セバル   作:レストB

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第1部 2章 第6話「潜入 ディーン・クルスレッド」

 真剣修行の翌日、ヒスミとフェンルイは仕事を休み、宮殿を出た。メリスとジルフは気配を消してあとを追う。

 

「しかし、こいつら背負っていくのはちょっとなあ」

 

「仕方ないじゃないの。仕事を見学させなきゃいけないんだから」

 

 メリスにはゆかり、ジルフにはゆうやが背負われていた。

 

「あ、ほら、動いた。行くよ」

 

「わかったよ。おい、2人とも。尾行中はしゃべるなよ。高い声は響くからな」

 

「はー……」

 

「しっ。返事もいいから。あぶないあぶない。どうやら気づかれずに済んだようだな」

 

 ヒスミとフェンルイが向かったのは、どうやら首都キンドーラの町外れにある一軒の酒場のようだ。表には、コディー・ベイド(コディーの酒場)の看板が掲げられている。とても市民が来なさそうな場所にその店はあった。

 

 外からこっそり様子を窺うと、ヒスミとフェンルイは何やらカードのようなものを取り出し、酒場の主人に案内されて地下へ向かっていったようだ。

 

 メリスが言った。

 

「なるほど、会員制ってわけね」

 

「ああ、それじゃ、ちょっくら行ってくるわ。子どもは酒場に入れないからちょっとお留守番な。メリス、少しの間2人を頼んだぞ」

 

 ジルフはドアを開け、客として酒場に乗り込んだ。

 

「いらっしゃーい」

 

 マスターがジルフに声をかける。

 

「お客さん、初めてだね。名前はなんて言うんだい?」

 

「ここは名乗らなきゃ飲むこともできねえのか」

 

「いや、そういうわけじゃないが……」

 

「まあいい。とりあえずキジン酒ひとつ」

 

「はい、キジン酒ですね。まいど」

 

 キジン酒を適当に飲みながら、ゆっくりとあたりを見回す。この中のどれほどが一般人なのか。ちょっと揺さぶってみるか。わざと大きめの声で切り出す。

 

「ところで、マスター。最近、ここらでディーン・クルスレッドって革命勢力が暴れているらしいんだが、何か情報を知らないか?」

 

 ピクッと、全員がわずかにだが反応を示した。なるほど、こいつら全員クロなのか。もしそうならば手っとり早い。

 

「そうだなあ。最近は特にぶっそうになってきてますからねえ」

 

「それで、ここがアジトだって情報もあるんだがな」

 

 全員の顔色が変わる。あ~あ、こいつらクロ確定。

 

「いや、まさかそんなことはないですよ」

 

「じゃあ、後ろで銃構えてるやつはなんだ?」

 

「なに? どうしてそれがわか……」

 

「はあああ!」

 

 ジルフは気の衝撃を部屋中にめぐらせる。

 

 大きな衝撃が響き渡ったかと思いきや、酒場が静かになった。窓は全壊、テーブルはめちゃくちゃになって、革命団の一味と思われる者たちは一人残らず気を失っていた。

 

 これ、一般人も巻き込むからなあ。全員がクロでよかったよ、ほんと。

 

 それから、ジルフは3人を手まねきでよせる。

 

 こうして4人とも酒場に入った。

 

「うわっ。すごいことになってますよ」「めっちゃくちゃですね」

 

 とゆうやとゆかりの2人は驚きを隠せない様子。

 

「いつも思うけど、もうちょっと手加減きかないのかしら」

 

 メリスもあきれ顔だ。

 

「いや、これが一番手っとり早い方法なんでな。さあ、さっさと地下に行くぞ」

 

 地下に行くと、厳重なロックがかかった分厚い扉があった。

 

「パスワードを入力してください」

 

 と音声が鳴る。

 

「どうせさっきの音で気づいてるだろうから、ここは強引にいくぞ」

 

「まったく。誰が大きな音を出したのさ」

 

「パスワードを……」

 

 ジルフはガガーッと力ずくで扉をこじ開けた。当然だがサイレンが鳴る。

 

「逃げられたら厄介だ。急ぐぞ!」

 

「OK! 2人とも、気の膜を張るからね。ついてきなさい」

 

 練られた気の膜は、多少の攻撃ならびくともしない強固な壁となる。2人は膜につつまれることでその身を守られた。

 

 入口付近で、すでに何人かが銃を持って待機していたが、軽く蹴散らしながら進む。奥に進むにつれ、次第に人が増える。中には、寝室や食糧庫、自家発電設備などがあり、さながら地下要塞のようである。

 

 ヒスミにはりつけた気を頼りにひたすら進む。するとついに奥の大きめの部屋に到着した。

 

 そこには部下が数十名控え、ヒスミとフェンルイもいた。そして、奥には一人の男が。どうやらこの人がボスのようである。

 

 ヒスミが驚いたように言った。

 

「侵入者が来たのは分かったけど、まさかあなたたちだなんて……」

 

 奥にいる男が聞いた。

 

「こいつらか……すご腕のバルというのは」

 

「はい。そうです。マドラグに雇われた者たちです」

 

「そうか……それで、こいつらに後をつけられたというわけだな」

 

「ええ、申し訳ございません」

 

 悔しさを噛みしめながらヒスミが言った。

 

 ボスはジルフたちを見てこう言った。

 

「まさか、ヒスミの後をつけてこられるやつがいたとは驚いたぞ」

 

 ボスはふと、ヒスミについた気を見つけた。

 

「うん? これは……探知用の気か。どうりで後をつけられるわけだ」

 

「ほう、探知用の気に気づくとはなかなかやるじゃないか」

 

 ジルフが言った。

 

「その自信、ここから逃げなかったのも、おまえもまた気の使い手だからだな」

 

「そういうことです」

 

 ボスはそう言って、それからその場にいる全員に指示を出した。

 

「おい! 君たちはこの人たちには手を出すな。君たちの実力じゃ、束になっても返り討ちに遭うだけだ」

 

「いい心がけね」

 

 メリスも的確な指示にうなずいた。

 

 ジルフはメリスを制した。

 

「ここは俺にまかせてくれ」

 

「ま、いいわ。今回はまかせた!」

 

「ゆうや、ゆかり、ジルフとあのボスの戦いをよく目に焼き付けておきなさい。これがあなたたちには最初の黄気使い同士の戦いだからね」

 

「はい!」

 

 ジルフとボスは部屋の中央で対峙した。ボスが先に口を開く。

 

「私の名前はディーン。この革命団体、ディーン・クルスレッドのボスです。私たちがここまで活動してきたのは、民を蹂躙する悪しき国家を討ち、新政府を打ち立てるため。ここでやられるわけにはいかない!」

 

「俺はバルのジルフだ。お前たちの活動には興味はないが、やっていることが過激すぎると感じたんでな。今回はそれを止めに来たんだ」

 

「テロなどの行動はこの国を作りかえるのに必要なことだ。部外者のあなたにとやかく言われる筋合いはない。そして、ここがバレてしまった以上、どのみちあなたたちを生かしてはおけない。覚悟しろ!」

 

 仕方ない。やはり戦わねばならないか。ジルフは剣を取り出した。それから右腕をまっすぐに伸ばし、左手を右腕に軽く添え、剣を突き付ける構えをとった。

 

 ゆうやには、その構えがなんとも印象に残った。

 

 ジルフは構えたまま言った。

 

「上等だ! かかってこい!」

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