セバル   作:レストB

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第1部 3章 第8話「上空の戦い ゼノスの野望潰えるとき」

 メリスが2人と戦っているころ、ジルフとゼノスは第2都市上空で戦い始めていた。

 

 ジルフの剣とゼノスの拳がぶつかり、大きな衝撃が上空に走る。ジルフとゼノスの剣と拳によるラッシュの応戦はしばらく続いた。そして、ジルフの最後の一撃がゼノスの肩を捉える。

 

「ぐ、ぐうっ」

 

 ゼノスは肩を抑えると上昇し、ジルフに向かって言った。

 

「ハア……これでも食らえ!」

 

 ゼノスは両手から次々と気功波を降らせた。1つ1つは大きなボールくらいの大きさだったが、その数は非常に多い。しかし、ジルフは冷静にその全てを剣で弾きとばした。

 

「な、なんだと!?」

 

 ゼノスはありえないという表情でジルフを見つめていた。

 

「今度はこっちの番だ」

 

 ジルフが高速で縦横無尽に剣を振るうと、次々と気の刃が飛び出した。1つ1つが正確にゼノスを追っていく。

 

「ちいっ!」

 

 ゼノスは全力でかわそうとするが、2つ、3つよけきれずに食らってしまった。ジルフはゼノスに迫り、剣を振り下ろす。ゼノスはそれを気で固めた左腕で受け止めるが、その剣圧に押されてしまった。そのため、次の腹部を狙った二撃目の横斬りを防ぐことができず、辛うじて身を引いたもののもらってしまった。ゼノスの腹が赤く滲んでいる。

 

 こ、こんなはずは――! このオレが押されているだと。一体どういうことだ!? ゼノスは目の前の男を見つめた。ジルフ、ジルフ――まさか、あのジルフか?

 

「お、お前、まさか、レイバス戦争の!」

 

「そうだと言ったらどうなんだ?」

 

 ジルフはゼノスを見据えながら言った。ゼノスは動揺していた。なんてやつを相手にしてしまったのだ。まさかあのヘイロンとかいうバルの親友だったとは。

 

「ふっはっはっは。まさかこのオレが直接英雄を相手にすることになるとは思わなかったぞ!」

 

「笑っていられるのも今のうちだ。行くぞ!」

 

 ジルフが猛攻撃を開始した。ゼノスはその威勢とは裏腹に苦戦していた。少しずつではあるが確実に斬られ、ダメージの差が開いている。このままでは負けてしまう。しかし、彼は冷静に勝つための手段を考えていた。

 

 ジルフの剣をかわすとき、ゼノスは下の街並みを見た。そこで、ふとどこかで見たような子供が戦っていることに気がつく。

 

 そういえば、あのときジルフにくっついていたガキが2人いたなあ。ふっはっはっはっは。これを利用しない手はない。ゼノスは残酷な笑みを浮かべた。

 

今の位置はこのオレが下。やつが上。いける。ゼノスは両手にそれぞれ気を溜めた。

 

「この一撃でくたばるがいい! はああ!」

 

 両手からそれぞれ巨大な気功波がジルフに向かって放たれた。ジルフは剣を構え、迎え撃とうとする。

 

「センクレ――なに!?」

 

 ジルフが攻撃しようと動いた瞬間、突如2本の気功波は向きを変え、下の都市の方へと向かっていた。完全に虚を突かれた。しかもその気功波が向かう先には――

 

「て、てめえ! ゆうやとゆかりを!」

 

 ジルフは脇目もふらず急降下していった。

 

 市街地戦、赤気使いとの戦いも終盤にさしかかり、ゆうやとゆかりはまた1人の赤気使いと戦っていた。

 

「たあっ」

 

 2人の蹴りが仲良く敵の顔面を捉え、赤気使いの巨漢1人が倒れた。2人はピースし合った。

 

 上ではジルフさんが戦っているみたいだ。きっと大丈夫だよね。ゆうやはそう信じながらゆかりと次の戦いに向かおうとしていた。そのときだった。ぞわっと、急に寒気がした。ものすごいスピードで何かがこちらに迫っている。振り返ると、巨大な気功波が2本、こちらを目掛けて飛んできていた。避けるには速すぎる。

 

「ゆかり!」

 

 ゆうやはゆかりをとっさに突き飛ばした。目前に絶望的に大きな光線が迫る。ゆうやは一瞬死を覚悟して目を閉じた。

 

 直後、凄まじい爆音とともに衝撃が都市を揺るがした。ゆうやが目を開けると、そこには――気功波の直撃を受けてぼろぼろになったジルフがいた。

 

 目の前で壁になって防いでくれたジルフさんが、本当に大きく見えた。俺は、またジルフさんに命を助けてもらったんだ。

 

「ゆうや。無事でよかった。一瞬間に合わないかと思ったぜ」

 

「ジ、ジルフさん! 俺のためにこんなになって――」

 

「いいか。男の背中は、大切な何かを守るためにある」

 

 がくりと膝をついたジルフ。それはひどい状態になっていた。背中がこの前のように焼けただれ、とてもまともに戦える状態ではなさそうだった。自分をかばったばっかりにこんなことに――

 

 そんなジルフの様子を楽しそうに眺めるゼノス。

 

「ふっはっはっはっは。勝つ者は勝つべくして勝つのだよ。その甘さと犠牲心が命取りなのだ。ガキが死んでもそれはそれで面白かったがなあ。ふっはっはっはははは」

 

「減らず口もそこまでにしろ!」

 

 ゼノスはその声が聞こえた方を見た。メリスだった。

 

「ん、お前は、ジルフにくっついていた女か。ガナパルトとコレンナはどうした?」

 

「あの2人なら工場でくたばっている」

 

「そうか。案外役に立たなかったなあ、あいつらも」

 

「言うことはそれだけなの?」

 

 メリスは怒りで自分がどうにかなりそうだった。この男、よりによってゆうやとゆかりを狙った。私がかばいに行きたかったけど、私の位置からじゃ間に合わなかった。そして、仲間に対してもこの言いようはなんだ。

 

「お前には確か予告していたよなあ。今度の邪龍の餌食はお前だよ」

 

 ゼノスは気力を溜める。右腕がスパークする。

 

「ふっはっは。死ね! “邪龍”セイントブラスター」

 

「こっちが本家よ! セイントブラスター!」

 

 メリスは両手を前に構え、一気に巨大な気功波を放出した。龍と巨大な光線がぶつかった。光線が龍を飲み込み、ゼノスに向かって流れていった。

 

「なに!? う、うわあああああ!」

 

 光線が宙のかなたへ消えていく。そのあとには服がぼろぼろになり、髪が乱れ切ったゼノスがいた。相当のダメージを受けているようだ。

 

「バカな! こ、こんな女に! こ、このオレの、このオレの邪龍があっー!」

 

 ゼノスは怒り狂い逆上した。自分のプライドが完全に打ち崩されてしまった瞬間だった。

 

「ち、ちくちょう! こうなれば、最大の技で全て吹き飛ばしてくれる!」

 

 ゼノスは両手を構えた。両腕がスパークしている。とてつもない気だ。メリスも先の戦いと今の攻撃でそれを止めるほどの気は残っていないようだった。

 

 ジルフがそれを見てゆうやに言った。

 

「おい、少し手を貸してくれ。体は傷ついたが、気力はまだ残っている。次の一撃で決める」

 

「で、でも、その体で!」

 

「大丈夫だ。それに、俺がやらなかったら誰がやるんだ?」

 

 ゆかりが言った。

 

「わたしも手を貸すよ。ゆうや、さっきはありがとう。ジルフさん、あいつを、あいつを倒して!」

 

「わ、わかった! 頑張って」

 

「よし、俺をやつの元へ全力で投げろ」

 

 ゆうやとゆかりはジルフの背中に触れないよう慎重に起して、抱え上げ、全力で投げ上げた。

 

「せーの、それ!」

 

 ジルフは相当な勢いで飛び上がっていった。

 

「ゼノス! 覚悟しろーっ!」

 

「無駄なあがきを。消し飛べ! “双頭の邪龍”セイントブラスター!」

 

 ゼノスの両手から都市に向かって黄色い龍が飛び出した。頭が2つ。両腕から全ての気力を絞り出して放った強大な龍が、目下の都市へと迫る。

 

 ジルフはぐんぐん上昇して行った。この速度に、俺の気力でさらに加速をつける!

 

 ジルフは剣を突き付け、龍に向かってまっすぐに飛んでいく。

 

「うおおおおおおおおおお!」

 

 ジルフと龍が激突した。そして、人々は見た。巨大な龍の気が、1人の男の剣によってきれいに裂けていくところを。

 

「ジ、ジルフ! なぜ、なぜぼろぼろのはずの貴様にそこまでの力が――最強の攻撃が――」

 

 そしてついにジルフの剣がゼノスの胴体を正確にとらえた。

 

「が、がふっ」

 

 ゼノスは血をまき散らしながら都市へと落ちていった。剣を下ろすジルフ。ふう、なんとか勝ったな。

 

「ジルフ、ナイス!」

 

「お、おう」

 

 満身創痍のメリスとジルフはハイタッチし、肩を寄せ合ってふらつくようにして大地へと降り立った。

 

 リーダーが倒れたジュラミスクは戦意喪失し、ここに壊滅。第2都市の戦いは死者1000人ほどを出したが、無事に決着をみた。そしてヒルメスにひとときの安穏が訪れる。

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