効率を落としたくないので自爆しかありますまい!   作:ベニヤ板

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猫被り軍師

「もし、そこのお嬢さん。」

 

「・・・・・・・・はい?あ、今の私に言いました?」

 

「ええ、あなたですよ、大楯使いのお嬢さん。」

 

 

陳宮に声をかけられた少女、メイプルは驚いていた。なにせまだゲームを始めてすぐの初期装備の自分が他プレイヤーから話しかけられたのだ。返事が少し遅れてしまったのも自分に話しかけられたとは思わなかったからだ。

 

話しかけてきた男性の姿を見てみると、装備はごつごつしたかっこいい騎士のような装備ではなく、中国の軍師のような着物姿で彼自体がまとう雰囲気も合わさり知的な印象を受ける。ところどころ金の装飾がなされているものの、自身の財を見せびらかすだとかいやらしい感じではなくあくまで服とそれを着た人物を引き立たせるもので非常に似合っている。

 

装備を上手く着こなしていているのを見て、自分もかっこいい装備欲しいな~、やっぱり大楯使いだからかっこいい鎧がいいな~などと考えているうちに陳宮は要件を話し出した。

 

「わたくしは陳宮と申します。

今まで一人でプレイしていたのですがそろそろパーティを組みたいなと思いまして、一緒にパーティ組んでくれそうな優しい方を探していたのです。そんな中、あなたを見かけまして声をかけさせていただきました。」

 

「優しい方・・・・・・・・!」

 

遠まわしに優しいと褒められて少々上機嫌になってしまうが、しかしここで疑問が残った。なぜ本当に今始めたばかりの自分に話しかけてきたのだろう?装備だって初期装備だし自分で言うのもなんだが既にやり込んでいる人が役に立つとは普通思わないだろう。

 

人を疑う事を知らないメイプルであったが、本能で陳宮のクズを察知したのか彼女の普段を知っている人物から見たら非常に驚くであろう警戒心を見せていた。それでも一般人に比べたら警戒心は薄い部類に入るのだが。

 

 

何故自分に声をかけたのか、その疑問の答えは彼自身から話し出した。

 

「実はわたくし、こんな装備ですがまだ始めて日が浅くて全然弱くて、足を引っ張るのが恐くて強そうな人には声をかけられなくて・・・・・・・そこで同じ初心者らしきあなたに声を駆けさせていただいたのです。」

 

ダウト、嘘である。この男はリリース初日から割とやり込んでいる。確かにこのゲームは発売されてそう長くはなく、日が浅いといえばその通りではあるしサポート系のビルドなので戦闘面では弱いのは確かだがサポート用のスキルと弓による援護射撃、彼自身の知略からトッププレイヤーと肩を並べて戦っても足を引っ張ることはない。味方を自爆させない限り。

 

 

もちろん彼はそのことを自覚しているが、トッププレイヤーというのは情報がすぐに入ってくる。例のゲステラの情報ももう既に回っている恐れがあるため声がかけれないだけだ。しかしクズを本能で察知したとはいえ所詮メイプルの警戒心は一般人より大分薄い程度なので、物腰柔らかで丁寧な言葉遣いからすぐに信じ込んでしまった。

 

皆さん、これが詐欺師です。

 

「と、いうことでしてよろしければフレンド登録と、それとパーティを組みたいのですがどうでしょう?」

 

「はい!全然いいですよ。

私、本当にさっき始めたばかりなのでこんなに早く誰かとフレンドになれるなんて思わなくて、すごく嬉しいです!」

 

 

ニヤリ、はたから見るとフレンドができた嬉しさからの笑みを浮かべる陳宮だが、内心では先ほどと同じ、人を上手く使った時に見せる冷たいものである。人前では出来る限り本心を悟られないように、そして相手に警戒心を与えないようにする彼の処世術のようなもので、とても普通に働いているただの社会人の技術ではなく詐欺師の技術だ。

 

(やった~、初めて早々優しそうな人とフレンド登録できちゃった!

やっぱり、大楯使いなんだから守ってあげないとね!)

 

子供を洗脳して自分の言うことを何でも聞くようにする悪人を思い出す構図だ。例えが酷くかけ離れてるように見えないのが酷い。

 

「あ、でも私ホントにさっき始めたばっかで、まだレベル1で・・・・・・・」

 

アハハ、と申し訳なさそうに笑うメイプル。陳宮が先ほど言った足を引っ張りたくないという発言の通り彼女もまた足を引っ張り迷惑をかけたくないのだ。もっとも、陳宮の場合その発言は嘘だが。

 

 

「ふむ・・・・・・・・あー!

しまった~、野良で即席パーティ組んでレベル上げする約束がこのあとあったんでした~!」

 

「え?」

 

「申し訳ありませんメイプルさん、こちらから声をかけさせていただいたのに今日は一緒にパーティ組めなさそうになっちゃいました。」

 

メイプルの足を引っ張りたくないという気持ちを察して嘘の予定を入れて一旦パーティを組むのを保留にしようとしている風の演技をする陳宮。陳宮としてもレベル1の極ぶり大楯使いとかものの役に立たないと思っているし、初心者のレベル上げに付き合ってあげる優しい経験者の演技をする手間が省けるので好都合である。

 

しかし今時珍しい人を疑う事を知らないメイプルちゃんはそんな本心に気付かない。最悪な状況である。

 

「幸いフレンド登録をすると連絡がとれるようになるので、しばらくたったらまた会いましょう。

それとこれ、お詫びの品としてどうぞ」

 

そういってメイプルに回復のポーションを一つ手渡す。

 

「ええ!?そんな、貰えないですよ!

だって悪いのは私―――――」

 

「いえいえ、人を誘っておいて予定を入れていた私が悪いんですよ。それにこれがお詫びの品(扱いやすい少女からの確固たる信用)となるのなら安いものですよ。」

 

おい、ルビ。そもそもやり込んでる方である陳宮がか弱い少女を騙してる時点でポーション一つでわびの品になるはずが無い。それにたかがポーション一つの譲渡なんて彼にとって痛くもかゆくもない。むしろ本気で扱いやすい少女からの確固たる信用となるのなら安いものだと思ってる。

 

もうお前が弾になって自爆しろ。

 

そのまま足早にその場を去ることにより不器用だけれど優しい人を演出する。自身の行動で周りがどういう解釈をするのか、勘違いされる系の主人公と違いよく心得ている。心得た上で人に好印象を抱かせたりたまに頭のおかしい行動をとる姿にはもはや侮蔑すら覚える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――――楓、楽しんでるかなぁ~。

禁止されてるけどスレ見るだけなら・・・・・・・・ん?

陳宮・・・・・・・迷惑プレイヤー?」

 

なお、化けの皮が剥がれる日も近い模様。




・陳宮 詐欺師の才能がある。どうやら騙すことも好きなようだ。最悪である。

・メイプル 騙されちゃった子。実際人を信じすぎと作中でも言われておりまんまと騙された。でも彼女にしてはまだ警戒した方。

・楓という女の子の事を知っているらしい女の子 一体・陳宮 詐欺師の才能がある。どうやら騙すことも好きなようだ。最悪である。

・メイプル 騙されちゃった子。実際人を信じすぎと作中でも言われておりまんまと騙された。でも彼女にしてはまだ警戒した方。

・楓という女の子の事を知っているらしい女の子 一体何峯理沙なんだ・・・・・・・。別に次の話で出てくるわけではない。登場は割と先。

・作者 実は作者の陳宮はまだ宝具レベル3。陳宮の排出率低すぎん?
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