Dead・in・wonderland   作:ばにらいむ

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2話です。



partⅡ

 

 

 

 

「ひ…………!!」

 

私は思わず息を飲んだ。

目の前にいた彼はもらった写真とあまりに違いすぎる、

 

 

【化け物】だった。

 

 

黒く焼け爛れた肌、目はなぜか大きく腫れており、片方は縦向き。

口は縦に裂けており、それを無理矢理縫い合わせたのか、口元に赤黒く染まった糸がぶら下がっている。

その口から覗く歯は不気味なほど白く、鋭かった。

 

まるで溶けたプラスチックの人形のようだ。

 

 

それだけならまだいいが、何より恐ろしかったのは、その男が私に明確な殺意を向けていることだった。

 

 

男の片手にはどこから取り出したのか、血にまみれた鉈が握られていた。

 

 

 

「まさかこんなに簡単に引っ掛かるとはな……世間知らずなのかバカなのか……」

 

男の呟きを最後まで聞かず、私は全力で走り出した。

 

 

 

 

 

そして現在。時間はちょうど7時。

 

「どうして?どうして誰もいないの⁉」

 

 

 

私は必死で逃げ続けた。

物陰にかくれてもその度に見つかり、また逃げるという意味のない行為がつづいた。

 

 

 

私がたどり着いたのは小さな公園だった。

真ん中にうんていと変なオブジェが置いてあるショボい公園。

 

そのうんていの上に子供が座っていた。

「き、君、そんなとこにいたら危ないよ」

その子供に話しかける私。

 

「クスクス,クスクス」

子供は逃げようともせず私を見つめて笑う。

「な……なに……?」

 

「クスクス,クスクス……ウシロ」

 

子供は笑いながら後ろを指差した。

とっさに私は振り向く。

 

 

「あ……」

あの男だ。

あの男がすぐ後ろまで来ていた。

 

もう逃げることはできない。

 

 

 

「自分から会いに来たんだろ、いい加減におとなしく死ねよな」

 

男は私に向かって鉈を振り上げる。

 

 

 

今までの思い出が走馬灯のようにめぐる。

顔も覚えていないお父さんのこと、とっても優しいお母さんのこと。

やたらと厳しい先生のこと。

 

 

 

そして最後に私は黒江の顔と最後の会話を思い出した。

 

 

 

『あんたネットで知り合ったやつと会うなんて何考えてるの?!!』

 

 

 

ネットで知り合った男なんかと会わなければ。

あのとき黒江の忠告をちゃんと聞いていれば。

 

 

友達の少ない私は浮かれて親友の話に耳を貸さなかった。

 

自業自得だ。

 

 

 

黒江、ごめんね____________

 

 

 

 

 

 

 

ドスッと鈍い音がし、私の意識は底へと沈んでいった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年 7月

この日私は死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……」

目が覚めるとそこは、霧に覆われた不思議な空間だった。

 

「こ、ここは?」

私は死んだ。ならここは差し詰【あの世】だろう。

でも私の知る【あの世】と違う気がする。

 

なら私はどこに来てしまったのだろうか。

 

 

 

「不思議な場所だな」

 

聞き覚えのある声がする。

声のした方向を見ると

 

「あ?お前もいたのか」

 

あの男だった。

 

 

 

「あなたもいたんだ」

「お前……俺が怖くないのか⁉」

 

男はビックリしたように腫れた目と縦向きの目を見開く。

 

「うん。怖くないよ」

そう。怖くないのだ。

彼が私に殺意を向けていないから。

 

 

「そ、そうか、怖くないのか……そんなこと言われたのは10年ぶりだな」

照れたような顔で鼻の下を擦る。

人間らしいしぐさをする彼に愛着さえわいた。

 

「あなたの名前を聞いていい?」

「名前だぁ?」

男はごそごそとポケットを探ると、一枚の紙きれを取り出した。

 

 

 

【जोआन】

 

 

 

紙きれにはそう書いてあった。

 

「これが俺の名前らしい。読めるか?」

「いや読めんわ」

「だよなぁ」

 

 

 

私はしばらく考えて、

「じゃあさ、殺人鬼さんって呼んでいい?」

「サツジンキ?なんだそりゃ、変な名前だな……」

皮肉みたいな名前だが、彼は少し嬉しそうだった。

「じゃあ行こっか、殺人鬼さん」

 

 

私は霧に向かって歩きだした。

 




次回へ続く
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