艦これ日誌   作:オリナル

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深海棲艦唯一の雷巡『チ級』
彼女が深海から見たものとは


チ級へ深海より

海の底の底。ここは深海。

我々はどことも知らない場所より出で、存在する。

『深海棲艦』

誰が呼んだか、我々の総称はそう名づけられた。

 

「……痛む」

 

私の名はチ級。生まれたときよりその名は決まっていた。

何故生まれたとか、何のためにいるとか、そういった小難しいことはよく分からない。

しかし、自分の中に巣くうこの何かに突き動かされているのは確かだった。

 

「痛む、腕」

 

自分の腕を見る。先ほどちょっとした小競り合いがあった。

またいつもの艦娘どもだ。

やつらも何のためにここへ来るのか。

いや、そもそも戦いに理由が……いやよそう。私に小難しいことは分からない。

 

「ソンナニ痛イナラ、直シテクレバイイジャナイカ」

 

振り返ると、そこにはこの暗い深海の底において不気味なほどの笑みを浮かべたやつがいた。

 

「……レ級」

 

戦艦レ級。

やつはケタケタとした笑いと共に私の周囲を泳ぎ始める。

 

「バッカジャネーノ。私達ニ痛ミナンテ不用ナンダカラ、サッサト倒サレテマタ蘇ルノヲ待テバイインダ」

 

やつの笑い声が波紋を通じて伝わってくる。実に不快な声だ。同種族でなければ雷撃しているところだ。

 

「余計なお世話だ。どこへなりとも消えろ」

 

「何ダイ。人ガセッカク気ヲ効カセテヤッタッテノニ」

 

今まで笑って話していたレ級から笑みが消えた。

 

「……あまり調子に乗るなよポンコツ」

 

レ級の臀部より伸びた艤装が私へ銃口を向ける。

 

「舐めた口を利いてると俺がお前を沈めるぞ。この出来損ないの役立たずが」

 

出来損ない。それは果たして私にだけ向けられた言葉なのか。それとも……

レ級は銃口を収めると、またあの不快な笑みを浮かべた。

 

「ナーンテナ!ビビッタ?ネエ、ビビッタ?」

 

「……ああ、今の威勢なら艦娘どもだって震え上がるだろうさ」

 

「アハハハ!ソウカソウカ。ジャアマタ行ッテ艦娘共ヲ血祭リに上ゲテクルカナ」

 

嬉々としたレ級は浮上していく。まるで玩具を探しに行く子どものようだった。

やつは深海棲艦の中でも異端中の異端。存在自体が出鱈目の様なやつだ。やつが何を考え、我々と行動を共にしているのか。それすらも謎である。本当にこちら側の存在なのかも……

 

「苦労をかけるわね」

 

「ヲ級」

 

抵抗を感じさせない歩きでこちらにやってくる空母ヲ級。目に青い光を灯しているのを見るに、やつは私よりも数段上の個体なのだろう。

 

「やつは何を考えているか分からない。油断するな」

 

「分かっている。お前の方こそやつに背を見せるな」

 

別に気遣うような仲ではなかったのだが、ヲ級は心配をしているようだ。

……心配?何に?

 

「ヲ級。おかしなことを聞くが、艦娘たちと戦うのは何故だ?」

 

「……分からない。ただこの胸を突き動かすこれの赴くまま、私はやつらと戦う」

 

ヲ級の言うことは何となくだが分かる。自分でも胸の奥底からこみ上げるこの衝動がなんなのか。よく分かっていない。これが闘争本能であれ艦娘たちへの憎しみであれ、私はそれに従って戦ってきた。

 

「時にチ級、あなたがフラグシップになったのはいつだったかしら」

 

「さあ、戦いを繰り返しているうち、いつしかなっていたとしか答えられん」

 

「そう。それが分かれば、艦全体の強化が出来ると思っていたのだけれど。分からないのであれば仕方がないわね」

 

そういってヲ級は

 

 

 

 

私を攻撃した。

 

「な、何を……」

 

「あなたの思想が危険だからよ。今話してよく分かった。我々に戦いの理由は必要ない。滅ぼし、滅ぼされるのが我らの摂理。感情を持ち合わせて戦うお前の考えはあまりに危険だ」

 

ヲ級は確実に私の急所を攻撃したらしい。もう指一本動かす事ができない。戦いではない味方に殺されて死ぬとは……いや、初めから味方などいたのだろうか。いや、もう考えるのは止めよう。また蘇った時は、あまり考えない人生を送るとしよう。

 

 

 

 

 

「殺シタノカ?」

 

「ああ、我々に余計な感情はいらない。お前もたまには良い働きをするのだな」

 

「ナアイ、私ハコレが欲シカッタダケサ」

 

チ級の残骸よりレ級は甲標的を取り上げる。

 

「……何をする気だ?お前は戦艦だろう」

 

「戦艦ガ魚雷ヲ打ッチャイケナイ決マリハナイダロウ?」

 

レ級は嬉々とした表情で再び海面へと浮上していった。

ヲ級は残されたチ級の残骸を見下ろし呟く。

 

「次に生まれてくる時は、戦いだけ考えるのだな」

 

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