を捕らえる。地球、遙か神話の時代にメソポタミアと呼ばれた地域の一角から光の柱が立ち上った。

 

 光の柱――強烈な念動光とともに降臨したのは白と金に彩られた神秘的な巨人。どんな材質で創られたのかもわからないその姿は、あるいは古代の石像のようにも見えた。

 

「ぼくの名はバビル。もっとも、きみたちにはビッグ・ファイアと名乗った方が通りがいいかもしれないね」

 

 白髪の少年――ビッグ・ファイアは語る。自身は《ガンエデン》の意志――、ナシムと同じ太古の人類、ファースト・サイコドライバーの一人、「バビル」だと。

 彼は今現在、ナシムと同様に肉体を失い、神体《ガイアー》に思念を封入して存在を維持している。先史文明人として一度滅びた地球に生命の種を蒔き、遙か太古から気の遠くなるような時間をかけて地球人類を見つめ続け、またBF団を組織して人類社会の裏側を牛耳ってきた。

 人類最強の汎超能力者(サイコドライバー)――

 

「ビッグ・ファイア……彼は新生を司る者達の一人、神であって神でなく、 人であって人でない存在。50万年前の終焉をゼ・ バルマリィ帝国の創世神ズフィールドと共に生き延び、現在の世界を創り上げた人物です」

「そのとおりだ、シュウ・シラカワ」

「ビッグ・ファイア……、ゼーレにも伝わる創世神、無限力(むげんちから)に選ばれ、次元力を自在に操る真のファースト・サイコドライバー……!」

「きみは生前、彼らと繋がりがあったのだったね、木原マサキ。いや、いまは秋津マサトか」

「まさか、ギシン星の神話に残る邪神!?」

「名答だ、マーズ。ズールがきみをこの地球に送り込んだのは、ぼくに対する攻撃だったようだね」

 

 ビッグ・ファイアは、ことここに至ってαナンバーズの前に姿を表した真意を明かす。

 

「イング。ガンエデン――、ナシムはきみを“アポカリュプシス”に対抗するための単なる戦力としてしかみていなかったようだけど、ぼくは違う」

「どういう意味だ?」

「きみの肉体は、ガイアーに残されたぼくの遺伝子データを基にして生み出された。BF団を通じてイーグレット・フェフに接触、提供することでね」

 

「肉体を失い、自由に動けないぼくの代役として地球を護ってくれたきみは、ナシムの撃破を以てついにサイコドライバーとして真に“完聖”を果たした。いまこそ、その肉体を召し上げるときが来たんだ」

「それではまるで……!」

「イングラム・プリスケンのようだと言いたいのかい、ヴィレッタ・プリスケン」

「! 貴様、どこまで知っている?」

「ふふふ……、さてね」

「私に、エンジェル・ハイロゥの攻略法を伝えたのも、その一環というわけですか?」

「そうだね、シュウ。諸葛亮を通じてきみやイングラムに策を与えたのもすべてはこのときのため、ぼくが現世に復活する布石だったんだ」

 

 ビッグファイアの語るイング誕生の真相に、一同は言葉を失う。

 

「外なる世界から招かれたきみは、この世界を支配する因果律、アカシックレコードには縛られない。そのきみをガイアーに取り込むことで礎にし、肉体を得て蘇ったぼくはこの地球に再び君臨する。言うなればきみは人柱なんだよ」

 

 ビッグ・ファイアは言う。それこそが真のGR計画、きみの存在理由だと。

 

「αナンバーズ。きみたちはよくやってくれたけれど、ぼくがこうして立ち上がった以上もはや用済みだ。完全復活した暁には、ナシムの残したガンエデンシステムにより改めて封印を施し、この地球に永遠の安寧と平和をもたらそう」

 

「ふざ――、ふざっけんな!」

 

 イングが激昂する。自身の生誕の真実を突きつけられても、彼の精神は折れなかった。

 積もりに積もった理不尽に対する憤りが爆発したのだ。

 

「テメェら、揃いも揃ってくだらねぇ御託並べやがって! お前らの都合なんか知ったことか! もう一度言ってやる、オレはオレだ!」

「その選択は愚かだ、イング。……しかたない、絶対的な力の差というものを教えてあげよう。G(ガイアー)R(リライブ)……七神合体!!」

 

 《ガイアー》を中心に不可思議な魔法陣が描かれ、現れた六神体が《ゴッドマーズ》と同様のプロセスを経て合体、完成する巨神――《ガンジェネシス》。ズール星にて建造された六神ロボの原型であり、言うなれば「()()()()()()()()」とも呼べる存在である。

 遙か昔、先史文明により《ガンエデン》と共に建造された創世の人造神。《ガンエデン》が惑星の守護神であるなら、《ガンジェネシス》は外敵を打ち砕く絶対の破壊神。地球、いや、宇宙最強の汎超能力者(サイコドライバー)ビッグ・ファイア――バビルの人智を越える超能力を十全に発揮させる、前人未踏の念動兵器だ。

 

 邪魔大王国、鉄甲龍、ガルファ、ガイゾック、ギシン星間連合、恐竜帝国、Dr.ヘル軍団、メガノイド、ゾンダー、ギガノス、リクレイマー、木星帝国、ネオ・ジオン――長きに渡った“封印戦争”、その最終決戦。

 封印を破ったαナンバーズと、封印から目覚めたビッグ・ファイアの戦いは熾烈を極めた。

 

「ぼくに従え、イング」

「う、がああああッ!?」

「お兄ちゃん!」

「イング! しっかりしろ! 私を倒したお前が、特Aエキスパート“ワンゼロワン”が情けない様を晒すなど許さんぞ!」

「――! ったく、お前にそう言われちゃ、負けてらんねーよな!」

 イングを操ろうとするビッグ・ファイアの強念を仲間たちの、そして何よりアーマラの声がはねのける。

 

「バビルお兄ちゃん、もう止めて! αナンバーズのみんなは地球を護ろうとしているのよっ!」

「イルイか。彼らを倒した後で、もう一度ナシムの器としてあげよう」

「!」

「そんなこと、させるわけねーだろ!」

 イルイの懇願を一蹴するビッグ・ファイア。イングがその態度に激怒する。

 

 無限にも思える無尽蔵のエネルギーと圧倒的なパワー、そして「マシン・セル」を彷彿とさせる化け物じみた再生能力を持つ《ガンジェネシス》を前に、αナンバーズは一人、また一人と脱落していく。

 けれども、彼らの攻撃が無駄だったわけではない。

 

「今だ! 合わせろ、竜馬、アムロ! 光子力を炎に変えろ! 食らえ、ファイヤーブラスタァァァァッ!!」

「俺の……、俺たちの想いがゲッターのパワーを引き出す! ストナァァァァッ! サァァァァンシャインッ!!」

「Hiーνガンダムは伊達じゃない! 行け、フィンファンネル!!」

 仲間たちの攻撃を呼び水にした《マジンカイザー》、《真・ゲッターロボ》、《Hiーνガンダム》による決死の同時攻撃で《ガンジェネシス》が初めて揺らいだ。

 

「我が名はゼンガー、ゼンガー・ゾンボルト! 神を断つ剣なり!! ――チェストォォォォオッ!!」

「龍虎王が超奥義っ! 龍王破山剣ッ! 天魔降伏! ()ーーんッ!!」

「「ツイン・バード! ストラァァァァイクッ!!」」

「マニューバーGRaMXs! フィニィィイッシュ!!」

 

 すかさず《ダイゼンガー》、《龍虎王》、《ビルトビルガー》と《ビルトファルケン》、《ハイペリオン》がそれぞれの最大攻撃を叩き込む。

 そして、《ゴッドマーズ》の《ファイナルゴッドマーズ》が炸裂した。

 

「くっ、六神体が……!? ガンジェネシスを維持できない!」

「この瞬間を待っていたんだ! 来い、ブラックホールバスターキャノン!」

 

 仲間の援護を背に、イングは思念を発して空間に呼び掛ける。

 パージした《TーLINKレボリューター》による念動結界「サターン・フォーメーション」が《ガンジェネシス》を捉えた。

 空間を穿つ漆黒のゲート。重力格納空間から、巨大な砲塔が姿を表す。

 

「ヒュッケバインから受け継いだ力を……! 今こそ! 見せてやる!」

 

 空間を穿ち、姿を表す巨大な砲頭。

 《エグゼクスバイン》の最強兵器、《ブラックホールバスターキャノン》が投射された。

 

「超重獄に墜ちろ! ビッグ・ファイア!!」

「っ、まだ、六神体をやられただけだ……!」

 

 極小のブラックホールにより、完全に破壊された《ガンジェネシス》から《ガイアー》が分離した。

 

「イング、きみとの決着だけは着けさせてもらう!」

「なにっ……!?」

 

 大爆発の中から現れた《ガイアー》は、《エグゼクスバイン》に組み付くと諸共に念動転移する。

 

「イング!」

「お兄ちゃん……!」

 

 そしてアーマラとイルイの悲鳴を残し、両者は虚空に消えた。

 

 

   †  †  †

 

 

 BF団の本拠地、超古代文明の遺産「バビルの塔」。

 地底、地下深くに広がる巨大な空間で凶鳥と巨神が激突する。

 

「いい加減往生際が悪いぜ、ビッグ・ファイア!!」

『それはぼくのセリフだ、イング!』

 

 無数の光弾を放つ《ガイアー》。念動力により、まるで《ファンネル》のように飛翔して《エグゼクスバイン》を追い立てる。

 対する《エグゼクスバイン》の動きは精彩を欠いていた。

 Dr.ヘル軍団、リクレイマー、ネオジオンとの決戦から《ガンエデン》、《ガンジェネシス》と連戦を演じてきた機体はすでに限界に近く、全身至る所にガタがきている。サブコンソールにはエラー情報が飛び交い、警告音が耳を(つんざ)く。

 さらには《ガイアー》の性能も《ガンジェネシス》に負けず劣らず強烈だ。

 光弾の雨霰に、近接戦のエネルギー衝撃波。全身から超々高熱の炎を吹き出し、さらには念などのエネルギーを吸収すらしてしまう。

 それでもイングは諦めない。強くしなやかな心は折れたりしない。仲間たちのもとに帰るため、最強のサイコドライバーとの孤独な戦いを続ける。

 

『これでどうだ!』

「ぐあ……! ね、念動フィールドォォッ!」

 

 念動力による引力で引き寄せられ、至近距離で光弾を受ける《エグゼクスバイン》。

 イングは念動フィールドの応用で《ガイアー》を無理矢理引き剥がすが、ゼロに近い距離で光弾を叩きつけられたダメージは深刻だ。

 

「イングさん、これ以上は機体が保ちません!」

「まだだ、まだやれる! まだ終わりじゃない! 限界を超えたとき初めて見えるものがある、掴み取れる力が……! オレたちならやれるはずだ、エクス!」

「は、はいっ!」

 

 エクスの警告を退けて、イングは哮る。

 けしかけた《TーLINKレボリューター》は全て破壊され、《フォトン・ライフル》、《グラビトン・ライフル》もエネルギーを使い切るか喪失した。

 残った武装は数本の《ロシュ・ダガー》と《TーLINKセイバー》のみ。

 しかしイングの闘志はますます燃えさかる。ビッグ・ファイアはそんな彼に、疑問を呈した。

 

『イング。どうして、そうまでして戦えるんだ? きみを突き動かしているのは単純な正義感だろう。けれど、その正義感を向ける相手に、ヒトに命を懸けるほどの価値ない』

「だからどうした! アクシズを防いだ光を見ただろう! ヒトはそんなに捨てたもんじゃない!」

『あの暖かい光を創り出せるヒトが、同時に残酷で愚かな行為をいとも簡単に犯す。それは歴史が証明している。だからぼくはBF団を組織した。愚劣なるヒトが地球を滅ぼさないように、監視するためにね』

「じゃあ、そうさせないようにするさ。あんたを倒してな!」

『……。それでどうする、イング。所詮、きみの力はぼくの劣化コピー。オリジナルには勝てない』

「コピーがオリジナルに劣ると誰が決めた! 例え、お前から与えられたものだろうとも! この力、みんなの笑顔のために使うんだッ!!」

 

 決意が意志を動かし、意志が強念を生む。

 イングの念は魂の力。ビッグ・ファイアの肉体を基礎としたものであっても、結局のところは彼の意志の発露によるものでしかない。

 揺るがぬ精神と、確固たる信念が新たな力を呼び覚ます。

 

「唸れ、トロニウム・レヴ! Gストーンよ、おまえが無限の力を発揮できるというなら、オレの勇気を燃やして光り輝け!」

 

 《エグゼクスバイン》に搭載されたトロニウム・レヴが唸りを上げ、Gストーンが勇気を力に変えて輝く。

 それに伴い、イングの髪がまるで燃え立つように真赤(まっか)に染まった。

 

「アカシックレコードアクセスッ! 限界を超えろ、エグゼクスバインッ!!」

 

 まばゆいばかりの光を放ち、不滅の凶鳥が息を吹き返す。

 《TーLINKスライダー》の接続コネクタから念動力で形作られたブレードが出現し、機体全体が翠緑の光を帯びる。

 猛烈なエネルギーにより、紫黒の装甲が真紅に燃え上がる。その姿はまるで、かつての《ヒュッケバインEX》のようで――

 《ストライク・シールド》から《TーLINKセイバー》を引き抜き、《エグゼクスバイン》は限界を超越し、極限(エクストリーム)に到達した。

 

「オオオオ――ッ!!」

『速い……!?』

 

 光り輝く極限の凶鳥が、圧倒的なスピードですれ違いざまに《ガイアー》を斬り裂く。

 僅か一瞬の接触は、エネルギー吸収の隙を与えない。

 

『この念、ぼくを超えている……!? 無限力(むげんちから)を掌握しているとでも言うのか! これが“神なる世界”の者の力……! イング、きみは危険だ!』

「ようやくオレの存在を認めたな、ビッグ・ファイア! オレはお前の複製でもなければ、影でもない! ましてやお前の(にえ)になるなんて以ての外だ! オレは一人の人間として、地球人としてお前を倒す!  忘れるな、オレの名前はイング・ウィンチェスターだ!」

 

 乗機を一方的に切り刻まれて初めて狼狽を見せるビッグ・ファイアに、イングは決然と言い放つ。

 振り下ろされた《TーLINKセイバー》が《ガイアー》の左腕を断ち斬り、残った右手が放った光弾がそれを弾き飛ばす。

 

 それは死闘と呼ぶに相応しい戦いだった。

 激しい攻撃の応酬。天地を揺るがす強念の激突で、バベルの塔が悲鳴を上げる。

 そして……

 

「ヒトの世界にッ、お前(カミ)は――いらないッッ!!」

 

 ついに、イングの信念が込められた拳が、母なる大地の名を持つ巨神を貫いた。

 胸に風穴を空けられた《ガイアー》は、破損部を激しくスパークさせて空中に漂う。残った四肢はだらりと力なく垂れ下がっていた。

 

『み……見事だ、イング……。それで、こそ、ぼくが、後継者として見込んだ、男だ』

「何っ!?」

『こ、これで、ぼくも……心おきなく、因果地平の彼方に、無限力に逝くことができる……』

「ビッグ・ファイア、お前……そういうことか」

 

 イングは悟る。

 数々の艱難辛苦を与え、「イング」を後継者として育て上げる――それこそが、真のGR計画なのだと。

 最後に自らが試練として立ちふさがり、打ち倒されたことで目的を果たしたビッグ・ファイアは満足そうだった。

 

『イング……虫のいいことだけれど、最後にひとつだけ、頼みが、あるんだ……』

 

 譫言のように、ビッグ・ファイアはイングに語りかける。

 

『ナシムは……ぼくの、ほんとうの妹だった……。ナシムの血を色濃く、受け継いだイルイを……そして、彼女の愛した地球を、ぼくらの代わりに、護ってやって、ほしい……」

「わかった。イルイはオレの妹でもあるんだ。地球を護るのも、妹を護るのも、あんたに言われるまでもない」

『ふふ……、ありがとう、イング……』

 

 イングの素直でない物言いに、ビッグ・ファイアは微笑んだ。まるで憑き物が全て抜け落ちたような、安らかな笑みだった。

 

『ナシムの願いで……、ぼくらは、バルマーを離れた……。それ自体は、今でも、間違いだったとは……思わない。でも……、でもそのせいで彼が……ゲベルが、歪んでしまったのなら、ぼくは――』

 

 誰に語るでもない途切れ途切れの言葉には、ビッグ・ファイアの――バビルの深い後悔の念が込められていた。

 

『地球を、この宇宙の未来を頼む……バビル二世……』

「ああ。頼まれた」

 

 後継者に未来を託して、《ガイアー》が爆散する。

 《ガイアー》の残した光が粒子となって、《エグゼクスバイン》のTーLINKフレームに吸い込まれていく。

 地球を誰よりも愛し、ヒトを厳しくも愛おしんだファースト・サイコドライバーの最期だった。

 

「…………」

「イングさん……」

 

 暫し、黙祷するイング。エクスが気遣わしげにする。

 ビッグ・ファイアの――バビルの残した“(しゅくふく)”を受け入れて、“バビル二世”はここに完成したのだ。

 

「――帰ろう、エクス。みんなのところに」

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――《ガンエデン》、《ガンジェネシス》という太古の念動兵器群に辛くも勝利したαナンバーズ。

 無事地球に降下したαナンバーズのメンバーにより、《ガイアー》とともに姿を消した《エグゼクスバイン》の捜索が続けられていた。

 

 だが、イングの行方は蓉として知れなかった。

 

 

 紅い《ビルトファルケン》に搭乗し、イングを捜索していたアーマラとイルイ。彼女たちは休息もそこそこに、懸命な捜索活動を続けていた。

 

「あ……!」

「この暖かい念は……」

 

 イルイとアーマラが何かに気づく。

 二人は顔を見合わせると、すぐに移動を開始した。

 

 慣れ親しんだ念を関知した場所に、《ビルトファルケン》が着陸する。

 ひざを突く《ファルケン》。コクピットを開き、アーマラはイルイを抱えて慌ただしく飛び降りる。

 そこは青々とした背の低い草花が生い茂る、なだらかな草原だった。

 

 武装の大半を失い、損傷も激しい《エグゼクスバイン》の足下に立つ、銀髪の少年の後ろ姿。傍らには、鮮やかなピンク色のマスコットロボが浮遊している。

 

「おにーちゃーんっ!!」

 

 抱き上げられていた腕をするりと抜けて、イルイが一目散に駆けていく。

 少年が振り向いて、彼女を迎える。

 アーマラは苦笑し、ゆっくりと歩いてその後を追った。

 

「イング」

「アーマラ」

 

 イルイを抱き上げ、言葉少なに自分を迎える少年――イングが、アーマラにはどこか大人びて見えた。

 

「勝ったのか」

「ああ。ビッグ・ファイアは……バビルは逝ったよ」

「バビルお兄ちゃん……」

 

 落ち込むイルイの頭を軽く撫で、イングが空を見上げる。

 雲一つない抜けるような青空には、燦々と光を振りまく太陽とオーガニック・エナジーの虹が瞬いていた。

 

「……勝手にこの世界に呼ばれて、訳も解らず戦争の中に放り込まれて……、始めは単純に怒りとか憤りとか、そういう感情で戦ってた」

 

 長いようで短い旅の記憶を手繰り寄せ、イングは述懐する。

 責任を感じているのだろう、イルイが腕の中で心配そうに見ている。

 

「ロンド・ベルの、αナンバーズのみんなと出会って、いつからかこの地球に愛着を感じるようになって。たくさんのヒトがいて、たくさんの命にあふれてて、たくさんの想いがあって……それを護りたいって思えるようになったんだ」

 

 そう思えたのも、イングが純粋だからだろう。

 英雄(ヒーロー)に対する憧憬は時として歪み、最後には身の破滅に変わることもあるのだから。

 

「自分が今ここにいる理由がわからなくても、それでもいいって思ってた。けれど……、オレにも託されたものがあった。ここにいる意味があったんだ」

 

 視線を落としたイングは、しばし口を噤む。

 

「オレは、ここにいる」

 

 そして瞼を開き、晴れ晴れとした表情で力強く言った。

 アーマラは、そんなイングの横顔を見つめていた。見惚れていたといってもいい。

 それは気高い戦士のようで、年相応の少年のようで――とても尊く思えたから。

 

「アーマラ」

「……」

「アーマラ?」

「んッ? あ、ああ! なんだ?」

 

 自分が惚けていたことに気付いたアーマラは、訝しげな視線に狼狽する。その頬は、薄く薔薇色に染まっていた。

 様子のおかしいアーマラに首を傾げつつ、イングは本題を切り出した。

 

「これから、地球、いやこの銀河には今までにない大災厄が訪れるだろう。それはこれまでの戦いとは比べものにならないほど辛く、厳しいものになるはずだ。そしてオレは、その戦いの真っ直中に行くつもりなんだ」

 

 それが託された願いだから。

 それが英雄(ヒーロー)の姿だから。

 それが誰にはばかることのない自分自身の望みだから。

 

 だからイングは命を懸けて戦うのだ。

 人々の志を束ねる希望の太陽として。終わらない平和を求めて。

 

「……それでも、オレと一緒に戦ってくれるか?」

 

 少しだけ弱気な顔を覗かせる。

 ふっ、とアーマラが笑う。いつものニヒルで、けれどもどこか背伸びをした表情は彼女のいつものスタンスだ。

 

「馬鹿者。私はお前のパートナーだぞ。そんなもの、言うまでもない。お前が嫌と言ったって、離してやるものか」

「お兄ちゃん、わたしもいるよっ」

「わたしとエグゼクスバインもお供します!」

 

 アーマラの勝ち気な宣言。健気なイルイとエクスが続く。

 

 彼らの頭上に、連絡を受けて集結したαナンバーズ艦隊と仲間たちの姿がある。

 心強い仲間に恵まれた自分の幸運に感謝して、イングは破顔した。

 

「行こう、終焉の銀河に。この世界を終わりにさせないためにも」

 

 

 

 

 





 やっとできた……。
 Zロスとギャラファイロスがつらたん……。



 カイザーさん「やっぱマジンガー…いいよね」
 クソコテ「いい…」
 ゲッペラ「號くん仕上がってんね。うちの艦隊にどう?」
 おっちゃん「ボンもそろそろ身を固めんとなぁ。おっちゃん心配でならへんで」

 カイザーさんは奥ゆかしいので、マジンガーの活躍の場を奪って俺ツェーとかしたりしません。空気を読んで大人しくしてました。
 クソコテは見習ってもろて。
 なお、ゲッターファイナルクラッシュはネオゲッターチーム搭乗時のみで、第二次だと真ゲッターは元祖ゲッターチームが乗った場合、武装が減って実質弱体化します。

 ちなみに、ゴーダンナーのラビッドシンドロームの下りは昨今の情勢を鑑みてカットしました。……ウソです、処理が面倒だっただけです。


 さておき、ようやくですが第二次まで消化することができました。
 残すところ、幕間のあとに本番の大惨事α(誤字にあらず)のみ。基本的にはこれまで通り加筆修正しただけですか、追加要素マシマシの完全版で今のところ第四次とF、F完くらいの違いになるかなぁと思う次第です。
 次回がいつになるかは不明ですが、気長にお待ちいただければ嬉しいです(。・ω・。)



ハマーン様は最後に何に乗る?

  • キュベレイ
  • ハマーン専用クィン・マンサ
  • サザビー(専用カラー
  • クシャトリア(専用カラー
  • タイタニア
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