神域と呼ばれる空間。
太陽神シャマシュは、近々とある世界に復活する
――が。
「あ、間違えた」
シャマシュが呆けた呟きをした直後、別世界にある太陽の国以外の国がすべて異世界に召喚されてしまった。
西暦2015年1月、深夜に空が白く光るという異常現象が起きた直後、日本は国外と繋がる全ての通信が途絶するという異常事態に見舞われた。
すぐさま自衛隊と海保が周辺の捜索に出動し、また人工衛星が無事だったため、
もちろん突然のこの出来事に日本は大混乱、国内では物資不足を恐れた人々による買い占め騒動が多発し、帰国出来ないことに絶望した外国人らを中心とする自殺が全国で続出。
同盟国から仮想敵国まで全部消えた日本だが、食料や資源を他国からの輸入に頼っている日本は一国だけでは生けていけない。とりあえず他に無事な国家がいないか調べるため、世界中に電波を飛ばした。
その結果、通信の繋がった国は無かったが、公海上にいた全ての船舶や航空機、そして南極の観測隊、北極の観測隊に通信が繋がった。南極と北極と公海は無事だったのだ。
寄港地が消え、公海上を漂流中だった船舶や航空機は、寄港できる場所を見つけたことで日本に押し寄せた。そのせいで日本の空港と港湾がパンク状態と化したのは言うまでもない。
もっとも、一部の航空機は燃料が途中で切れて墜落したり、船舶は地球の反対側で漂流するなどの事態も発生。日本はこれを救援しようにも、遠すぎてそれが不可能な場合もあった。
日本には石油タンカー、コンテナ船、豪華客船、遠洋漁船、海洋調査船、さらに米空母艦隊、仏国空母、各国の原潜まで来航。だが日本での受け入れは一時的なものであり、今後どうするかは日本政府も決めていなかった。
まずは人命救助の観点からも、とりあえず一時的に受け入れる。その後のことは、また別で考える――日本政府はそのようにして後回しにした。これ以外にも様々な問題が山積みだったからだ。
他にも、他国への輸出、他国からの輸入が完全にストップしている為、大企業から中小企業まで非常によろしくないことになっている。もちろん金融市場もそうである。
日本は内需国なので長期的には経済も何とかなるだろうが、問題はそちらではない。日本は食料自給率も地下資源も乏しい国家であり、輸出が途絶えると生きていけないのである。
そのため日本政府は、一時的に寄港したタンカーや運搬船の積み荷の食料、資源を買い取り日本の延命を図ることにした。もちろん長期的にはそれも途絶えるが、やらないよりはマシである。
また地下資源不足の対策として、原油や天然ガスの宝庫とされる尖閣諸島の開発がすぐに開始され、金属などは都市鉱山を、さらに南極条約を破棄して南極大陸からの採取を開始することとなった。
南極も尖閣諸島も、日本にとって領有権を争う相手がいなくなったため(もっとも南極の領有権を日本は主張していないが)日本もこの様な行動に出ることが出来ている。
そして食料の不足に関しては水産業の拡大で対応することとし、漁船を量産、漁師は主に日本国籍を持たず仕事のない外国人らを中心に構成することとなった。
やがて半年が経つと、世界中の温室効果ガスの発生量が激減し、さらに海流を遮る大陸が消えたことで複数の寒流が日本列島の近海に押し寄せたことで、過去経験したことのないレベルの冷夏が日本を襲った。
農作物が冷夏による生育不良で不足し、93年の米騒動以上の食料不足が発生した。あの時と異なりタイ米も買えないことから、何がなんでも漁業で魚を獲って代替するしかなかった。
この頃になると、日本政府は日本国籍を持たない者にも国籍を与えたために人口は一時的に1億3千万人代にまで上ったが、自殺や事件、漁船の遭難、食料不足などで人口が減ったことで再び1億2千万人代に戻っていた。
大陸が消えたことで、勢いを遮られなくなった海流は荒れ狂い、今まで以上に船の遭難を多発させた。GPSが存在している状態でも遭難や沈没が相次いだのである。
また同時期、日本以外の国家が消えたことで国防組織の自衛隊はその存在意義が薄れ始めた。自衛隊の任務は遠洋での救難活動、南極開発隊の人員や物資の輸送、災害での救難活動ばかりに変わっていった。
在日米軍や日本に寄港した各国軍の艦艇、軍用機を自衛隊に編入したり、活動範囲の拡大で原子力艦の建造がされるなど戦力は増大してたが、そもそもそれを使う必要のある相手がいなくては、意味がなかった。
やがて航空自衛隊の戦闘機はほとんどが偵察機や観測機に改造され、非戦闘組織化し始めた。陸上自衛隊は国内の治安維持活動の可能性を理由に変わらなかった。海上自衛隊だけは活動地域の拡大により原子力艦などを導入したため、規模が増やされ続けた。
やがて二年が経ち、この頃になると日本の混乱も完全に落ち着くこととなる。外国人らは完全に日本に帰化し、食料も資源も安定してるとは言えないが必要量が入手出来るようになり、経済も安定してきた。
南極大陸や尖閣諸島での資源の採取も成功し、何とか日本は存命に成功したのである。
そんな中、南極で資源開発を行っていた南極開発隊が、南極の分厚い氷の下に謎の遺跡を発見、調査した結果なんと伝説の超古代文明アトランティスであることが判明。
日本以外の国が消えてから久々の大発見に、日本は沸きに沸いた。が、逆を言えばこれ以降、大したニュースはほとんど無くなってしまった。
外国が消え、外圧も国際世論も消滅した世界で日本は世界中で魚を獲り、南極を開発し、海底を調べ尽くし、自衛隊は在日米軍から受け継ぐ形で原子力空母まで保有するなど、日本にとってやりたい放題やった。
やがて地球ですることの無くなった日本は宇宙に可能性を見出だし、各国が残した人工衛星と国際宇宙ステーションの受け継ぎはもちろん、日本人初の月面着陸や、火星探査、宇宙太陽光発電にも乗り出した。
どこの国にも縛られず、何でもかんでも自由に出来たのは日本にとって嬉しいことだったが、しかしどこの国も消えたことで、逆に何も無さすぎてつまらない世界でもあった。
同じ頃、異世界に転移した日本以外の国――特に米中露の三国は、異世界の土地の領有を主張し合っていた。そこへ復活したばかりで何も知らないラヴァーナル帝国が、家畜どもに自らの復活を示すべく、大陸間弾道型の
それを受けた米中露英仏などの核保有国が、互いに米国が撃った、中国が撃ったのだと勘違いし、次々に報復核攻撃を開始、誰も幸せになれない核戦争に異世界が突入していた。
そのことを、日本は知らない。
何このバッドエンド作品(困惑)