戦姫絶唱武闘伝シンフォギアG 作:フリューゲル
「ここはどこだ?」
「私は確かにあの時あの娘の代わりにこの身を、魂を失ったはずだ」
そう言いながら辺りを見渡す。そこは荒れ果てた荒野で見える範囲には砂と岩以外見当たらない。
「そうか。ここで私の魂は再び宿ったのだな。だとするならばきっかけとなる聖遺物があるはずだが」
一人呟きながら再び辺りを見渡す。今度は小さな物も見落とさぬよう慎重にゆっくりと。
「これか」
砂から角のようなものが覗いているのを見つける。
「しかし、これは私も知らぬ聖遺物。一体こんなものがどこから」
そう言いながら手を触れた瞬間…
刹那に辺りは、いや世界は光に包まれる。暖かく、それでいてどこか寂しげなヒカリに。
『シンフォギア』と言う名を残しながら、新たな歴史を創りだす。
………………。
雨が降り頻るバス停で傘もささずにずぶ濡れの少女が一人。
頬を伝う滴は雨か、それともその両の目から溢れる涙か。
やがてバスに揺られて少女はある場所へとやってくる。大好きな人たちが眠るその場所へと。
「あれから世界は少しだけ平和になったよ。まだ争いの絶えない場所とかもあるのはあるんだけどね」
言いながら持っていた花束を置く。
「わたしは元気でやってるよ。お父さんはそっちでお母さんと会えたかな。これから世界を見て回ろうと思うんだ。まだわたしがやれることはあると思うから」
少女はそこまで言うと隣の墓石へ視線を移す。
「本音を言うとね。一緒に行きたかった」
そこで再び涙を堪えてきれずに溢れ出す。
「わたしは陽だまりがないとダメだよ」
陽だまりと呼ばれた少女の親友の写真がそこに飾られていた。
「もっと一緒に色んなものを見たかった。知りたかった。体験したかった。どうして………やっぱり嫌だよ未来!!!!!」
少女の慟哭は雨の音を切り裂くように響く。
ー14年前ー
幸せそうに3人の家族らしき人たちが街を歩いていたときだ。その災いが突如として現れたのは。
「キャー!!!」
耳を塞ぎたくなるような悲鳴があちらこちらから聞こえる。
「ノイズよ。ノイズが現れたのよ」
走り去る女性がそんなことを言っている。
人類の共通脅威とされ、位相差障壁によって人類の兵器は一切通用せず、触れた人間を炭にしてしまうことから認定特異災害とされているノイズ。
そのノイズが現れたようで、街の人たちは我先にと逃げている。この先にシェルターがあるためそこに向かっているのだろう。
「怖いよぉ」
怖がる幼い少女に笑顔を見せ、頭に手を置く父親らしき人物。
「大丈夫だ響。平気へっちゃらだ」
しかし、ノイズはすぐそこまで来ている様子だったため、少女を抱え母親らしき人物の手を引いて走り出す。
途中でいくつもの炭となった人だった物を目の当たりにする。やるせない気持ちを押し殺し、ひたすらに走る。家族を守るために。
シェルターまで後少しというところで更なる絶望が襲い掛かる。
「なっ!」
「そんな、あれはデビルガンダム」
少女にはそれがなんなのかわからない様子だったが、父親と母親は驚愕の表情でその新たに現れた絶望を見ている。
「響を頼む。俺はあいつと再び決着をつける」
母親に少女を預けようとするが、母親はそれを拒否する。
「出来るわけないじゃない。貴方の体はもう『ガンダム』で戦うことに耐えられるほどじゃないのよ?」
「そんなことはわかっている。しかしそれしか方法がないんだ!」
父親の叫び声に少女は涙を流す。大好きな両親が喧嘩しているのが嫌だったのだ。
「とにかく貴方は響を連れてシェルターへ行って。アレは私がどうにかするわ。だから、生きるのを諦めないで」
父親に反対されるのがわかっているのだろう。返事も聞かず母親は走り出す。
ビルより大きなノイズとは違うソレに向かう母親の背中になにかを感じた少女、響は力の限り叫んだ。一言だけ。
「おかあーさーんーー!!!!」
少女がその後、母親の姿を見ることはなかった。最後に見たのは母親がロボットのようなものに乗り込んでいく姿だった。
少女にそこからの記憶はあまり残っていない。気がつけば、知らない部屋で寝ていて扉の隙間から父親と知らない夫婦が話しているのを覗いていた。
「勝手な我儘なのはわかっている。しかし、デビルガンダムが再び動き出したならそれに対抗するために俺は行かなければならない」
「それでも響は連れて行けない。こんなことを頼めるのはミカムラ教授の元にいたあなたしかいない。お願いします。立花さん、どうか響をお願いします」
そう言って頭を下げる父親の姿。まだ幼い響にもそれの意味はなんとなくわかっていたのかもしれない。
「しかし、君の体はもう………」
「それでも、妻の仇もある。俺は戦場(いくさば)に赴くしか出来ない情けない男だ」
その日から少女は立花響として生きていくこととなる。まだ3歳だった響は最初は泣いてばかりだったが、立花夫妻の優しさに触れ優しく育っていく。