艦これ日誌   作:オリナル

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建造によって鎮守府に生まれた航空母艦『加賀』
彼女の力は音に聞いており、提督も期待を集めていた。
……なのだが


加賀さんの不調

「やったー!ウチ大活躍や!褒めて褒めてー」

 

提督に向けて歓喜の声を上げる龍驤は、ツインテールの髪をジャンプと共に揺らしていた。今回の出撃で、彼女は敵艦を人一倍撃破し、その戦果を喜びと共に提督に報告している最中であった。

鎮守府は現在、キス島における友軍救助作戦を執り行う真っ最中であった。龍驤を含めた機動部隊は敵の主力部隊の注意をこちらの向け、本命の駆逐艦部隊をキス島へ最小の被害で向かわせることが本作戦の概要である。

今回の出撃は、駆逐艦部隊を送り出す前準備であり、敵部隊を消耗させることが目的であった。

 

「まあ、ウチにかかれば、敵重巡の一隻や二隻ちょちょいのちょいやで」

 

今回の戦果で相当気を良くしたのか龍驤はドンと胸を張る。

 

「胸の方は駆逐艦並でも、自信は戦艦並ってか?」

 

その様子を横から見ていた隼鷹が茶々を入れてきた。彼女の言葉に悪意はない。というより彼女には悪を知らないような節がある。だから、先ほどの言葉も隼鷹自身にとってはスキンシップの一環のなのだろう。

しかし、龍驤本人にとってはコンプレックスを抱える身体的一部を貶され、隼鷹の方を顔を真っ赤にして睨みつける。

 

「う、うっさい!胸は関係あらへんやろ!」

 

「でーも、開幕の爆撃戦でお前のやつだけ出遅れてたしなー。おかげで敵旗艦しとめそこなったしなー」

 

「うっ……うっさいわ! 今回は敵の戦力を削るのが目的なんやから、あれくらいでちょうどいいの!」

 

龍驤の一方的な口喧嘩を余所に、一通りの戦果報告を行う旗艦古鷹が報告を終えると、提督から退出の許しが出て、古鷹以外の艦娘一同は一礼し、司令室より退室していった。部屋から出て行く間も、ぷりぷり怒る龍驤とそれを笑って相手する隼鷹の姿を見送り、提督はまた気苦労が増えるとため息を吐くのであった。

 

自由行動が許可され、各々自由に余暇を過ごす中、龍驤は未だ隼鷹とのやり取りに腹を立てていた。結局あの後2人の中に入ってきた鳳翔と飛鷹によって事なきを得たが、隼鷹に反省の色は見られず、それが余計に龍驤を苛立たせるのだった。

 

「まったくなんやねんあいつ!ちょっとウチより編入が早くて実力もちょーっとウチより高いからって……」

 

ブツブツと廊下を当ても無く歩いていたその時、誰かの声が聞こえてきた。気づけば龍驤のいる場所は司令室の前、声は提督のもの。どうやら一方的に誰かに話しかけているようだ。龍驤は興味本位で少し空いた司令室の隙間からその様子を覗き込んだ。

見えた隙間からは、よく見慣れた姿の艦娘が見えた。青の袴と胴体を覆う胸当てに綺麗に結ったサイドテールは、近日建造によって鎮守府に生まれた艦娘、正規空母の加賀だった。

先ほどの出撃では共に編成を組んでいたのに、何故にまた執務室にいるのか。

 

「はい……はい……」

 

話の内容を要約すると、加賀の航空部隊の戦果が芳しくないということだ。加賀の有する航空隊の数は、龍驤たち空母の誰よりも多い98機。その圧倒的なまでの艦載機保有数に提督は今回の作戦でも大いに期待を寄せていたのだろう。しかし、結果は龍驤含め軽空母たちの独壇場。加賀の実力は発揮されないまま今回の戦闘は終わってしまったのだ。

提督はその結果を咎めているわけではないのだが、静かに「はい」としか答えない加賀を見ていると、怒られているように見えてしまう。埒の開かなくなった提督は加賀に退出を命令し、加賀は一礼してスタスタと扉までやって来た。

 

「やばっ!」

 

龍驤はなんとなく居心地が悪くなり、その場から立ち去ろうとしたが、厚底の靴が災いし、駆け出す際に盛大に前のめりに転び、加賀が退出するタイミングと見事に重なる形となった。

 

「……あら?」

 

加賀の目の前には、尻を突き出して自身の下着を自分に見せている同僚の姿だった。

 

「よ、よお。元気してる?」

 

「……そうね。少なくともあなたよりは健在よ」

 

龍驤はすぐに体勢を戻し、スカートをぱっぱと払うと加賀に向き合った。

 

「あー……ウチ、あんまし話聞いてへんかったから。そのー、気にしなくても、いいんよ?」

 

「…………」

 

加賀は変わらずの無表情で、まるで龍驤を威圧するように見つけてくる。

龍驤ははっきり言うと加賀が苦手だった。寡黙なのもあるが、自分を見てくる無表情な目を見ていると、たまらなく不安になってくるのだ。空母として、一航戦である赤城や加賀を目標にしてはいるが、加賀のこの部分だけは見習えないと前々から思っていた。

 

加賀は何も言わず、何かリアクションをとるわけでもなく、龍驤の横を通って廊下をスタスタと歩いていった。

 

「……なんやあれ」

 

 

 

「加賀さんのこと……ですか?」

 

空母寮に戻った龍驤は自室で装備の手入れをしていた赤城を訪ねていた。加賀のことは関係の深い赤城に聞くのが一番だと思った龍驤だが、肝心の赤城も首を傾げていた。

 

「さあ、私も最近は彼女と出撃をしませんから、近状を知らないんです」

 

「でも、赤城と加賀は同室やないの? 最近の不調について何か言ってるんやない?」

 

龍驤の問いに赤城は首を横に振る。

 

「加賀さんはそういうことを人一倍言いたがらないから」

 

龍驤は露骨に不機嫌そうに顔を歪める。

 

「……なんやそれ。誰にだった不調なときとかあるんやし、間宮に行くとか入渠の要請するとかすればええのに」

 

「そうね。私も加賀さんには、もっと頼って欲しいって思っているわ。でも、加賀さんも私も一航戦として……」

 

「その一航戦ってのが気に入らんねん!」

 

龍驤は立ち上がって、赤城を見下ろす。

 

「もうあの時とは違うんやし、もう一航戦とかそういうのにこだわらんでもええやんか。うちもあの時よりも力ついたし、航空母艦はもう赤城や加賀だけやないってことや。うちだけやない。鳳翔とか飛鷹とか……あといけすかんけど隼鷹も。それに」

 

「分かってますよ」

 

ぴしゃりと言い放つ赤城の言葉に、捲くし立てていた龍驤は言葉を止めた。

 

「私も加賀さんも、別にあなたたちを頼りなく思っているわけではありません。ただ……」

 

その時、部屋の扉をノックする音が響いた。

 

「赤城さん、いますか?」

 

扉が開き、加賀が部屋に入ってきた。目と目が合う龍驤と加賀は目を丸くした。

 

 

 

「なるほど、皆さんには心配をかけた様ね」

 

赤城が今までの経緯を話し、加賀は座ったまま頷いた。

 

「別に、心配とかそういうのやないし」

 

「まあまあ。加賀、龍驤だけに限らずみんな同じ考えよ。誰もあなたのことは責めていないわ。だから」

 

「何か勘違いしているみたいだけど」

 

加賀は懐から一枚のチラシを取り出した。

 

「「歓迎会?」」

 

チラシを目にし、赤城は納得の言ったような顔。龍驤は首を傾げた。

 

「隼鷹さんが私のために主催してくれた宴会だそうです。今夜、そちらに行くことを考えていて、私としたことが戦績に響いてしまったようですね」

 

「ちょ、ちょい待ちいや。え? 加賀は、何か? 宴会が嫌いなんか?」

 

「いえ、そうではないのですが……その……」

 

何やら口ごもる加賀。ますます分からなくなる龍驤に、赤城は耳打ちする。

 

「加賀は、下戸なんですよ」

 

「……ああ」

 

納得がいった龍驤はため息をつき、今までの自分の心配はなんだったのかと、再びため息をつくのだった。

 

 

 

うんざりした顔で赤城たちの部屋を後にしていく龍驤を見送る赤城と加賀。先に口を開いたのは加賀の方だった。

 

「軽空母の子たちに心配されるようじゃ、私もまだまだですね」

 

「ええ。でも、あれでも龍驤ちゃんは本気で心配してたと思うから、明日には元気になっておかないとね」

 

「……保障は出来ませんが、頑張ります」

 

再び宴会のことを思い出したのか、加賀はため息をつく。

 

「……本当は、最近の思わしくない戦績に悩んでたんじゃない?」

 

赤城の言葉に加賀ははっとするも、少し気まずそうに頷いた。

 

「情けないですね。一航戦を名乗っておきながら、艦載機運用もままなっていないのですから」

 

「しょうがないわ。まだ建造されて間もないのだから。練度も上がれば加賀ならすぐに一線級の航空母艦になれるわ」

 

「そうね。早く、そうなりたいものです」

 

「……ねえ加賀。私たち、もっと他の子達に頼ってもいいと思うの」

 

「え?」

 

赤城の突然の言葉に加賀は目を見開いた。

 

「今日の龍驤を見て思ったのだけれど、もう昔みたいに気張った戦いをする必要はないんじゃないのかって。今の私たちには、龍驤ちゃんみたいな頼れる仲間たちがいる。仲間の力を頼りにするのは、きっと慢心なんかじゃなく、信頼っていうりっぱな力だわ」

 

「……仲間に、頼る、ですか……」

 

 

 

そして、しばらくしたその鎮守府では―――

 

「はあうぅ。やっぱり航空母艦の人たちってすごいですね~」

 

遠征任務を終え、寮に戻ろうと鎮守府の廊下を歩く大潮と朝潮、荒潮は呟く。

 

「この前の海域も、たった一人で深海棲艦の航空勢力を抑えたそうよ~」

 

「確か名前は……っ!?」

 

とある航空母艦の名前を思い出そうと意識が散漫していた朝潮が誰かにぶつかる。

 

「す、すみませ……あ!?」

 

「あら」

 

ぶつかった人を見て、三人は絶句した。何故なら、その人が先ほど噂していた航空母艦のその人だからだ。

 

「余所見をしていると危ないわ。最上のように衝突癖が付かないように気をつけてください」

 

「は、はい!失礼しました!加賀さん」

 

深すぎるお辞儀をする朝潮に、加賀は言う。

 

「気にしないで。あなたたちは、遠征の帰り?」

 

「はい。そうで~す」

 

「そう。あなたちのよい働きで、私たちも心置きなく戦えます。これからも、共に頑張っていきましょう」

 

「「「は、はい!」」」

 

敬礼をし、加賀の後ろ姿が見えなくなるまで見送った三人は、互いに加賀の凛々しい姿を褒め称えた。

 

「やっぱり、加賀さんってかっこいいー!」

 

「あんな大人の女性になりたいわね~。ね、朝潮ちゃ……ん?」

 

荒潮が見たときの朝潮は、輝くようにやる気に満ちた表情をしていた。

 

「ご期待に応えるため、次の遠征も成功させるわよ!荒潮、大潮」

 

「あらあら、朝潮ちゃんったらやる気たっぷりになっちゃって~。まあ、私も同じ気持ちだけど」

 

「よ~し、大潮もアゲアゲでいきますよー!」

 

戦意も上々になった三人の駆逐艦が、そのままの状態で遠征に出発し、補給を怠ったために提督に怒られるのは後の話である。

 

 

 

 

 

 

 




加賀さんと出会ったのは、キス島撤退作戦中でのデイリー建造。
加賀さんの強さは先輩提督方より兼ねて聞いていて、かなり期待を込めていて、早速実戦投入!
結果はもちろん攻撃を外し、中破・大破の連続でした。
最初はそれでよかったのだけれど、Lv20くらいまで一度もMVPがとれなかったこともあってか、「本当に加賀さんは強いのだろうか」などと考えた時期もあったけど、自分の愛が足りないんだ!と言い聞かせ、今ではりっぱに我が艦隊を引っ張るエースの一人です。
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