セバル   作:レストB

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第1部 3章 第2話「ヘイロンの死 その真相」

 5日間にも及ぶ移動の末、一行はヒルメスへと到着した。ヒルメス一帯は大森林地帯であり、林業が主な国家の収入源となっている。住居は木材や森林に生息する巨大生物の外殻などを用いて作られた独特なものが多かった。

 

 今回はヘイロンの足跡をたどる旅であった。彼が亡くなるまでに一体何をしてきたのか、それを知ることからまずは始まった。

 

 Sランク以上のバルの場合、紛争クラス以上の仕事では政府から依頼されることが多い。そこで、まずは実質政治の権限を握るヒルメス議会に話を通してうかがうことにした。ここでもバルのライセンスの効果は絶大で、ジルフと知るや否や仕事の依頼までされてしまった。今回は私的な用事で来ているからと一応断ったが、ヘイロンに関係することなので、協力はしようと言って話は聞いておいた。

 

 どうやら、この一帯でジュラミスクと名乗る勢力が国家転覆を狙っていて、国家滅亡の危機にさらされているらしい。この一件で、ヘイロンにジュラミスクのスパイ活動を依頼していたというのであった。つまり、今回はヘイロンが普段やる、世間に認知されているような救助系の仕事ではなく、単身敵とすれすれの線をくぐる危険度の高い裏の仕事だった。

 

 そして、最後はニュースで流れた紛争地、ヒルメス第3都市で亡くなったということだ。しかし、まだジルフには腑に落ちない点があった。

 

 並みのやつらからなら、決して敵になんて悟られるはずがない。こと諜報活動においてあいつは非常に優秀だった。そして、万が一敵にばれてしまっても、あいつなら生き残れるだけの強さがあったはずだ。なぜ……

 

 ヒルメス第3都市へと向かったジルフたち。そこで目にしたものは、焼けただれ、大半が炭のようになってしまっている街並みだった。いや、これではもはや都市とは呼べない状態だ。完全に壊滅してしまっていた。

 

 そこで、とりあえず色んな人から情報を聞いて回ることにしたジルフたち。4人で分かれて人々から話を聞いて回った。

 

 すると、次のような情報が上がってきた。

 

 市長はジュラミスクに暗殺されてしまったこと。紛争に際し、軍隊は約1万人投入されたが、わずか300人弱のジュラミスクにその大半を殺され、敗走してしまったこと。そして、この戦いで都市は焼け野原になってしまったということだ。しかし、肝心のヘイロンの情報は得られなかった。なぜかみんな口をつぐんで黙ってしまうのだ。

 

 集合場所まで戻ってきたジルフ、メリス、ゆうやの3人。これ以上は何も得られそうになかった。しかし、ゆかりだけはいつまでたっても帰ってこなかった。その日はもう夕暮れだったので、帰ってくるように電話をかけたが、まだ探すから、と聞かない。だが、ジルフはそんなゆかりの気持ちがよくわかった。

 

「じゃあ俺たちもまだ探そうか」

 

 と言ってまた情報を探し始めた。そして空は真っ暗になったころ、ゆかりから連絡がきた。

 

「話してくれる人、見つかったよ」と。

 

 ゆかりの元へ行くと、そこには、小さな子供を連れた3人家族がいた。その一家の父親が、全ての真相を話してくれた。

 

「私たちは、ヘイロンさんをジュラミスクに売ってしまったんです。私たち市民が助かるために。ヘイロンさんは、この都市で紛争が起こった際、必死になって救助活動をしてくれました。私の子供もヘイロンさんに命を助けられました。しかし、ジュラミスクのリーダーと思われる人物が要求してきたのです。「近頃このジュラミスクを調べ回っているヘイロンというやつの身柄を差し出せ。そうすればこの都市は見逃してやる」と」

 

 父親は少し視線を落として、それからまたジルフに戻して言葉を続けた。

 

「反対する者もいました。私たちもそうでした。しかし、多くの人たちがヘイロンさんを差し出せば助かるという甘い言葉に乗ってしまったんです。そして、ジュラミスクの提案した作戦通りにヘイロンさんをはめてしまった」

 

「その作戦とは?」

 

 ジルフが真っ直ぐなまなざしを父親に向けて聞いた。

 

「ある一帯が襲われているふりをして、誘い込む作戦でした。行かなければ殺されるということまで市民達に言われ、ヘイロンさんは罠かもしれないとわかっていても行かざるを得なかったのです。そこには、多数のジュラミスクが待ち構えていました。ヘイロンさんはそれでも戦い、善戦していたようでした。しかし、リーダーと思われる人物が放った何か、何か見たこともないものでした。まるで龍のような黄色い光が人々を襲い、ヘイロンさんは……人々をかばって命を落としました。裏切ったはずの人々をかばって死んでいったんです」

 

 父親はそれだけ言うと、申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「そうだったのか。お父さん、頭を上げてください。真相が聞けてよかった。ヘイロンはきっとここの市民のことなんてちっとも恨んじゃいませんよ。そういう男なんです。だから、最後も人々をかばったんですよ。して、その後は?」

 

「やつらは、ヘイロンさんを始末した後、もうここも用済みだと言って一気に攻め込んできたのです。わたしたちも騙されていたんです。そして、今の惨状を見ればわかるでしょう。私たちはヘイロンさんに顔向けができません。だから、多くの人が何も言えないのです」

 

「わかりました。娘さんを大事にしてやってください。そうすれば、その子を救ったヘイロンもきっと喜ぶでしょう。話すのも勇気がいるところを、本当にありがとうございました」

 

 ジルフたちは頭を深々と下げて、家族の下を去っていった。

 

 ゆかりは死の真相を知って、ヘイロンのことを心から誇らしく思った。ヘイロンさんは、最後の最後まで心優しく、強い戦士であり続けたんだ。でも――

 

 ゆかりはやっぱりさみしかった。これで、ヘイロンさんが遠くに行ってしまったことが決まってしまったようだった。本当にいなくなってしまったんだ……

 

 メリスはそんなゆかりの頭をなでながら言った。

 

「本当に立派だった。ゆかりも見習わなくちゃね。でも、無念だったでしょうに……」

 

 メリスには沸々と怒りが湧いてきていた。

 

「ジュラミスク。市民の心の弱さを利用し、ヘイロンの優しさを逆手にとるなんて!」

 

 ゆうやは、ヘイロンというバルに尊敬すべきものを感じていた。そして、卑劣な手を使い、約束まで破ったジュラミスクに怒りが燃え上がっていた。だがそれよりも、悲しそうな表情をするゆかりの姿を見ていて、こちらまでひどく悲しいと感じてしまう自分がいた。

 

 ジルフが感慨深そうに、だが力強い声で言った。

 

「全く、何も言わずに逝きやがって。でも、あいつらしい最期でまだよかった。ヘイロン、あとは俺たちに任せてゆっくり休んでてくれ。お前の代わりにやつらをきっちり懲らしめてきてやるさ」

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