戦姫絶唱武闘伝シンフォギアG   作:フリューゲル

32 / 39
エピソード32《侵された領域》

「全く無茶をする」

 

 

キャロル戦を終えて帰投すると司令が翼に言う。

 

 

「私だけ見ているなど出来ませんでした」

 

 

翼の返答に静かに頷き、それ以上は追求しなかった。

 

 

「しかし、敵は本当に討てたのでしょうか?」

 

 

「先輩、どういう意味だよ?」

 

 

翼は先程の戦いで思うところがあったのか、渋い表情をしていた。

 

 

「私の杞憂に過ぎなければよいのだが。あれほどの強敵があれで終わるのが些か気になってな」

 

 

「キャロルはまだ終わっていないと思います」

 

 

翼の言葉にエルフナインが答えたことで、全員の視線が集まる。

 

 

「キャロルは対デビルガンダム用の機体を持っていたはずです。それを使わなかったのは、別の目的があったと考えるべきでしょう」

 

 

エルフナインの言葉に憤怒する装者たち。

 

 

「じゃあ、あいつはワザと負けたってのかよ?」

 

 

「すみません。そこまではわかりません。ですが、キャロルはこれまで何度も魂をコピーして転生を繰り返しています。ここで終わるとはどうしても思えません」

 

 

キャロルが何度も転生していることに皆驚く。

 

 

「ボクは元々キャロルの予備媒体でした。しかし、廃棄となってしまいました。それは他にきちんとした媒体が出来たからだと予想されます」

 

 

「そんなエルフナインちゃんが」

 

 

未来が静かに呟くが、それぞれが思うところがあるのか、黙ってしまう。

 

 

「キャロルちゃんが最後に言った言葉。呪われた旋律ってどういう意味だろう」

 

 

「呪われたか。それはシンフォギアのことを指しているのか、はたまた違う意味か」

 

 

響の呟きもあってより皆が考えこむ。

 

 

(正直、ガンダムのハイパーモードも見れましたし、例のモノも見つかったようですしね。融合症例は気になりますが、そろそろここも引き際ですかね)

 

 

ウェルは一度響に視線を向けるが、すぐにモニターへ移す。

 

 

(アレを持ち出す算段。ないわけではありませんが、少々リスクが高いですね。やはり彼女たちに協力を仰ぐとしましょうか)

 

 

モニターに映る完全聖遺物。ソロモンの杖を眺めながら呟く。

 

 

「これからどうするデスか?」

 

 

切歌の言う通り現状では打つ手がなかった。

 

 

「なんとか向こうさんの目的がわかれば撃って出ることも出来るのだがな」

 

 

それから数日後のことだった。アルカ・ノイズが5箇所同時に出現したのは。

 

 

「5箇所だぁ? こっちも分散して叩くしかねえってか」

 

 

「でもそれだと」

 

 

クリスの言葉に調が返す。装者は現在5人。響にも出てもらわないと足りないのだ。

 

 

「1人づつになるね。でも大丈夫。へいきへっちゃらだよ」

 

 

明るく笑う響に他の皆は表情が曇る。

 

 

「しかし、それでは本部の守りが手薄になってしまいます。誰か1人残すべきでは?」

 

 

「しかしそれでは、1箇所の被害が大きくなるデスよ?」

 

 

 

「でも、ここを疎かにもできない」

 

 

「行けない場所に被害が出てしまうよ」

 

 

「だからって罠かもしれないのに、全員で行くわけにも行かねえだろ」

 

 

装者たちの意見は割れる。

 

 

「おそらくですが、響さんはまだ大丈夫だと思います。来ている錬金術師によりますけど」

 

 

エルフナインが小声で指令に伝える。

 

 

「ふむ。今回はとりあえず全員出撃してもらおう。本部なら俺たちがいる。心配はいらないさ」

 

 

それを聞いて装者たちは様々な気持ちを抱えたまま、出撃する。

 

 

【Imyuteus amenohabakiri tron】

 

 

シンフォギアを纏い、それぞれに散る。

 

 

『現場には錬金術師がいるはずです。まずは錬金術師を見つけてください。錬金術師を抑えないとアルカ・ノイズをどんどん出されるはずですから』

 

 

現場に向かう装者たちにエルフナインから通信が入り、まずはアルカ・ノイズを蹴散らしながらも錬金術師を探す。

 

 

『こちら翼、建物の影に錬金術師を発見。ですが逃げられました』

 

 

『月読調。同じく錬金術師を発見。こっちも逃げられた』

 

 

到着してアルカ・ノイズを倒す響の耳に他の装者たちの報告が入る。

 

 

「いた!」

 

 

響も頭までローブで隠した錬金術師を発見し、取り押さえに動く。

 

 

「見つかったか。だが我々の役目もここまで」

 

 

そう言ってテレポートジャムを取り出す錬金術師。

 

 

「役目?」

 

 

響の問いかけには答えず、錬金術師は撤退する。

 

 

『おい! 本部応答しやがれ!』

 

 

そんなとき、クリスの叫ぶ声が通信機から聞こえる。

 

 

『どうなってるデスか? 本部、聞こえるデスか?』

 

 

切歌の言葉からは焦りも感じられ、響にも嫌な予感が襲う。

 

 

「そんな本部には未来も」

 

 

慌てて本部に戻ろうとする響の前にアルカ・ノイズが立ちはだかる。操る錬金術師がいなくなり、ただ暴れるだけの存在となって。

 

 

 

「そこをどけぇ!!」

 

 

パンチを上空から撃ち落とし、どんどん殲滅していく。

 

 

『立花聞こえるか? 私も今からそちらに駆けつける。合流したらすぐ本部へ戻るぞ?』

 

 

「わかりました」

 

 

比較的近くにいる翼から通信が入る。

 

 

「未来、待ってて。すぐ行くから!」

 

 

その後も殴って蹴ってを繰り返して、アルカ・ノイズを勢いよく倒す響。しかし、途中で胸に痛みを感じる。

 

 

(胸が熱い。張り裂けそうだ)

 

 

「立花!」

 

 

ゆっくりと落下する響を駆けつけた翼が受け止める。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。