世界は救いません。お姉さんと旅します   作:みるし

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第1話

「目が覚めたみたいでよかった」

 

最悪と言っていほどの血生臭い匂いと、べっとりまとわりつくような湿気。

無雑作に伸びた草に身体を沈めていた私は、ゆっくりと目を開く。

真っ青な空と、まだらに赤い地面。

これが芸術作品とか、アート作品ならば素敵なコントラストだとでも思えたのだろうが。

 

「ひっ……これはなに!?」

 

思わず大きな声で叫んでしまう。

体を起こして目に映ったのは、血を流して倒れこむ人の亡骸と、赤く濡れた金貨を握りしめる女性。

 

「なにって、あなた襲われてたから助けたんだけど」

 

「襲われ……えっ」

 

一番新しい記憶は……確か屋上から突き飛ばされたんだった。

それで、地面が迫ってきて、意識が飛ぶほどの鈍痛を一瞬だけ感じて、それで。

いや、それが最後の記憶だな。

よく見ると、女性は外套やら軽鎧やらを身に着け、両腰に鞘を引っ提げている。

その現状を受け止めきれないでいた私だったが、不思議と冷静さを保っていた。

なんだろう、第三者の視点からゆっくり見下ろすような。

そして感情やら情報やら余計なものを一切感じないのだ。

私の周りには五人程度の軽装の野党が倒れていて、それらから私を助けたであろう女性がいる。

美しい銀のショートカットで、背も高く細身。

私はというと大学に向かった時の服装そのままで、手ぶら。

まるで全く違う世界に迷い込んだみたいな違和感すらある。

 

「おーい、大丈夫?」

 

女性の声で、私から除かれていた余計なものが一気に戻って、今この瞬間が現実味を帯びる。

恐怖やらなんやらよりも先に、目の前の女性に助けられたという事実と、ここはどこだという疑問が浮いてくる。

 

「あ、はい大丈夫です……私、襲われてたんですか?」

 

「襲われてたんですかって、助けてって叫んでたけど」

 

「あ、そうなんですね」

 

「怖くて記憶が飛んじゃったのかな、でも戦いの経験がないのに街からは離れすぎているというか……それにその恰好。よその国の人?」

 

「あ、えっとそう……なのかな?」

 

「まさかガチの記憶喪失?」

 

「みたいです……えへへ」

 

「あっはは、えへへって」

 

大きく口を開けて笑う姿は、その端麗で落ち着いた姿とのギャップがあった。

悪い人ではなさそうで一安心した。

 

「お姉さん、ここはどこですか?」

 

「んーと、ここまっすぐ行くと王都パルミアだけど」

 

「そうなんですね、ありがとうございます」

 

「ちょっとまった」

 

「はい?」

 

「武器も食糧も持たずにパルミア目指すのは死ぬようなもんだよ?」

 

「でも……」

 

困っている私を見かねてか、それとも最初からそれ目的か。

彼女は私にこう提案する。

 

「ならついておいでよ、一人旅にも飽きちゃってさ」

 

「でも私戦えないしお金もないし」

 

「こんな可愛い女の子と居れるなら大歓迎さ」

 

「じゃあ、お言葉に甘えて……」

 

「私の家、近いからとりあえずそこでその服どうにかしたほうがいいかもね。ある程度丈夫でこの国らしい服にしないと。最近は観光客を狙った野党が多いから」

 

「ごめんなさい、なにからなにまで」

 

「ま、これもなにかの縁だから……とその前に」

 

女性はおもむろに野党の遺体を漁り始める。

 

「なにしてるんですか!?」

 

「なにって、遺品漁ってるけど」

 

「な、なんで……?」

 

「この世界じゃ、常に生きるか死ぬかだし、金目のものとか漁っとかないと」

 

この世界じゃ、か。

どうやらここは本当に私のいた世界とは違う場所のようで。

これから、どうなっちゃうのかなぁ。

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