スーパーロボット大戦//サイコドライバーズ:Re   作:かぜのこ

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番外編「その名はバビル二世」

 

 

 超古代の遺産、あるいは未来的な建造物。

 “バベルの塔”――不可思議な砂塵に隠された秘密の場所。かつて、BF団の本拠地であったここに、イングとアーマラ、イルイ、エクスが訪れていた。

 油断なく辺りを見回すアーマラは後ろを振り返る。

 

「ここがバベルの塔……イルイは来たことがあるのか?」

「ううん、わたしはないよ。ナシムはすごく昔に、来たことがあるみたいだけど」

 

 エクスを抱えたイルイが答える。

 ガンエデン――ナシムの残留思念を抱えたイルイは、彼女の記憶を多少引き出すことができた。また、時折ナシムの意志が表に出て来ることもある。

 とはいえ、地球と宇宙の命運を今を生きる人類とαナンバーズに託したナシムは、イルイに寄り添うように在る言わば守護霊のようなものだ。

 イルイに害を為すわけではないとして、イングは現状を看過している。

 

 仲睦まじい姉妹のような二人の自然なやり取りに頬を緩ませつつ、イングは視線を上げた。

 かつては十傑集が集った、その場所で――

 

「さぁて、オレを呼びつけるとはいい度胸だな――諸葛亮」

 

 イングの見上げた壇上には、不敵な笑みを湛えた軍師の姿があった。

 

 

   †  †  †

 

 

 “封印戦争”が終わった。

 αナンバーズは解散、皆それぞれの場所に帰っていった。

 もとの生活に戻る者たちもいれば、広大な宇宙へと旅立った者たちもいる。

 オレとアーマラはと言えば、イルイを預かり、次の戦いに備えた仕込みのために世界中を駆け回っているところだ。

 ちなみに、《エグゼクスバイン 》はテスラ研でオーバーホール中。無茶させすぎだとロブに叱られた。反省。

 

 ビッグ・ファイアが倒れ、BF団が事実上消滅したことで国際警察機構の黄帝・ライセがどう動くかが懸念だったのだが、「この星の未来を頼む、バビル二世」と妙に殊勝なことを言われてしまった。オレとしては国際警察機構を抜ける覚悟をしていたくらいだったのに、拍子抜けだ。

 まあ、征服する地球が滅びてしまっては元も子もないものな。……ん?何の話だって?アカシックレコードに記された配役の話さ。

 

 

 アメリカ地区、デトロイト。

 かつての合衆国の重工業の中心地であり、宇宙に産業の舞台が移った今でもいくつもの有名企業が支社、あるいは本社を置いている。

 オレは、アーマラ、イルイ、エクスを連れて、とある兵器関連の企業を訪れていた。

 

「イング、こんなところに何の用だ?」

「んっ? まあ、行けばわかるさ」

 

 アーマラがもっともな質問をしてくるが、適当にはぐらかす。一から説明するのも面倒だし、何よりこいつが驚く顔が見たいってのが一番の理由だな。

 イルイはいつものようにエクスを抱えて、テトテトと後からついてくる。かわいい。癒される。

 

 ここに来た理由はわりと複雑で、単純だ。

 だいぶ前から仕込んでた()()()の確認ってとこか。あるいは懸念の払拭ってのもあるが、まあ、それはついでだ。

 

 受付嬢のおねーさん(金髪の美人だ)に話しかける。

 

「アポを取ってあるイング・ウィンチェスターだが。取り次ぎを頼みたい」

「アポって……お前、いつの間に」

 

 いいんだよ、そういうことは。

 

 呆れた様子のアーマラをスルーしつつ、おねーさんの問い合わせを待つ。 

 こういうことしていると、なんかオトナになった気がしてワクワクしてきた。こんな気分は、《エクスバイン》に初めて乗った日以来かもな。

 

 無事アポイントが確認されたので、案内されたエレベーターに乗る。

 と、しばらくして障る念を感じ取った。

 

「! お兄ちゃん……」

「イルイ、お前も感じたか」

「……何の話だ?」

 

 この吐き気をもよおす邪念を敏感に感じ取ったのだろう、イルイが背中にひしっと縋ってくる。さすが、バビル二世(オレ)と同格のサイコドライバーなだけはあるな。

 アーマラは気づいていないようだから、説明してやろう。端的にな!

 

「敵だよ、敵。ズール野郎さ」

「何っ!?」

 

 アーマラが血相を変える。

 と、エレベーターが目的の階に停止して、ドアが開く。

 するとそこには、明らかに堅気の者じゃない黒服のみなさんがずらずらと待ちかまえているじゃありませんか。

 

「おっと、手厚い歓迎ご苦労」

「馬鹿っ! 言ってる場合か!」

 

 それもそうだな。

 

「貴様っ、マーズの仲間のっ! どうやってここを嗅ぎつけたかは知らないが――」

「知るかボケ」

「――がはっ!?」

 

 リーダーらしき(というか、コイツが“アレ”だな)が何やらグダグダ喋っていたので、超能力で炎を纏わせた跳び蹴りをかましてやったら一撃で爆散しやがった。ふん、脆いな。

 

 アーマラが唖然とした。

 

「……おい、前口上くらい聞いてやったらどうだ」

「嫌だね。ああいう手合いは見つけたら即抹殺、サーチアンドデストロイが基本なんだよ」

「あれは害虫か何かか」

 

 害虫だろ。宇宙の。

 

「で、結局奴らは何だったんだ?」

 

 このオレの超能力に恐れをなして、蜘蛛の子を散らすように一目散に逃げていく黒服どもを軽く見やり、アーマラが訊いてくる。さもあらん、だな。

 

「ゲシュタルト。ズール皇帝の配下にして分身体、奴そのものだよ」

「……! やはり、ズールは滅びていなかったのだな」

「ああ。オレたちが倒したのは単なる分身、偽ズールってわけさ」

 

 アーマラが愕然としている。

 まあ、あれだけの死闘を繰り広げたにも関わらず、倒せてないってんだからその気持ちは分かるが。

 まったくズールめ、ガンエデンと先代バビルが倒れたのを見て地球征服に乗り出したな。厚かましいし、いい面の皮をしてやがる。

 しかしな、こちとらナシムとバビルからの記憶封印が解けたんだ。ネタはだいたい割れてるんだぞ、と。

 

「つまり、奴の分身がこの地球でよからぬことを企んでいた、と」

「そゆこと。別に奴らがいると踏んでたわけじゃないが、予想はしてたよ」

 

 難しい顔のアーマラと受け答えしつつ、歩を進める。

 あれを駆除したのはついでなんだからな。 

 

 この企業の社長室。

 重厚なドアを開くと、そこにはパリッとノリの効いた水色のスーツを着こなす金髪碧眼の紳士(なお胡散臭い)がいた。

 その人物の顔を見て、アーマラが固まる。

 

「よおアズにゃん、元気してたか?」

「イング君、その呼び方止めてくれませんかネ?」

「ヤなこった」

 

 からかってるんだからな。

 思考停止していたらしいアーマラが、ここで再起動して声を上げる。

 

「ムルタ・アズラエル……! ブルーコスモスの盟主!」

「そういうあなたはアーマラ・バートン、“レディ・マグナム”としてその筋では有名なA級エキスパートですネ」

 

 顔をしかめるアーマラ。このおっさん、相変わらず人を食ったような物言いをする。

 ムルタ・アズラエル。「機動戦士ガンダムSEED」の登場人物、悪役だ。詳細はググれ。

 所詮は小物だし、汎超能力者のオレならいくらでも処理できる相手なのだが、一応一般人であるし、まだ犯してもいない罪で裁くってのは烏滸がましい行為だ。なので、以前からちょっぴりテコ入れしていた。

 つか、ぶっちゃけSEEDではわりと好きな部類のキャラだったり。相対的に、だけど。

 

 問答では埒が明かないとみて、我が相方はこちらに質問を振る。

 

「コイツが今日の仕事の相手だとはわかったが。イング、どういう関係だ?」

「ぶっちゃけて言うと、アズラエルは戦争の火種になるって前からマークしてたんだよ」

「いやはや、キミがこの執務室に突然現れたときは、寿命が縮むかと思いましたヨ」

 

 アズラエルがげんなりとする。テレポートで無断進入余裕でした。

 

 立ち話もナンだと、応接室に案内された。黒革のたっかそーなソファーはふかふかだ。

 秘書のおねーさん(やっぱり美人だ)がジュースを持ってきてくれた。デレデレしてたらアーマラに睨まれた。プリプリ怒っちゃって、なんなんだアイツ。

 

「で、今回の用件は“プラント”の?」

「それもあるけど、とりあえず、妙な連中が身辺に紛れ込んでたろ?」

「あー、彼らね。どうもボクに洗脳かなにかをしたかったらしいですケド、キミに先を越されて残念でした、って感じですネ」

「つまり、フリだけしてたってことね」

「イエス、と言っておきまショウ」

 

 不敵な笑みだ。食えんおっさんだ。

 イルイは退屈なのだろう、出されたオレンジジュースをちびちびと飲んでいる。かわいい。癒される。

 

「おい、イング。今、不穏な単語が聞こえたんだが?」

「洗脳ったって、ちょっと幼少期の心的外傷(トラウマ)を取り除いてやっただけだぜ? 一応、精神防壁も敷いといたけど」

 

 最初に接触したとき、コーディネーターに対するトラウマを催眠で風化させてやったのだ。

 当時から深い考えがあったわけじゃないが、ともかくこの男の末路が哀れに思えたのだろう。それが幸をそうしたな。

 

「まあ、それでもティターンズ並みのアースノイド至上主義だったんだが」

「「商人なら、異星人とだって商売してみせろよ。そんなだから、アナハイムやネルガルに後れを取るんだ」と言われまして。まさしく目から鱗が落ちる思いでしたヨ。蒙が開くって感じですかネ?」

「自明だろ?」

「仰る通りデ。銀河という巨大極まるパイを前に、思想心情で黙って指を咥えてるだなんて、ビジネスマンとして愚かと言わざるを得ませんネ。我ながらですケド」

 

 まあ、アズにゃんは比較的割りきれてる方だと思うけどな。

 つーか、このおっさんもだけど、たまに新西暦生まれのくせに、時代錯誤も甚だしい考え方をしてる奴がいるんだよね。ティターンズとかさ。

 これがアカシックレコードに記されたシナリオの内なのだとしたら、いけ好かない連中だ。まあ、オレに言わせれば、それすらも“神”の掌の内なんだが。

 

 ともかく、アーマラにひとつ経緯を説明してやろう。

 

「まず、プラントってのが何かは知ってるよな?」

「ああ。第一次木星探査隊のメンバー、ジョージ・グレンの告白により誕生した“コーディネーター”たちの住むコロニー国家だな。連邦政府、いや各サイドのスペース・コロニーからも半ば無視され、孤立している」

「正確に言えば、彼らに工業コロニー群を乗っ取られたんですけどネ」

「当時の連邦は宇宙開発やコロニー統治に忙しかったし、コーディネーターたちはいろいろな意味で厄介な存在だった。だから、プラントをなかったことにして無視を決め込んだ。実に英断だったとオレは思うぞ」

「しかし、かつての“巨神戦争”の最中、いわゆるジオン独立戦争ではジオンに陰ながら協力していたらしいが。潜在的脅威を放置していたのは失策ではないか?」

「それは、ザビ家がバルマー戦役で倒れてから発覚したことだろう? それだけプラントの連中は狡猾で節操がないのさ」

 

 む、とアーマラが唸る。

 イルイがキョトンとしてオレを見てきた。オレの言い分に驚いたらしい。

 

「で、そのプラントが地球に戦争を仕掛ける、と」

「地球というか、奴らの言う“ナチュラル”に対してだな。ここでゲシュタルトを見て確信したよ。間違いない、向こうでも奴らが暗躍してるのだろうさ」

「だが、何故今になって?」

()()()()()()()()()()には地球の強硬派により核攻撃がきっかけだが、そこはアズラエルの手腕に期待しよう。まあ、難しいだろうが」

「それがなくても連中(コーディネーター)のことですシ、「我らを虐げるナチュラルに正義の鉄槌を」とかなんとか、見当違いなことを言い出すんじゃありませんかネ」

「まるでジオンじゃないか」

「まるでじゃなくて、ジオンそのものだよ。いや、劣化ジオンかな? 何せ奴ら、自分らコーディネーターを“新人類”と称してるんだぜ?」

 

 ついにアーマラが絶句した。

 この新西暦、宇宙人と戦争したり友好したり、銀河に新天地を求めて旅に出る時代に何を戯けたことをとでも思っているのだろう。気持ちはよくわかる。

 たかが遺伝子をいじっただけで、何が新人類か。つーかあれ、単なる遺伝子の引き算であって、プルツーのような人体機能の足し算とはワケが違う。引き算だからおそらく念動力に類する超能力なんかは発現しにくくなるのだろうし。

 まあ、究極的にはプラントの連中が悪いわけじゃない。“神”の決めた枠組み、()()の中で躍ってるだけなんだからな。

 

「また、地球人同士で戦争なんて……」

「そうならないように、オレたちは今いろいろがんばってるんだろ?」

「うん……ありがとう、お兄ちゃん」

 

 声をかけて慰めてやると、イルイが微笑んだ。不謹慎だが、かわいい。癒やされる。

 しかし、もしそうなったら、クスハやカミーユ辺りは気を病むだろうな……。

 

「しかしイング、どうも辛辣じゃないか。お前らしくもない。コーディネーターは嫌いか?」

「このおっさんと違ってコーディネーター全体が嫌いなわけじゃないが、プラントは嫌いだぞ」

 

 アズラエルが「おっさんとは、心外ですネ」となどと首を竦めているが、無視無視。

 

「新人類名乗るなら、せめて生身で機動兵器解体してみせろってんだ」

「そんなこと出来るのはお前か十傑集くらいのものだ」

「わたしもできるよ?」

「む……」

 

 イルイの思わぬインターセプトにアーマラが押し黙る。忘れているようだが、ウチの妹様も完聖したサイコドライバーなんだぜ? 《ジムlll》くらいまでならサイコキネシスでペシャンコよ。

 まあ、まだプラントが事を起こしたわけじゃないから、今のところはオレの偏見でしかないが。……起きるんだろうなぁ、やっぱ。全力で阻止していくつもりだが。

 

「ともかく、方針は以前のままで?」

「ああ。ブルーコスモスの盟主として、主戦派を煽りつつ手綱をしっかり握っておいてくれ。くれぐれも、プラントに核ミサイルなんて撃たせてくれるなよ」

「努力しますヨ」

 

 これは期待してもいいかな?

 とはいえ、アカシックレコードの定めから逃れることは難しいかもしれないが。

 アカシックレコードに刻まれた「シナリオ」を逸脱しないように、それでいて運命に逆らう。

 アキトさんたちのときは、オレが甘かった。やるなら徹底的に、妥協はしない。手段は程々に選んで、最適でも次善でもなく最善を目指していく。

 とりあえず、SEED勢には「お前らの出番ねーから」の方針で行くつもりだ。

 フフフ……純粋な地球人勢力が、バビル二世(オレたち)に敵うと思うなよ。――ただ、懸念と言えば、ラウ・ル・クルーゼの姿を捕捉できないってことか。「ザフト」に在籍しているのは確認できたんだが、肝心の本人を見つけられないんだよなぁ。

 

「ところでイング君、ひとつ聴きたいことがあるんですガ」

「なんだよ、藪から棒に」

 

 アズラエルが話題を切り出した。

 こういう場合、内容によるけど受けておいた方が得策だ。まあ、オレの方にも()()()があるしな。

 

「なんでも、軍主導の「新型ガンダム開発」プロジェクトが進んでいる、というウワサが界隈に流れていましてネ。……ウチもひと噛みできないかな、ト」

「さすが、耳が早いな。つーか、ウワサとか言いながら断定口調じゃん? 誰から聞いたのよ」

「それはもちろん、ゴップ閣下ですヨ。先日お会いしたんですケド、その時イング君の名前を出したらコッソリ教えてくれましテ」

「あんの狸オヤジめ……まあ、ある意味あの人も関係者みたいなもんだけどさ。わかった、あとで「Re:V計画」の担当者を寄越すよ」

「「Re:V計画」……ああ、なるほど、たしかに閣下は無関係とは言えませんネェ」

「そういうこと。つっても、今さら参加してもロクに関われねえんじゃねぇの?」

「いえいえ。我が社はこれまで各種部品の供給などで携わってきましたガ、そろそろ本格的にMS事業に乗り出そうと考えていましテ。そのノウハウを得られればいいんですヨ」

「あー、GATシリーズ?」

「……いやまあ、そうなんですけどネ? 一応社外秘なんですよネェ、その話」

「それはほら、オレも伊達にエキスパートやってないからな」

 

 これ、原作知識で当てずっぽうじゃなく、ちゃんと裏取って言ってるからな。ワンチャン、SEEDが始まらないかもしれんと思って事前に調べてたんだ。

 

 閑話休題(それはさておき)

 「Re:V計画」ってのは、ゼ・バルマリィ帝国やギシン星間連合帝国を始めとした、外宇宙の敵対勢力に対抗することを目的とした超ハイエンドMS群の開発計画だ。

 これらは量産・コストを度外視し、現在の地球圏の技術の粋を結集したMSを連邦自身の手で産み出そうって試みなんだ。だから、現在のMSの分野を一手に牛耳るアナハイムにも一歩引いた形で関与させている。あそこは後ろ楯のビスト財団がいろいろと厄介だからなぁ……。

 

 MSというマシンの限界――延いては“ガンダム”の再定義を目的としたこのプランは、それらに縁の深いパイロットたちの専用機開発計画という一面を持っている。特に、名実ともに地球圏最強のニュータイプ戦士にして“巨神戦争”の英雄、アムロ・レイ専用の「究極のガンダム」の完成を目指としているわけだ。

 

 かつてアムロ大尉を軟禁していたこともある、ニュータイプアレルギー持ちの連邦らしからぬ計画が立ち上がったことにはもちろん裏がある。

 SRX計画で産み出された数々のスーパーロボット、その中でも“最強のマジンガー”《マジンカイザー》と“ゲッター線の化身”《真・ゲッターロボ》を危険視する意見は未だ根強い。その性能や意思を持つような挙動を見せることもさることながら、それらを操るのが“巨神戦争 ”の英雄ってのも彼らには厄介に思えるらしいな。

 そこで「目には目を、英雄には英雄を」と吹き込んだ()()()()が居たわけだ。

 

「まあ、それがオレなんだけどさ」

「お兄ちゃん、悪いひとなの?」

 

 オレの混ぜっ返した発言に、素直なイルイがキョトンとする。かわいい。

 アーマラは呆れ顔だし、アズラエルがヤレヤレと肩を竦めるジェスチャーをした。

 

 閑話休題(話を戻すが)

 オレは主にコンセプトとかデザインに口を出したが、実際に指揮を執っているのは()()の技術顧問の「Dr.BZ」だ。お約束的に奪われたりしたらドエライことになるので、国際警察機構とかその手ので守ってるわけだな。

 ああ、Zってついてるけど、黒のカリスマとかではないから安心してほしい。オレは別に本名明かしたっていいと思うんだけど、本人がオフレコにしてほしいって言ってんだよね。

 なお、ある意味計画のミソである「《マジンカイザー》、《真・ゲッターロボ》と対抗・凌駕するガンダム」は開発が難航、頓挫している(個人的にはひじょーに残念である)。

 

 さておき、頓挫したナンバー00はともかく、アムロ大尉専用機の01、これは未来世界のマウンテンサイクルから発掘された《Hi-ν》を()()()()で再設計するプランだ。あれ、青い(HG)方のスタイルだったんだけどどうやら(RG)の方になるみたいだな。

 カミーユ機の02とジュドー機の03はZタイプに連なる可変機(TMS)。《Z》と《ZZ》(これはフルアーマーがあることにはあるが)もそろそろ型落ちというか力不足になってきたところなので、これを機会に二人専用のMSをということだ。それぞれ《デルタプラス》、《Zll》の発展機になる。

 これら「ガンダム」の随伴機になるRe:V-05/RGM-96X《ジェスタ》は一足先にロールアウトしていて、ロンド・ベルの《ネェル・アーガマ》で試験運用中だとか。元「ホワイトベース隊」のガンダム乗りを集めて、特殊任務群(デルタフォース)を結成したらしい。

 ユウ・カジマ少佐機、フォルド・ロムフェロー大尉機がランドセルを換装(《スターク・ジェガン》のあれだ)し、ビーム・シールドを装備した高機動型。ボルク・クライ中尉機はノーマルな仕様だが、ビーム・ダガー及びビーム・サブマシンガンを装備した白兵戦仕様。ユーグ・クーロ少佐、エイガー大尉はいわゆる《ジェスタ・キャノン》だが、こまかい仕様は別々だって話だな。

 意外なところでは、EWACタイプをクリスチーナ・マッケンジー(旧姓)女史が担当していることだろう。退役後にアナハイムに就職していた関係で、今回のプランに参加したらしいな。

 うーん、Gジェネかな?

 ネオ・ジオン系の技術陣が携わったRe:V-04/NZ-666《クシャトリア》は、そろそろ正規パイロットの手に渡る頃だろう。

 

 ちなみに、未来の機種を先取りしてるのは前述の通り完全にオレの仕業だ。デザインとか構造とかコンセプトとか書き起こして、1/100スケールのモデルも作って送りつけたからな。

 

 だが侮ることなかれ、見た目こそオリジナルと大差ないが実態は完全に別物である。

 例えば動力源が不連続超振動ゲージ場縮退炉×2だったり、装甲材がガンダニュウム合金とディマニウム系ガンダリウム合金の複合材だったり、さらにナノスキン処理によりメンテナンスフリーに近い状態だったり、完成型ミノフスキー・ドライブもあったか。あと、バイオ・センサー、バイオ・コンピュータ、総ディマニウム製()()()()()()()()()()を完備した超ハイエンドの名に相応しいバケモノMS群だ。なお、IFBDは構造上難しかったので不採用だし、フォトン・バッテリーやインビジブル・チタニウムも再現できなかった(当たり前だが)。

 ニュータイプ専用機にはそれに加えて、モビルトレースシステムとゼロシステム、フラッシュシステムのいいところだけを組み合わせて発展させた「インテンション・オートマチック・システム」をマン・マシン・インターフェースに採用している。

 ……うん、言いたいことはわかる。

 これらは専属パイロットに合わせて一から一〇〇まで調整してあるシロモノだから、()()()使()()()には非人道的なことにはならないとだけ言っておく。

 

 

「で、口利きの見返りってワケじゃあないんだが、国防産業連合理事としてのあんたに依頼があるんだ」

「おや、商談ですカ?」

「いんや」

「それは残念」

 

 またぞろアメリカンな仕草を繰り出すアズラエル。小癪な奴だ。

 ある意味、今回のアズラエルのもとに訪問した本題を切り出す。

 

「ハマーン・カーンを、今度新設される地球安全評議会の議員として後押ししてほしい。出来れば、ジオン共和国選出で連邦上院議会の椅子もあれば完璧だけど、さすがに時間がなぁ。ゴップ閣下の権力でごり押すわけにもいかんしね」

「ほう、あの鉄の女を……大丈夫なのですカ?」

「野心というか、連邦政府に対するくすぶりはまだ持ってるようだがな。それ以上に、シャアの代わりに地球の行く末を見るという意志の方が強いと思うぜ」

 

 封印戦争時やその後に、何度か面と向かって会話した印象だ。

 多少憑き物は落ちたみたいだけど、やっぱ苛烈でおっかないお姉さんなことは変わりない。……まあ、そこは仕方ないだろう。本人の持って生まれた気質だし、どこぞの赤い奴のせいだ。

 

「なるほど。ですが、ボクは宇宙の方にはそんなに影響力はありませんヨ?」

「マオ社とアナハイム、ネルガル重工に話は通してるから表だってはそっちが後援する。あんたには立場もあるだろうし、消極的支持、つまりは妨害しなきゃ何でもいい。ちなみに、本人もやる気があるみたいだぞ」

 

 ここに来る前、現在ドレル(行くところがなかった)を護衛代わりにロンデニオンへ身を寄せているハマーンさんに、このことを直接打診した。

 最初は大いに渋っていた(俗物となれ合いたくなかったらしい。子どもか)が、「平行世界には、連邦議会の議員になったキャスバルだっているんだよなぁ」などと煽ったらやる気になった。ちょろい。

 なお、我が家のかわいい妹様は友達とキャッキャうふふと戯れていた模様。かわいい。癒される。

 なお、ゴップ閣下とは水と油だから会わせない方がいいだろう。あっちはむしろ面白がるだろうけどね。

 

「ずいぶん手厚く便宜を図っているんですネェ」

「何だかんだ言ってあの人、美人だしな。綺麗なひとの力にはなりてーじゃん?」

「ほうほう、イング君の女性の好みはあのようなタイプだト」

「かもな」

「……」

 

 アズラエルの勘ぐりにノってみる。

 実際、結構タイプなのは否定しないが――って、

 

「イタッ! 何すんだよ!」

「ふんっ!」

 

 突然オレの腿を抓ってきたアーマラはぷいっとそっぽを向いて、プリプリと怒ってる。

 イルイとエクスがシラッとした目で見てくるし、アズラエルがやれやれと肩をすくめている。なんだってんだ、いったい。

 

「ところで、あの()()()からの妨害が予想されますケド」

「そこはあんたが何とかしなよ。得意でしょ、そーいうの」

「はぁ……ま、何とかしまショウ。キミには何かと便宜を図ってもらってますしネ」

 

 アズラエルは肩を竦める。こう言うからには何とかするだろう。

 まあ、《ドラグーン》、《ドトール》辺りの量産に噛ませてやった甲斐があるってもんさ。

 うむ。頼もしいことだな。

 

「しかし、なんと言いますか、今回のやり口はアナタらしくありませんネ。どなたか、アドバイザーでも付けましたカ?」

「んっ……まあ、な」

「おやおや? もしかして図星?」

 

 なかなか勘の鋭いことで。生き馬の目を抜く業界でのし上がってきたいっぱしの商人だけはあるか。

 オレはその“アドバイザー”との出会いを思い出し、ちょっぴりげんなりした。

 

 

   †  †  †

 

 

 黄緑色のデカいリボンがついた赤いベレー帽を被る、金髪ショートの幼女だった。

 

「――って、孔明ちゃんかよっ!?」

「あわっ、あわわ……!」

 

 あわわ軍師かっ!そこまでやるか!

 いかん、いかんぞ。奴のペースに乗せられてる。これが孔明の罠か。

 

「この子どもが諸葛孔明? 私が聞いた人相とはかけ離れているが」

「見た目に騙されるなよ、アーマラ。あれは確かに正真正銘、BF団のナンバー2、軍師・諸葛亮孔明だ」

「何……?」

「そ、その通りでしゅ……です。あわわ、噛んじゃった」

 

 噛むところまで再現してんのか。あざといなっ!さすが孔明あざとい!

 つーか、その姿の情報ソースはどこからだよ。

 

「あれの正体は、このバベルの塔を管理する超高性能コンピュータ、その対話用アバターだ」

「なるほど。故に姿形も自由自在、と」

 

 アーマラが納得したように頷いた。

 気を取り直し、諸葛亮を問い詰める。

 

「で、諸葛亮。とりあえず、何でそんな格好をしてるのかを話せ」

「はい。ご主人さまの知識の中に、私がお仕えするのに相応しいものがありましたので。……えっちいのはいけないとおもいましゅ」

「失礼なこと言うなっ」

 

 情報ソースはオレかっ!

 

「あわわ。以前のアバターよりも、こちらの方がご主人しゃまもうれしいかと思いまして。あわわわっ」

「余計なお世話だよっ!」

 

 まあ、むさ苦しいおっさんよりはかわいい女の子の方が遥かにマシだが。

 

「……」

「なんだよ、アーマラ」

「ふんっ」

 

 指すような視線を感じて、後ろを向く。

 なんか、相方さんが急にご機嫌斜めなんだけど? 意味わからん。

 

「まあ、いい。で、本題は?」

 

「はい」と答えた諸葛亮は居住まいを正し、刃のように鋭い視線を投げかけてくる。やはり、さっきまでの拙い振る舞いは擬態か。

 

「ご主人さま……いえ、()()()()()。あなたはこれからいったい何を為すのでしょう?」

「……」

「先代から受け継いだその神にも等しい力を、あなたは何のために奮うのです? 富? 名誉? それとももっとほかの何かかもしれませんが」

「……確かに、この力を使えばどんなことだって叶えられるかもしれないな」

「はい。そしてあなたはバビル二世、この()()()()()とその戦力をも継承しているのです。世界を支配するのも、滅ぼすのもあなたの意思一つ」

「なるほど、ね」

 

 諸葛亮を囲むように、みっつの影が姿を現す。

 地を走る黒豹、アキレス。

 空を飛ぶ怪鳥、ガルーダ。

 海を行く巨人、ネプチューン。

 ――ビッグ・ファイア三つの護衛団。《ガンエデン》のクストースに対応する《ガンジェネシス》、バビルのしもべだ。

 αナンバーズとの決戦に持ち出してこなかったのはやはり、オレにあれらを引き継がせるためだったか。

 

 背中にアーマラとイルイからの視線感じる。ったく、オレがそんなに信じられないってのか?

 

「だけど、オレが憧れた存在は、なりたかったものはそうじゃない。彼らは……物語の中のヒーローたちは、見返りなんて求めてなくて。目には見えない大切な何かのために戦っていたんだ」

 

 幼い日にみた鮮烈な記憶。

 一番のヒーローが誰かなんて、決められない。だってオレは、どんなヒーローだって大好きだったから。

 今はもう会えない両親に、幼いころのオレはしきりに「ぼく、大きくなったらヒーローになるんだ」って言っていた記憶がある。いつだって憧れたヒーローに恥じることがないように生きてきたつもりだ。

 

 普通、そういった憧れは成長するうちに現実を知って薄れていくものだろう。所詮、幻想は幻想でしかないのだから。

 けれどオレはまだまだ子どもで、そういう夢みたいな憧れを捨てるにはいろいろと足りてなかったし、捨てるつもりもなかった。

 そりゃ、あの平和な世界で「世界の危機」と戦うことなんてありえない。だいたいオレは十把一絡げの平凡な高校生で、ゲームとかアニメとか特撮とか、そういうので夢を疑似体験してる――きっとどこにでもいるような奴だったと思う。

 だけど、ここでは違う。

 憧れたヒーローたちみたいになれる。いや、ならなくちゃいけないんだ。

 

 この手には贈られた力がある。

 この胸には託された願いがある。

 この背には背負った未来がある。

 

 だから――

 

「オレは“運命”と戦う……そして勝ってみせる。戦えない全ての人たちの代わりに、オレが戦うんだ」

 

 地球の平和を守るため。

 世界の未来を拓くため。

 どんなにツラい戦いも、仲間たちとなら乗り越えられる。

 

「オレはヒーローになりたい。正義の味方なんて陳腐なものじゃなくて、ただヒトを、命を、世界を救うヒーローに」

「まるでガキだな」

「ガキで悪いかっ! オレは子どもだ、子どもでたくさんだ」

 

 なんだかなま暖かい視線を向けてくる相方に言い返す。

 アーマラめ、せっかくいいこと言ったってのに横から茶々入れやがって。お前、口では憎まれ口叩いてるけど気持ちはだいたい裏腹だって知ってるんだからな。

 

「わたしは、ステキな夢だと思うよ?」

「ありがとう、イルイ」

「イングさんならなれますよ、絶対!」

「エクスもありがとうな」

 

 優しいイルイとエクスは撫でてやる。素直じゃない相方さんとは大違いだ。

 改めて、諸葛亮に向き直る。

 

「そういうわけだ諸葛亮、いやバベルの塔。お前のその頭脳、平和のために使え」

「それがご主人さまのお望みなら」

 

 こちらの意志など最初からお見通しだったのだろう、諸葛亮の表情は澄ましたものだ。

 諸葛亮は一礼すると壇上から降り(背がちんまいからだろう、その際かなり難儀してアキレスに助けられていた)、いそいそとオレの後ろ、右手側に立つ。

 あれか、主より頭が高いのは臣下的にナシなのか。右腕アピールなのか。

 

 振り返る。

 そこには、口は悪いが頼もしいパートナーと、賢くかわいい妹と、素直で心強い相棒。それから腹黒いが頭の切れる参謀がいた。

 ふ、と口元には自然に笑みが浮かぶ。

 

 コイツらとなら、できるかもしれない。夢みたいな理想も、実現できるかもしれない。

 

 オレは、ぜんぶ一人で出来るって思い上がるほど馬鹿じゃない。

 仲間が欲しい。

 特別な力なんてなくたっていい。同じ理想を抱いてくれる仲間が欲しいんだ。

 

 ヒーローたちだって一人で戦ってたわけじゃないんだ。

 少なくない仲間に支えられて、時にはヒーロー同士が垣根を越えて力を合わせて、巨悪を打倒することだって珍しくないんだから。

 

「さあ、新生BF団の旗揚げといこうじゃないか」

「新生BF団、か。イング、その活動理念、大目的はなんだ?」

「そいつはもちろん――」

 

 アーマラが問う。

 オレはニヤリ、と笑みを返した。

 

「――宇宙の平和、さ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 極彩色の闇の中――

 

 豪奢な飾りがされた白き衣を身につけた金髪の少年が、反転した五芒星(ペンタグラム)と逆さまの大樹が描かれた巨大な漆黒の玉座に微睡む。

 その前には、五つの不可解なオブジェクトが浮かんでいた。

 

 ――宇宙とそこに存在する星々とを写し出した空間のスクリーン。

 

 ――天突く意思が如く螺旋渦巻く風の三角錐。

 

 ――煌々と燃え盛る文明の証たる火の篝火。

 

 ――大小さまざまな生命を育む透き通る水の球体。

 

 ――大自然の息吹きを感じさせる苔むした土塊の石柱。

 

 

 スクリーンを中央に、左右にそれぞれ三角錐、篝火、球体、石柱か並ぶ。

 

 

 気の狂いそうな冒涜的で狂気めいた闇を孕むこの領域の主たる金髪の少年が、ゆっくりと口を開く。

 

「――時は満ちた」

 

 造りのいい唇が笑みを形作る。

 アルカイック・スマイル。ゾッとするほど無垢で無邪気で。それでいて無慈悲な――

 それは嘲笑だった。不完全な世界で生に足掻く、生きとし生けるもの全てに対しての。

 

 

「“空滅”のセルツ・バッハ」

 

 

 少年の声が闇に響き渡り、中央のオブジェクト、空間のスクリーンがひび割れ、甲高い――悲鳴のような――音が宇宙に響いて砕け散る。

 砕かれた破片が消え去ると、そこには白い鉄仮面と甲冑を身に着けた魔人――そう形容するしかない存在がいた。

 魔人がその鉄兜の奥から不吉な声を発する。

 

 

『漸くか。待ちわびたぞ』

 

 

 白き絶望の魔人――セルツ・バッハ。

 宇宙を二分する正負の裏側、絶対悪の化身にして権化。宿敵たる“勇者”との戦いに敗れ、しかし並行宇宙規模で高まる負念(マリス)の影響で封印から甦った邪悪なる精神生命体の足元で、闇色の冷たい炎がチラチラと揺らめいていた。

 

 

「“風滅”のアンチスパイラル」

 

 

 少年の声を合図にしたかのように、渦巻く風の三角錐が不意に逆巻き、黒く黒く染まっていく。

 逆回転をした黒い風はついには四散して、まるで虚無がより集まったかのような漆黒のヒトガタを形作った。

 ヒトガタは、微動だにせず機械的に淡々と告げる。

 

 

『全ての準備は整っている』

 

 

 停滞と虚空の化身――アンチスパイラル。

 無限に拡大する可能性という“力”による事象の崩壊を回避するため、全てを捨て去って負念(マリス)に呼応した番人は、それだけを告げて静かに沈黙していた。

 

 

「“水滅”のマリアンヌ」

 

 

 その呼び声が異変を起こす。

 生き物が急速に死に絶えた水の球体がブクブクと泡立ち、どす黒く濁っていく。そうして濁った汚水が霧散して変じるのは、仕立てのいいオレンジ色のドレスを身に纏った黒髪の美女だ。

 女は髪をかき上げ、妖艶な笑みを浮かべた。

 

 

『フフフ……あの子たちに会うのが、今から楽しみだわ』

 

 

 独善と欺瞞の貴婦人――マリアンヌ・ヴィ・ブリタニア。

 ()()()()()()()()()を望んで世界的な混乱を招き、最後は自らが産んだ子により消し去られた魂はしかし、負念(マリス)を受けて再び現世に舞い戻った。

 前髪から垣間見えるその額には、()()()()()()()()()()()()()()()が輝いていた。

 

 

「“地滅”のラウ・ル・クルーゼ」

 

 

 突如として、苔むした土塊のオブジェクトに亀裂が入った。

 亀裂から黒い障気を吹き上げ、醜く腐り落ちる岩塊より歩き出たのは、白い軍服に身を包んだ長い金髪の男だ。

 男は懐から取り出した灰色の仮面で顔を隠し、皮肉げに口角を吊り上げた。

 

 

『さて、どうなることやら』

 

 

 仮面の煽動者――ラウ・ル・クルーゼ。

 すべてが収束する因果地平の彼方を垣間観て。しかし、“ニュータイプ”(ニュヒトの革新)に類する全ての能力・思想・概念を根底から否定して負念(マリス)の使徒と化した男は、迫る大乱の気配に心踊らせるかのようにうすら寒い潜み笑いを溢した。

 

 

「――……そして、」

 

 

 パチパチと音を立てて燃え盛る火の篝火が突如、勢いを増した。

 赤々とした炎の内側から、どす黒い炎が噴き上がったかと思うと、それが瞬く間に赤を塗り潰していく。

 暴力的なまでの火勢は、篝火それ自体をも燃やし尽くしてついには焼失した。

 

 

「“火滅”のプロイスト。よく来てくれたね、歓迎するよ」

 

 

 焼失した跡には、桃色の髪の少女が立っていた。

 均整の取れただが丸みの帯びた身体に、綿を思わせるきめ細やかな桃色の髪。滑らかだが、血の気のない白い肌にはタトゥーのような紅い印が刻まれていて――それすらも彼女の美しさを際立たせるアクセントでしかなかった。

 一見して気品を漂わせた酷く美少女であるが、この場に現れたことからもわかるように尋常なものではない。――そもそも、この者に()()()()()()()()()()()()()

 

 

『わたくし、あなた方のお仲間になったつもりはありませんけれど』

 

 

 暴虐と圧制の支配者――次大帝プロイスト。

 上品さのある言葉遣いで、だが居丈高に告げる彼女を甲冑の魔人と黒いヒトガタは無関心に、仮面の男と黒髪の貴婦人は面白そうに眺めている。

 そして、少年は不躾な物言いにも朗らかに笑って見せた。

 

「まあまあ、そう言わずにさ。キミにもメリットのある話だろう?」

 

『ふん……。あの忌々しい大空魔竜戦隊と勇者特急隊を叩き潰すために、利用しているだけですわ』

 

「ふふ……キミはそれでいいよ。また邪悪獣や魔界獣、機械化獣を送っておこう。――さて」

 

 少年がふと虚空に手を指し示す。すると、混沌とした闇の中にひとすじの光が生まれた。

 破滅と死の気配が溢れたこの空間に似つかわしくない生命の輝き。

 無数の星々を抱いて渦巻く蒼き銀河宇宙の一角――そこには、()()()()()が重なるようにして映し出されていた。

 

 

「――ここに“風”(意思)“火”(文明)“土”(自然)“水”(生命)、そして“空”(宇宙)……今あるこの不完全な銀河(セカイ)を構成する五つの要素、その尽くを滅ぼす“滅尽五将星(ペンタグラム)”が揃った」

 

 

 負念(マリス)の源にして、銀河宇宙の半分を統べる(みかど)たる少年は五名の同志を見渡し、腰かけていた玉座からゆっくりと立ち上がる。

 その小さな動作だけで、三千大千世界が末期(まつご)の悲鳴を上げるようだ。

 

 魔法的な守護を現す五芒星はしかし、反転すれば悪しき魔を象徴とする。

 生と死、善と悪、表と裏、正と負――この世の理に叛逆し、この世の理を手中に納めとする輩に相応しい印だと言えよう。

 

 

「始めようじゃないか。――運命(すべて)を手にするのはボクたちだ」

 

 溢れる負の想念。極彩色の闇が鳴動する。

 背後、混沌とした空間の奥深くで胎動する巨大な()。少年の声変わり前のそれに重なりあうようにして、別の声が響いた。

 その声は永い旅の果てに疲れ、老いた老人のように――だが、力強くどこまでも響く荘厳な(くろがね)の巨城を思わせた。

 

 

「我はまつろわぬ霊の王にして、あまねく世界の楔を解き放つ者なり」

 

 

 ひとつは、宇宙に人工の大地(コロニー)が無数に浮かぶ“闘争”の地球。

 幾つもの思惑と因果が混じり合い、終わりのない闘争が続くこの星で、戦禍の火種が幾つも燻る。

 仮面の男がそれを見てニヤリと嘲笑を浮かべた。

 

 

「全ての剣よ、我の下へ集え」

 

 

 ひとつは、巨大な人工の輪(オービタルリング)が取り巻く“革新”の地球。

 血で血を争う抗争を乗り越えて革新を迎えたこの星には、彼方より飛来する銀色の危機が迫っている。

 黒髪の貴婦人がそれを愉しげに見守っていた。

 

 

「かの者達の意志を、そのしもべ達を、あまねく世界から消し去らんがために」

 

 

 ひとつは、周囲には人工物が見られない“調和”の地球。

 誰もが平和な時を謳歌し、一見して調和の取れたこの星でも危機は密かに、だが確実に迫っていた。

 黒炎の支配者がそれを不愉快そうには眉をひそめた。

 

 

 ――それら重なりあった地球は確かに別々だというのに、不思議と僅かのズレもなく同時にそこに存在していた。

 

 

「我が名は霊帝……全ての剣よ、我の下に集え」

 

 

 

 その声を最後に、五人の人影は極彩色の闇に溶けていった。

 残されたのはただ一人――幾億万周期の果て、那由多の彼方を流離い、限りの無い負念(マリス)を湛えた究極の闇、ただそれだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――来たのか!

 

 

 ――遅ぇんだよ!

 

 

 ――待ちかねたぞ、少年!!

 

 

 

 ――刹那が来た! 後もう少しだ、一騎!

 ――ああ! 

 

 

 ――ったく、刹那のクセにいつまで待たせてんの!  気合入れるわよ、気張りなさいヴィルキス!

 

 

 ――カレン、ゼロ! 俺たちで刹那の、ガンダムの路を開くんだ!

 ――わかったわ、ライ!

 ――了解した。……ルルーシュの遺したこの平和を、無くさせはしない……!

 

 

 

 ――刹那……! イオリアの理想が実現する時なのか……! 私たちも続くぞ、ファディータ!

 ――はい! ルシファード、メーザー・ビット展開します!

 

 

 

 

 

 

 

 ――行けッ、少年! 生きて未来を斬り拓け!!

 

 

 ――少年! 未来の道先案内人はこのグラハム・エーカーが引き受けた……!

 ――これは死ではないッ……!

 

 

 

 ――人類が生きるための……ッッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




※最後の辺りは、脳内で「FINAL MISSION~QUANTUM BURST」を流しながら読むとコラサワの台詞も聞こえてくるかもしれません。



 ついに正体を現したウルトラやべーやつら!
 その名も「滅尽五将星」!。暗黒四天王とかダークネスファイブ、かつての春映画めいたスーパーヴィランの集まりです。スパロボ的にはラストバタリオンかな?
 前にも書きましたが、これをやりたかったがために加筆版を始めた面もあります。ヒーローがチームアップするんだから、ヴィランもしたっていいよなぁ?

 名前の由来は新大陸の自浄作用こと某ネギ君。将星の方はビッグ・マム海賊団から……ではなく、語源の方。αって何気に中華要素結構あるので。
 なお作者はスイッチ難民な模様。同梱版が手に入らなかったんや……(T_T)


 ちょっとした解説。


 ■セルツ・バッハ
 
 勇者シリーズ版スパロボなゲーム「新世紀ロボット戦記ブレイブサーガ」のラスボス。
 ほんへ終了後なので、セルツ名義ですが実態は真グラン・ダークと言って差し支えない存在。今回、各地球には主人公に当たる存在が設定上それぞれいて、ブレイブサーガの主人公はその一人。その大敵かつ霊帝とは同格の負の無限力の同盟者です。


 ■クルーゼ、マリアンヌ、プロイスト、アンチ・スパイラル

 個別の扱いをお出しするのはまだ早いのでいっしょくたにして説明しますが、セルツ以外の四人は「2000年代のロボットアニメ」の敵として幹部に選んでいます。
 もともといたクルーゼ、プロイストは「ガンダム」枠と「東映」枠。マリアンヌ、アンスパがそれ以外の「リアル系」枠と「スーパー系」枠という感じですね。
 今回は無限力(と作者)が自重しないバージョンなので
、こやつらも基本的に魔改造されることになります(アンスパ以外は)。


 ■幼年期の終わり

 別の地球の雰囲気を感じてもらうための超ダイジェスト、もしくは1話前のプロローグマップってところでしょうか。無限湧きするエルス相手に規定ターンまで耐えるみたいな。
 ちなみにこれは、次話の冒頭部分をコピペして張り付けてみました。いわゆるエンディング後のCパート的な? 惹きにしたら受けるかなと思って……(*・ω・)

 え? またなんか知らないやつがいる? なんのことだべか~?(すっとぼけ)
 なお、主人公ポジションのセリフもちゃんとあったりします。



 さておき、ついに大惨事(誤字にあらず)までたどり着いたわけですが、更新速度はご覧の有り様です。
 年度末のクッソ忙しい時期はなんとか過ぎましたが、αlllは加筆じゃ済まない内容なので時間がかかると思われます。やりたいこともありますので。
 まあ、ぼちぼちチマチマと進めていくのでどうぞよろしくお願いします。

 とりあえず、シンエヴァを観に行かなきゃ……!!
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