戦姫絶唱武闘伝シンフォギアG 作:フリューゲル
「もう響。遅れるよ?」
そう言いながら靴を履く少女と制服の袖を通せず慌てる少女。
「待ってよ。未来」
なんとか制服を着ることが出来た少女、立花響は玄関で呆れ顔をしている親友、小日向未来の腕にしがみつく。
「今日から新学期。わたしたちももう2回生になるんだから」
私立リディアン音楽院高等科の制服を着た2人は仲良く歩きながら登校している。
「あっ」
なにかに気付くと響は未来から離れて行く。
「ちょっと響?」
未来が響を目で追うとその視線の先には大きな荷物を持って階段の前で立ち尽くしているお婆さんがいた。その光景から未来は思うのだ。
(また響のお節介か)
見ると荷物を持ち、お婆さんをおんぶしようとしている響が目に入り、慌てて未来は走り寄る。
「もう。危ないから。荷物はわたしが持つからちょうだい」
「あははっ。ありがとう未来」
未来に荷物を預け、お婆さんをおんぶして響は階段を登る。そんな響を見て未来はどこか呆れながらも優しく微笑む。自分の親友はこういうお人好しなんだと。
「どうするの? 完全に遅刻だよ?」
お婆さんからお礼を言われ再び登校しようとして時間を確認したところ。遅刻ギリギリだったのだ。元々響の寝坊が原因でギリギリの登校になりそうだったこともあり、遅刻は避けられないこととなっていた。
「大丈夫。諦めたら駄目だよ」
まだ間に合うと未来の手を取って走り出す。
当然間に合うはずもなく。2人揃って教師から説教されることとなっていた。
それから学校で友達と楽しくお喋りしたり、授業中に響が居眠りして怒られたり、変わらない光景が流れている。寮で同じ部屋で生活する2人は仲良く帰宅し、一緒にご飯を食べて、一緒にお風呂に入り、同じベッドで眠る。そんな当たり前の生活がずっと続くんだと、この翌日までは響も未来も信じて疑っていなかった。
「やっぱり目立つかなぁ?」
お風呂で響がそう聞くのは胸にある傷。
「そんなことないと思うよ。裸にならないと見えないと思うもん」
2人にとって忘れることの出来ない日の出来事。お互いにそのことには触れず、ジッとその傷を見つめる。まるであの日を思い出すかのように。
ー2年前ー
「えぇっ? 今日のライブ来れないの?」
『うん。ごめんね。急にお婆ちゃんのところに行かないといけなくなって』
電話で話す響の顔は悲しみでいっぱいだった。
「そんなぁ。未来が誘ってくれたライブなのに。ツヴァイウイングのチケットも簡単に取れないんだよ」
『ごめん。響はわたしのぶんまで楽しんできて』
そこで通話が終わった音が響の耳に流れる。親友と一緒に楽しみたかったのは大きい。それでも大ファンであるツヴァイウイングのライブが楽しみなのは隠せず、響は仕方ないと諦め1人で楽しむことにする。
ステージの舞台裏で機材の影で1人佇む少女がいた。
「こんなところにいたのか翼」
佇む少女、風鳴翼に声をかけるのはツヴァイウイングとして翼と一緒に今からステージに上がる天羽奏だった。
「また緊張してるのか?」
翼をからかうように頭に手を置きながら言う。
「奏は緊張しないの? こんなに沢山お客さん入ってるのに」
「しないさ。だってあたしと翼。両翼揃ったツヴァイウイングならどこまでだって飛べるだろう?」
笑顔を見せながら話す奏に翼の緊張も少しほぐれていく。
「それに今回は特別な客人もいるからな」
そう奏が指差した方向にいた女性。今やアメリカでトップアーティストとして活躍しているマリア・カデンツァヴナ・イヴだ。
「こんなところにいたのね。今日のステージに向けての調子はどうかしら?」
奏の声に気付いたからだろう。マリアが話しかけてきた。
「今年には私と貴女たちとのユニットの話も出ている。貴女たちの最高のステージ見せてもらうわ」
日本とアメリカのトップアーティスト同士のユニット。そんな夢のような話が実現しようとしていたのだ。
「任せてくれよ。なぁ翼?」
「もちろんだとも」
もう翼の顔に緊張や不安の様子はなくそれを見た2人は安堵する。なにせ今日のステージはただのライブじゃない。
「今日はいつもくっついてるチビっ娘たちは一緒じゃないのか?」
「あの娘たちなら今回は留守番よ。なんでも新薬のテストだそうで」
奏とマリアの話に翼は耳を傾ける。内容はもちろんわかるし、その意味も知っている。それでも今の翼の心にはライブを楽しむことしかない様子だ。
「3人共こんなところにいたのか。悪いんだが、最終チェックのミーティングを始めたい来てくれるか?」
体格のよい男の言葉に真剣な表情へと変え、着いて行く3人。