戦姫絶唱武闘伝シンフォギアG 作:フリューゲル
空に浮かぶ要塞。チフォージュ・シャトーの主であるキャロルは1人で座している。
「みんな逝ったようだね。満足だったのかな? 彼女たちは」
いつのまにか来ていたアダムにキャロルは鋭い視線を向ける。
「勝手に入ってきて、好き放題言ってくれる」
「くだらない言い合いはそのくらいにしてもらおう。我々は今回そんなことのために集まっているわけではない」
アダムとはキャロルを挟んで反対に立つサンジェルマンに視線が集まる。
「お目当ての行方がよくやくわかったワケダ」
「今南極に向かっているらしいわ」
プレラーティとカリオストロが説明を引き継ぐ。
「どうして南極なんだろうね?」
「なるほど。メガラニカか」
アダムの呟きにキャロルが返すと全員の表情が変わる。驚きと納得の混ざった複雑なものへと。
「確かにあそこは失念していた。なら、アレの狙いは」
「シェム・ハの腕輪。だろうね。間違いなく」
未だ発見どころかなんの情報も掴めていなかった聖遺物。それを敵は狙っていると思われる。
「腕輪がヤツの手に渡ると色々と面倒なワケダ」
「確かにそうよね。どうする? みんなで極寒の地にバカンスでも行っちゃう?」
プレラーティの言うように、シェム・ハの腕輪を渡すわけにはいかないのはここにいる全員の共通認識である。
「ふむ。僕たちは出向くのは当然として。どうしたものかね」
「シンフォギアか」
出来ればシンフォギアにもこの決戦に参加させたいのも共通目的であった。
「シンフォギアが参加しないなら、散って逝ったオートスコアラーも報われないわ。シンフォギアの実力を測ってくれた彼女たちが」
サンジェルマンの言葉にキャロルが返す。
「それは問題はない。すでに毒は仕込んである。後は適当な情報を流せば奴らは来るはずだ」
キャロルの言う毒がなんのことなのかわかっているため、そこには誰も触れない。
「少しの情報か。それをどうするかが難しいところね。与えすぎると後々動きにくくなる」
「少なすぎるとシンフォギアが動かない可能性もあるのよね」
サンジェルマンやカリオストロの言うように流す情報の分量には慎重になる。
「そこはオレを餌にする。そうすれば食いつくはずだ」
キャロルの案にアダムは満足そうに、サンジェルマンは悲しそうに頷く。
キャロルの思惑通りS.O.N.Gには、匿名で情報の提供が入る。
「うむ。どう思う?」
その送られた情報は現在、装者たちにもウェルやエルフナインにも伝えられていない。
「罠だと思いますが、本当なら無視出来ないかと」
緒川が司令に返す。
「錬金術師の結社が南極にか。確かめる必要はあるが」
現在動かせる装者がおらず、悩む風鳴司令。
「切歌ちゃんと調ちゃんはまだ順調とは言えませんし、翼ちゃんは退院も出来ていない状況ですしね。響ちゃんはやはり危険ですし、クリスちゃんしかいませんからね」
それを皆が理解しているため、複雑になる。
「とりあえず南極基地に連絡だ。それらしい物があるか確認だ」
その場はそれで解散となった。
後日、南極基地から通信が入るとそうも言っていられなくなる。
『見つかりましたよ。それらしい建物が』
「そうか。ご苦労だった」
通信を切ろうとするが相手の言葉は続く。
『こちらにもノイズが確認されたワケダ。是非協力をお願いしたいワケダ』
「あぁ善処しよう」
そこで通信は切れる。
「さてどうしたものか」
今回は翼を除く装者全員がいた。もちろんウェルやエルフナインもだ。
「どうって助けに行かないんですか?」
響がそう言ったことで未来以外のメンバーは表情が曇る。
「そうですね。こっちにもノイズは出ます。情報が罠の可能性もある限り全員とはいかないでしょうね」
もう1人表情を曇らせていなかったウェルは、響の発言にすぐに反応し、返す。
「そうだな。博士の言う通り、ここは2つに戦力を分けよう。緒川と藤尭、エルフナインくん。クリスくんと切歌くん。以上のメンバーで南極へ向かってくれ。残りのメンバーはここで待機だ」
それぞれが様々な表情を浮かべる。特に響や調など待機になったメンバーはどこか不満そうだ。
「こっちは大丈夫だ。あたしたちに任せとけ。だからそっちは頼んだぞ?」
クリスは調から目を離さずに言う。そのため調にもその意味はわかったので頷く。口には出せないが、響のことだと。
「クリスちゃん……」
「そう心配すんなって。なにも決着つけようってんじゃないんだ。あたしたちは向こうの目的とかを探るだけさ。決着は先輩が戻ってからみんなで、だろ?」
心配そうに見つめる響もクリスの言葉を聞いて、笑顔になる。
「よし、出発は明後日。急な出発で悪いがよろしく頼む」
「緒川、そちらは頼んだ」
司令は残るため、南極での指揮権は緒川へ託される。
「僕が留守の間、翼さんのことお願いします。お見舞いに行ってあげてくださいね」
そんな緒川は翼のことを響と未来へ頼む。
「わたしたちでいいんですか?」
緒川が頷いたので響は気合いを入れ、未来はそんな響に不安を感じていた。