戦姫絶唱武闘伝シンフォギアG 作:フリューゲル
「切ちゃんと響さん大丈夫かな?」
依頼があった数日後、当初の予定通り切歌と響はウェルを迎え入れるために、匿われている岩国基地へと向かっていた。マリアと翼はライブだ。あれから連絡の取れなかった翼だが、ライブにはきちんと来ていた。
「旅行気分じゃないといいんだけど」
あれからたまに未来も顔を出している。
「あの2人なら否定出来ねぇのが問題だな」
本部に残る3人の心配はやはり、響と切歌のコンビだろう。
その心配されているコンビは。
「見るデス、響さん」
「うわぁ。美味しそうだね。切歌ちゃん」
3人の想像を裏切らず、食べ歩きをしていた。
「あっ、あっちも美味しそうだよ」
「本当デース。早く行くデスよ」
両手に抱えきれないほどの食べ物を持ちながら、更に出店を回る。
「やれやれ。僕は引率者じゃないはずなんですけどねぇ」
2人の後ろを歩くウェルはどこか呆れたようにその様子を眺めていた。
「すいません。博士。ちゃんと言い聞かせおきますから」
2人の代わりに一緒に来ている友里が謝罪する。
「ちょうどお祭りやってるなんてアタシたち、ついてるデス。調のご飯も美味しいデスけど、お祭りで食べるのはまた別格デスね」
「本当だよね。こんな美味しい物食べられるなんてラッキーだよねぇ。この雰囲気で食べるご飯って美味しく思えちゃうよね」
任務を忘れて祭りを楽しむ2人に友里も溜め息が出る。
「人選ミスじゃないのかい?」
「もう、響ちゃん、切歌ちゃん。今は任務中よ」
更に呆れるウェルを見て慌てて2人に注意する友里。
「あっ」
「やってしまったデース」
これには友里も呆れる。
夜間。貨物列車に紛れ込んでウェルの移送が始まる。
「すいません。こんな形での移動になりまして」
「僕は逃亡者の身。このくらいでとやかくは言いませんよ」
座席もない列車の中でウェルは床に座りながら答える。
「そもそもなんで脱走なんてしたデスか?」
「あの施設では僕が望む研究が出来ないと思いましてね。いやぁ、規則だなんだとうるさいうるさい。そんなものが研究になんの役に立つのか教えてもらいたいものですね。そんな暇があるのなら聖遺物の1つでも見つけてくるほうが役に立つと思いませんか? 危機感がなさすぎるんですよ。あそこにいるのは自殺願望者たちとしか思えませんね。もっとも……」
その後もウェルの愚痴にも思えるような言葉は続き、迂闊に聞いた切歌は後悔していた。
その時、爆発音と共に列車が止まる。
「どうしたの?」
友里がすぐに状況を確認するため、前の車両にいる者に聞く。
「何者かに爆発物を投げ込まれたようで、今被害状況を確認中です」
友里が他の職員とやりとりしている間に切歌はドアを開けて外を見ていた。
「大変デース」
「どうしたの? あっ!」
切歌がなにかを発見し、響も外を確認して2人して驚いている。
「なにがあったんですか?」
面倒くさそうに立ち上がり、確認するウェル。
「おやぁ? 火事ですか」
止まった場所は街中から離れた場所であったようだが、そこから見える景色が真っ赤に染まっていた。
「助けに行かないと」
響と切歌はすぐに飛び出そうとする。
「待って。2人で行くのはダメよ?」
「どうしてデスか? 逃げ遅れた人沢山いるかもデスよ?」
止める友里に切歌が問いかける。
「私たちの任務はウェル博士をS.O.N.Gまで連れて行くことよ。ウェル博士を狙うものが来ないとは限らない。最低でもどちらかは残ってもらわないと」
友里の言葉に2人は苦い顔をする。助けに行きたい気持ちも強いが、友里の言葉も理解出来るから複雑だった。
「今近くの救急隊に連絡をして協力してもらえるように頼むから、少しだけ我慢してもらえる?」
すぐに携帯でどこかに連絡を入れる友里。
「うーん。これはおかしいですね」
街を眺めていたウェルが呟く。
「おかしいってなにがですか?」
「いえ。この火事は被害がどんどん風上へと向かっています。これはなにか人為的なものがあるように見えませんか?」
ウェルに言われて響も切歌も街をよく見ると、その通りなことに気付く。
「現場の避難はほぼ完了しているみたい。でも広がる火災に人手が足りていない状況らしいわ。司令からの指示で、切歌ちゃんは街へ行って火災の原因の調査を。響ちゃんはここに残ってウェル博士の護衛をお願いするわ」
通話を終えた友里が戻ってきてすぐに指示を出す。
「「はい(デス)」」
返事と同時に切歌は飛び出して行く。
「気をつけて。切歌ちゃん」
切歌の背中を見つめながら、響は胸がざわつくのを感じていた。
【Zeios igalima raizen tron】
イガリマを纏い走る切歌。
「LINKERの時間が切れる前に決着をつけるデス」
自分がシンフォギアを纏える時間が長くないため、前回窮地に陥ったことを反省に、早期決着を目指す。
未だに火災が広がる現場に到着した切歌が見たのは、小さな女の子が逃げるように走り、それを狙い攻撃している女の姿だった。
「この火事はお前のせいデスか。アタシがここで成敗するデス」
「来たか。シンフォギア」
女のほうは攻撃を止め、切歌と向き合う。