ソードアート・オンライン〜黒の剣士と紅の最強プレイヤー〜 作:麒麟@
KoB本部に向かう2人。2人が歩くのを止めるものはいない。2人が向かうものを止めるものはいない。2人はトッププレイヤーの中でも中心に近い人物。
そんな2人が歩いていたら誰かしら声をかけるものだ。けれどその時は誰も声をかけない。気づいてはいないかもしれないがこの時の2人はとんでもないぐらい声をかけづらい雰囲気を醸し出していたのだ。
そして本部に着くと出迎えでフェアリーがやってくる。その雰囲気を肌で感じたのかそれとも別の理由かはわからないが前を歩きそれ以上は何も話さなかった。
しかし2人がこんな雰囲気なのは実際のところ怒っているのでもない。ただ眠いだけなのだ。昨日2人共が考え事をしたり話したりしていて中々寝れていなかった。寝たのも集合の1時間前ほどなのだ。
「よく来てくれたね」
「負けたからな」
「そうか。とりあえずここからはフェアリーくんに聞いてくれたまえ」
それだけを言ってヒースクリフはどこかに行ってしまう。フェアリーも頭を下げてその後ムラクモとコハルについてくるように歩き出した。しかしその間一言も話さないのだ。
そして部屋に着くと二着の服が用意されていた。
「これに着替えて。それで会議室に来てもらうから」
「わかったよ」
フェアリーはそれだけ言って出ていく。2人の間に言葉はなく振り向いて着替えた。互いが互いを見て驚く。
ムラクモにとってコハルの白服は初めて見るのだ。想像を遥かに超えてきたために思考が止まってしまった。
またコハルにとっても白服を着たムラクモを見た時にそれ以上の言葉は出てこなかったのだ。
「すっごいかっこいいよムラクモ」
「あ、あぁありがとコハル。コハルもよく似合ってる」
2人はそれ以上は何も言わなかった。部屋を出てヒースクリフのところに向かう2人。そして言われたのはそれぞれの実力を確認したいとのことだ。
「コハル君は今回構わない」
「それはどういう?」
「今回見たいのはムラクモくんの実力だ」
「見せたはずですけど」
「そうではない。対処能力、状況判断能力などだ。フェアリーくんと組んでもらう。彼女には何をするかはすでに話してある」
「りょーかい」
会議室から出るとメールが来た。それはムラクモに取っても無視できない相手だった。かつてアスナから聞いたことがある相手だったのだ。
返信で終わり次第連絡すると返信するムラクモ。それを見て気にはなったがコハルは詮索しなかったのだ。
「それで今日は何をするんだ?」
「お兄ちゃんには指揮能力を確認させてもらうよ」
「「指揮能力?」」
「うん、よくわからないんだけどそれを確認してくれって団長が」
これは可能性の一部を裏付けるな。そう思い出かけるとKoBのメンバーの一部がついてきた。
おそらく指揮を確かめると言っていたからこのメンツで試せということなんだろう。
「名前を間違える可能性があるために今日はABCで呼ぶから」
3人とも頷きタンクをA、残りのアタッカーをBとCにした。
そして課題場所は迷宮区。本来であればそこまで苦戦しない。
しかし3人ともレベルがこの迷宮区に挑むまでに上がっていないのだ。
「基本的に指示を出すつもりはない。ただタンクであるAが防いで攻撃という感じだ。そしてこのレベルのモンスターを倒せるかはお前たち次第だな」
「「っ!」」
「2人が不安がる理由はわかってる。そのために俺やコハル、フェアリーまでついてきてるからな。臆せず行け」
「「了解」」
そして始まる。3人に前もって指示を出したのには意味がある。戦いという場においてはレベルは重要だ。
今回それを満たす要素であるものを3人は持っていない。しかしそれを埋めるのは俺たち3人だ。そこは心配することはないのだが戦いにおいてはもう一つの方が重要になる。
それは立ち向かう勇気とでもいうべきものが。モンスターを敵対して敵わないレベルだからと言って戦線を離れるくらいなら前に出る。もしかすると勝てなくてもなんとかなるかもしれないから。本当に危ない時は逃げることが重要だ。けれど戦闘が始まってすぐに逃げるのは論外だ。
「こっちは大丈夫。ムラクモ後はフェアリーちゃんの方だけど」
「あたしは手を出さないよ」
「ちょっと助けてください〜」
そんなふうに言いながらも攻撃を捌き切っている。もしかするとこいつが一番素質があるかもしれない。
「こっちも助けてください!!」
「はいよ。後10秒後な」
「え、体力が」
「それは大丈夫」
そういうとムラクモが回復結晶を使う。するとあたりにいる奴ら体力が回復する。そして10秒経つとそいつが相手にしていたやつを一瞬で殺したのだ。
「ウソ〜こんなに強いんですか?」
「団長と同じかも」
「そいつに負けたんだけど」
「まぁまぁ話はともかくあの子を助けてあげないと」
「そうだな」
そしてそいつが相手にしていた奴も倒す。そのままマッピングを兼ねて進んでいくと隠し扉があった。
「なにこれ!開けよ」
「?こんなところに……待て!」
「え?」
ムラクモがそう言った言葉は遅く部屋中に警戒音が鳴り響く。
モンスターハウスなのだ。その音を聞きすぐに自身がしたことを嘆き出すもの。怯え始めるもの。泣き出す奴もいた。
しかし攻略組トッププレイヤーであるムラクモ、コハル、フェアリーは慌てない。
もっともコハル、フェアリーが慌てないのはムラクモへの信頼だからだ。
「さてやってしまったものは仕方ない」
「どう切り抜ける?」
「逃げることは無理だ」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
「謝るくらいならあそこの部屋の端にいろ。3人ともだ。フェアリー、コハルはその2人を守るようにして1人いてくれ。お前ら3人とも一応パーティ申請してるから俺たち3人のHPバーは見れるな?」
返事はなくただ頷くだけだ。
「なら俺たち3人のを見てろ。誰か1人でも半分を切ったらすぐに回復結晶を使え。渡すから。まず俺とコハルが出る。フェアリーは部屋の隅で来たモンスターだけを倒してくれ。最優先はその3人だ」
「了解」
「コハル行けるか?」
「もちろんムラクモとなら安心だよ」
そこまで言うともう時間はなかった。回復結晶を渡す時間すらなくはじめはフェアリーが渡していた。コハルが守る番になったら俺とコハルはストレージが共有なので渡せるはずだ。武器を変えようと思ったが帰る時間もなくみんなに隠すように買った武器は2本装備しているだけだ。
「はぁはぁ何体目だ?」
「途中で数えるのやめたよ」
「同じく」
「長い。あと何体だ」
「うーん半分は終わったと思うけどまだまだいるね」
フェアリーのその言葉に考えるのを止めたムラクモ。これ以上は考えても仕方ないのだ。
「まぁ俺はHP減りにくいしいいけど回復薬の残りは?」
「後5本」
「7本」
「結晶は?」
「後一個です」
まずいな。結晶の残りが少ない。まず俺以外は体力がもたない。
どうするべきか悩んだがこれしかなかった。
「コハル、フェアリー下がって。あいつらの前に固まって。そしてコハルあれをやるから用意を頼む」
「でも「わかった。下がろう」いやだからって」
「今からやるのは私たちは邪魔なの」
「わかりました」
コハルとフェアリーも下がる。コハルはウィンドウを操作する。
そして全ての武器をオブジェクト化してあちこちに投げて地面や壁に突き刺す。そしてムラクモは次々に《クイックドロウ》を発動して敵を倒していく。
ただ一撃とは行かずに何回も何回も行う。《クイックドロウ》は強いがその分リスクもある。
キリトの二刀流はジョブのようなものだ。それは俺の双剣然り。
しかし《クイックドロウ》はスキル。強力すぎるが故に自身への反動もある。
「まずい!今すぐ結晶を使って」
「??わかりました」
コハルの合図で結晶を使う。その判断でムラクモは死なずに済んだ。それはムラクモの持つ短剣『精霊王の短剣』を手放した途端だ。
手放した瞬間にHPが急激に減った。それはこの武器の特性の一つ、ダメージ軽減だ。それがあったから《クイックドロウ》を使えるのだ。
「よかった。タイミングが間に合って」
「後はどうするんですか?」
「後は自然回復があるからなんとかなるはずだよ」
「それはどういう?」
「綺麗。なんだか流星みたい」
そいつが放った言葉に全員が目を奪われる。それは次々に起こる流星のように動くムラクモの動きなのだ。
「確かに綺麗だね」
「うん」
そして最後の一匹を倒した時にムラクモは倒れ込んだ。
「疲れた〜」
「お疲れ様ムラクモ」
「しばらく動きたくないって言いたいところだけどとりあえず帰るか」
「本当にすいませんでした」
「気にすんなと言いたいが気にしろ」
「はい」
「けどこれを機に慎重になるといい。誰も死んでない。それでいいんだよ」
「わかりました。せめて何かお礼を」
そして時間を見たムラクモはなにも言わなかった。やばいとだけムラクモは転移結晶で全員を移動させてからすぐにどこかへ消えていったのだった。
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