戦姫絶唱武闘伝シンフォギアG 作:フリューゲル
クリスが目を覚ましたのは、辺りがもう真っ暗になった頃だった。
「あっ、起きた?」
まず目に入るのは、制服姿のままずっと側にいてくれたであろう未来だ。
「あれからずっと寝てたのよ? 体調はどう?」
自分が通う学院と同じ制服。それだけでクリスは察する。
「その、悪かったな。あたしのせいで、学校行ってないんだろ?」
今日は平日で、特別なにかある日でもない。この少女が自分の看病のために学校を休んだのだと。
「それは仕方がないよ。それにちょっと行きづらいところもあったし」
そうなのかと聞こうと思うが、止める。自分が安易に聞いていいものかわからないからだ。
「おや、起きたのかい? お好み焼きしかないけど、食べるだろう?」
「ありがとうおばちゃん。部屋まで貸してもらったのに」
未来の知り合いなのだろう。その会話を聞いていたクリスは特に気にせず、それよりも空腹に突き刺さるいい匂いに気が向いていた。
「その子が着ていた服、洗っておいたよ。もうそろそろ乾くと思うんだけど」
その言葉を聞いてクリスは自分の姿を見る。小日向と書かれた名札の付いた体操服。下着もつけておらず、その姿に驚く。
「どうなったんだ」
「ずぶ濡れだったから、着替えさせたの。下着は流石に予備持っていなかったし、持っていてもわたしのだと入らないだろうし」
そこで未来の視線が自分の胸元にあるのを感じた布団に潜り込む。
「その、ありがとな」
「わたし小日向未来。あなたは?」
「雪音クリスだ」
クリスの声は小さく、照れているのか顔も赤い。
「とりあえず着替えたらご飯食べよう?」
未来が部屋を出て1人になったクリスは自分が元々着ていて洗濯された服へ着替える。
「さっきの聞いてもいいか?」
「さっきのって?」
なんのことを聞かれたのかわからない未来が小首を傾げる。
「学校に行きづらいってやつだよ」
「あれか。そのね、友達と喧嘩しちゃって。でもその友達を許せない自分がすごく嫌で」
それであんな時間にあんな場所にいたのか。と納得する。
「あたしにはそういうのよくわかんねぇな。友達いたことないし」
「ならわたしと友達になろうよ」
突然手を握りながら言ってくる未来にクリスはたじろぐ。
その後は普通に雑談、主に未来が喧嘩した友人の話をしている。
「そんなのぶん殴っちまえ」
「そんなことできないよ」
2人の声を聞くフラワーの店主であるおばちゃんは優しく微笑む。
「世話かけたな。お代は今持ってねぇけど、今度必ず払いに来るから」
お好み焼きを食べ終えたクリスは立ち上がる。
「そんなのはいいよ。また食べにおいで」
店主にお礼を言って立ち去るクリスを未来は追いかける。
「行くところあるの?」
「さぁな。でも大丈夫さ」
未来が引き留めようとしたとき、大きな警報音が鳴り響く。
「ノイズが現れたのよ。早く逃げないと。クリスも一緒に」
【Killter Ichaival tron】
イチイバルのシンフォギアを纏ったクリスを見て未来は驚く。
「こいつらはあたしの仕事だ。お前は早く逃げろ」
そう言い残してクリスはノイズの群れへ走り去る。
「あれって響とおんなじ」
ノイズの観測は本部でも確認されたいた。
「ノイズ反応感知。同時にイチイバルの反応もあります」
「クリスくんが現場付近にいてくれたのは幸いだが、今行けるのは響くんしかいない。行けるか?」
翼は相変わらず所在が掴めていなかった。
「はい」
現場にクリスもいることもあり、響だけを向かわせることにする。もちろん万が一の場合に切歌と調も控えている。
「私も行くわ」
マリアの言葉で皆驚く。
「私は戦う力はない。だから、終わった後クリスと話すために行くわ」
「わかった。あまり無茶はするなよ」
マリアと響が現場へ向かうヘリへ乗り込む。
現場ではクリスが1人戦っていた。
「群れスズメがうじゃうじゃと」
『♪♪♪』
歌いながらノイズを銃やミサイルなどでどんどん蹴散らしていく。
【MEGA DETH PARTY】
腰部アーマーから小型ミサイルを一斉に発射し、どんどんノイズの数を減らす。
マリアと響が到着した頃にはほとんど終わっているほどに。
「クリスちゃん」
ガングニールを纏った響がクリスを援護する。
「どうなってやがる」
今までと違い、邪魔になることもない。むしろ自分が届かない範囲を上手く蹴散らしていく響にクリスは驚く。
「あの子ね。最近強くなるために色々やってるのよ。貴女や翼と上手く連携取るために貴女たちの戦いを見直したりしてね」
マリアの言葉にクリスは顔をしかめる。
「それでもまだ荒削りなところは多いわ。だから」
「あたしがあのバカをフォローしろってんだろ。やってやるさ」
マリアの言いたいことを汲んだのか、クリスの戦いが少し変わる。
「それよりだ。あたしの知り合いがその辺にいるんだ。避難頼む」
クリスが頼むことにマリアは驚くが、すぐにクリスの指した方向へ向かう。
「おい、バカ。こっちはだいぶ減った。残りはあたしに任せてな。お前はあっちを任せる」
クリスの言葉に響も驚くが、反対方向にもノイズがいることを見てそちらへ駆け出す。
「うん。任された」
響がすれ違う瞬間、クリスは少し微笑む。
「あぁあたしは意地っ張りだ。あいつはただ真っ直ぐなだけなのにな」
反対方向のノイズを倒しながら、ある店を見かけて響は立ち止まる。よく自分たちが行っていた店。フラワーだ。
「おばちゃん」
上手く避難していると信じながら、逃げ遅れた人がいないか、そこにおばちゃんがいないか不安になりながら。