スーパーロボット大戦//サイコドライバーズ:Re   作:かぜのこ

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α外伝-2「神々の黄昏」

 

 

 《ダイターン3》で《アイアン・ギアー》と大立ち回りを演じた万丈、獣戦機隊と合流した一行。

 イングは、リュウセイ、ヴィレッタとアーマラ及び《ガリルナガン》について話し合っていた。

 

「アーマラ・バートン……あの娘は、もしや……」

「やっぱヴィレッタ隊長も、あのガリルナガンってメカが気になるのか?」

「あからさまに“あの人”に関わり合いそうだもんな」

「え、ええ、そうね。確かにあれはヒュッケバインEXを母体にし、バルマー帝国の、そしてアストラナガンに共通した技術が用いられているようだ」

「まさしくヒュッケバインキラーって訳だな」

「リュウセイ、そういう不吉なネタは止めろよな。アッシュが張り付けにされるだろうが」

「あはは、わりぃわりぃ」

「ったく……それで大尉、“あの人”――イングラム少佐が裏で糸を引いている可能性は?」

「ごめんなさい、わからないわ。彼はあの決戦の後、姿を眩ましてしまったから。……それに、イングラムなら彼女を選んだりはしないはず」

「? それってどういう……?」

「いえ、何でもないわ。今の言葉は忘れなさい」

 

 

 ローレライの海。

 そこに、もう一機の《ガンダムX》――かつてのジャミルの愛機が存在するとの情報を得て、一行を待ち受けていたのはティファの身柄を狙うフロスト兄弟の罠であった。

 

「念動力者……厄介だな。早々に舞台から退場して頂こう、オルバよ」「そうだね、兄さん」

「ゴタゴタうるせえぞ、ゲテモノ兄弟ッ! テメェらの事情なんざ知ったことか! 謂われのない迫害には同情してやるが、それを世界に八つ当たりするのは筋が通らねぇ!」

「ッ! 貴様、私たちの思考を読んだか!?」

「邪念にまみれたエゴが丸出しなんだよ、三下ァ!」

 

 フロスト兄弟との戦い。ガロードが奪った新たなる“ガンダム”、《ガンダムダブルエックス》と一時的にニュータイプの力を取り戻したジャミルの操る《Gビット》が罠を打ち破り、彼らは退けられた。

 そして、かつて滅びたはずの「ミケーネ帝国」の戦闘獣が地上に再び姿を現したとき、イングは因縁の相手と再会する。

 

「ドリルに、斬艦刀……グルンガスト参式! ならば、あの特機のパイロットは――」

「IFFに識別反応? ……ヒュッケバインEXだと?」

「何万年ぶりになるかは知らないが、奇遇だな、ゼンガー・ゾンボルトッ!」

「貴様、何者だ」

「へぇ、脳みそを洗われたか? まあいいさ、月並みなセリフで恐縮だが、ここで会ったが百年目ってね!」

 

 大地の守護神《スレードゲルミル》。かつての敗北の借りを返すとばかりにイングは猛攻をかける。

 だがその戦いは、ゼンガーの仲間である「アンセスター」のウルズの介入により、中断を余儀なくされる。

 

 プリベンターとアンセスターの会合の最中、イングはウルズから接触を受けていた。

 

「イングと言ったね。どうかな、アンセスターの仲間にならないかい? キミのような特別な存在は、僕らアンセスターと共にあるべきだ」

「特別扱いしてくれるとは光栄だね。――だが断る」

「……キミが僕らと同じ人造人間、マシンナリー・チルドレンだとしても?」

「ハッ、そんなもんとっくの昔に知ってら。だけどな、勝手にお前らと一緒にすんなよ。オレはオレだ、オレの生き方はオレが決める」

「……いいだろう。その選択を後悔するといい、イーグレット・イング」

「それはこっちのセリフだ、イーグレット・ウルズ」

 

 イングはウルズの誘いを一考だにしなかった。

 それは知識によるものだけではなく、直接相対して微かに感じた邪悪な思念を根拠とした拒絶だった。

 

 浚われたティファとエルチを救い出すため、イングの旅は新たな局面を迎える。

 ささいな、あるいは根深いすれ違いが原因で、プリベンターの仲間たちは仲違いを起こす。 

 キエルが月の女王ディアナ・ソエルと入れ替わっていた事実を、號が知っていて黙っていたことを発端としたゲッターチームの内部分裂。直情的な翔は元より、普段は二人の間を取り持つ剴が不満を爆発させたことで拗れてしまう。イングは両者の念の違いから入れ替わりを見抜いていたが、ディアナの心情を思いやってあえて放置していたことを悔いた。

 さらに、襲い来る恐竜帝国と《真・ゲッターロボ》。チームワーク不全の中、號たち新ゲッターチームと《ネオゲッターロボ》は決死の覚悟で“本当のゲッターロボ”に戦いを挑む。

 炸裂するプラズマサンダー。

 だがしかし、《真・ゲッターロボ》の圧倒的な力を前に無惨にも倒れ伏す《ネオゲッターロボ》。

 絶体絶命の大ピンチ。

 そこに駆けつけたのは元祖ゲッターチームと《ゲッタードラゴン》。“ゲッターロボ”と“ゲッターロボ”が再び対決する。

 

「馬鹿な! 真ゲッターだと!? 爬虫人類どもに、ゲッター線が扱えるはずがない!」

「おい! こりゃあさすがに不味いぞ、竜馬!」

「わかってる! だが、どいつが操縦してやがる!? この動き、まるで……!」

「武蔵先輩みたいじゃねぇか!」

「また武蔵のクローン人間か!?」

「蜥蜴野郎がッ、ふざけやがって! ぶっ潰してやる! 隼人ッ、弁慶ッ! 気合いを入れろ!!」

「「おう!!」」

 

 《真・ゲッターロボ》を辛くも退ける《ゲッタードラゴン》とプリベンター。

強敵を乗り越えることで、號たち新ゲッターチームはまた結束を強めた。

 そして、竜馬たちゲッターチームやかつてのホワイトベース隊のメンバーは、亡き戦友を弄ぶ恐竜帝国とミケーネ帝国に激しい闘志を燃やすのだった。

 

 

 洗脳されたエルチがイノセント強硬派の私兵として一行の前に敵立ちふさがり、《アイアン・ギアー》隊内に少なくない混乱が広がる。

 

 恐竜帝国の地球環境の改造に合わせるかのように出現した謎の生命体群――“抗体コーラリアン”。

 遙か昔、イノセントとムーンレィスの祖先が傷ついた地球を癒すために撒布し、大地を覆い尽くした生命体「コーラリアン」の一種であり、生物を無差別に殺戮する凶悪な存在。ゲッコーステイトの真の目的は彼らコーラリアンとの対話と、彼らの完全な覚醒により訪れる「クダンの崩壊」と呼ばれる致命的な宇宙の破綻を回避することだった。

 さらに、エウレカが人間ではなくコーラリアンであることが発覚し、プリベンター内には少なからぬ動揺が広がっていた。

 

「エウレカが、人間じゃなかったなんて……」

「……それ、そんなに気にするようなことか?」

「だ、だって……、人間じゃないんだよ!? 俺たちとは違う、コーラリアンってわけわかんないので――」

「そうはいうがな、レントン。お前、オレが人造人間だって知ってるだろ? プルは同じようにクローンで身体機能イジられてるし、剛さんちの三兄弟なんか異星人を父親に持つハーフだ」

「あ……」

「もう一度言うぞ。お前の気持ちは、()()()()()で変わるような、安っぽいものだったのか?」

「ごめん……俺がバカだった。そうだよね、エウレカがなんだって関係ないよな。ありがとう、イング!」

「おう。現実なんかに負けんなよ、レントン!」

 

 辛い真実を乗り越えたレントンとエウレカの成長に合わせ、進化を果たした《ニルヴァーシュ type ZERO spec2》が大空を駆け、黒い《ニルヴァーシュ》を退けた。

 「シベリア鉄道公社」総裁キッズ・ムントの思惑により永き眠りから復活した最凶最悪のオーバーマン、《オーバーデビル》。心すらも凍結させる恐るべき力「オーバーフリーズ」によってサラが、そしてゲイナーが取り込まれてしまうものの、ゲインやガロードたちとの熱い友情と自身の強い心によって復活。仮初めの姿(オーバー)を脱ぎ捨てた《キングゲイナー》――その名も《XAN-斬-》が、《オーバーデビル》を再び眠りにつかせる。

 旅路の障害をすべて取り除いたヤーパンの天井は目的地、ヤーパン――かつては日本と呼ばれた地域へと旅立っていく。

 

「本当によかったのか、一緒に行かなくて」

「いいんだ。僕は僕のエクソダスを探したい……だからまず、この星を平和にすることから始めようと思う。プリベンターのみんなに協力してね」

「へぇ、元ヒッキーのゲイナー君からそんな勇ましい言葉が聞けるとはね。お兄さんビックリだ」

「……イング、バカにしてるの?」

「してないよ。ま、そういうことなら歓迎するよ。改めて、よろしくな」

 

 ゲイナーやゲイン、サラなどの一部のメンバー、そして《ドミネーター》のパイロットとして幾度となく交戦したシンシア・レーンがプリベンターに残り、地球の平和を取り戻すために尽力することを約束した。

 

「で、アナ姫はご自宅にお帰りにならなくてよろしいので?」

「わたくしも、この星に住まう民の一人としてプリベンターの皆様に協力いたします。月のディアナ様だっていらっしゃるんですもの。……それに、もしものときはイングが護ってくださるのでしょう?」

「もちろん御守りいたしますよ、姫様」

 

 

 月と地上の争い、そして塔州連合からの妨害が激しくなる中、ヨップポイントに幽閉されたイノセントの指導者アーサー=ランクを救出に乗り出す一行。

 陥落させたヨップポイントに月勢力のモビルスーツ部隊が降下する。ティファを連れて月に帰還することをもくろむフロスト兄弟。新たな力、《ガンダムヴァサーゴ・チェストブレイク》、《ガンダムアシュトロン・ハーミットクラブ》を手に入れた彼らが用いた最悪の兵器、核が天地を灼く。

 

 激化する人々の争いを止めるべく、プリベンターは地球と月に別れて悪意の根本を叩く。

 イノセントの拠点「Xポイント」に向かう《アイアン・ギアー》。精神操作されたエルチを解放する。

 ムーンレィスから奪還された《ラー・カイラム》が宇宙へ翔ぶ。月のムーンクレイドル、“D.O.M.E”との接触し、封印された“黒歴史”を垣間見る。

 そして降臨する月の“戦闘神”。ギム・ギンガナムの《ターンX》とロランの《∀ガンダム》が激突し、《月光蝶》の輝きが空を覆う。

 

 別れたヤーパンの天井からの情報で、エイジア大陸近くにある「ロストマウンテン」に調査に向かうプリベンター。

 かつての日本――、今はヤーパンと呼ばれた地で、恐竜帝国に奪われた《真・ゲッターロボ》が牙を剥く。

 バット将軍の決死の覚悟により、人類の守護者は最悪の悪魔となり果てた。 

 

「くそっ、サイバスターでも追いつけねぇ! わかっちゃいたが、無茶苦茶だぜ真ゲッター!」

「このままじゃ甲児さんがヤバイぜ、イング!」

「わかってる、だが――ッ!? この思念、まさか……!」

「! ああ! 絶体絶命の大ピンチに後継機っ、アニメみたいな燃える展開だぜ!」

「――来るのか、魔神皇帝が!」

 

 《真・ゲッターロボ》と恐竜帝国の前に絶体絶命の危機に陥るプリベンター。捕らえられた甲児のピンチに、遥かなる時を超えて最強の魔神“魔神皇帝”が蘇る。

 対決する《マジンカイザー》と《真・ゲッターロボ》。天地を揺るがす鋼の巨神同士の戦いは、仲間と、そしてマジンガーとの友情によりプリベンターの勝利に終わった。

 《マジンカイザー》と《真・ゲッターロボ》――心強い戦友にして最強のスーパーロボットたちを仲間に加え、プリベンターの戦力はかつてのロンド・ベルと比べても遜色のないものとなった。

 

 そして――

 

 

    †  †  †

 

 

「アーマラ! なぜアンセスターに力を貸す! ヤツらはお前を利用するだけして、最後は殺すつもりだぞ!」

「言ったはずだぞ、イング! 私は貴様を倒せればそれでいいのだと!」

「手段と目的をはき違えるな!」

「うるさい、黙れ!」

「このッ、分からず屋が!!」

 

 荒れ果てた大地の上空で、《アッシュ》と《ガリルナガン》が激突する。

 

 この未来世界においても姿を現したカーメン・カーメン、ヌビアコネクションを打倒したプリベンター一行の前に、ゼンガー・ゾンボルトの《スレードゲルミル》とアーマラ・バートンの《ガリルナガン》が現れた。

 仲間の協力で《スレードゲルミル》を退けたイングは、助太刀を辞してアーマラとの一対一の決着に挑む。己の力だけで彼女に勝利し、その歪んだ――歪められた妄執を断ち斬らんと。

 

「奴を逃すな、ガリルナガン!」

「迎え撃て、アッシュ!」

 

 魂魄から肉体を通じて発現する力――強念が両者の鋼鉄の巨神を機動させ、天地を揺るがす。

 重力の砲撃が、遠隔誘導兵器が、剣と斧が閃いた。

 

「ぐあ……っ!? ッ、あんな継ぎ接ぎの機体に、ガリルナガンが押されているだと!?」

「阿呆が! 機体のスペック頼りで、中身が劣化してるんだよ!」

 

 イングはロンド・ベルの一員として、バルマー戦役の最前線を生き抜いた歴戦の戦士である。アーマラとてそれは同じだろうが、その密度や質は段違いと言っていいだろう。

 何者かから与えられた基礎能力に経験に裏打ちされた高い技量、そしてこの未来世界においてなお高まり続ける彼の念が合わさり、ついには絶対的な機体性能の差を覆したのだ。

 

「おのれイングッ、イーグレット・イング!! 虚空の彼方に消え去れ!!」

 

 激昂するアーマラは機体のリミットを解除し、放つ一撃に必殺の意志を掛ける。

 

「TーLINK、フルコンタクト! 唸れ、トロニウム・レヴ!!」

 

 《ガリルナガン》の漆黒の外装に施された真紅の意匠が輝き、放出されたアキシオンが幾何学的な文様を虚空に描き出す。

 陣の中央に設置された《バスタックス・ガン》、それから放たれた幾条もの紅黒い光によって生み出された法陣が《アッシュ》を捕らえ、無数の黒い弾丸が打ち据える。

 そして、球体状の結界が形成された。

 

「デッドエンド・スラァァァァッシュ!!!」

 

 アーマラの叫びと共に振り抜かれた《バスタックス・ガン》。結界が切り裂かれ、大爆発を引き起こした。

 

「やったぞ! これで私が最強の――」

「――誰が誰をやったって?」

 

 《ガリルナガン》の最強兵器、《アキシオン・アッシャー》により勝利を確信したアーマラに冷や水をかける声。

 爆煙が晴れ、手負いの騎士が姿を現す。

 

「ば、馬鹿なっ、アキシオン・アッシャーを耐え抜いただと!?」

「勝利を前に勝ち誇るのは、三流の証拠だぜ?」

 

 イングが不敵な言葉を言い放つ。

 パッチアーマーの大部分とコーティング・クロークを失ってはいたが、確かに《アッシュ》は健在だった。

 イングの強力な念動フィールドに護られ、致命傷を免れたのだ。

 

「アーマラ、お前の歪んだ願いを解放してやる。――TーLINK、フルコンタクト! オォォバァァァッドライブッ!!」

 

 イングの人知を超えた強念がTーLINKシステムのブレーカーを落とし、強制的にウラヌス・システムを発動させた。

 しかし、搭乗者の念を際限なく吸い取るウラヌス・システムですら、彼の莫大な念には耐えきれず、サーキットは悲鳴を上げる。

 

「限界を超えろ、アッシュ! ヤツの魂を縛る邪念、それを今断ち斬る!!」

「き、機体のコントロールが……! ガリルナガンのTーLINKシステムに、外部から干渉しているとでも言うのか……!?」

 

 天地を揺るがす強念によりゆっくりと浮かび上がる《アッシュ》から、鮮烈な蒼白い光を放出される。

 物理現象を伴った膨大な念動波が、機能不全を起こして身動きの取れない《ガリルナガン》を襲う。

 

「オオオオ――ッ!!!」

 

 内外からの干渉で、完全に動きを封じられた《ガリルナガン》を眼下にする《アッシュ》。肩に担いだ《TーLINKセイバー》の刀身を、目に見える念動波が包み込む。

 迸る蒼白の輝きは、さながら《スレードゲルミル》の《斬艦刀》のように長く、そして雄々しく延びていく。

 

「行くぜ、アーマラ! 念動解放! 極大ィィイイッ、念、動、破、斬……けぇぇぇぇん!!!」

 

 振り下ろされる光の剣。煌めく極光を伴った大斬撃が、《ガリルナガン》に降り注ぐ。

 切っ先が大地を貫き、巨大な亀裂を走らせる。

 漆黒の狩人は、溢れる光の濁流に飲まれていった。

 

 

 《極大念動破斬剣》の直撃を受けて墜落した《ガリルナガン》は白煙をあげ、山肌にもたれ掛かるようにして停止していた。

 狭く、薄暗いコクピットで膝を抱えた()()の髪をした少女は、頭上から射し込んだ光にゆっくりと顔を上げる。

 真赤な夕日に染まる銀色の髪――

 

「――なんだ、やっぱかわいい顔してんじゃん」

 

 銀髪の少年――イングが快活な笑みを浮かべて言う。

 ルビーのように紅い瞳は、どこか面白がるような色が浮かんでいた。

 

「……なぜ、トドメを刺さない」

「何度も言うが、オレは邪悪なヤツ以外は斬らないんだよ」

「……私に生き恥をさらせと言うのか」

「違うって。どうしてお前って、いちいち物騒な考えた方しかできないの?」

 

 今なお頑ななアーマラの態度に呆れ顔をしたイングは表情を改め、朗々と語り始めた。

 

「オレは、マシンナリー・チルドレン――、父も母もいない作り物だ。きっとこの“世界”にとっては()()なんだろうな……だけど、そんなオレにも仲間ができて、世界を、地球の平和を護れてる。お前のいう“価値”を手に入れることができたんだ。これって、すごいことだと思わないか?」

「私は……」

「帰ろうぜ、アーマラ。オレたちの時代にさ。後のことは、それから考えればいい。なんだったら、また挑戦してこいよ。殺し合いは御免だけどな」

「……本当に、帰れるのか……?」

「根拠なんてねぇよ。でも、そうなるし、そうするべきだって思ってる」

 

 イングはなんの迷いもなく断言した。

 不敵で不遜な、けれどどこか頼もしい物言いに、思わずアーマラから笑みが零れた。

 

「さあ、そんな狭いところで丸まってないで、出てこいよ」

「…………」

 

 再び明るい笑みを浮かべ、少年は手を差し出す。

 少女はわずかに逡巡し、そして躊躇いがちに手を取った。

 

 

   †  †  †

 

 

 アーマラと和解し、彼女を仲間に加えたイングとプリベンターは、未来世界の争いにピリオドを打つべく決戦に赴く。

 

 旗艦《ラー・カイラム》の格納庫。

 予備のパッチ・アーマーとコーティング・クロークを取り付けられた《アッシュ》の前で、イングはリュウセイ、ヴィレッタとともにアーマラから話を聞きだしていた。

 

「アーマラ、アンセスターについて、何か知っていることがあれば教えてくれないか」

「……おそらく私の知識は、お前たちが知っていることと大差ないだろう。この時代に来た私を保護したのが彼らだったが、イングの言うとおり利用されていたのだろうな、重要な施設などには近付けなかった」

「じゃあ、ガリルナガンは? あれはどんな機体なんだ?」

「ヤツらは、ブラックボックスがどうのと言っていたな」

「ブラックボックス……?」

「ああ。それを解析して得ることのできた技術の極一部を、試験的にEXに組み込んだのがガリルナガンなのだそうだ」

「なるほど、ね。……そのブラックボックスとやら、オレたちの時代に帰る鍵になりそうだな」

「? どういうことだよ?」

「もしも、そのブラックボックスとやらが少佐の“あれ”なら、それくらいできそうだろ?」

「そりゃ言えてるな」

「……(相変わらず、妙なところで核心を突く子ね)」

 

 

 ギンガナム艦隊との決戦。

 

「この世界を、黒歴史にさせてたまるかぁーっ!」

 

 自らのエゴを肥大化させ、戦争のための世界征服をもくろんだギンガナムは、激闘の末《∀ガンダム》の《月光蝶》により消滅。ティターンズ、そしてギンガナム軍により操られていたカテジナ・ルースは辛くも生き残り、ウッソと和解することができた。

 Xポイント。封印を解かれた核兵器が乱れ飛ぶ中、ジロンは《ウォーカーギャリア》で因縁の相手ティンプ、そしてイノセントの黒幕カシム=キングと決着をつける。

 

「過ちは、繰り返させない!」

「……あなたに、力を……」

 

 ガロードとティファの絆が《ガンダムDX》に力を与え、時代を拓くために戦争という手段しか取れないフロスト兄弟と、黒歴史に魅了されて離反したグエンと《サイコガンダム(ブラックドール)》に引導を渡す。

 こうして強敵たちを退け、プリベンターは黒歴史の再現を防いだのだった。

 

 塔州連合の地殻貫通弾「オレンジ」によるコーラリアン殲滅作戦――

 《spec3》に最終進化した《ニルヴァーシュ type ZERO》とレントンが《抗体コーラリアン》の群を突破して、「指令クラスター」とされたエウレカを救うべく大空を行く。

 プリベンターとゲッコーステイトのメンバー、ガロードやゲイナーの活躍で見事エウレカは救い出され、コーラリアンは人類と和解し宇宙へ旅立つ。

 

 コーラリアンの一部が新天地を求めて地上を離れ、静まったのを待ちかねていたようにミケーネ帝国と恐竜帝国が地上を手中に収めるべく、本拠地「マシーンランド」を露わにして最終決戦に打って出た。

 激戦に次ぐ激戦。

 敵の大軍勢を前に窮地に陥ったプリベンターを助けるため、銀色に染まった《ニルヴァーシュ type the END》とアネモネが、塔州連合やディアナカウンターの心ある者たちとともに参戦。ミケーネ帝国の首領――闇の大帝ことギャラハンはその“鎧”ごと倒され、恐竜帝国の女帝ジャテーゴもまた轟沈する《無敵戦艦ダイ》と運命をともにした。

 

 地上に残る戦乱の元はアースクレイドル、アンセスターのみ。

 アースクレイドルの直上で、プリベンターとアンセスター、この時代の未来を掛けた最終決戦の火蓋が切って落とされた。

 新西暦からの因縁を断つべく、イングは大地の守護神《スレードゲルミル》に立ち向かう。

 

「決着をつけるぞ、ゼンガー・ゾンボルト!」

「我が剣に賭けて、メイガスの許には行かせん!」

「無駄だ! 悪を斬らぬ貴様の曇った剣など、オレには届かん!!」

 

 《星薙の太刀》を潜り抜けて放たれた《アッシュ》の渾身の一太刀を受け、倒れた《スレードゲルミル》。それにより正気を取り戻したゼンガーを仲間に迎え、プリベンターはアースクレイドルを目指す。

 ――“マシンセル”の散布による人類抹殺を目指すアンセスター、メイガスの暴走を食い止めるために。

 

「まさか、アンタと(くつわ)を並べて戦うことになるとはな」

「お前の一太刀、確かに俺の魂に届いた。見事な剣だった……礼を言う」

「へへ……ま、達人のアンタからそう言われるのは悪い気しないな」

 

 

 アースクレイドル内部。

 突入したプリベンターを、《量産型ヒュッケバインMkーII》がマシン・セルにより変異した大量の《ベルゲルミル》が迎え撃つ。

 

「ウルズ! お前たちの相手をしている暇はない、そこを退け!」

「くっ! そんな旧式のパーソナルトルーパーで、僕とベルゲルミルと互角に渡り合うなんて!」

「パイロットの差だな、イーグレット・ウルズ!」

「これだけの力を持ちながら、どうして愚劣な人間の味方などをする! イーグレット・イング!」

「オレは、お前たちのようにヒトに期待してないからな。過度に期待していないから、どんなことだってありのままに受け止められる。それだけだよ!」

「期待!? 馬鹿なっ、僕らは新人類、この地球の正当なる後継者だ。愚かな人間などに期待を掛ける道理がない!」

「なら何故、何万年もたった今になって行動を起こした? 新人類だ何だ、核ミサイルだ何だと言ってるが、お前らは結局のところ人類に期待していたんだろう? それを裏切られて逆上している。違うか!?」

「っ、黙れッ、黙れェェェエエ!!」

 

 イングと《アッシュ》は自身の兄弟、あるいは分身とも言える三人のマシンナリー・チルドレンと《ベルゲルミル》を撃破する。

 そして――

 

「我が名はメイガス、アンセスター、そして地球の管理者……。人間共よ、お前達は地球という巨大なシステムには不要な存在……お前達が長きに年月に渡って愚かな戦いを繰り広げ、地球を汚染し続けて来た罪は、このアウルゲルミルによって裁かれなければならない……!」

 

 アンセスターの首魁、メイガス――アースクレイドルのメインコンピュータとマシンセルによって操られたソフィア・ネート博士との決戦を迎えた。

 

「認めよう、イーグレット・イング。我々は人間に期待していた。それ故に、長い時を雌伏し、世を見守り続けていたのだ」

「潔いじゃないか、メイガス! なら改心して思い直すか?」

「だが、それだけに理解できない。どれだけの時を経ても変わらない人間の醜悪さを目の当たりにしたお前が、どうしてその人間のために戦えるのです?」

「ただ、信じているからだ」

「信じる? 何を?」

「ヒトの心の光ってヤツをさ!」

 

 アースクレイドルの根幹コンピュータがマシン・セルによって変貌したモノ、メイガスそのものとも言える機動兵器《アウルゲルミル》。薔薇の花弁と(イバラ)をイメージさせる機械の女神が、人類に裁きを下そうとプリベンター連合軍と対峙する。

 《アウルゲルミル》はバルマー戦役、そしてこの未来世界での戦いを勝ち抜いたプリベンターをして圧倒するほどの力を有していた。

 

「コンビネーションアタックでいくぜ、イング!」

「応ッ、TーLINKダブルコンタクト! シーケンスTDK!」

「天上!」

「天下!」

「「念動連撃拳ッ!!」」

 

 《アッシュ》と《Rー1改》の拳が《アウルゲルミル》を打ち据える。

 《マジンカイザー》、《真・ゲッターロボ》、《Hiーνガンダム》、《ダイターン3》、《ブライガー》、《Zガンダム》、《YFー19》――新西暦からの仲間たちが。

 《∀ガンダム》、《ウォーカーギャリア》、《ガンダムDX》、《XAN-斬-》、《ニルヴァーシュ type ZERO spec3》――未来世界で出会った仲間たちが。

 プリベンターの総力戦。怒涛の攻撃により、《アウルゲルミル》はマシンセルでも癒しきれない大ダメージを負ったのだ。

 

「おい、イング! あのメカは――」

「ああ。あれが例のブラックボックスってヤツか……予想通りだよ、畜生め!」

 

 追い詰められたメイガスは、《アウルゲルミル》によって支配したブラックボックス――見るも無惨な姿となった《アストラナガン》の“ティプラー・シリンダー”を用い、過去の改竄を目論む。

 開かれたタイム・ゲートを潜り抜けた先に広がっていたのは、新西暦一八八年、月面はムーンクレイドル。

 未来世界の戦いにおいて重要な部分を担った場所であり、今まさにイージス計画が発動するそのときだった。

 

 ムーンクレイドルを破壊し、未来を確定させようとするメイガス。新西暦に残っていたSRXチームを仲間に迎えたプリベンターは、それを阻止しようと決死の抵抗を続ける。

 

「ヒトが同じ愚行しか繰り返さないのは、黒歴史が証明している……私はそのメビウスの輪を断ち切るのだ」

「そのヒトから生まれた存在がよくも言う! アンタのその行為すら、メビウスの輪の一部だってことを解れよ!」

「愚かだな、メイガス。ある男が言っていた――貴様が抹殺しようとする人類もまた、天然自然の中から生まれたもの、いわば地球の一部! それを忘れて何が自然の、地球の再生だ! 共に生き続ける人類を抹殺しての理想郷など、愚の骨頂ッ、とな!」

「おっ、アーマラ良いこと言うじゃん」

「フッ、褒めるなイング。ただの受け売りだ」

「ッ、世迷い言を……!」

「メイガス! 貴様の邪念、この俺が断ち斬る!」

 

 イングは自らのルーツ、その因縁を断つべく剣を振るう。

 激闘の末、メイガスを撃破したプリベンター。ほっとしたのも束の間、マクロス・シティで倒したはずのシュウ・シラカワが《グランゾン》とともに再びプリベンターの前に立ちはだかった。

 

「もう一度聞くぞ、シュウ・シラカワ! 貴様の目的は何だ!?」

「この世界を正しい姿に戻すためですよ。全てを“破界”し“再世”することによって、世界は救われるのです」

「何にとっての正しい姿、誰にとって救いだ!」

「フッ……何であれ、元凶は根源から断たねばならない……いずれ、 それをわかる時が来ることでしょう。最強の念動者……最も()()に近いサイコドライバー、イーグレット・イング、あなたは特にね」

「何……!?」

 

 強敵《メカギルギルガン》と《ゴーストXー9》を引き連れて現れた彼は、もはや問答無用とばかりに《ネオ・グランゾン》で攻撃を仕掛ける。

 《縮退砲》の恐るべき威力に壊滅的な打撃を受けるプリベンター。だが、彼らは諦めない。連戦により満身創痍になりながらも、果敢に立ち向かう。

 そして死闘の末、マサキの精神の高ぶりに呼応して精霊憑依(ポゼッション)した《サイバスター》の《コスモノヴァ》が、《ネオ・グランゾン》にトドメを刺した。

 

「み、見事です、マサキ……このネオ・グランゾンを倒すとは……」

「シュウ!」

「これで、私も悔いはありません……戦えるだけ戦いました……。全てのものは……いつかは滅ぶ……今度は私の番であった、それだけのことです……。これで私も、全ての鎖から解き放たれることが……出来、まし、た……」

 

 爆発する《ネオ・グランゾン》と運命を共にするシュウ。

 

「シュウ……、バカな……ヤツだったぜ……くそっ!」

 

 

 結集したプリベンターのスーパーロボットたちの超エネルギーによりイージス計画は発動し、超重力崩壊による危機は回避された。

 ここに未来は分岐し、新たなる時を刻み始める。

 ソフィア・ネートとしての自我を取り戻したメイガスは、自身の行いを悔い、未来世界の人々をあるべき場所へと還すために最後の力を振り絞る。

 

「アンタも帰るんだな、ゼンガー」

「……ああ。メイガスを、ソフィアの魂を未来に送り届けてやらねば。俺たちが在るべき場所は、あの未来だ。この時代ではない」

「そっか」

「……イング。もし、この時代の俺に出会ったときには――」

「そのときには、改めてケリをつけてやるよ。遠慮なんてしねーから安心しろ」

「フッ……災難だな、この時代の俺も」

 

「イング、プリベンターのみんな、僕らの世界を護ってくれてありがとう。みんなのおかげで、僕らは前に進めた気がする」

「イングのアドバイスがなかったら、俺、エウレカとわかりあえなかったかもしれない。ほんとにありがとう!」

「じゃあなみんなっ、元気でな!」

 

「ああ、お前らもな! あと、サラとエウレカとティファと仲良くしろよ。羨ましいぞチクショウ、爆発しろ!」

 

「さ、最後の最後でそれかよぉ」

「あははは……まあ、イングだしね」

「変わらないよな、アイツは」

 

 仲間と、友との別れを告げるイング。

 彼らは《アウルゲルミル》の導きにより、新西暦から未来世界へと帰っていった。

 

 プリベンターの帰還とイージス計画完遂を見て、ムーンクレイドルに接近する連邦軍の艦隊を眺め、アーマラがつぶやく。

 

「終わった、か……。ティターンズの私は、これから……」

「気にすんな。これからのことは、これから考えればいいさ。……なんたって、俺たちには時間がたっぷりあるんだから」

「……ふふ、そうかもな」

「あ、笑った。やっぱかわいいなー、お 前って」

「! ば、バカっ!」

 

 ――こうして、バルマー戦役から端を発したイージス計画にまつわる戦いの幕は下り、地球圏にはつかの間の平穏がもたらされたのだった。

 






 【朗報】カテジナさん生き残る【やったぜ】
 旧作では存在を忘れてたとか言えない言えない(・ω・)
 地味にフロスト兄弟のガンダムも強化しときました。これ、何でやらなかったなのか覚えてないんだよなぁ。
 あと一応改めて補足しておきますが、本作のアーマラの髪はピンク色です。これは仕様です。アリエイルと間違えたとかじゃないよっ!


 三連休&ランキングに乗ったので連続更新。外伝は短いしろくに改稿してないから特別にということで。
 なお、書き貯めは次までしかない模様。お盆の間に頑張って増やさなきゃ……(白目)

 アンケートを追加したのでよければどーぞ。

カミーユの最終機がデルタχ(Zカラーナイトロ抜き)なのは

  • あり
  • なし

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