戦姫絶唱シンフォギアAG・歌とメダルと13のコンボ   作:バルバトスルプスレクス

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絶唱しないシンフォギアえにしんぐごーず

 

 『焼肉行こうよ』

 

「やきにーっく、やきにーっく!たべゴベバァッ!!」

 

「耳元で騒ぐな歌うなっつのバカ!」

 

「んもう、二人とも騒ぎすぎだって」

 

 市街地を走行する車内で軽いドツキ漫才が繰り広げられている中、助手席に座る未来はシート越しに響とクリスを窘めていた。

 事の発端は、ルナ・アタック事変の後にあった。

 事態の収束及び後始末やら何やらで、3週間近くの行動制限生活を強いられた映司と三人の装者たち。その中でも特に立花響と言う少女は幼馴染の親友に会えない辛さに悶えつつも、制限解除されるその日まで出された食事に味気無さを感じていた。栄養価は決して低くはない。低くはないのだが、味気ない病院食ほどではないものの、それでも質素すぎる食事に満足出来なくなってしまった。

 そしてつい先日行動制限が解除されるや否や、質素な食事で抑え付けられていた食欲を大解放すべく、制限解除のお祝いも兼ねて外食しようと響が企画を提案した。

 そこで何を食べに行くかを未来を交えて五人で相談することに。

 クリスはつい先日までフィーネの傀儡として、と言うかそれ以前に満足に食事を楽しむ余裕がなかったため、腹を満たすなら何でもよいとのこと。

 翼は己を律し日頃から食事制限をしている為、この際外食は寺等で質素な精進料理はどうだと些かズレた提案。

 しかしそこで、仲間外れは如何なものかと響が巻き込んだ未来は折角だからと焼肉を提案し、最終的には何故か決定権を有していた響が「じゃあ焼肉にけってーい!」と宣言したためにこうなった。

 提案すら出させてもらえていない映司が道中の運転を担当。当人は屋台のラーメンを希望していたのだが、大人しく引き下がることにした。

 目的地はファミリー向けの大変リーズナブルな価格で提供される個室のある焼肉店。休日になれば何組もの家族連れが席を埋める事だろう。

 今日は平日でもあるのだが、リディアンの再開及びクリスの編入まで休校なので響たちにとってある意味都合がよかった。

 目的の店舗に到着し、駐車場に車を停め店内に入ると平日だからか子供の声はせず、既に他の客が使用しているであろう個室は戸が閉まっており、肉の焼ける音と談笑の声とが入店と同時に映司たちの耳に入ってきた。

 因みに、有名人でもある翼だが、サングラスをかけてサイドポニーの髪形をハーフアップにして最大限『風鳴翼』である事を分からせないようにしている。よほどコアすぎるファンでない限り正体がバレる事は無いだろう。

 そして奏だが、未だに目を覆う包帯が取れる状態ではなく、リハビリの途中でもあったのでお留守番となっていた。

 

「先に飲み物だけれど、映司さんはウーロン茶にしますか?」

 

「そうだね。運転もあるし」

 

「あ、じゃあ映司さん私達はコーラで!」

 

「勝手に決めるなバカ。まぁ別にいいけど、メインはどうするんだ?あたしはあんまこういう所来た事無いんだぞ?そもそもどんな肉が置いてあるのかも知らないんだ」

 

「だったら取り合えず盛り合わせのセットを三つで、後は皆自由にって感じかな。俺はそうだなぁ……チキンバジルにエビマヨもいいなぁ」

 

「うーん、ねぇねぇ未来ー。大盛ご飯は当然としてビビンバはどっちにする?鮭の親子とー、キムチ」

 

「それ頼むなら大盛ライスはやめよっか」

 

「えー!それは無いよ未来ぅー!」

 

「待て立花。ビビンバとは確かご飯ものではなかったか?ご飯ものをおかずにライスを食べると言うのか?!」

 

「じゃ、もうそろそろオーダーするね」

 

 頃合いを見て店員呼び出しのブザーを押す。程なくして現れた店員に響がマシンガントークばりに注文していく中、こっそり財布の中身を確認し小刻みに震える映司。ファミリー向けで且つリーズナブルな価格とはいえ、この焼き肉店は食べ放題の店ではない。翼に最大限負担を掛けない様に配慮した結果、食べ放題のコースが無いこの店になったのだ。

 しきりに財布の中身を気にする映司の肩に翼は優しく手を置いた。

 

 

 『レリックメダル』

 

 エクスドライブモードのシンフォギアから流れ出たフォニックゲインがタジャドルコンボのタジャスピナー内に新たなメダルを生み出し、それが紫のメダルとの組み合わせによって、フィーネと櫻井了子を引き剥がす事が出来た。

 この日、二課仮設本部内のシミュレーションルームではオーズドライバーを装着した映司を中心に、響達装者三人と弦十郎をはじめとした二課のスタッフ数名が取り囲むように配置しており、その内の半数以上のスタッフが計器に目を走らせていた。

 

「変身!」

 

ガングニールアメノハバキリイチイバル

 

 レリックメダルと称されることとなった三枚のメダルで変身したオーズの姿は、頭部はオレンジの複眼で響のガングニールのヘッドギアのような突起が、腕部には翼の天羽々斬の意匠を持ち、脚部にはクリスのイチイバルのスカートアーマーが装備されていた。胸部のオーラングサークルには上からガングニール・アメノハバキリ・イチイバルのマークが描かれている。

 タトバコンボの様に歌が流れることは無かったが、レリックコンボと名付けられたオーズから流れてきたのは響の胸の歌の伴奏だった。シンフォギアは元来、装着者の意思や心象に応じて流れる旋律に装者が歌唱することでその真価を発揮する。しかし今のオーズには旋律が流れるどころか歌詞すらも浮かんでこないと言う。

 続いては仮想敵として複数体のホログラムのノイズを投影する。

 手刀を振るえば翼の得意技『蒼ノ一閃』に似た斬撃波が飛び、囲まれればスカートアーマーから『MEGA DEATH PARTY』の如き弾頭の雨霰。更にスキャニングチャージ技を行えば、頭部からヘッドギア状の部位からは響のそれに近しいフォニックゲインが発生。両手足に纏わり付くと、黄金色のオーラを発して威力が底上げされた斬撃波とミサイル群が打ち出された。

 続けて既存のコアメダルとの組み合わせが出来るかを試すも、スキャナーがメダルを読み込まない結果に終わる。

 そもそも、コアメダルは動物のレリーフが刻まれた面が表で、頭部用・胸部用・脚部用それぞれには一本線・二本線・三本線が刻まれている。だがしかし、レリックメダルに至ってはそれぞれのアウフヴァッヘン波形が刻まれているのだ。

 

「ふむ、そう言えばドライバーの上部の並んだ突起にも印があったな」

 

 弦十郎がふと思い出したその一言の通り、オーズドライバーの装着者側から見て上側に右から一本線・二本線・三本線の刻印が施されていた。

 今までは最初に見たイメージに基づいてのメダル交換だった為か、正に灯台もと暗し。以前了子に預けていた時は見落としていたのかそれとも然したる物でも無かったからなのか。

 兎に角モノは試しにと、三枚とも順番を入れ換えて再変身する。

 

イチイバルガングニールアメノハバキリ

 

 頭部にはクリスのヘッドギアに似通った装飾で赤い複眼、腕部にはガングニールのギアに共通しているハンマーパーツ、脚部には特徴的なブレードが両足の踵の外側が備えられていた。

 両腕を合わせると奏が纏っていたガングニールのアームドギアが生成され、元に戻せば目一杯引けて響と同じように可動する。

 脚を振り上げれば『逆羅刹』の如く刃が展開。更には大腿部の装甲から刀剣形のアームドギアが射出されてオーズの掌に収まった。これで槍と刀のコンビネーションが出来そうではあるが、用途が異なる得物を両手に携えた所でオーズには剣術の心得も槍術の心得もないので、当面の間は状況に応じて刀か槍かを使い分けるしかない。

 スキャニングチャージ技はクリスのと近しい擬似的なフォニックゲインが頭部のヘッドギアから両手足に流れて、ホログラムのノイズを一体一体的確に駆逐していった。ガングニールヘッドが攻撃力の上昇であるならば、このイチイバルヘッドは命中精度の上昇であることが分かる。

 

アメノハバキリイチイバルガングニール

 

 最後に変身したその形態は、青い複眼に翼の纏うギアのヘッドギアパーツが施され、腕部には用途に合わせて変化するクリスのアームドギアと酷似した手甲。脚部にはアンカージャッキが両足に一対。

 ホログラムのノイズが投影された瞬間に手甲が拳銃型のアームドギアに変形。クリス程ではないにしろ、両手に握られた得物で狙い撃つ。撃ち続ければ自然と連結してライフルに変形させる事も出来るようになった。脚部のアンカージャッキを駆使すれば、ウサギの様に跳び跳ねながら鉛玉の雨霰をばら蒔いた。バッタレッグみたいだなとオーズはふと漏らした。

 スキャニングチャージ技は脚部アンカージャッキを用いてムーンサルトの体勢からの早打ち。アメノハバキリヘッドには攻撃速度の上昇が認められた。

 組み合わせ次第では六通りの形態を持つレリックメダルを用いた特殊なコンボ。言うなればレリックコンボと名打たれたこの新たな力。

 そして、この力が後に起きる最大級の事変において最も重要な要素になる事をこの時はまだ誰も知る由は無かった。

 

 

 『暗躍』

 

 アメリカ某所の最近まで稼働していたであろう今や廃墟となったこの施設の一画で、左の肩に人形を乗せメタルフレームの眼鏡をかけた男が窓の外の稲光を見せる黒雲を眺めていた。

 不規則に轟く雷鳴など気に止める様子も見せず、人形に一度視線を交わすと背後に控えていた白髪の眼鏡の男にも視線を向けた。

 

「フィーネが消滅したのですね?」

 

 抑揚のない機械的なその声音に、白髪眼鏡の男はコクリと頷いて詳細を報告する。

 ネフシュタンの鎧、ソロモンの杖、そしてデュランダルの三種を用いてバケモノと化したフィーネ。限定解除された三人のシンフォギア装者達と現代に蘇ったオーズを相手取るものの、紫のメダルと新たに生まれた三枚のメダルによる攻撃で櫻井了子の肉体からフィーネの精神が解き放たれて消滅した。

 報告を受けて男・真木原(まきはら)清彦(きよひこ)は特に反応も見せず、窓の外へと視線を戻した。予定通りと言わんばかりの清彦の態度に、白髪眼鏡の男は慣れているのかやれやれと小さく呟く。

 彼らの間に置かれた無機質なテーブルの上は多くの資料で埋め尽くされているのだが、それらよりも強く目を引かれるのは(マル)(ノコ)のような形状をしたバックルのベルトと、オーズが所有しているのとは違う幾つものコアメダル。

 清彦はその中でベルトと三枚のメダルを迷わず手に取って白髪眼鏡の男に向き直る。

 

「計画を進めましょう。全てが醜く完成する前に、美しいままでの終末を」

 

 一際強い稲光によって写す出された清彦の影が、ゲーテの戯曲「ファウスト」に登場する悪魔・メフィストフェレスの様に、銀髪眼鏡の男、ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクスには見えていた。

 

 

 

次回 G編に続く

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