戦姫絶唱武闘伝シンフォギアG   作:フリューゲル

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エピソード21《立ちあがる花に響くうた》

「そんな……嘘?」

 

 

 

「マリアが裏切るはずないデスよ」

 

 

帰投した装者たちには先程の戦闘、マリアが『黒いガングニール』を纏い、『黒い見慣れぬガンダム』で戦ったこと。その後、連絡が取れず行方がわからないことが告げられる。

 

 

「暁や月読の気持ちはわかるが」

 

 

「翼さんになにがわかるんですか?」

 

 

翼が宥めようとするが、調にすぐ反発されてしまう。

 

 

「マリアとはレセプターチルドレンとして集められたときから、ずっと一緒だったデス。S.O.N.Gにアタシたちが来たのもマリアが行くからデス」

 

 

「そのマリアがいないなら、わたしたちがここにいる意味は」

 

 

マリアを含めた3人がS.O.N.Gに来たのは、『2年前のライブ事故』から半年ほど経った頃だ。奏を失った翼をフォローするためマリアが望んだからだ。調と切歌はそのマリアについて来る形で装者見習いとして所属となった。

 

 

「きっとマリアさんにはなにか事情が」

 

 

「響さんが、ギアを纏えないから! 響さんが戦えてたらマリアも!」

 

 

響の言葉を遮るように叫んだ調。調のこんな姿を見たことがなかったため、みんな黙ってしまう。

 

 

「あははっ。そうだよね。わたしが戦えていたらこんなことならずに済んだだよね」

 

 

涙を流しながら笑顔を作る響に、調は自分の発言が響を傷つけたと後悔する。

 

 

「あの、響さ」

 

 

「ごめん」

 

 

調が謝ろうとするより早く、響は部屋を飛び出してしまった。

 

 

「今はそっとしておいてあげて。響はきっと大丈夫だから。わたしが後でちゃんと言っておくから。ね?」

 

 

追いかけようとする調や切歌に未来が声をかける。

 

 

「それより、あいつがガンダム呼べなかった理由はわかったのかよ?」

 

 

あの場にいたクリスには、マリアのこと以上にそっちが気になりエルフナインやウェルに聞く。

 

 

「詳しいことはわかりません。おそらく、響さんの精神的な要素がガンダムとシンフォギアのリンクに影響したと思われます」

 

 

ウェルも隣で両手を肩の辺りで広げて、首を振っていることから、エルフナインと同じくわからないと言うことなのだろう。

 

 

「お人好しだとは思っていたけど、ここまでとはな」

 

 

「クリス先輩、それでもそこが響さんのいい所デスよ?」

 

 

またクリスが響を戦闘に参加させまいとすると思ったのか、切歌が慌ててフォローする。

 

 

「んなことはわかってるよ。せめて理由がわかればな」

 

 

クリスの言葉に翼は驚く。つい先日まで自分と同じく、響に反対だったクリスが響を認めた発言に。

 

 

「そうだな。未来くんは響くんと付き合いが長いようだが、なにか心当たりになることはないかな?」

 

 

指令から話を振られて少々悩む未来。響が争いを嫌う理由に心当たりがないわけじゃない。むしろこれが理由だろうというものはある。しかし、それを簡単に自分が話していいものかどうか。それを悩んでいた。

 

 

「どうした? 小日向。ないのならないで構わないのだが?」

 

 

「いえ、あるのはあるんです。でも」

 

 

チラッと翼を見る。話す内容が翼には無関係ではないからだ。もちろん勝手に話すことも躊躇われる。

 

 

「是非教えてもらえませんか? そこから響さんの助けになれるかもしれません」

 

 

知っているなら話してほしいとエルフナインが未来に詰め寄る。

 

 

「わかりました。響を呼んで来ます」

 

 

本人から話させよう。そう未来は思ったのだ。

 

 

未来が響を連れて戻ってきたので、調がすぐに謝ろうとするが、未来に止められる。まずは話を聞いてからと。

 

 

「えっとぉ。そんな話すような内容じゃないんだけど……」

 

 

「響が話すのが辛いなら、わたしがフォローするから。だから響の口から話したほうがいいと思うの」

 

 

口籠る響の背中を押す未来。

 

 

「未来……」

 

 

未来の言葉で決心がついたのか、響がゆっくりと話し出す。

 

 

 

ことの始まりは13年前、初めてデビルガンダムが出現した日。そこでノイズに襲われた響とその両親。母親はその日行方がわからないことから死亡扱い。ノイズによって死に追いやられた者は遺体が残らないため、行方不明者が死亡扱いされることは珍しいことではなかった。同じ日に父親が今の両親に響を預け、行方をくらませたこと。数年後に死んだと聞かされた。

 

 

そして2年前のツヴァイウイングのライブでの惨劇。あの日その場に響はいた。奏が守ってくれたから響は生き残れた。そのガングニールで怪我をする事態はあったが。

 

 

ライブの生存者。ノイズによって死んだ者より、逃げ惑う中で他人に踏まれての圧迫死や瓦礫に埋れて亡くなった者のほうが多い。中にはノイズから助かるために他人を犠牲にした者もいただろう。そのためか、世間は冷たかった。

 

 

それがネットやメディアから広がり、生存者は誹謗中傷に晒された。家が特定された者は窓を割られたり、壁に落書きされたり。響もそんな1人だった。そんな毎日に弱る母親と祖母。そして、ついに言われた育ての父親からの一言『こんなことなら、お前を引き取らなければよかった』。学校でも虐めの対象とされ、教師すらも見て見ぬふり。そんな日常がずっと繰り返されていた。

 

 

響と未来から語られた過去にその場にいる全員が言葉を失う。中には涙を流している者もいる。

 

 

「何度も何度もわたしがいなくなればって思いました。でも、負けたくなかった。奏さんが、おかあさんが最後に残してくれた言葉。『生きるのを諦めない』。これをずっと支えに」

 

 

沈んだ空気を変えるためか、明るい声で続ける。

 

 

「それに、わたしにはずっと未来がいてくれた。誰も味方がいないときでも、ずっと隣で笑ってくれたんです。だから、わたしは平気、へっちゃらなんです」

 

 

「多分ですけど、この経験から響は人と争うことを拒否してしまうと思うんです」

 

 

だからキャロルたちとの戦いで、響は無意識に戦うことを拒否しギアやガンダムが反応しなかったのではないか。未来はそう思っていた。

 

 

「立花、その、あの頃の私は、奏のことばかりしか見えてなくて、会場での生存者や被害者のことまで、考えが及んでいなかった。今更なんの意味もないかもしれないが、すま」

 

 

話を聞いて1番複雑な顔をしていた翼。関係者として、当事者として、知らなかったでは済まないと思ったのだ。だから、今更でも謝ろうとした途中で響が翼の手を握る。

 

 

「わたし、リハビリを頑張れたのも。学校や家でどんなことがあっても、頑張ろうって勇気つけられたのは翼さんの歌なんです。だから、わたしは翼さんに助けてもらってばかりですね」

 

 

そう言って笑う響に翼は逆に助けられたのは、自分のほうだと思うのだ。

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