戦姫絶唱武闘伝シンフォギアG 作:フリューゲル
とある場所にある玉座に座るまだ幼く見える少女と向き合う男。
「わざわざこのチフォージュ・シャトーまで来たんだ。それなりの報告はもらえるんだろうな? アダム・ヴァイスハウプト」
玉座に座る少女が客人であろうアダムに問う。
「もちろんさ。ちゃんと持ってきたよ、君のお目当てのモノをね」
金色のおさげ髪をした少女へアダムが答える。
「ならいい。こちらもお前か求めていたモノは完成させてある」
「助かるね、仕事が早くて。さすがは優秀な錬金術師として有名なキャロル・マールス・ディーンハイム。正解だったよ、君に頼んだことは」
アダムの言葉に顔をしかめるキャロル。
「パヴァリア光明結社、統制局長のお前に言われると嫌味にしか聞こえん」
アダムはやれやれと言った感じでキャロルを見つめる。
「これは怒らせる前に渡したほうがよさそうだ。君のお目当てのモノを」
キャロルの機嫌取りをするように持っていたケースを渡す。
「でもわからないな。そんな過去の遺産をなにに使うのか」
「確かにオレの求めたモノで間違いはなさそうだ」
中身を確認するとアダムの問いに答えるわけでもなく、モニターにあるモノを映し出す。
「自己再生、自己増殖、自己進化の機能を持つDG細胞。それを組み込んだガンダムだ。お前の要求はコレだろう? なら余計な検索は遠慮してもらおうか」
「確かに我々の関係は同盟ではない。これは余計なことを言ったようだ」
キャロルの見せたガンダムに満足しているのか、キャロルに渡したモノへの興味はなくなっているようだ。
「それで、例のモノの所在は?」
「さぁな。皆目検討もつかない。本当に存在する聖遺物なのか?」
キャロルの答えに少し考えこむアダム。
「存在するさ、間違いなくね。『シェム・ハの腕輪』は見つけ出さなければならないのさ」
「人類の脅威となる聖遺物か」
アダムとキャロルの間に静寂が支配する。お互いに色々と考えているのだろう。
「ところで、パヴァリア光明結社に来るつもりはないかい?」
静寂を破ったのはアダムが先だった。
「何度も言わせるな。オレとお前では最終的な目的が違う。手を組むことなどあり得んとな」
「やれやれ。最近、優秀な部下が数人脱退してしまってね。乏しいのさ、戦力的にもね」
キャロルはその言葉に一瞬驚く。
「お前、あいつらになにをした?」
「なにも。いきなり出て行かれて困っているところさ」
キャロルはアダムの答えに納得などしているはずもない。
(この男、オレにすら話していない思惑があるということか。おそらくあいつらはそれに気付いて離反したと考えるのが妥当か)
「気になるかい? かつての仲間の行方は」
アダムの挑発めいた発言が逆にキャロルの気持ちを落ち着かせる。
「ふん。過去のことだ。それにあの日、オレとあいつらの思想は相反した」
どこか遠くを見つめらキャロルにアダムは違う要求を求める。
「ならオートスコアラーを1体、僕に預けてくれないかい?」
鋭い目つきでアダムを見るキャロル。
「錬金術師は等価交換が基本。代わりになにを差し出す?」
「ダウルダブラの欠片。これでどうかな?」
キャロルはアダムの持ち出した聖遺物を眺め、そして答えを出す。
「ティキをくれてやる。アレはオレの手に余るから処分対象だったがそれでいいならな」
「ティキ? あぁあのオートスコアラーか。悪くない取引だ」
アダムがあっさりと応じたことに違和感を覚える。
「それにしても、『デビルガンダム』に『ネフシュタン』に『ソロモンの杖』。そして未だ発見されていない『シェム・ハの腕輪』と『ネフェリム』に『ダインスレイフ』更に『デュランダル』。世界を滅亡させるほどの力を持つと言われる完全聖遺物がこれだけある。少なくても協力しないにしても、協定は結んでおくべきだと思うけどね」
アダムの言うようにこれらの力を誰が手に入れるかで、大きく戦況は変わると予想される。
「神を撃つ聖遺物か。確かにな。だが、お前とは結ぶことは出来ん」
意外そうな顔をアダムが見せる。
「おやおや、それはなぜなんだい?」
「現在、国連直属の『S.O.N.G』。錬金術師を束ねる『パヴァリア光明結社』。独自の研究を進める米国聖遺物研究施設『F.I.S』。更に裏で暗躍し、すでにネフシュタンを所持していると思われる『フィーネ』。ここにオレたちがいる。その中で1番信用ならないのがお前だからだ。ビジネス以外での付き合いをするつもりはない」
アダムはこれに頷く。
「なるほど。君らしい答えだ。ならば先程渡した聖遺物、『シャッフルの紋章』でどう動くのか、見せてもらうことにしよう」
そう言い残すとアダムはこの場を後にする。ティキを連れてガンダムに乗り。
「本当に世界を壊すつもりですか?」
「エルフナインか。オレの記憶をコピーしてあるお前ならわかるはずだ。それがパパから託された命題だと」
キャロルと瓜二つの少女エルフナインは涙を浮かべながらキャロルを見つめる。
「それでもこんなやり方は間違っています」
「そうか。ならお前はここから出て行くがいい」
エルフナインに冷たく言い放つとキャロルも部屋を後にする。
「ボクがキャロルの暴走を止めないと」
1人残ったエルフナインはそう強く誓う。
(アダムにティキを渡したのは間違いだったか? いや、それよりダウルダブラの欠片のほうが有益なはずだ。それにシャッフルの紋章があればオートスコアラーとあのガンダムたちも動かせる。オレの計画に支障はないはずだ)
自室に戻ったキャロルは先程までのアダムとのやりとりを思い出す。なんの能力もなく、性格にも難のあるティキ。それをあっさりと受け取ったアダム。そこになにか裏があると思っているのだ。