セバル   作:レストB

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第1部 3章 第6話「ヒルメス第2都市の戦い」

 ジルフたちは、ジュラミスクが攻めてくるまでの間に軍隊と接触を図り、第2都市に手練れの兵隊、とくに気が使える者を配置するように頼んだ。そして、ジルフは、兵隊に銃ではなく、ランチャーを装備させるように指示し、戦い方や気の使い手に関するレクチャーを始めた。

 

 大方次のような内容である。

 

 それなりに強くなった赤気使いにはただの銃による攻撃は効かない。そこで、威力の高い武器で攻撃し、敵が気を集中させて防御しているときに、防御の薄いところを狙い撃ちすることでダメージを与えられるだろう。

 

 一般人<武器持ち 

 

 くらいの差だったとすると、気の使い手との差はこうなる。

 

 武器持ち<<赤気使い

 

 赤気使いは、武器に気を送ることができないから、基本的に無手だ。武器が自身の攻撃の威力に耐えきれずにぶっ壊れてしまうか、あるいは銃などでも自分の力を乗せられないからな。だが、それは裏を返せばそれだけ赤気使いの能力が高いということでもある。

 

 そして、赤気使いと黄気使いにも格段の差がある。この段階で、武器を持とうが持たまいがさして強さとの相関関係はないから、決して無手だからといって挑もうとしないことだ。様々な技を使い、一般人の目にもとまらぬ速さで動くことが可能。非常に強力な兵器以外ではまず一般人が束になってもかなう相手じゃない。黄色いオーラを放っているやつを見かけたら絶対に逃げろ。

 

 赤気使い<<黄気使い

 

 基本的に赤気を極めれば数百人力、黄気を極めれば数千人~の力を持つと言われるが、これがバルを含め、気の使い手が人間兵器と呼ばれる所以だな。

 

 

 このジルフのレクチャーはすみずみまで伝えられ、兵隊たちは気の使い手に対する基本的な知識を身に付けた。さらに、ジルフの指示で軍隊の配置と準備はジュラミスクにバレないよう秘密裏に行われた。こうして、敵を迎え撃つ準備は整った。第1都市へも警戒しておくように通知しておいた。

 

 ヒルメス軍の赤気使い17名、一般兵士約1万2千人、そしてジルフたち4人。この勢力でジュラミスクを殲滅作戦が開始した。ここで決着をつける。

 

 各々気を張りながら襲撃を待つ。ゆうやたちはこの間も修行を欠かさなかった。そして1週間後、ついにジュラミスクが動き始めた。町の内部のあちこちで襲撃が始まったのである。

 

 市はすみやかに避難勧告を発令。市民は次々と逃げ出していった。ここで軍隊はわざと奇襲を食らったように遅れて出動した。ジュラミスクに違和感を持たれないようにし、早期撤退をさせず引きつけておくための作戦である。

 

 ゼノスはガナパルトとコレンナを率いてこの都市にある巨大な兵器工場群に向かっていた。

 

「順調だな。そのまま皆殺し、殲滅してしまえ! さあて、ここをぶっ壊してしまえば、いよいよこの国も終わりが近いな。ふっはっはっはっはっは」

 

「我々の野望も達成の時が近いということですね」

 

 コレンナが髪をかき上げながら言った。

 

「さて、こんなところ、さっさとぶっ飛ばすとしよう。邪龍――」

 

「おい、待てよ」

 

 その声は。ゼノスたちが驚いて振り返る。そこには、ジルフとメリスが待ち構えていた。

 

「またお前たちか。どうしてオレたちがここにいるとわかったんだ?」

 

 ゼノスは不敵な笑みを浮かべながらも、内心動揺していた。ばかな。こんなにすぐにこいつらが来られるわけがない。

 

「親友の知恵さ。俺たちがここにいる理由は分かるよな? もう終わりだ。お前たちの野望、ここで終わりにしてやる」

 

 ジルフはそう言うとメリスに目配せした。メリスは軍に連絡をかけ、作戦開始と一言だけ告げた。

 

「親友? ふっ、そうか、ヘイロンめ。どこかに情報を隠していやがったな!」

 

 ゼノスは怒りをむき出しにした。その表情は激変し、鬼気迫るものがあった。

 

 そこに、兵隊の1人からガナパルトに電話で連絡が入った。

 

「た、大変です! 仲間たちが、次々とやられています! なにやら同じ赤気使いたちと、ランチャーで包囲されてしま、うわーっ!」

 

 電話がつながらなくなった。

 

「……リーダー、まずいぞ。俺たちははめられたんだ」

 

「くっ。おい、ガナパルト、コレンナ、その2人を抑えておけ。このオレが直接出向く」

 

 ゼノスは工場の天井を突き破り、第2都市上空へと向かっていった。

 

「メリス、そいつらをやっておいてくれ。俺は今度こそやつを止める」

 

 行こうとするジルフを追いかけ、攻撃しようとするガナパルトとコレンナ。しかし、メリスの気功波がそれを阻んだ。

 

「あんたたちの相手はこの私よ。2人まとめてこらしめてやるわ。覚悟しなさい!」

 

 

 一方、市街地では、ゆうやとゆかりが互いに連携を取りながら、敵の赤気使いたちをやっつけていた。

 

 ゆうやは敵の拳をひらりとかわし、腹にパンチを2発連続で叩きこむ。敵は壁際まで吹っ飛んで気絶した。

 

 ゆかりは2人同時に襲ってきたところ、その蹴りをさっとかわし、1人に足払いをかけた。倒れこんだ敵の腹に手を当て、一気に気を放つ。

 

「はあっ」

 

 体を揺るがす衝撃とともに、敵は血を吐いて目を白くした。これは、ゆかりがメリスから教わった技の1つだ。赤気でも相手の体に触れるほどのごく近距離であれば、気の衝撃を放つことができる。

 

 しかし、その攻撃のスキをついてもう1人の敵が手刀でゆかりの首を狙ってきた。ゆかりは避けることができない。

 

「そおりゃ!」

 

 そこをゆうやが敵の手を蹴りで弾き飛ばした。敵は肩が外れ、うめき声を上げてうずくまった。

 

「ふう、助かった。ありがとね」

 

「まだまだいるけど、今までの修行に比べたら屁でもない。犠牲者が1人でも減るように頑張ろう!」

 

「うん。よし、次いこう!」

 

 ゆうやとゆかりは次の赤気使いのいる場所へと向かって行った。

 

 その様子を見ていたヒルメス軍の兵士たちが驚きの声を上げる。

 

「あ、あいつら、あんな子供なのにどうしてあんなに強いんだ?」

 

「一流のバルの弟子なんだってよ。それにしても頼もしい子たちだ。成長したらどうなるんだろうな」

 

「僕は恐ろしいような気もするよ。本当に人間兵器そのものだ」

 

 兵士たちはランチャーの砲撃を放った。銃撃よりも数段威力が上のこの攻撃に、ジュラミスクの赤気使いたちは気を前面に集中し、なんとか持ちこたえる。そこでガラ空きになった背中に再びランチャーの砲撃を放つ。気で覆われていないため攻撃はよく通り、敵は確実に弱っていった。それでも赤気使いはその速度と強靭な肉体を生かしてヒルメス軍の兵士の命を次々と刈っていく。

 

 しかし、この攻撃は着実に成果を上げていた。1人、また1人と敵は倒れ、作戦開始から20分で残っている敵の数は半減。ヒルメス軍の犠牲はまだ700人ほどに留まっていた。

 

 中には退却する敵も現れ始めたが、ヒルメス軍の赤気使いたちによってそれは阻止された。ジュラミスクの動きは乱れ始めていた。このままいけば殲滅に成功できるかもしれないという状況だった。

 

 

 

 ゼノスはこの都市の上空で下の部下たちの惨状を睨みつけた。ちっ。このオレの野望が台無しだ。そして前に立ちはだかるジルフを見た。ジルフがゼノスに言った。

 

「今度はこの都市をぶっ壊すようなことは簡単にはさせないぞ。1対1だ。男なら堂々とケリをつけやがれ」

 

「ふっ。そんなプライド、持ち合わせちゃいないなあ。勝てばいいのさ、勝てば。しかし、お前、この俺の邪龍を受けて生きていたとは驚きだよ。運がよかったのかな?」

 

「あんな技で死んだら俺の名がすたるぜ。俺はバルのジルフ。お前の野望を打ち砕きにきた。今度こそ終わりだ」

 

 セノスは高笑いをし始めた。

 

「そうか。ふっはっはっはっははは! ――オレはなあ、腹が立ってきたよ。ここまでコケにされたのは初めてだ。ふはははは!」

 

 ゼノスの笑い声が、空に高々と響く。そして、ゼノスは急に高笑いを止めた。その顔にはまさに悪魔のような狡猾さと、鬼のような怒りが同居していた。彼の全身から猛々しい気が噴き出す。

 

「もうめんどくさいのはやめだ! このオレの力、思い知らせてくれる! ヘイロンとともに仲良く死ね!」

 

 

 そのころ、工場では、メリス対ガナパルト&コレンナ戦が幕を開けていた――

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