Dead・in・wonderland   作:ばにらいむ

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今回は少々シリアスです。


partⅧ

「焦熱庭園美術館前~焦熱庭園美術館前~、お出口は左側です」

 

「はーあ……」

私、藤田美亜はため息をつく。

 

 

ここは死者の国の列車。

 

私たちが最初に乗った列車とは全く違う。日本の電車のようなデザインだ。

中の座席も真っ黒で、最初に乗ったものと比べるとなんとなく居心地が悪かった。

 

そして一番私たちを苦しめたのは……

 

 

「だぁぁぁぁっっあっつい!!!暑いんだよ!!」

殺人鬼さんがでかい声を出す。

「分かる!暑い!!!ぶっちゃけ降りたいんだけど?!地獄にはまだ着かねーのかよ?!」

ホイメンちゃんももう限界だといったふうに頭をかきむしる。 

 

 

そう。暑い。とにかく暑いのだ。

困ったことにこの列車にクーラーというものは存在しない。

死んでしまった身でも暑さを感じるとはこれいかにといった感じだ。

 

「お客様、車内ではお静かにお願いします‼」

客室乗務員らしきお姉さんが私たちに向かって話しかける。声色から察するに相当怒っているみたいだ。

 

「うるせぇなぁ、暑いもんは暑いんだよ……」

「でも殺人鬼さん、車内販売で冷たいもの売ってますよ?」

焔さんが呆れたように殺人鬼さんの肩を叩いたが、その手を殺人鬼さんは振り払った。

 

「あんなもんじゃあ足りねぇよ!砂漠にじょうろで水撒いてるようなもんだろうがよ!!逆にあんたらは何で平気なんだ!特にそこの!」

 

殺人鬼さんが指をさした方向には、水に濡らしたタオルを首に巻き、手には氷の入ったジュースを持ったマリアさんがいた。

 

「彼女を熱中症の危険に晒すわけにはいかないでしょう!」

なぜかキレる焔さん。

 

「すみません、かき氷六つお願いします」

「あ、じゃあ私はジェラート五つお願いしま~す❤」

社内の喧騒を無視して車内販売の店員さんに呼び掛けるギラとメルテナさん。道案内が何をやっとるんだ。

 

 

「はぁ~もう本当にこのメンツで果たして黒江に会えるのやら……むしろどんどん遠ざかってる気がするよ……」

私がレモンシャーベットを食べつつため息をついた瞬間、一気に車内が涼しくなった。

 

 

「次は~、十字架広場前~十字架広場前~、お出口は右側になりま~す」

 

「おお、十字架広場ですか…懐かしいですね」

焔さんが呟く。

どうやらその十字架広場は焔さんにとって思い出深い場所のようだ。

「ちょっと休憩していきませんか?」

「えっちょい待って焔さん」

私は慌てて制止する。

悠長に思い出の場所巡りなんかしていたら私の黒江に関する心残りや記憶はあっという間に消し飛んでしまう。なんとしても途中下車は避けたい。

 

「えっちょ、確認するけど、私達は今地獄に向かっているんだよね?」

「ええ」

「何で明らかに地獄じゃないところで降りようとするの?」

「だって私とマリアの思い出の場所…」

「いやいやいや、ダメでしょ」

「美亜さん、それは自己中と言うものですよ」

「いやいやいや、自己中じゃない、そもそも焔さんたちは勝手についてきただけじゃんかよ、ね?」

 

「落ち着け美亜」

先程までの暑さも合間って爆発しそうな私を諌めたのは殺人鬼さんだった。

「何も記憶がすぐに消える訳じゃないんだろ。それに俺もここで降りたい。なんだか懐かしい感じがするんだ」

 

「もー……仕方ないなぁ」

 

渋々私達は途中下車することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

十字架広場は一面青の世界だった。

言ってる意味がわからないだろうが、とにかく一面青なのだ。草木や花、道に敷いてあるタイル、ベンチ、とにかくすべてが青い色をしている。

 

そして丘のてっぺんには巨大な青い十字架がそびえ立っていた。

十字架の前には長い行列ができている。みんなここに祈りを捧げに来ているのだろうか。

 

私が十字架に見とれていると、焔さんとマリアさんもその場に膝まづき、両手を組んだ。

それを見て私はやっぱり祈りを捧げに来ているのだと確信した。

 

「ここは、落ち着くな」

ふいに殺人鬼さんが口を開く。

下車してからここにつくまで、珍しく彼はずっと一言も口を開いていなかった。

彼にも何か思うことがあるんだろうか。

 

 

「そういや俺のじいちゃんは「ぼくしさん」だったんだ」

殺人鬼さんがぼそりと呟いた。

 

「じいちゃんはさ、俺の顔見ても全然怖がらなくて、俺と違ってすげぇ頭よくて、学校に通ってなかった俺に何でも教えてくれたんだよな。

勉強の他にも神様の話とか聞かせてくれたりしてさ……月曜日から土曜日はじいちゃんいねぇから日曜日に教会ってとこに行くんだけどさ、すげぇ楽しかった」

 

「へー…意外だねぇ」

「ははっ……そうか?」

殺人鬼さんは自分を笑うような声をあげる。

 

「そのじいちゃんは俺が18になる少し前に死んじまった。

母ちゃんと父ちゃんの会話でちょっとだけ聞こえたんだけどさ、「ごうとう」ってやつに殺されちまったんだってよ」

 

「それで俺思ったんだ。神様なんていないって。前にじいちゃんから聞いたんだ。「信じるものは救われる」って……でも神様はじいちゃんが殺されるとき助けてくれなかった」

「…………」

私も神様は信じてなかった。神様というものがいるのなら、その神様はいじめられている黒江を助けてくれたっていいはずなんだから。

いたとしてもその神様は黒江をいじめている子達の味方なんだろう。

 

殺人鬼さんの言うことに同意しか覚えなかった。

 

「お前さ、この話、あの神父やマリアには言うなよ。言ったらお前の事ぶっ殺してやるからな」

殺人鬼さんはいたずらっぽく笑う。

 

「うん……もう死んでるけどね」

私もうなずくと彼に微笑み返した。

 

「おーい、お前らなにいちゃいちゃしてんだ~?」

ホイメンちゃんとメルテナさんが手を振りながら近づいてきた。その両手には青いペンダントが握られている。

 

「それどうしたの?」

「や、広場すっげぇつまんねーからさ、うろちょろしてたら婆さんが露店やってたんだ。そこにお前に似合いそうなペンダントが売ってたからさ、やるわ」

そう言いながらホイメンちゃんはペンダントを投げ渡す。

 

「こんなとこいてもつまんねぇからさ、そろそろ戻ろうぜ!駅でずっとギラが待っててくれてんだよ」

「は?マジかよ悪いことしちまったぜ……」

殺人鬼さんが焔さんたちを呼ぶために広場へと走る。

私たちもそれに続くことにした。

 

 

 

 




partⅨに続く。

ギラ「で、私はいつまでここで待ってればいいんですか……」
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