ー花結いの残光ー   作:時 司

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日常
日常の1 讃州市を歩く。


私たちが離反神の襲来を受けた後、しばらくのうちは相手も攻勢にでてこないだろうという神託が下った。そして偶然勇者部に依頼の入ってない土日ができたのだ。

各々思い思いに休日を過ごすらしいが私は讃州の町に繰りだすことにしてみた。涼も誘ってみたのだが彼女は気が合ったらしい雀との約束があるらしい。

 

朝、讃州中の近くにある宿舎を出てひとまずは讃州駅の方へと歩いてみる。まずは讃州中の前を通って琴弾公園へ、途中寄り道をして有明浜のほうへ歩いてみるとこんな朝から砂浜で木刀を2本振っている少女の姿が見える。

「休日だけども朝からやってるの?」

私が声をかけるとその少女は手を止めた。

「ああ、結か。そうよ、あんたこそこんな朝から何してるのよ。」

「私?私は讃州市見物…とでも言おうかな。」

「そういえば玉藻市のほうから来たっていってたものね。元の世界で讃州市には来たことないの?」

「小さいころ家族で来たはずなんだけど記憶がなくて…。」

「そっか、じゃあ楽しまないとね。」

「夏凜も鍛錬頑張ってね!」

「うん。」

 

そして時はすこし流れて三架橋前。風さんが言い出しっぺで行くかめやの帰りに通る橋だ。

(そういえばこの神社行ったことなかったっけ。)

琴弾八幡宮に入ってみる。この前はよく通るのだが敷地に入るのは初めてだった。植えられた木々はどれも大きく時代を感じさせるものばかりで圧倒される。私は賽銭を投げ入れて手を合わせた。願い事は…他の人にいうと叶わなくなるなんて話もあるから秘密にしておこう。

 

「あれ?結ちゃんどうしたの!?」

三架橋を渡って港のほうへと行ってみようとしていた時家から出てきた友奈と鉢合わせた。

「私は讃州市見物よ、友奈の家ってここだったんだ…」

「そうだよ!そしてあっちが東郷さんの家!」

(部室でもほぼ隣同士だが家まで隣だとは)

「友奈はこれからどこに行くの?」

「私は東郷さんちに行くよ!」

「本当に友奈と東郷さんは仲がいいんだね。」

「うん!あ、東郷さんを待たせちゃう、じゃあね~!」

友奈は東郷さんの家のほうへと走って行った。

(そよ風みたいな子だなぁ)

クイズ好きの涼も明るくて快活だが彼女とはまた違った明るさを友奈からは感じる。

 

それから港をぐるりと回って途中で和菓子屋さんを見つけたのでおやつに食べようと米粉カステラを買った。とりあえず讃州駅前まではたどり着いたがどうしようか。駅の時計は昼時を示している。他のお店を知らないこともあって、私はかめやに向かった。

「いらっしゃい、ん?今日は風ちゃんたちは一緒じゃないんだね。」

「はい、今日は一人ですね。」

「そうか、何にするかい?」

「肉ぶっかけうどんをお願いします。」

「あいよ。」

つるっとした麺は程よい弾力で出汁とよく絡み合う。さらにその上に載る肉との相性は最高であっというまに完食してしまった。風さんが何杯でも行けるというのも頷ける。あそこまで一度に食べることはできないが…。

会計をすませてかめやを後にした私は初め目標を達成していることに気が付く。初めはなんとなく讃州市を歩いてみようと思っていただけだった。スマホで時刻を確認しても夕飯時までかなり時間がある。今から宿舎に戻って他の人の部屋を訪れてみるのもいいかもしれないが行ってみたい場所がある。

 

「やっと…ついた…」

たどりついたのは象ヶ鼻岩銭形展望台。山道を歩いて登り景色が広がるとそこには有明浜と銭形砂絵を一望できる。今日は休日だからか観光客がまばらに来ていた。

「やっぱ大きいのねぇ…」

銭形砂絵は西暦の時代、それも江戸時代に一夜にして作られたらしい。縦横ともに百メートルほどでお金をそのまま大きくして地面に置いたようである。

私は適当に腰を掛ける岩を探して座り、米粉カステラを取り出した。

「ん、おいしい!」

ほどよい甘さが歩いて疲れた身体に浸み込むようだ。

(もう一個買えばよかったかな)

ぱくぱくと食べてしまい、一瞬のうちにたいらげてしまった。あの和菓子屋さん、また機会があったら行ってみよう。それもみんなを連れて。

また坂を下って夕飯の材料を買いにスーパーへ。

「結じゃない、あんたもタイムセール狙いね?」

風さんも同じ時間帯にスーパーに来ていた。というのも当然でここのタイムセールを教えてくれたのは彼女だ。

「そっかぁ、今日一日このあたりを歩いてみたのね。」

食材を選びながら今日一日のことを風さんに話してみた。

「よかったわ。ちょっと心配してたのよ。」

「心配…ですか?」

「急に樹海に飛ばされて、成り行きで勇者になってさ。ほら私たちは元の世界で勇者になってからこっちにきたじゃない?」

「大丈夫ですよ、風さん。」

「でも何か悩みが出てきたらすぐにいうのよ?勇者部五箇条一つ!悩んだら相談!ってね。」

「はい!」

スーパーを出て風さんと別れて私は宿舎のほうへと戻った。

会うはずがなかった別の時代の勇者達と私は新しい時を刻んでいる。

 

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