今回は黒江視点です。
~数時間前~
「嘘でしょ……」
目を開くと信じられない光景が広がっていた。
目の前には巨大な駅。そして目の前には真っ白な汽車が止まっていたのだ。
「これは死者の国の汽車さ。どうやら交通手段はこれだけのようだね」
アニメのタンクトップを着た男・Mr.RD が言う。
「ところでRD、アンタの弟子ってどんな人なの?」
「もうすぐ来るよ……あ、おーい!!」
RDが東に見える人影に向かってブンブン手を降る。
よくよく目を凝らすと、その人影は女の子のようだった。
それも私と同じくらいの。
その小脇には金魚鉢が抱えられていた。
「もう!師匠、門の前で待ち合わせって言ったじゃないですかぁ~‼」
怒ったように弟子らしき少女がまくしたてる。
「ごめんごめん、出るとこを間違えてしまったみたいだ、えへへ」
「もぉ~……あ、そっちの女の子が依頼主ですか?初めまして、私は「白澤」です!」
「く、黒江よ……よろしく……」
白澤は私の手をしっかりと握りしめ、ブンブン振り下ろす。
少し美亜と似ていた。
「ところで、ずっと気になっていたんだけど」
私はこの世界に来てからの最大の疑問を口にする。
「私の頭、何で兎の耳が付いてるのよ」
あー、それはね、とRDが口を開く。
「生きたまま死者の国に来ちゃうとなんかそうなるんだよね、稀に」
「……」
つまりRDも知らないということだろう。
「師匠、汽車出発しちゃいますよ!」
「おっとまずい、乗ろうか」
私たちは慌てて汽車に飛び乗った。
◆◆◆◆◆◆◆◆
「次は~、死者の町~、死者の町~」
剣呑なアナウンスが社内に響く。
「まずはここから探してみよっか」
Mr.RDが我先にと汽車を降りる。それに私たちも続いた。
彼はとことん自由な男のようだ。
「おーい、美亜~」
「みーあちゃーん」
早朝の、誰もいない町に私たちの声が響く。
私たちは今、美亜を探している。
正直呼ぶだけで美亜が見つかるとも思えないし、アイツのことだ。もう次の町に行ってしまってるかもしれないが。
死者の町は「普通の町」だった。
何なら私の住んでいる町とさほど変わらないようにも思う。
「いやぁ、いつ来てもいい町だ」
RDが感嘆する。
「師匠、また迷子にならないでくださいね」
白澤さんがRDをとん、と小突いた。
「分かってるよ~」
RDの両腕には大量の紙袋。
美亜を探すついでに買い物をしていやがった。
……しつこいようだが本当に自由なオッサンだ。
2時間後。
「ここにはいないみたいだ」
書店から出てきたRDは「フンス」と鼻を膨らませ、満足そうに言った。
「師匠買い物したかっただけじゃないですか!!!!」
先程から荷物持ちをさせられている白澤さんが、とうとうキレた。
「仕方ない、他のところを探そう。他のところにいなかったらまた来よう」
正直私はうんざりしていた。
美亜を探しに来たはずなのに買い物に付き合わされたからだ。
「うんうん、さっさと出よう、僕もこの町は飽きたし」
「「お前来たときいい町だとか言ってただろうが!」」
こいつに人探しを任せて本当に大丈夫なのか?
そんな漠然とした不安を抱えながら、私たちは再び汽車に乗るべく駅へと向かった。
次回に続く。