「1…2…3。そっちはどうだ?」
渓流の森林地帯に男の声が響く。
「こっちも3。あと1つ足りないわね…」
返事をしたのは女の声。
うんざりした顔でこうべを垂れている。
落胆する2人のその手にあるのはロイヤルハニー。
今話題の健康食品だ。
「なんでこう…毎度毎度1つ足りないかね。
疫病神でも連れてきてんじゃあないだろうな」
「私の運は良いほうよ。悪運引っさげてるのは
アンタの方じゃないの?」
2人の装備は共にレザー1式。どうやら駆け出しの
ハンターのようだ。採取クエストをしているところを見るに、新たな装備のための資金稼ぎと言ったところだろう。新人ハンターはいつも金欠なのだ。
「…くだらん事で口論をするのは止めよう。
ロイヤルハニーってあとはどこで取れたっけか」
彼らの現在地は巨大な切り株のある森の中。通称『エリア5』と呼ばれている場所だ。
「エリア9になかったかしら。
あの橋を渡った先にある所」
男は分からなかったようだ。疑問符を頭に浮かべている。
「ここよここ。ハンターなんだから
活動場所の地形くらい覚えときなさいよ。」
「あ、ここか。夜行くと
なんかよく分からんのがいるとこ。」
女が出した地図を見て納得した男と男の返事を聞いて顔を強ばらせる女。女は怖いものが苦手なようだ。
「あ、アンタ行ってきなさいよ。アンタの運が悪いのが
原因なんだから」
「なんだよそれ…。採取した数どっちも同じじゃねえか。
そもそも今は昼だし」
そんなことを喋りながら、ふと女が視線を奥に向けると
そこには異様な光景があった。
死んだケルビを食べる何か。
それだけ聞いたら異様でもなんでもない
ありふれた光景だったろう。
その振る舞いや装いはあまりに人からかけ離れていた。
地に伏せ、肉に食らいつく様はまさに獣。
身にまとっているものはおよそ服とは呼べないボロきれ。
「えっと、ハチミツ集めに来たら子供を見つけました。
どうすればいいんでしょうか」
「私が知るわけないじゃない!
…でも、放置するのは違うわよね」
そう言って女は子供の方へ足を1歩踏み出そうとした。
だが男が急に女を木の影に引きずり込んだため
尻もちを着いてしまった。
「ちょっと!何を」
「静かにしろ、なにか来る」
そうして男が森の奥を指し示すと大きな足跡と共に
黒い影が近づいてくるのが見えた。
まだ向こうはこちらに気がついていない。
「ギルドめ聞いてねぇぞこんなの…。勝ち目なしじゃねえか」
そうして影から様子を伺っているとナルガクルガは
ゆっくりと子供の方へ歩いていく。
「ッ!」
「バカ、やめろ!」
飛び出そうとした女を男が止める。
「このままだとあの子が!」
「飛び出してどうするつもりだ、このまま行っても
無駄死にするだけだ!」
「でも!」
そうこうしているうちにナルガクルガは子供の所へ辿り着く。
そして口を開き子供を頭を―舐めた。子供は擽ったそうに笑っている。
そして2人が訳が分からず放心している間に子供はナルガクルガによじ登り、ナルガクルガは子供を乗せて、1度こちらに視線を向けた後ゆっくりと去っていった。
「なんだ、あれ」
「なによ、あれ」
あのナルガクルガからは間違いなく子供への愛情が見えた。まるで母親が子供に向けるような。そして最後の目線の意味。あれは大切なものを守る者の目だった。
「と、とにかくクエストを終わらせよう。早くロイヤルハニーを拾ってギルドに報告だ。」
「そうね、でも念の為エリア3に迂回するべきじゃないかしら。次遭遇したら多分まずいわよ。」
そして2人が走り出した時、無情にもクエスト終了を告げる笛が鳴り響いた。
クエスト失敗。その事実に膝に手をつく2人の姿があったとかなかったとか。
これは、竜と人の狭間の物語。竜に育てられた子供の足跡である。
次回がいつになるかは分かりませんが、のんびりやっていきます
主人公の子供の性別
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男でしょ
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女でしょ