戦姫絶唱武闘伝シンフォギアG 作:フリューゲル
リディアン音楽院、二回生の教室で響と未来は仲良く授業を受けていた。普段から任務のないときにはこうして学院に通っている響だが、今はどこか上の空だ。
「クリスちゃんと切歌ちゃん大丈夫かなぁ」
現在はクリスと切歌たちが南極に行っている頃だ。そのことが気になって授業どころではなかった。
「ちょっと響、ちゃんと聞いていないとまた怒られるよ?」
隣でボーっと外を見つめる響に未来が注意を促すが、すでに時遅く響は教師に見つかり怒られるのだった。
「はぁやっぱりわたし呪われてるかも」
授業を聞いていなかった罰として課題を渡された響がうなだれているのを未来は呆れながら見つめている。
「クリスや切歌ちゃんが心配なのはわかるけど、今日は翼さんのお見舞い行くんでしょ?」
「そうだった! 緒川さんに頼まれた大切な任務だよ」
そんな会話をする2人の前に溜め息を吐きながら、暗い表情の調が横切る。
「調ちゃん?」
「あっ、響さん。未来さん」
お互いに顔を見合わせるとなんとなくわかる。同じ理由なのだろうと。
「やっぱり切ちゃんが心配で」
特に常に一緒にいて、あまりバラバラに行動することのない調は余計にだろう。
「今から翼さんのお見舞いに行くんだけど、調ちゃんもどうかな?」
未来の言葉に調の表情が明るくなる。
「憧れの翼さんのお見舞い。うん、是非行きたい」
3人はお見舞いになにか買って行こうと話ながら、ゆっくり校門を出て行く。それを見つめる姿に気付かずに。
「アレがシンフォギア装者たち。とりあえず観察させてもらうとしようか」
誰に言うでもなく小さく呟く。
「了子先生さようなら」
そんな他の生徒の声が聞こえていた。白衣を着た女性は優しい笑顔で声をかけた生徒に手を振っている。
お見舞いには果物と言う響の案で少し遠回りしたが、3人は翼の入院する病院へとやってきていた。
「それで翼さんの部屋はどこなんですか?」
「えっ?」
調に聞かれ、響が固まる。そう、肝心なことを響は聞いていなかったのだ。
「まったく響はこういうところ抜けてると思うな。まぁ響だからしょうがないんだけどね。わたしが聞いておいたから行こう?」
「いやぁ、本当に未来がいてくれてよかったよ」
誤魔化すように笑う響に未来と調は冷ややかな視線を向けながら、翼の病室へと歩き出す。
他の部屋とは明らかに違う警備体制の病室。トップアーティストである翼が入院する病室だから当たり前かもしれないが、あまりにも自分たちの知っている病室と違い、3人は驚きから呆然としていた。
コンコン!
いつまでもこうしていても仕方ないと未来が軽くノックする。
「はい」
入院着姿の翼が出迎えてくれた。が、その部屋の中を見て3人は慌てる。
「翼さん、これは?」
「きっと泥棒が入った後」
服があちこちに散乱しており、他にも雑誌やペットボトルなど様々なものが散らばっているのだ。
「あっ、いや、これは……」
辺りを警戒する響と調に真っ赤な顔をした翼がなにかを言おうとする。しかし、2人は翼を守る使命感に駆り立てられ聞いていない。
「私は片付けが苦手なんだ」
恥ずかしそうにポツリと呟かれた言葉に3人は翼を見る。
「いつもは緒川さんにしてもらっているのだが、ここ数日来られていなくて」
まるで顔から湯気でも出そうなほど真っ赤にする翼。
(響さん、この可愛い人誰?)
(なんか普段とのギャップが凄いよね)
(もう、2人とも翼さんが困ってるからそのくらいに)
3人で固まってヒソヒソと話す姿に翼はどうしたものかと、頭をかく。
「まさか翼さんにも苦手なものがあるなんて、驚きです」
「完璧になんでも出来るイメージ」
緒川さんの代わりにと3人で部屋を片付けながら、響と調が言う。
「あの、翼さん。もしかしてこれも緒川さんに?」
そう聞く未来の手には翼の下着があった。
「すまない」
完全にうなだれる翼。
「終わりましたよ。翼さん」
翼が顔を上げると、部屋は綺麗に片付けられており、改めて3人に頭を下げる。
部屋が片付いたこともあり、途中で飲み物を買い屋上へ向かう。屋上にあるベンチに皆で座ってゆっくりと話し出す。
「実はライブのときにマリアから聞いた。立花が私や雪音に認めてもらうためにどれだけ頑張っているのかを。私はそれに向き合うことを拒んでいた。すまなかった」
そんな翼を見て、慌てて響が止めに入る。
「私は立花に助けられている。いや、立花だけではない。雪音やマリア、暁や月読。もちろん小日向にもだ。私にはこんなにもよき仲間に囲まれているのだと。だから、私も一緒に戦わせてほしい。許してもらえるなら」
「そんなの」
響は未来や調と頷き合うと翼に笑顔を向ける。
「当たり前じゃないですか」
翼の顔からも笑顔が見える。
リディアンの通路を歩く白衣を着た女性。明らかに人気のない方向へと向かっている。少し大きめの扉にカードをかざしてロックを解除する。
扉が開くと巨大なエレベーターで、それをどんどん下降させる。
『特殊災害二課』と書かれた古びた扉を開けるとそこには大きなカプセル。中は液体で満たされていて、その中にあるモノを見て女性は微笑む。
「ようやくだ。コレが完成すれば私の悲願は達成されたも当然」
カプセルの隣にある装置にシェム・ハの腕輪を置く。
「コレの起動もここなら最適」
その誰もいない地下施設で女性の高らかな笑い声だけが響いていた。