戦姫絶唱武闘伝シンフォギアG 作:フリューゲル
「世界を……壊す?」
爆風が辺りを襲う。
「オレが奇跡を殺すと言っている」
キャロルはゆっくりと響を見つめる。
「どうしてシンフォギアを纏わん?」
「戦うより、どうして世界を壊すのかを教えてよ」
当てるつもりがなかったのか、響は無傷で立っていた。
「理由を言えば納得するのか?」
「それは……」
だんだんと怒りを露わにするキャロル。
「でも戦うより話し合いたい」
「お前とは違い、戦ってでも欲しい真実がオレにはある」
シンフォギアを纏うつもりのない響にキャロルは苛立つ。
「父親からの命題だ。お前にもあるだろう」
再び衝撃波のようなものを飛ばすキャロル。
「お父さんから? わたしには……ない」
今度は外すつもりがなかったようで響は直撃してしまう。
「立て、シンフォギア。戦わずにしてオレを黙らせるなど思ってくれるな」
「でも! キャロルちゃん泣いてた」
先程、現れたときのことを思い出す。キャロルの目には涙が浮かんでいたのだ。
「黙れ! シンフォギアもガンダムも出さないと言うのなら、そのまま塵となれ」
「止めようよ。話せばきっと違う道があるよ。奇跡的なことかもしれないけど、それでも道はあるから」
今までで1番怒りに満ちた表情へと変わる。
「奇跡などあるものか。奇跡などオレが全て壊す。オレは奇跡の殺戮者だ」
三度繰り出される攻撃に、響は地に倒れてしまう。
本部での慌てようは例を見ないほどだった。
「そんな。『アメノハバキリ』、『イガリマ』ともに反応ロスト」
藤尭から告げられる言葉に誰もがショックを隠せない。
「先輩がやられたってのかよ」
「切ちゃん。嘘だよね」
「響……」
クリス、調、未来のそれは他より酷く、今にも飛び出して行きそうなほどだった。
『翼なら無事よ』
『切歌ちゃんと謎の少女を確保したと救急隊から連絡がありました』
マリアと友里から入る通信にひとまず安心する。
『それと響ちゃん。ウェル博士も無事です』
ここでようやく未来も安堵する。
「直ちに現場に救護班を出せ」
風鳴司令の指示が飛ぶ。
「今日は挨拶代わりだ。次は容赦はしないと思え」
キャロルとほぼ同時にファラとレイアも小瓶のような物を割り、その場から姿を消していた。
「この程度ではないだろう? 失望させるな! シンフォギア!!!」
キャロルの叫びだけが残っていた。
すぐにヘリで回収された響、切歌、翼の3人は病院へ運ばれ治療を受ける。
マリアや友里も軽く処置はされたが軽傷だった。
「それで君が切歌くんと一緒に保護された少女か」
「はい。ボクはエルフナイン。キャロルの記憶をコピーして作られたホムンクルスです」
司令室にはクリスと調それに未来。風鳴司令とエルフナインと名乗った少女だけがいる。
「キャロルの暴走を止めるために、皆さんの力を貸してください」
「キャロルはチフォージュ・シャトーを起動させ、世界を壊すつもりなんです」
真剣なエルフナインが話し始めることで、司令室は緊張感が走る。
「世界を壊すってそんなこと出来るのかよ」
エルフナインはクリスの方を向いて答える。
「はい。チフォージュ・シャトーにはキャロルの錬金術の全てを注ぎ込んであります。世界を分解するためだけに。ボクはそうと知らず、建設に関わっていました」
「でも、コピーなら想いも同じじゃないの?」
調の質問は当然だと、エルフナインが続ける。
「ボクたちのパパ、イザーク・マールス・ディーンハイムはお人好しな人でして。流行り病に苦しむ村人たちを錬金術を使い、治療にあたりました。しかし、異端技術と恐れられ彼は火刑に処されました」
「そんなことが……」
エルフナインが話すことがいつの出来事かはわからないが、教科書ですら聞いたことがないような惨劇に未来は涙を浮かべていた。
「パパが処刑されるとき、最後に残した言葉。『キャロル。生きて、世界を知るんだ。それがキャロルの』。続きの言葉はわかりません。でもキャロルはそれをパパからの命題と捉え世界を分解するつもりです。ボクはパパが残した言葉は違うと思うんです。答えはわかりませんが」
「錬金術師、不老不死になった者もいると聞く。かなり長い時間をかけた計画なのだろう」
壁に寄りかかりながら翼が入ってくる。隣には響と切歌の姿もある。
「動いて平気なのかよ?」
「切ちゃん」
「響、大丈夫なの?」
クリスに調、未来が慌てて駆け寄る。
「このような非常時に寝てなどいられまい」
「しらべー、面目ないデス」
「平気。へっちゃらだよ」
3人の後ろではマリアが呆れた顔をしている。
「平気なものですか。絶対安静を言われているのよ。それでも」
「黙って負けたまま終われない。ですかねぇ。僕としても未知の力、錬金術には興味はありますからね。彼女たちの治療には全力を尽くさせてもらいますよ」
マリアの言葉を続けるようにウェルが言う。
「皆さん、お願いします。敵だと罠だと思うかもしれません。それでもボクに力を貸してください」
全員揃ったことでもう一度頭を下げるエルフナイン。その頭に司令の手が優しく添えられる。
「敵とか味方とか言う前に、子供がやりたいことを全力で支えてやるのが大人の役目だ」