戦姫絶唱武闘伝シンフォギアG 作:フリューゲル
主のいなくなったチフォージュ・シャトー。その奥にある棺がゆっくりと開く。
「そんなに時間もかからず戻れたか」
金髪でおさげの少女、キャロルの姿がその棺から現れる。
「やはり残っていないか」
自身の右手を見つめて呟く。
「負けた代償か、それとも無理矢理起動させた反動か。どちらにせよ、紋章はシンフォギアの手に渡ったか」
ゆっくりと椅子に座して、誰もいないフロアを見渡す。
「シャッフルの紋章に眠る、初代シャッフル同盟の記憶。それがあったおかげで、あいつらを動かすことも、オレの錬金術も存分に使うことが出来たが、代償は大きかったかもしれんな」
小さく溜め息を溢す。
「オレのフォニックゲインをほとんど使い、無理矢理起動させたわけだが、反動でこの姿から変化することは出来ないし、紋章の力をシンフォギアに渡すことになったが」
モニターに映る格納庫を見つめる。
「ボルトも損傷が激しい。それでも、オレの計画に支障はない。万象黙示録はまもなく完成する」
「失ったものも大きいが、得たものも大きい。デビルガンダムだけに固執するあいつらとオレは違う! アレと同等の力は他にもあると知れ!」
立ち上がり、力強く言い放つ。誰もいない空間にキャロルの言葉だけが木霊する。
「ガリィ、ミカ、レイラ、ファラ。お前たちの犠牲の上で得たこの力。必ずオレは万象黙示録を完成させ、世界を壊す!」
「ブラック・ジョーカーの紋章は失っても、いや紋章の力を全て失っても、シャッフルの力は確実にこの手にある」
強く手を握りしめて、宣言するキャロル。
「もうすぐでパパから託された命題の答えに辿り着ける」
リディアンの地下で作業するフィーネ。白衣を羽織り、カプセルの様子を伺っているようだ。
「それにしても、コレを起動させるにはここのフォニックゲインだけでは時間がかかりすぎるな」
カプセルの横にある装置にセットされたシェム・ハの腕輪を見つめながら呟く。
「しかし、アレの完成も間近。アレが完成すれば、私の悲願は達成されたも当然」
シェム・ハの腕輪とは別の装置にセットされている剣を見つめるフィーネ。
「シンフォギアに錬金術師。どれほど足掻こうが、私の祈願は邪魔出来ぬ」
ホテルの1室。備え付けのソファーに対面で座る男が2人。間にあるテーブルの上にはアタッシュケースが置いてある。
「いいのかい? 本当に。これを僕に渡して」
アタッシュケースを指差しながら、アダムが問う。
「ええ。問題ありませんよ。それは僕には必要のない聖遺物。第一、あなたに借りを作るのはごめん願いたいもので」
アダムの対面に座るウェルが答える。
「もっとも、あなたにこれを渡したと知られたら、彼女たちは僕を許さないでしょうが」
目の前の聖遺物を発見してきたサンジェルマンたちを思い浮かべてウェルは顔を青ざめる。
「大丈夫さ。それはね。忙しくなるだろう? お互いに」
「ええ。そうですね。それが本来の目的ですからね」
お互いに頷く。
「さて、先日は助かりましたよ。錬金術師を数人こちらに渡してもらえて。お陰様でS.O.N.Gからの離脱はスムーズにいけましたよ」
ウェルの話に満足そうに頷くアダム。
「さて、この契約にはもう一つ目的が残っているわけですが、どちらがどちらを相手にしますか?」
「キャロルとフィーネ。排除しなければならないわけだ。この2人はね。そうだね。僕がキャロルを相手しよう。同じ錬金術師として」
アダムの答えにウェルも頷く。錬金術師と錬金術師。完全聖遺物に完全聖遺物。同じものをぶつけようと言うわけだ。
「あるんだろう? 完全聖遺物。ネフィリムが」
「お見通しですか。まだ覚醒には至っていませんが、頂いた数々の聖遺物の餌に順調ですよ」
アダムに言われ、ウェルは顔をしかめながら答える。ネフィリムの存在は隠しておきたいとっておきだったから。
「まぁいいでしょう。デビルガンダム対抗出来る数少ないもの。お互いにその力を手に入れることを先決としましょう」
ウェルの言葉でその場は解散となり、ウェルは腰を上げ、部屋を退出する。
「僕のS.O.N.G離脱のアシスト。お互いに邪魔となる2人の排除。それのために協力しましたが、彼も僕が望む世界には邪魔ですしね」
帰りの通路で呟くウェル。一時的に協力体制を取ったが、アダムも邪魔であると再認識していた。
「危険だよね。彼をこのまま野放しにするのは」
アタッシュケースに入っていた完全聖遺物『アンティキティラの歯車』を見つめ呟く
「感謝はしているさ。コレを見つけてくれたことはね。しかし、どこまでやれるだろうね。ネフィリムでフィーネと」
まるでウェルが勝つことを期待していないアダムはそう呟くとアンティキティラの歯車をティキに組み込む。
歯車が回るとティキはゆっくりとその目を開く。
「ようやく起きたかい。働いてもらうよ。これからね」
アダムはティキの頭をゆっくりと撫でながら、そう囁いた。