戦姫絶唱武闘伝シンフォギアG   作:フリューゲル

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エピソード34《血飛沫の小夜曲》

薄暗い場所、地下通路で歌が聞こえる。優しい歌声が響くその場所に立つ、2人の少女。

 

 

「あなたが歌わなくちゃいけないの?」

 

 

ピンクの髪をした少女が茶髪の少女に話しかける。

 

 

「わたし……歌うよ」

 

 

『ネフィリムの出力は依然不安定。やはり歌を介さずの強制起動では完全聖遺物を制御できるものではなかったのですね』

 

 

通信機からナスターシャの声が聞こえる。

 

 

「でも、あの歌は!」

 

 

「ふふっ……。わたしの絶唱でネフィリムを起動する前の状態にリセットできるかもしれないの」

 

 

茶髪の少女は、笑顔を見せながら言う。

 

 

「そんな賭けみたいな! もしそれでもネフィリムを抑えられなかったら!」

 

 

「その時はマリア姉さんがなんとかしてくれる。F.I.Sの人達もいる。わたしだけじゃない……。だから何とかなる」

 

 

幼き頃のマリアに、そう強い決意を示す少女。

 

 

「セレナ……」

 

 

マリアは自身の妹である、セレナ・カデンツァヴナ・イヴを悲しげに見つめていた。

 

 

「ギアを纏う力はわたしが望んだモノじゃないけど……。この力でみんなを守りたいと望んだのはわたしなんだから……」

 

 

マリアから距離を取り、力強く目を見開き、静かにセレナは歌い出す。終わりの唄。絶唱を。

 

 

【Gatrandis babel ziggurat edenal

Emustolronzen fine el zizzl】

 

 

辺りを巨大な熱量と暴風が襲う。セレナやマリアの立つ場所さえ無くすほどに。

 

 

「いけません」

 

 

セレナに駆け寄ろうとするマリアをナスターシャが抱きとめる。そこに瓦礫が落ちナスターシャの下半身を砕くのが聞こえた。

 

 

「セレナ!!!」

 

 

幼いマリアでは振り解くことが出来ず、ただ泣き叫んでいた。

 

 

『貴重なサンプルが自滅したか』

 

 

『実験はタダじゃないんだぞ。無能どもめが!』

 

 

この研究に関わっていただろう研究員からそんな言葉が聞こえる。

 

 

「どうして……? どうしてそんな風に言うの!? あなたたちを守るために血を流したのは、私の妹なのよ!?」

 

 

「よかった……。マリア姉さん……」

 

 

目や鼻、耳や口から血を流しながらも、笑顔を見せるセレナ。そのセレナを無数の瓦礫が埋め尽くす。

 

 

「嫌! セレナーー!!!」

 

 

マリアの悲痛な叫び声だけが、辺りを支配していた。

 

 

「目は覚めたかしら? アイドル大統領」

 

 

(そうか。私、訓練の途中で気を失っていたのね)

 

 

起き上がるマリアの目の前には、カリオストロ。今日の訓練の相手をしてくれていたのだ。

 

 

「そろそろ、そのギア。使いこなしてほしいのよね」

 

 

現在マリアが纏っている黒を基調としたガングニール。それを見つめながらカリオストロは言う。

 

 

「わかっているわ。そんなこと。だからもう1度行くわよ」

 

 

(でもこのギア、すごく重い。動くだけで精一杯だわ。私では無理なの?)

 

 

勢いよくカリオストロに立ち向かうが、その動きは鈍く簡単にあしらわれてしまう。

 

 

「今日はここまでね」

 

 

「待ちなさい! 私はまだやれるわ!」

 

 

訓練室から出ようとするカリオストロを呼び止める。

 

 

「無理ね。今のあなたじゃ何度やっても同じことだもの」

 

 

「なっ。それならどうしろって言うのよ」

 

 

カリオストロの言葉に、うなだれるマリア。

 

 

「それは自分で考えなさい。あーしたちは錬金術師であって、シンフォギアじゃないの」

 

 

そう言い残し、カリオストロは部屋を後にする。

 

 

「くそっ! ここでも私はなにも出来ないの!? 私はもうなにも失いたくないのよ!」

 

 

床を何度も殴りつけるマリア。そんな様子を見つめる3人。

 

 

「やっぱ無理なんじゃないの? あの娘には」

 

 

「結論を出すには、早すぎます。もう少し様子を見てからでも」

 

 

カリオストロの言葉をすぐにナスターシャが、拒否する。

 

 

「しかし、時間はもう余り残っていない。3日だ。そこまでになにも兆しが見えないようなら、この同盟は破棄させてもらう」

 

 

冷たく言い放つサンジェルマン。ナスターシャを残し、サンジェルマンとカリオストロはこの場を去る。

 

 

「わかっています。残された時間が短いことなど」

 

 

1人で静かに呟く。

 

 

その後は検査をして、自由となる。自由と言われても今のマリアには、施設の中かその周りくらいしか行動は許されていない。

 

 

気晴らしにと、近くの林の中を歩くマリア。左手の紋章を見つめて溜め息を溢す。

 

 

「この紋章もなんの役に立つのかわからないわね」

 

 

普段は手袋をして紋章を隠しているが、今は1人だからだと油断していた。誰かに見られると思っていなかったのだ。

 

 

「おい! その紋章、どこで手に入れた!?」

 

 

赤い鉢巻きにマントをつけた男に呼び止められるまで。

 

 

「あなたどうやってここに入ったの?」

 

 

この辺りはF.I.Sの管轄下で、関係者以外出入りはできないはずだ。明らかに旅人を思わせるような格好をした人間が、関係者のはずがない。そのため、マリアは極度なまでに警戒する。

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