戦姫絶唱武闘伝シンフォギアG 作:フリューゲル
3日後に行われたマリアの単独ライブ。今や世界各地にファンのいるマリアのライブは180カ国で放映されることとなっていた。
「いいですね? 手筈通りに頼みますよ」
未だ渋るマリアにナスターシャが最後の確認を取る。
「わかっているわ。マム」
決意を胸にマリアはステージに立つ。
「世界最高のステージの幕を上げましょう」
マリアの久しぶりに単独で行われるライブとあって、大盛況となっていた。そしてライブもいよいよ終盤に差し掛かる。
「私たちアーティストは世界に伝えていかなきゃね。歌には力があるということを」
そう言ってマリアが左手を高く振り上げたときだった。会場の至るところにノイズが現れたのだった。
「ノ、ノイズだ!」
「逃げなきゃ!」
案の定騒ぐ観客たちを見つめ、マリアがマイクを口元に戻す。
「狼狽るな!」
マリアの言葉に観客たちは一緒なにが起こっているのかわからず、固まる。
「私たちはノイズを操る力を持ってして、この星にある全ての国家に要求する!」
マリアの言葉を証明するかのように、ノイズはただ現れただけで、誰にも襲いかかっていない。
「私たちは、米国より独立した組織『F.I.S』。我々は各国政府に要求する。差しあたっては国土の割譲を求めようか」
このマリアの言葉に、中継が行われている政府を中心に混乱に落ち入る。
「もしも24時間以内にこちらの要求が果たされない場合は、各国の首都機能がノイズによって不全となるだろう!」
ここまでは打ち合わせ通りなのか、ナスターシャやサンジェルマンたちも穏やかに見守っている。
「この力が嘘でないと。証明してみせようか。会場のオーディエンス諸君を解放する! ノイズには手出しさせない! 速やかにお引き取り願おうか!」
『なにが狙いですか?』
マリアの言葉通り、ノイズが動く気配のないまま観客たちはゆっくりと確実に避難していく。
『こちらの優位を放棄するなど筋書きにはなかったはずです。説明してもらえますか?』
ナスターシャだけではない。サンジェルマンたちもこの状況に納得していないようで、画面に映るマリアを見つめている。
「このステージの主役は私。人質なんて私の趣味じゃないわ。それに、目的は終えたのだから、これ以上オーディエンスを巻き込む必要なんてないでしょう?」
マリアの説明に納得はしていないが、目的は達しているため、それ以上は誰もなにも言わないでいた。
『まぁ色々あるが、当面はいいだろう。帰還してくれ』
サンジェルマンからの言葉に頷くマリア。
マリアのライブ映像は各国政府だけではなく、様々な機関に影響をもたらせた。
「あのような宣戦布告。面白いことをしてくれる。F.I.Sか。興味はなかったが、この好機。オレも利用させてもらうとしよう」
チフォージュ・シャトーで眺めるキャロル。
「混乱に落ち入るだろうね。これで世界は。目的遂行のためか。見せてもらうよ。F.I.Sのやり方を」
ホテルで見つめるアダム。
「この混乱は私にも好機か。それにしても興味深い。ソロモンの杖をわざわざ渡してやった甲斐があったというわけか」
研究室のような場所で呟くフィーネ。
この3者はウェルの予想通り、この混乱に乗じて動くことはあっても、F.I.Sの邪魔をするつもりはなさそうだった。やはりと言うべきか、1番混乱している組織は、S.O.N.Gである。
「これはなにかの間違いデス」
「マリアがこんなことするなんて」
特にF.I.Sの頃から一緒にいた切歌と調は取り乱していた。
「落ち着け。暁も月読も。マリアを信じたいのは私とて同じ。しかし……」
「ああ、こうまで宣戦布告されちゃあな。放っておくわけに行かねえしな」
翼やクリスは、2人を宥めながらも戦闘は避けられないと察していた。
「司令、上からの指令が届きました」
顔を強張らせ言う友里に内容は聞かずとも皆がわかっていた。
「一応聞こう」
「国連はF.I.Sをテロ組織と認定。S.O.N.Gはこれを速やかに対処されたし」
わかっていた内容に全員が表情を落とす。
「ここはやはり、雪音と私が受け持つのがいいだろう」
翼から告げられた言葉に、切歌も調も唇を噛む。響も仕方ないとわかっていても、肩を落とす。
「待つデス! 逆にここはアタシと調にやらせてほしいデス!」
「うん。マリアが道を間違えたなら、それを正すのはわたしたちでありたい」
切歌と調の提案に、誰もが答える言葉が見当たらない。
「アタシたちは本気デス。例えマリアと戦うことになってもデス」
切歌の言葉に頷く調を見て、翼が動く。
「わかった。今回は2人に任せよう」
「いいのかよ?」
翼が認めたことに全員が驚く。
「暁も月読も、相応の覚悟があっての言葉だ。なら私はそれに応えてやりたい。危ういと感じたら私たちがフォローすればいい。それに、マリアを説き伏せられるとすれば、この2人を置いていまい」
翼の言葉に風鳴司令も覚悟を決める。
「よし、翼の案で行く。もちろん無茶はしてくれるな?」
切歌と調も笑顔になってこれに頷く。
「立花、今は辛いと思う。しかし、必ず立花の力を必要とするときが来るはずだ。だから、今は治療に専念してほしい」
「翼さん……」
響も少しだけ表情を明るくする。