戦姫絶唱シンフォギアAG・歌とメダルと13のコンボ 作:バルバトスルプスレクス
一つ、響の命を蝕む現象を知り、クリスと未来は途方もない無力感に打ちひしがれてしまう
二つ、昏睡状態からセレナが目覚め、映司達に日本を発ってからの出来事が語られる
そして三つ、スカイタワーから落下する響を助けたオーズ。しかし、未来が残った階層では突如大規模の爆発が起きてしまった
Count the Combo 現在オーズが変身したコンボは
タトバ
ガタキリバ
ラトラーター
サゴーゾ
シャウタ
???
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プトティラ
タジャドル
翼、クリスが遅れて合流し、ノイズの完全掃討が完了したのち、映司は爆発が収まり火の手が無くなった展望デッキで生存者の捜索活動を行っていた。彼以外にも複数の二課職員も作業にあたっている。
その中で彼らが見付けたのはノイズによって出た犠牲者らしき炭の山。それだけでなく銃殺された死体に、その下手人であると思われる意識を失っている武装集団。
その武装集団の装備は以前フィーネの屋敷で転がっていた死体のそれと似通っていた為、ある予感が映司の脳裏をよぎった。
「弦十郎さん、映司です。生存者を見付けたんですが、恐らく米国の特殊部隊かと思われる気を失っている集団を発見しました。目が覚める前に拘束して武装解除しておきます」
『分かった。済み次第引き続き捜索に当たってくれ。まだ未来君の安否が不明だ』
「分かりました」
ぎこちなさの残る手順で手足を拘束し、他の職員たちにその身柄を任せて、映司は再び捜索活動に戻った。
その最中で映司はひどく悔いていた。
何故あの時に未来の手を取り響を助けに行かなかったのか。
何故展望デッキで爆発が起きることを予測できなかったのか。
後悔ばかりが映司の中で渦を巻き、選択を誤ってしまった自分自身を責めていた。
***
捜索の結果、小日向未来の生死は依然不明のままであり、身元を明らかにするものは何一つ残されていなかった。それとはまた別に、監視カメラの映像から黒いガングニールを纏うマリアと、米国の特殊部隊との戦闘の模様が記録されており、流れ弾が一般人にまで襲い掛かった様子もあった。
以前の倉庫群でポセイドンに殺されたであろう米国の特殊部隊と今回の事を鑑みて、一度は敵対したものの何らかの理由で和解の場を設けたが、何らかの理由で再び敵対。そう弦十郎は結論付けた。
弦十郎達から少し離れた位置にある車両には項垂れる響と、元気付けようとする友里の姿があった。
「あったかいもの、どうぞ。少しは落ち着くから」
友里がコーヒーが注がれたカップを手渡すが、陽だまりを失った響には「あったかいものどうも」と返す気力は残っていない。響もまた後悔の念に苛まれている。
何故自分は未来の手を放してしまったのだろうか、と。
「私にとって一番あったかいものは……もう……」
***
鈍い音が、エアキャリアの一画で低く響き渡る。
マリアは後悔の念に苛まれていた。無力化したとはいえ、相手が銃器を武装していたとはいえ、ギアを纏った状態で槍を振るってしまったのだ。一歩間違えたら清彦と同じくこの手が血で染まっていたのかもしれない。だが、そんなリスクを背負わなければ、もっと多くの一般人が犠牲になっていた事だろう。
強化ガラスに拳を突き立て、嘆き悲しむマリア。
そんな彼女を嘲笑うかの様で、それでいて冷徹なままの目をした清彦が肩に乗せた人形と目を合わせて冷たく吐き捨てる。
「浅はか過ぎたのですよ。個人の感情を優先し、己の使命を捨てて米国政府に尻尾を振るなど……。マリアさん、貴女は幼馴染と、かつての家族と刃を向けたくないと恐れ、後戻りできないというのに迷いに囚われたまま前進する事もせずただただその場で踏みとどまるばかり。良いですか?私達の使命は月の落下からネフィリムとフロンティア、これら二つを以てして一つでも多くの生命を救うことにあるのです。それが分からない貴女ではないでしょう?」
「……マリア」
「(この外道、どこまでマリアを追い詰めれば気が済むデスか)えーじと戦いたくないのはあたしも調も同じデス!」
切歌がマリアを庇い立てるが、清彦は何のリアクションも示さないままソロモンの杖を携えてその部屋を後にした。
清彦と入れ替わる様に入室してきたウェルはどこかばつの悪そうな表情をしていたが、マリア達の様子を見て清彦がまた何かやったのかと悟る。
「ドクターウェル。貴方は今までどこにいたのです?」
脱出の際に愛用していた高機能車椅子を失ったナスターシャが、遅れてやって来たウェルの顔を見てそう言った。
ウェルは申し訳なさそうに愛想笑いを浮かべながら背面に指さしてマリアに苦言を呈す。
「すみません、ドクター清彦にちょっと。それよりもマリア、貴女はとんでもない落とし物を拾ってしまいましたねぇ…」
***
スカイタワー周辺のあぜ道で緒川が二課から未来へ贈ったはずの物らしき水没した通信機を発見したその日の夜。
二十四時間営業の大手ファミレスチェーン店のボックス席ではクリスと翼、そして映司の三人が向かい合っていた。
「何か頼めよ、奢るぞ。コイツが」
「コイツて……」
口いっぱいにナポリタンを頬張り、ケチャップまみれにした口周りを映司に紙ナプキンで拭かれながらクリスは翼に向けて言った。
「結構だ。夜の9時以降は食事を控えている。なので映司さんもお構いなく」
そう言って翼はそっぽを向いて辞退する。それは遠慮からくるものではなく、アーティストでもある彼女は自身の体型や体調を維持する為に食事制限を課しているからだ。
しかし、クリスはそんな翼の流儀を知る由もなく、黙々とナポリタンをすすり続ける。
「響ちゃんや未来ちゃんの二人が心配なんだよね?」
翼は人一倍責任感が強い方である。それは自他共に認める翼自身の生真面目過ぎるが所以の性格だ。
「ええそうです。寧ろ愉快でいられる道理がない!F.I.S.のこと、立花のこと、そして……仲間を守れない私の不甲斐なさを思えば……ッ!」
彼女の脳裏では戦う事も共にステージに立つ事も出来なくなった奏の姿がよぎる。あの時から遥かに強くなり、より多くの人を救うことが出来る程に成長したと思った。いや、思い込んでいた。
実際には、ノイズを掌握するソロモンの杖は依然清彦達の手中にあり、響はガングニールの浸食が進み、歌い続ければ命が削られ遠からず死ぬ運命にある状況。さらに未来に至っては生死不明。これでは笑顔を振りまきながら「ウマいウマい!!」と料理を食べ進めることなど出来やしない。
「ま、呼び出したのは一度一緒に飯を食ってみたかっただけさ。腹を割っていろいろ話し合うのも悪くないと思ってな」
ナポリタンを完食してドリンクバーで淹れてきたホットコーヒーが注がれたマグカップに手を伸ばして一息つく。ほのかな苦みに味覚がリセットされたところで、クリスは翼に更に語り続ける。
「なぁ、あたしらいつからこうなんだ?目的は同じはずなのにてんでばらばらになっちまってる。もっとこう連携を――」
「雪音。腹を割って話すならいい加減名前くらい呼んでもらいたいものだ」
取り合ってだな。と言いかけたところで翼が遮った。傍から見れば論点ずらしのそれだが、翼にはそんな意図は全くなかった。
以前からクリスがフィーネ以外を名前で呼ばない事が気になっていた翼の、ほんの些細な疑問。
しかし、クリスは素直になれないのか気恥ずかしいのかしどろもどろになり返答に困っていた。
「では映司さん、私はお先に失礼します」
「分かった。クリスちゃんは俺が送ってくよ」
ほんの些細な疑問が思いの外役に立った翼はクリスの引き留めようとする様子も見ずに店を後にした。
「結局、話せずじまいか……」
「でも、今はそれで良かったのかも知れないね。まだ翼ちゃんも、心の整理が出来てないんだよ多分」
映司は何となくではあるが、翼の様子に心当たりがあった。二年前の奏の件もあって翼は人一倍響の状態に過剰に反応しているのだから。
***
「つまり、あのまま講和が結ばれてしまえば私たちの優位性は失われてしまう。だからこそ、あなたはあの場にノイズを召還し会議の場を踏みにじって見せた。ですね、ドクター真木原」
「ええ、そのつもりです。その為にも払うべき犠牲は払ったつもりですが?」
悪びれる様子もなく淡々と語る清彦は、ナスターシャの聴取を受けていた。
ある程度身体に負荷がかかり、予備の車椅子を用意して清彦を呼び戻したのは一時間ほど前の事。
「
「何ヤケを起しているのですかマリア。自暴自棄にもほどがあるでしょう」
「そうだよマリア。だって、それじゃ力で弱い人たちを無理矢理押さえ込むってことなんだよ……」
「そんなの嫌デスよマリア」
「それがあなたの選んだ道なのですね、マリア・カデンツァヴナ・イヴ」
四人に咎められて多少の罪悪感と居た堪れなさがあるのか、即座に視線を逸らしてしまうマリア。
「後の事は、私にお任せください。ドクターウェルは来客の対応と引き続きナスターシャ教授の面倒をお願いしますよ」
しかし、清彦だけはまるで興味が無くなったかと言わんばかりに、いつもの様に人形と視線を合わせると、ポセイドンドライバーとソロモンの杖を手に部屋を出る。
清彦が出ていって間もなくナスターシャが体調を崩して咳き込んだ。もはやマリア達には時間が残されていないのだ。
***
ある日の仮設本部。響達三人の装者達と映司は弦十郎に呼び出されていた。
「師匠、これは……?」
弦十郎から手渡された水没していて壊れている通信機を手にした響がそう言った。
「スカイタワーから少し離れた地点より回収された未来君の通信機だ。水没するまで一定の速度で移動していた事から、未来君は爆風で吹き飛ばされたのではなく何者かに拉致された可能性がある。つまりは――!」
「師匠ッ!それってつまりッ!」
未来は死んでいないということ。
「こんなところで惚けてる場合じゃないってことだろうよッ!さて、気分転換に身体でも動かすかッ!」
吉報を知らせる弦十郎のその言葉に、響は虚勢からではない心からの明るさを取り戻し、「はい!」と返した。
それとはまた別に、映司にもある事実が伝えられる。
「了子君達がスカイタワーから回収した防犯カメラ映像を解析した結果、そこではナスターシャ教授とマリア君の二人が米国政府の人間とコンタクトを取っていたことが分かった」
メインモニターにその映像が再生される。
米軍の特殊部隊と思わしき集団からの銃撃をガングニールのマントで防ぎ、合間を縫って接近してハイキックやアームドギアの柄で特殊部隊員達を無力化していく様子が映し出されていた。
「なぜ二人がこの場にいたかは不明だが、恐らく未来君を連れ去ったのは彼女達によるものと考えている」
ここで未来の通信機の件がつながった。ギアを纏った状態であれば二人の人間を抱えながら崩落するタワーから脱出することなど訳ない。その過程で故意か偶然か未来の手から通信機が放れていったのだ。
「さて、気分転換に身体でも動かすかッ!」
吉報を受けて心からの明るさを取り戻しうずうずしている響の様子を見て力強く弦十郎が言った。
F.I.S.の装者達やポセイドンとの再戦の時に後れを取らない為にも。
始まりは夜明けと共に海岸線での走り込みだ。体育教師のような出で立ちの弦十郎がリードを取り、ジャージ姿の響達が後を追う。響や映司そして翼は慣れている様子で駆けるが、クリスはスタミナ不足からか少し遅れ気味である。
走りながら弦十郎が香港映画の主題歌を高らかに歌い出す。装者達が戦場で歌うように、弦十郎も同じように歌う。
「何でオッサンが歌ってんだよ!そもそもソレ何処の国の何の歌なんだよ!色々と大丈夫なのか?!」
そのクリスの疑問に誰も明確に答えず、ついには響が弦十郎と共に歌い出す。
そこからは弦十郎考案のアクション映画トレーニング。劇中で主人公が行った修行や修練などを取り入れたトレーニング法である。逆立ちし腹筋で身体を持ち上げ桶に水を移し、水の入った茶碗を身体に乗せて
一通りトレーニングを終えたクリスは、一息つきながら物思いに耽っていた。
「(どいつもこいつもご陽気で……あたしみたいな奴の場所にしてはここはちょいとばかし暖か過ぎんだよ……)」
***
エアキャリアの一画。半壊しているギアペンダントを片手に、沈鬱な表情をするマリアは童歌を口ずさんでいた。
物心ついた頃から唯一覚えているそれは、火山家に引き取られてからも時折ひとりで両親に会えない事に対する寂しさを紛らわす為に何度も歌った事もある。
「……どうかした?」
「いえ、その……ありがとうございました……」
マリアの視線の先、かつてはネフィリムを囲っていたケージの中に未来は閉ざされていた。
オーズが落下する響へと急降下した際、ニアミスでマリアが通路を駆ける未来の前に現れたのだ。実に神がかりな程のタイミングのずれだろうか。
火の手が回り崩れ落ちかけているタワーから救出された未来はエアキャリアついてからずっとケージの中に閉じ込められていた。
「あの…どうして私を助けてくれたのですか?」
「さあね。ただ妹を……セレナを思い出したからかもね」
二年前のあの日。マリアにとって今後の生涯に於いて一切忘れることは無い。
純白のシンフォギアを纏い、絶唱を用いてネフィリムを待機状態に戻すも直前に取り込まれたセレナの姿を。火の手が上がっていようがいまいが、状況は似たようなもの。あの時は思わず足を止めてしまいトラウマが出る程の悔やむ結果になってしまったが、それでもマリアは未来へ向けて手を伸ばした。
「セレナ……映司さんから聞いたことがあります。マリアさんの妹なんですよね」
「ええそう」
「そう言えば彼女は今二課が保護しているんでしたよね?」
そう言ってきたのはウェルだった。しかしセレナの存在は知っていても現在の所存については知らない未来は「みたいです…」とお茶を濁すしかできない。
「さて、まだ自己紹介が済んでませんでしたね。初めまして、僕の事はウェルと呼んでください。経緯と親しみを込めてドクターウェルでもウェル博士でも構いませんよ」
にこやかに語り掛けるメタルフレームの眼鏡の男に少なからずの恐怖心と懐疑心を抱く未来。
「おやおや、僕ってそんなに怪しいですかね?」
「貴方って鏡と言うものを知らないのかしら?」
「これは手厳しい。では、少しお話しませんか?少なくとも、僕は貴女の味方です。きっと貴女の願いを叶えてあげられるかもしれません」
そのウェルの言葉に、にこやかに語り掛けるその男の表情に未来は一縷の望みをかけるのだった。
***
翌日のエアキャリア。進路は再びフロンティアの眠る海域に舵を取っていた。
未明にナスターシャの容態が悪化する事態が起きていた。ウェルの尽力により事なきを得たが、これは即ちタイムリミットが間近であるということだ。ここまで来れば手段を選ぶ余裕もないということ。
「お誂え向きに米軍の哨戒艦艇。丁度いいですね、手始めに彼らには海の藻屑になってもらいましょう」
「正気ですか、ドクター真木原!」
真っ先に異を唱えたのはウェルだ。彼の夢は英雄になること。だが今ここで米軍の艦艇を手にかけてしまうのは自身の夢が遠ざかってしまう事を危惧していた。しかし、それでも依然として清彦の考えは変わらない。
「けど、世界に私たちの主張を届けるには格好のデモンストレーションかもしれない。甘さを、今この瞬間に己の甘さを切り捨てなければ!」
覚悟を決めたというよりは自暴自棄に近いマリアのその言葉に二人の妹分は戸惑っていた。スカイタワーでの一件がマリアをそうさせた事を知る由もない。眼下では哨戒艦艇の甲板に清彦の召喚するノイズの群れと、それらによって引き起こされる惨事が繰り広げられており、納得がいかない調はマリアに詰め寄った。
「ねぇ、こんなことがマリアの望んでいることなの?弱い人たちを守るために本当に必要なことなの?」
その問いにマリアは何も答えない。唇を嚙んで血を滴らせながら痛々しく笑みを浮かべるだけ。それがあからさまなマリアの無理であることに気が付くと調は手動でハッチを開ける。
「待つデスよ調!」
「ごめん切ちゃん。でも、マリアが苦しんでいるのなら私が助けてあげるんだ」
――
切歌の制止を振り切り、落下しながらLiNKERの投与と聖詠を紡いだ調はその身にシュルシャガナのシンフォギアを纏い、『α式 百輪廻』で広範囲に広がりつつあるノイズを一掃する。
着地してからはバインダーから巨大な丸鋸を繰り出して切り捨てていくその姿に、残された切歌はそのまま調に続くように飛び降りる前に、ウェルに詰め寄った。
「ドクター!今から言うものをとっとと用意するデスよ!!」
いつになく鬼気迫る少女に気圧されて英雄志望の男はこの後の準備も終えてない事をぼやきつつ言われるがままに指定されたものを切歌に手渡した。
「僕としてはこういうことはあまり褒められたことでは無いと思いますが、何よりも貴女らしくありませんよ切歌さん」
「こうでもしないとあたしは皆を護れないデス!」
そう言って切歌も調と同じようにエアキャリアから飛び降りて聖詠を紡ぐ。
――
落下しながら己のアームドギアを展開し、その手に握り締め着地と同時にノイズを切り捨てた。小手先の技ではない力任せに振り下ろした鎌の一閃の先には息が上がり始めた調の姿があった。
「切ちゃん!」
親友の登場に安堵したのか、やや曇り気味の切歌の表情にも気が付かずに駆け寄った調の首筋にチクリと薬物が投与される。
それが何なのかを理解する前にギアの展開が解かれて、調はその場でペタリと座り込んでしまった。
切歌がウェルに用意させたのはアンチLiNKERが充填された注射器。そしてアンチLiNKERはシンフォギアとの適合係数を人為的に上げるLiNKERとは正反対である適合係数を下げる効能がある。以前廃病院で響達二課の装者の適合率を強制的に引き下げた実績がある。その時はガス状でギアの展開解除には至らなかったが、今回は直接体内に液体として注入したため展開解除にまで至ったのだ。
「調。もしかしたらあたしはあたしじゃなくなってしまうかもしれないデス。そうなる前に何か遺さなきゃ調に忘れられちゃうデス。例えあたしが消えたとしても世界が遺れば、あたしと調の想い出は遺るデス。だから、あたしは真木原のやり方で世界を守るんデスッ!もう……そうするしか……」
他はない。そう言いたげな曇り切った表情を見せる切歌。その覚悟を決めたかのような表情に、調はエアキャリアの中で見たマリアの面影を重ねてしまった。
「切、ちゃん……?」
その時だ。突如として海面が爆ぜた。仮設本部が撃ち出したミサイルからギアを展開した翼とクリスだ。遅れてシャウタコンボのオーズが登場。
そこからが早かった。
切歌は翼を迎え撃つもあえなく無力化。調もクリスに押さえ付けられ、残されたノイズはもれなくオーズが『オクトパニッシュ』で一掃する。
一瞬にして詰みに追い詰められた二人に、クリスが強い口調で語り掛ける。
「おい、真木原の野郎はここにいないのかッ!ソロモンの杖を使うアイツはどこにいやがるッ!」
「ここにいますよ雪音クリスさん」
音もなく現れたポセイドン。その手にはソロモンの杖が携えられており、彼の背後には新たに召喚されたノイズが蔓延っており、それぞれ勝手に動き回ることなく主の命令を待ちかねていた。
両腕の鞭をしならせ、ポセイドンを見据えて出方を窺うオーズはじりじりと距離を詰める。
「ああそうでした。私達の方で小日向未来さんを保護しています」
「人質にしているって言いたいんですか、貴方はッ!!」
「いえ、違います。彼女は私達の大切な客人であって、人質でも駒でもありません。マリアの勝手な救助活動には些か呆れましたが、それに比べてドクターウェルは良い仕事をしてくれたものです。今、貴方方二課にお返ししましょう」
パチンとポセイドンが指を鳴らすと、上空で瞬く間に紫紺の光球が生まれた。
――
次いで聞こえてきたのは聖詠。それも誰もが聞き覚えのないものだ。だが、問題は聖詠の内容ではなく、誰がその聖詠を紡いだということ。
閃光がやみ、七人目の装者が今ゆっくりと甲板に降り立った。
その装者の名は、小日向未来。
続く