戦姫絶唱武闘伝シンフォギアG 作:フリューゲル
本部では、錬金術師たちに襲撃されていた。
「相手がノイズでないなら、俺が出張る!」
指令や緒川が先頭に立ち、錬金術師と戦う。しかし、窮地に追い込まれた錬金術師がアルカ・ノイズを呼び出すことで逆転してしまう。
「なにが目的だ?」
指令や緒川が戦う間、他の職員や未来は避難をしていた。そちらにも錬金術師が回り込み、追い込まれる。
「見られたからには生かしておけない」
エルフナインの手を取り、走っていた未来は絶望を感じる。助けに来てくれる人はおそらくいない。
「エルフナインちゃんは逃げて。ここはわたしが囮になるから」
「出来ません! 未来さんを置いてなんて!」
2人が話している隙をついて、錬金術師が攻撃をしようと手に不思議な力を集めていた。
「させませんよ」
横から体当たりされ、錬金術師は倒れる。
「僕では押さえるのは無理です。早く逃げましょう」
ウェルは体当たりした体を起き上がらせ、2人に告げる。
錬金術師がもたつく間に走る3人。
「どうするつもりですか?」
闇雲に走っているわけではないと感じたエルフナインがウェルに尋ねる。
「ソロモンの杖を起動させます。ノイズにはノイズをぶつけましょう」
ウェルの言葉を聞いて迷ってしまう2人だが、他に方法も思いつかず、走る。
「ソロモンの杖。これさえあれば僕は英雄だぁ!」
ソロモンの杖を使い、ノイズを呼び出すウェル。アルカ・ノイズとノイズが対消滅していく様を見て選択は成功だったと言える。
「目的のモノは手に入れたワケダ」
目の前にプレラーティが現れ、エルフナインと未来は表情が強張る。
「ええ。この通りです」
プレラーティに手に持つソロモンの杖を見せるウェル。
「えっ? 博士、どういう?」
「すみませんね。僕はもうここには用はないのです。残念ですが。そこで一応聞いておきます。僕と一緒に行くつもりはありませんか?」
ウェルの言葉に思考停止するエルフナイン。
「なにが目的なんですか?」
未来は強く睨みつける。
「詳しいことは言えないワケダ。しかし、誰かに支配されることのない世界、争いのない世界を目指すのは嘘ではないワケダ」
「わたし……」
未来は答えられずに戸惑っていた。
「未来!」
そこへ響が戻ってきた。顔や腕などに金色の鱗のようなものが貼り付いており、それの意味を誰もが知っている。
「もしかして響さんの融合症例はもう……」
エルフナインが小さく呟く。
「行っちゃダメだ! 未来!」
精一杯未来へと手を伸ばす響。
「面倒なことになりそうだ。行きますよ?」
未来の肩をウェルが掴み、プレラーティがテレポートジャムを取り出す。
「響!!」
「未来!!!」
響と未来の手が触れる。しかしそれも一瞬で、すぐに離れてしまう。ウェルが未来を引き寄せたからだ。
「未来」
倒れた響が視線を戻すとそこには、未来の姿はなかった。
「未来を守れなかった! 未来を!」
床を何度も殴る響を止める術がエルフナインにはわからなかった。
「立花、大丈夫か?」
翼がやって来るが、響の姿を見てすぐに響の頬を叩く。
「なにをやっているの?」
頬を抑えながら、響はゆっくりと翼へ顔を向ける。
「翼さん! 未来が! 未来が!」
翼の胸に飛び込み涙を流す響。その様子に翼は戸惑いながらも響の頭を撫でる。
「いったいここでなにが?」
「それはボクが説明します。とりあえず皆さんと合流しましょう」
エルフナインの提案で、合流することを優先することにする。クリスや切歌、調も本部に帰還中であり、それを待つことに。
「これは……」
本部に戻ってきた装者たちが最初に見たもの、それは見事なまでに無傷に本部だった。
「どうなってるデスか?」
最悪も想定して戻った装者たちには、意外な光景だった。
「最初から本部の制圧や破壊が目的ではなかったようで、こちらへの被害は少ないですね。戦闘の影響で多少傷ついた場所もありますが」
緒川の説明する通り、通路などにはその痕跡があるが、司令室をはじめとする他の場所への被害はほぼないと言える。
「でも途中で、本部と通信が出来なくなってやがった。が、それはどうなんだ?」
「通信妨害が行われたようね。今博士が持ち出したと思われるデータを照合中よ」
友里の説明にクリスも納得する。
「つまり目的はソロモンの杖。それと博士の離脱だった。というわけですか」
「もしくは未来さんも目的だったのかもしれません。博士はボクや未来さんのピンチを救ってくれましたから」
エルフナインの言葉に響は拳を強く握りしめる。血が滲むほどに。
「響さん」
そんな響の手を調が優しく握る。
「調ちゃん」
どこか悲しそうな笑顔を響は調に向ける。手も少し緩めて。
「それで行き先の検討はついているのかよ?」
「おそらくだが、米国聖遺物研究所『F.I.S』だろう」
そこは元々ウェルがいた組織。そして切歌や調、マリアもいた組織だ。
「きっとマリアもそこにいるデスよ。でも」
切歌の疑問は皆も感じていた。
「きっとマリアにはなにか事情があったんだよ」
「どんな事情だって言うデスか? アタシたちを置いて行くほどデスか? あのマッドサイエンスと仲良くするほどデスか?」
調の肩を掴み、突っかかる切歌。
「おい、やめろって」
慌ててクリスが切歌を調から引き離す。
「それはわからない。でもわたしたちがマリアを信じてあげないと」
「ああ。そうだな。私たちがマリアを信じよう。そしてマリアがいるから、小日向も無事だと信じて」
調の肩に手を置いて翼が優しく微笑む。
「こんなときに言うべきではないと思います。ですが、響さんはもうシンフォギアを纏うことは難しいと思います。先程、侵食が進んでいると思われる現象を確認出来ました。検査してみないとはっきりとはわかりませんが、おそらく」
エルフナインの告げた言葉に全員が言葉を失う。響は膝から崩れていた。
「わたしがもう纏えないってどういうこと?」
力なく呟く響に、エルフナインは辛そうな表情をしたまま、それでも冷酷に告げた。心臓付近にガングニールの欠片が埋まっていること。それが響がシンフォギアを纏える理由であること。その欠片がどんどん響の体を侵食していることを。
「そんな……」
「まだ決まったわけではない。今は検査を受けて結果を待つべきではないか?」
翼の呼びかけにも、響は反応せず抜け殻のように呆然としていた。